建設業の財務諸表作成における注意点と特有勘定科目の重要性

建設業の財務諸表作成には、他業種と異なる特有の勘定科目や処理が求められます。特に、長期間にわたる工事やプロジェクトごとに収益を計上する仕組みが必要で、建設業特有のルールに従うことが重要です。この記事では、建設業の財務諸表作成時に押さえておくべきポイントと、特有の勘定科目について詳しく解説します。

 

工事進行基準と工事完成基準の選択

建設業では、工事の進行状況に応じて収益を計上する「工事進行基準」と、工事が完了した時点で収益を計上する「工事完成基準」のいずれかを選択する必要があります。

  • 工事進行基準: 工期が長期間にわたる場合に適用され、工事の進捗に応じて収益を認識します。特に大規模なインフラ工事や長期にわたる建設プロジェクトに有効です。

  • 工事完成基準: 短期間で完了する工事には適しており、工事が完了した段階で収益を一括で計上します。短期的な改修工事や小規模な工事プロジェクトで用いられます。

さらに、2021年4月から新収益認識基準が適用されるようになり、これにより収益の認識方法がより一層明確化されました。この基準に基づいて、収益を適切に計上するためには、工事の規模や期間に応じた慎重な判断が求められます。選択した基準に基づいて収益や原価を計上することが重要です。

 

建設業特有の勘定科目

建設業における財務諸表作成では、特有の勘定科目が使用されます。これらの勘定科目を正確に理解し、適切に管理することが、企業の財務管理を円滑に進めるために不可欠です。

  • 完成工事高
    工事が完了し、その成果物が引き渡された際に計上される売上高です。プロジェクト単位で管理され、完成した工事に対して記録されます。

 

  • 完成工事原価
    完成した工事にかかった材料費、労務費、外注費などをまとめた費用です。完成工事高に対応する原価として計上されます。

 

  • 完成工事総利益
    完成工事高から完成工事原価を差し引いた粗利益です。各工事の収益性を評価するための重要な指標です。

 

  • 未成工事支出金
    工事が進行中の段階で発生した費用を一時的に計上する科目です。工事が完成した時点で「完成工事原価」に振り替えられます。

 

  • 完成工事未収入金
    工事が完了したにもかかわらず、まだ受け取っていない売上金を指します。工事ごとに管理される売掛金です。

 

  • 未成工事受入金
    工事が進行中に、発注者から前払いで受け取った金額です。工事が進むにつれて収益として振り替えますが、工事が完了するまでは負債として計上されます。

 

  • 工事未払金
    工事関連の費用で、発生はしているがまだ支払いが完了していないものです。外注費や材料費がここに含まれます。

 

財務管理の重要ポイント

  • 工事原価管理
    材料費、労務費、外注費、現場経費など、各費用を細かく分類して工事ごとに正確に管理することが重要です。工事の進捗状況に応じて原価を正確に把握し、適切に財務諸表に反映させます。

 

  • 前受金と未成工事支出金の処理
    工事開始前に受け取る前受金は負債として計上し、工事が進むにつれて収益として振り替えます。進行中の支出は「未成工事支出金」に一時的に計上し、完了後に「完成工事原価」に振り替える必要があります。

 

建設業許可の維持に必要な財務基準

建設業許可を維持するためには、一定の財務基準を満たす必要があります。自己資本比率や流動比率など、健全な財務状況を保つことが求められます。財務諸表作成時には、これらの基準を満たしているかどうかを十分に確認することが重要です。

 

よくある質問(FAQ)

Q1. 工事進行基準と工事完成基準のどちらを使えば良いですか?

工期が長期にわたる場合は工事進行基準、短期で完了する場合は工事完成基準が一般的に使用されます。工事の規模や期間に応じて適切な基準を選択することが重要です。

Q2. 「未成工事支出金」とは何ですか?

工事が完了する前に発生した費用を一時的に計上する勘定科目です。工事が完成した時点で、「完成工事原価」に振り替えられます。

Q3. 建設業許可を維持するための財務要件は何ですか?

建設業許可を維持するには、一定の財産的基礎が必要です。具体的には、自己資本比率や流動比率などの財務指標が基準を満たしているかが審査されます。

Q4. 完成工事高とは何ですか?

完成工事高とは、工事が完了し成果物が引き渡された時点で計上される売上高を指します。

 

まとめ

建設業の財務諸表作成には特有の勘定科目と複雑な処理が求められます。適切な工事進行基準と工事完成基準の選択、正確な原価計算、そして建設業許可を維持するための財務基準に関する知識が欠かせません。これらのポイントをしっかりと把握し、実践することで、建設業の財務管理はより効率的に行えるようになります。

不安や不明な点がありましたらお気軽に保利国際法務事務所までお問い合わせください(092-555-9790)

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