特定技能「物流倉庫」分野は、2026年1月23日の閣議決定で特定産業分野に追加されました。ただし、外国人が特定技能1号の在留資格を得るには「物流倉庫分野特定技能1号評価試験」への合格が必要で、国土交通省はこの試験の開始時期を「現在調整中であり未定」としています(2026年9月時点)。いつから採用できるかは、試験の開始と分野別協議会の設置という2つの日付で決まる、というのが現時点の正確な答えです。一方、受け入れる事業者の要件は、2026年6月26日公布の国土交通省告示第787号と、9月18日公表の運用要領別冊でほぼ固まっています。
特定技能「物流倉庫」はいつから?決まっている日付と未定の日付
物流倉庫分野について、2026年9月29日時点で一次資料から確認できる日付を並べると次のとおりです。
- 2026年1月23日:分野別運用方針(物流倉庫分野)閣議決定。特定産業分野・育成就労産業分野に追加
- 2026年6月26日:上乗せ基準告示(令和8年国土交通省告示第787号・特定技能、第788号・育成就労)公布。告示は公布の日から適用
- 2026年8月28日:育成就労の運用要領別冊(物流倉庫分野)公表
- 2026年9月18日:特定技能の運用要領別冊(物流倉庫分野)公表
- 2027年4月1日:育成就労制度の運用開始
国土交通省のページによれば、特定技能1号評価試験と育成就労評価試験(初級)は、いずれも2026年2月末までに試行試験を終え、試験の適正性の了承を得る手続が進められています。育成就労評価試験(初級)は、育成就労の開始後1年経過時までに求められる水準を問う試験のため、2027年4月の育成就労制度開始以降に始まる予定です。特定技能1号評価試験の開始時期は未定です。
民間の解説記事には「2027年4月開始」と書くものが多く見られます。育成就労の開始日と混同されている可能性があり、特定技能1号の受入れ開始日としては、国土交通省の公表を待つ必要があります(公式資料では未確認)。なお、分野別運用方針は1号の受入れ見込数を「令和8年度から3年間」で設定しているので、制度上は2026年度中の開始も想定されています。
もう1つの条件が分野別協議会です。運用要領別冊は、特定技能所属機関は在留諸申請の前に協議会に加入しなければならないと定めていますが、協議会は「現在、設置に向けて調整中」で、加入要件・提出書類・受付開始時期は未公表です(2026年9月時点)。試験に合格した人材がいても、協議会に入れなければ申請できません。協議会の一般的な仕組みは特定技能の協議会とは?で解説しています。
受入れ見込数は1号で1万1,400人、2号の受入れはない
分野別運用方針は、物流倉庫分野の受入れ見込数を次のように定めています。
- 分野全体:令和8年度から令和10年度までの3年間で1万8,300人
- 特定技能1号:令和8年度から3年間で1万1,400人(令和10年度末までの受入れの上限として運用)
- 育成就労:令和9年度から2年間で6,900人
見込数の根拠として、運用方針は令和10年度に5万5,100人程度の人手不足を見込み、倉庫管理システム等の活用による生産性向上(2万300人程度)と、女性・高齢者の起用(1万6,500人程度)を差し引いてなお1万8,300人程度が不足すると説明しています。見込数を超えることが見込まれる場合、国土交通大臣は法務大臣に在留資格認定証明書の交付の一時停止を求めることになっています。上限のある制度だという点は、開始直後に採用を集中させたい企業ほど意識しておくべきところです。
特定技能2号は設定されていません。運用要領別冊は「物流倉庫分野においては、特定技能2号での受入れを行うことはできません」と明記しています。1号の在留期間は通算5年が上限なので、物流倉庫分野の特定技能外国人は、現時点では最長5年の雇用を前提に計画することになります。他分野との比較は特定技能の分野・職種一覧にまとめています。
対象業務は「倉庫作業」|できる業務とできない業務
告示第787号第2条は、従事させる業務を「倉庫作業(貨物の入庫、保管、出庫その他の倉庫内における作業をいう。)」と定めています。国土交通省が主な業務として挙げるのは、入出庫貨物の受渡し・検品、貨物の移動、保管庫への格納、ピッキング、流通加工です。
関連業務として、事務所への連絡や報告、作業場所の整理整頓や清掃、台風等の接近に備えた貨物の移動や雨水侵入防止措置、職場の会議(安全衛生、懇談会、教育訓練等)への参加が例示されています。関連業務に付随的に従事することは認められますが、専ら関連業務に従事させることは認められません。
線引きで注意が必要なのは次の3点です。
1つ目は流通加工の範囲です。国土交通省のQ&Aは、流通加工を「物流側の都合で必要な加工を施す行為」にとどまるものとし、小分け再包装、タグ取付け、ラベル貼り、セット組みを例に挙げています。商品そのものの機能を完成させたり性能を向上させたりする作業は製造工程の一環であり、流通加工に含まれません。組立てや検査を伴う作業を倉庫で請け負っている事業者は、その作業が製造に当たらないかを確認する必要があります。
2つ目は食品です。運用要領別冊は「包装されていない食品に直接触れる業務に従事することはできません」としています。食品の小分け作業を倉庫内で行っている場合、その工程には物流倉庫分野の特定技能外国人を配置できません。
3つ目は運送に伴う荷役です。トラック事業者が行う倉庫作業は、運賃等の輸送の対価とは別に作業料金を受け取って引き受けているものである必要があり、運賃に含まれる積卸しは「倉庫作業」に当たりません。
受け入れられる事業者はA・B・Cの3類型
告示第787号第3条第1号は、特定技能所属機関を次のいずれかに限っています。
| 類型 | 受入れ機関 | 就業の場所 | 追加の要件 |
|---|---|---|---|
| A | 倉庫業法の登録を受けた倉庫業者で、倉庫作業を自ら実施する者 | 自社が占有する営業倉庫 | ― |
| B | 倉庫業者の委託を受けて、その倉庫業者の営業倉庫で倉庫作業を実施する者(いわゆる倉庫作業会社) | 委託元が占有する営業倉庫 | 委託元の倉庫業者と共同で雇用継続の協定書を作成 |
| C | 一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可を受けた者 | (1)自社が占有する倉庫、(2)運送事業に関連して有償で倉庫作業を請け負う倉庫 | 運賃とは別に作業料金を収受していること。(2)は自社車両又は自社手配の庸車が反復継続的に出入りしていること |
倉庫業の登録も貨物自動車運送事業の許可もない事業者、たとえば自社商品を自社倉庫で保管する小売業やメーカーの物流部門は、この3類型のどれにも当たらず、物流倉庫分野では受け入れられません。
類型Bの協定書には、業務委託が解消されて外国人の雇用契約が終了する場合に、委託元の倉庫業者が転職支援の補助を行う旨を書く必要があります。運用要領別冊は、倉庫業者に外国人を直接雇用することや賃金を保証することまでは求めないとしています。
WMSの利活用と継続報告が要件になる
物流倉庫分野に固有の要件が、情報システムの利活用です。告示第787号第3条は、次の2つを求めています。
- 入庫管理、在庫管理及び出庫管理の機能を有する情報システム(いわゆる倉庫管理システム・WMS)を利活用していること(第7号)
- WMSと連携することで機能が拡充される機器又は情報システムを継続して利活用し、協議会に加入した日から1年以内に利活用の状況を協議会へ報告すること(第8号)
国土交通省のQ&Aによれば、WMSは3つの機能を満たしていればよく、「倉庫管理システム」と銘打った製品でなくても構いません。自社で所有している必要もなく、外国人が就業する事業所でシステムが使える状態にあれば足ります。荷主から支給されたシステムを使っている作業会社でも、要件を満たし得るということです。
第8号の「連携して機能を拡充する機器又はシステム」が具体的に何を指すか(ハンディターミナル、自動倉庫、AGVなどのどこまでが該当するか)と、報告の方法は協議会が定めることになっており、現時点では現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。分野別運用方針は、生産性向上の取組の例として、ピッキングやパレタイズの自動化ロボット、無人フォークリフト、無人搬送車(AGV)を挙げています。
派遣は禁止、違反すると5年間受け入れられない
告示第787号第1条は、労働者派遣の対象とする特定技能雇用契約を結ばないことを上陸基準として定めています。分野別運用方針も雇用形態を「直接雇用に限る」としています。
運用要領別冊は、特定技能外国人を派遣した場合も、派遣された者を受け入れた場合も、不正に許可を受けさせる目的での虚偽文書の行使等に該当し、以後5年間は特定技能外国人を受け入れられなくなると明記しています。倉庫の繁忙期対応は派遣スタッフで回している事業者が多いため、特定技能外国人を自社の他拠点へ「応援」に出す運用が派遣や出向の形になっていないかは、雇用契約の段階で確認しておくべき論点です。
フォークリフトの扱い|在留資格と安全衛生法の2つの問題
フォークリフトの運転は、倉庫作業のうち「貨物の移動」「保管庫への格納」に使われる作業です。ただし、告示・分野別運用方針・運用要領別冊・国土交通省のQ&Aのいずれにも、フォークリフトについての個別の記載はありません。特定技能1号評価試験の範囲について、出入国在留管理庁の有識者会議資料は「物流機器・施設の操作・点検・管理」を含めており、運用要領別冊も試験が「機器の取扱いについて理解した上で」正しい判断ができることを確認するものと説明しています。筆者は、倉庫内でのフォークリフトによる荷役は対象業務の範囲に入ると読んでいますが、国土交通省の明示的な見解は出ていないため現時点で公式資料では確定していないため、断定できません。
在留資格とは別に、労働安全衛生法上の資格が必要です。最大荷重1トン以上のフォークリフトの運転は就業制限業務で、フォークリフト運転技能講習の修了が必要です(労働安全衛生法施行令第20条第11号)。1トン未満であれば、事業者が行う特別教育の受講が必要です(労働安全衛生規則第36条第5号)。技能講習は日本語で行われるのが一般的なため、日本語A2.2相当の人材がそのまま受講して修了できるかは、講習機関の対応言語や補助教材によります。採用計画には、入社後に技能講習を受けさせる期間と費用を組み込んでおくことをお勧めします。
なお、フォークリフトで公道を走行する場合は道路交通法上の運転免許(大型特殊・小型特殊)の問題になり、倉庫内の運転とは別の話です。
外国人側の要件|試験2つと技能実習からの移行
特定技能1号の外国人には、次の2つの試験の合格が求められます(分野別運用方針第二1)。
- 技能:物流倉庫分野特定技能1号評価試験(保管・荷役、流通加工、安全衛生に関する実践的な知識を問う)
- 日本語:国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2.2相当以上、又は日本語能力試験(JLPT)N4以上
物流倉庫分野には、技能試験が免除される関連技能実習2号の職種が設定されていません(運用要領別冊の別表で「ー」)。一方、日本語については、技能実習2号を良好に修了した人は、職種・作業の種類にかかわらず、日本語試験の合格が不要とされています。たとえば食品製造や機械加工の技能実習2号を修了した人が物流倉庫分野に移る場合、技能試験の合格だけで足ります。技能実習からの移行全般は技能実習から特定技能への移行は可能?で扱っています。
育成就労で受け入れる場合
育成就労(2027年4月1日開始)では、就労開始前に日本語A1相当以上(JLPT N5等)の合格か、それに相当する日本語講習の受講が必要です。1年経過時までに育成就労評価試験(初級)とA1相当、育成就労の終了までに特定技能1号評価試験とA2.2相当の合格が求められます。本人の意向による転籍の制限期間は1年です。受入れ事業者の類型とWMS要件は特定技能と同じで、育成就労も直接雇用に限られます。育成就労の分野一覧は育成就労の分野一覧(17分野・業務区分)|技能実習の職種で対象外になる仕事で整理します。
開始前に事業者が準備できること
試験開始と協議会設置の日付が出るまでの間に、事業者側で進められる準備は次のとおりです。
- 自社がA・B・Cのどの類型に当たるかの確認(倉庫業登録の有無、運送事業許可の種類、作業料金を運賃と別建てで受け取っているかの契約書確認)
- 類型Bの場合は、委託元の倉庫業者と協定書の内容を協議
- 外国人を配置する事業所でWMSが利用できる状態かの確認と、連携機器の利活用状況の記録
- 配置予定の工程に、包装されていない食品に触れる作業や製造に当たる加工が含まれていないかの点検
- フォークリフト技能講習の受講計画と、多言語教材の確認
- 登録支援機関に支援を全部委託する場合は、その機関が物流倉庫分野の協議会に加入する予定かの確認
特定技能所属機関としての一般的な要件(労働関係法令の遵守、過去1年の非自発的離職者の有無、支援体制など)は分野を問わず必要です。提出書類の構成は特定技能の必要書類一覧|提出書類一覧表(2026年8月20日改定)の見方と省略できる書類、制度全体は特定技能とは?を参照してください。
よくある質問
特定技能の物流倉庫はいつから始まりますか?
分野の追加は2026年1月23日に閣議決定され、事業者の基準は同年6月26日の告示と9月18日の運用要領別冊で定められました。ただし特定技能1号評価試験の開始時期は2026年9月時点で未定で、分野別協議会も設置に向けて調整中です。育成就労の受入れは2027年4月1日の制度開始以降になります。
国土交通省の物流倉庫の特定技能とは何ですか?
物流倉庫分野は国土交通省(物流・自動車局 貨物流通事業課)が所管する特定産業分野です。倉庫内で行われる貨物の入出庫、保管その他の倉庫作業に、試験に合格した外国人を特定技能1号で受け入れる制度で、2号は設定されていません。
倉庫業の登録がない会社でも受け入れられますか?
倉庫業者の委託を受けてその営業倉庫で作業する「倉庫作業会社」(類型B)か、一般・特定貨物自動車運送事業の許可を受けたトラック事業者(類型C)であれば受け入れられます。いずれにも当たらない自家倉庫のみの事業者は対象外です。
特定技能の外国人に倉庫でフォークリフトを運転させられますか?
公表資料にフォークリフトについての個別の記載はありませんが、試験範囲には物流機器の操作が含まれており、倉庫内の荷役作業として従事させることは想定されていると筆者は考えます(公式資料では未確認)。いずれにしても、最大荷重1トン以上なら技能講習、1トン未満なら特別教育の修了が必要です。
派遣会社から特定技能外国人を受け入れることはできますか?
できません。物流倉庫分野は直接雇用に限られ、派遣した場合も派遣を受け入れた場合も、以後5年間は特定技能外国人を受け入れられなくなります。
待つ間に決めておくべきは「どの類型で、どの工程に配置するか」
物流倉庫分野は、開始日こそ未定ですが、事業者側の基準は告示と運用要領別冊で出そろっています。試験の日程が公表されてから準備を始めると、協議会の加入、WMSの確認、協定書の作成、雇用契約の作成が一度に重なります。受入れ見込数という上限もあるため、開始時点で申請できる状態にしておく価値は大きいと筆者は考えます。
最初に決めるべきは、自社がどの類型で受け入れるのかと、外国人をどの工程に配置するのかの2点です。この2点が決まれば、協定書の要否、食品や製造工程との線引き、フォークリフト講習の計画が連鎖的に決まります。個別の事情で判断が変わるため、契約形態が複雑な作業受託や3PLの事業者は、早めに専門家に相談してください。
根拠資料
- 物流倉庫分野における特定技能外国人・育成就労外国人の受入れについて(国土交通省・2026年9月時点)
- 分野別運用方針(物流倉庫分野)(令和8年1月23日閣議決定)
- 令和8年国土交通省告示第787号(物流倉庫分野の上乗せ基準・2026年6月26日公布)
- 特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-物流倉庫分野の基準について-(法務省・国土交通省・2026年9月18日公表)
- 同 別表(国土交通省)
- 物流倉庫分野の上乗せ基準・受入れ可能な事業者の類型(国土交通省)
- 技能評価試験の整備予定(新規・変更特定産業分野)(出入国在留管理庁 有識者会議資料)
- 特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年6月末時点・速報値)(出入国在留管理庁)
- 労働安全衛生法施行令(e-Gov法令検索)
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