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特定技能で派遣はできる?農業・漁業に限られる理由と派遣元・派遣先の基準

特定技能外国人を派遣で受け入れられるのは、農業分野と漁業分野だけです。入国・在留審査要領 第12編(開示版)18の3-41は、労働者派遣によることができるのは分野別運用方針で派遣形態を採ることとしている「農業分野及び漁業分野」に限られるとしており、出入国在留管理庁の「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(令和8年8月)も同じ整理です。製造業、外食業、建設などの分野では、派遣会社を通じた受入れはできません。

農業・漁業でも、派遣会社であれば誰でも派遣元になれるわけではありません。派遣元は、その分野の業務を自ら行っているなどの要件を満たし、分野を所管する関係行政機関の長との協議で適当と認められる必要があります。派遣先にも、非自発的離職者や行方不明者を出していないことなどの基準があり、雇用期間の全てについて派遣先と派遣期間を決めておかなければなりません。

この記事でわかること

  • 特定技能が原則として直接雇用とされている理由と、偽装請負の疑い
  • 派遣が農業・漁業に限られること(19分野に広がった後も同じ)
  • 派遣元になれる機関の4つの類型と、関係行政機関との協議(3年の有効期間)
  • 派遣先の4つの基準と、全期間の派遣先・派遣期間の定め
  • 派遣でも必要な支援、定期面談、労働時間の扱い

原則は直接雇用

特定技能は、受け入れる会社が外国人を直接雇い、直接指揮命令する制度として設計されています。審査要領は、政府の基本方針を引いて次のように説明しています。

審査要領ではこう書かれている(第12編 18の3-2〜18の3-3)

「特定技能外国人の雇用形態については、原則として、フルタイムとした上で直接雇用とする。」と規定し、分野の特性に応じ、派遣形態を一部認める以外は、特定技能所属機関が直接雇用する制度としていることから、原則として、特定技能所属機関が特定技能外国人を直接指揮命令するものであることを求めるもの。

この原則から、派遣ではない形で他社の現場に外国人を置く場合にも審査が及びます。雇用条件書(参考様式第1-6号)では直接雇用としているのに、就業の場所として他の機関の事業所内とうかがわれる場所を書いている場合があります。この場合について審査要領18の3-3は、実際には他の機関が指揮命令する「いわゆる『偽装請負』を行っていることが疑われる」としています。その場合は、所属機関と請負業者の間の請負契約書や委託契約書を提出させ、具体的な指揮命令系統や、請負業者が外国人を指揮命令しない体制を確認して、実態として労働者派遣でないことを確かめます。

取引先の工場や元請の現場で働かせる予定の会社は、契約書の名目が請負であっても、指揮命令が自社にあることを説明できるかを先に点検してください。派遣が認められない分野で請負の形をとって実質的に派遣をすれば、それ自体が審査で問題になります。

派遣が認められるのは農業・漁業だけ

審査要領が開示された時点では、特定産業分野は16分野でした。出入国在留管理庁の運用要領(令和8年8月)では、リネンサプライ、物流倉庫、資源循環が加わって19分野になっています。分野は増えましたが、同じ運用要領は、派遣形態が認められるのは農業分野と漁業分野だけとしています。新しく加わった分野でも、派遣での受入れはできません。

農業と漁業に派遣が認められている理由について、審査要領は「分野の特性に応じ」と書くにとどまり、それ以上の説明はしていません。筆者は、作物や漁期によって繁忙期と閑散期の差が大きく、一つの事業者が通年で雇い続けにくいという両分野の事情を踏まえた例外と読んでいます。例外である以上、派遣元・派遣先には直接雇用より重い基準が課されています。農業分野の受入れ全体は特定技能「農業」とは?直接雇用と派遣の違い・受入れ要件をわかりやすく解説で扱っています。

雇用契約の条件:全期間の派遣先と期間を決める

特定技能基準省令は、外国人を労働者派遣等の対象とする場合、派遣される先の機関の氏名または名称・住所と、派遣の期間が定められていることを求めています。審査要領18の3-41は、この要件を「雇用期間の全てにおいて当該外国人の派遣先及び派遣期間が定められていること」と説明しています。

ここでいう労働者派遣とは、労働者派遣法2条1号が定める、自己の雇用する労働者を雇用関係の下に他人の指揮命令を受けてその他人のために労働に従事させることを指します(18の3-42)。派遣先が決まったら順次送り出す、という形の契約は、全期間の派遣先・期間の定めがないため認められません。

審査では、次の書類を突き合わせます(18の3-42)。

  • 特定技能雇用契約書(参考様式第1-5号):申請人と派遣元の雇用契約
  • 労働者派遣契約書:派遣元と派遣先の契約
  • 派遣計画書(参考様式第1-12号):派遣先が複数あればその全ての名称・住所と派遣期間
  • 就業条件明示書(参考様式第1-13号):労働者派遣法34条に基づき、派遣元が本人に明示する派遣期間等

たとえば、春から秋はA農園、冬はB農園に派遣する計画であれば、両方の名称・住所と、それぞれの派遣期間を雇用期間の全体にわたって書き込むことになります。季節ごとに派遣先を回す働き方は、農業・漁業の派遣が認められた事情に沿うものですが、その組み方を申請の時点で示せることが条件です。

申請後に派遣先を追加・変更する場合の手続は、審査要領の該当部分には明記されていません【要確認】。業務区分が変わる場合について審査要領18の3-35が「特定技能雇用契約の変更を伴う」として特定技能雇用契約に係る届出を求めています。このことからすれば、派遣先の定めが変わる場合も雇用契約の内容の変更として届出の対象になると筆者は読んでいます。ただし、実際の扱いは管轄の地方出入国在留管理局に確認してから動いてください。

派遣元が本人に派遣期間などを明示する義務は、労働者派遣法34条に基づくものです。特定技能の審査は、入管法上の基準と労働者派遣法上の義務の両方を満たしていることを前提に進みます。

派遣元になれる機関の4つの類型

派遣元となる特定技能所属機関は、次のいずれかに該当する必要があります。かつ、外国人が派遣先で従事する業務の分野を所管する関係行政機関の長との協議で適当と認められる必要があります(特定技能基準省令2条1項9号イ、審査要領18の3-91〜18の3-92)。

類型 内容 主な立証資料
(1) 業務を行っている者 その分野の業務(農業・漁業)またはこれに関連する業務を自ら行っている 定款、登記事項証明書、有価証券報告書、決算書類。農業は営農証明書、農産物の出荷伝票・納品書の写し等
(2) 資本関係 地方公共団体または(1)の者が資本金の過半数を出資している 有価証券報告書、株主名簿の写し等
(3) 業務執行への関与 地方公共団体や(1)の者の職員・役員が役員であるなど、業務執行に実質的に関与している 役員名簿、業務方法書、組織体制図等
(4) 国家戦略特区の特定機関(農業のみ) 国家戦略特別区域法16条の5の特定機関である 特定機関基準適合通知書の写し

最も誤解が多いのが(1)です。人材派遣会社が農家に労働者を送っていることをもって、「農業に関連する業務を行っている」と主張できるかという問題に、審査要領ははっきり答えています。

審査要領ではこう書かれている(第12編 18の3-93)

「派遣元として、単に農業分野に労働者を派遣している機関については、派遣業を営む者であり、農業又は農業に関連する業務を行っている者ではないことから、農業又は農業に関連する業務を行っているものと評価できないことに留意する。」

農業分野では、定款や登記の目的欄だけでなく、農産物の出荷に係る伝票や納品書の写しなどで、農業や関連業務が「現に反復・継続的に行われ、事業が成立していること」まで確認されます(18の3-93)。目的欄に農業を加えただけの派遣会社は、この段階で説明に行き詰まります。

関係行政機関との協議と3年の有効期間

派遣元の類型に当てはまることを地方出入国在留管理局が確認すると、在留諸申請の書類一式を添えて本庁に上申し、本庁が関係行政機関の長と協議します。適当と認められた機関には、その旨と有効期間を記載した通知書が送られます(18の3-94)。審査要領は、こうして認められた派遣元を「派遣認定機関」と呼んでいます。

この判断は、協議の終了の日から3年間有効なものとして扱われ、有効期間内であれば、資本関係の解消などの特段の事情変更がない限り、本庁への上申を省略できます。一方、期限の管理を誤ると審査が止まります。

  • 有効期間の終期の3か月前以降(期間経過後を含む)に、その機関を派遣元とする申請があれば、改めて本庁に上申する
  • 有効期限が過ぎている機関を派遣元とする申請は、再度の認定がされるまで審査を保留する
  • 変更・更新申請では、個々の申請人の特例期間の残りが1月になった時点で有効期限が過ぎていれば、保留せずに基準不適合として許否を判断してよい

3つ目は、派遣元の期限切れが、派遣されている外国人の在留そのものを失わせかねないことを意味します(18の3-94〜18の3-95)。派遣認定機関の有効期限は、少なくとも3か月以上前から更新の準備に入る必要があります。

もう一つ、派遣には書類省略の特例が及びません。審査要領18の3-92は、申請人の派遣労働に関する資料は、すでに特定技能外国人を受け入れている機関の申請であっても省略は認められず、個別の申請ごとに確認するとしています。

派遣先に求められる4つの基準

派遣元は、次の全てに該当する派遣先にだけ外国人を派遣することとしていなければなりません(特定技能基準省令2条1項9号ロ、審査要領18の3-92)。

  1. 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること
  2. 特定技能雇用契約の締結の日前1年以内またはその締結の日以後に、非自発的離職者を発生させていないこと
  3. 同じ期間内に、行方不明者を発生させていないこと
  4. 欠格事由に該当していないこと

これらは、直接雇用の場合に所属機関自身に求められる基準と同じ内容で、審査方法もその基準の審査方法を参照するとされています(18の3-95)。確認に使うのは、派遣計画書と派遣先の概要書(農業は参考様式第1-14号、漁業は第1-15号)です。派遣予定先が複数あればその全てについて、非自発的離職者・行方不明者を出していないことと欠格事由に当たらない旨の誓約があるかを確認します(18の3-94)。派遣先の基準の中身は、特定技能の非自発的離職者|1人でも出すと受入れが止まる理由と退職勧奨で詳しく扱っています。あわせて特定技能外国人が行方不明になったら|受入れ機関の責めに帰すべき事由も参照してください。

派遣でも支援と定期面談は必要か

派遣の場合、特定技能雇用契約を結ぶのは派遣元なので、特定技能所属機関は派遣元です。1号特定技能外国人支援計画を作って支援を実施する義務も、派遣元(または全部委託を受けた登録支援機関)が負います。

支援のうち、派遣の形を反映して扱いが変わるのが定期面談です。定期面談は3か月に1回以上、外国人本人と、その監督をする立場にある者の双方と行うもので、審査要領は、派遣の場合の監督者を派遣先の監督者としています(18の3-123〜18の3-125)。面談で労働関係法令の違反などを知ったときは、労働基準監督署などへの通報が必要です。実際に働く現場は派遣先にあるため、派遣元は派遣先の協力を得て面談の日程を組むことになります。定期面談の実施方法は特定技能の定期面談とは?3か月に1回の実施方法・オンラインの条件・報告書で扱っています。

分野ごとの協議会との関係については、審査要領は分野の該当性を「基本的に、分野ごとに設置される協議会への加入に当たって判断される」としています(18の3-4)。特定技能所属機関である派遣元が構成員となる必要があることはこの記述から読めますが、派遣先にも加入や協力が求められるかは、開示版の審査要領からは読み取れません【要確認】。農業・漁業それぞれの分野別運用要領で確認してください。

活動状況の届出にも派遣特有の定めがあります。派遣元は、労働者派遣法40条1項に基づく派遣先からの通知を踏まえて、活動状況に係る届出を行うことが求められます(18の3-95)。定期届出は令和8年4月から年1回(対象期間4月〜翌3月、提出期限5月31日)に変わっています(出入国在留管理庁「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」)。

同じ派遣先で3年を超える場合

労働者派遣法上、派遣先への派遣期間は原則として3年とされ、延長には派遣先の労働者の代表(過半数で組織する労働組合または過半数代表者)の意見を聴く義務があります(18の3-95)。これを受けて、審査要領18の3-95は、更新申請で同じ派遣先への派遣が3年を経過する場合には、派遣先の労働者の代表の意見を聴取したことを示す書類として、意見聴取事項を記した書面の提出を求めるとしています。

同一の派遣先・同一業務で期間を超えて継続する場合、派遣先には派遣労働者を直接雇い入れる努力義務が生じるとも書かれています(18の3-95)。長く同じ農家や漁業者に派遣している場合は、派遣先での直接雇用に切り替える選択肢も視野に入れてよいと筆者は考えます。

直接雇用から派遣への切替え

すでに直接雇用している特定技能外国人を、派遣に切り替える場合の扱いも審査要領に書かれています。所属機関が同じであれば、雇用形態が変わっても在留資格の変更には当たらず、派遣開始のおおむね2か月前に特定技能雇用契約に係る届出を行うこととされています(18の3-95)。所属機関そのものが変わる転職とは、手続が異なります。

農業・漁業の労働時間とフルタイム要件

農業分野と漁業分野の特定技能所属機関については、労働基準法の労働時間・休憩・休日に関する規定の適用が除外されています。深夜業と年次有給休暇に関する規定は除外されません(18の3-196)。

一方で、特定技能の雇用形態はフルタイムであることが求められ、審査要領18の3-35は、フルタイムを原則として週5日以上かつ年間217日以上、週労働時間30時間以上としています。派遣の場合も、特定技能雇用契約の基準を満たしていることが前提です。労働基準法上の労働時間規制が及ばないことと、特定技能のフルタイム要件を満たすことは、別々に確認が必要です。

なお、技術・人文知識・国際業務の在留資格で派遣する場合は、令和8年3月9日から派遣先の確定が必要になるなど、別のルールがあります。技人国の派遣は派遣社員として外国人を雇うときの就労ビザ|2026年3月から派遣先の確定が必須にを参照してください。

よくある質問

Q. 製造業や外食業で、特定技能外国人を派遣で受け入れることはできますか?

できません。審査要領は、労働者派遣によることができるのは分野別運用方針で派遣形態を採ることとしている農業分野と漁業分野に限られるとしており、出入国在留管理庁の運用要領(令和8年8月)も、派遣形態が認められるのは農業分野と漁業分野だけとしています。

Q. 人材派遣会社なら、農業分野の特定技能の派遣元になれますか?

派遣業を営んでいるだけではなれません。派遣元は、農業またはその関連業務を自ら行っている、地方公共団体か農業関係者が資本金の過半数を出資している、業務執行に実質的に関与している、国家戦略特区の特定機関である、のいずれかに該当し、分野所管省庁との協議で適当と認められる必要があります。審査要領は、単に農業分野に労働者を派遣している機関は農業関連業務を行っている者とは評価できないとしています。

Q. 派遣先が決まっていない状態で、特定技能の派遣契約を結べますか?

結べません。特定技能で派遣する場合は、雇用期間の全てにおいて派遣先と派遣期間が定められている必要があります。派遣先が複数あるときは、その全ての名称・住所と派遣期間を派遣計画書などで示します。

Q. 直接雇用していた特定技能外国人を、途中から派遣に切り替えるには在留資格変更が必要ですか?

在留資格の変更には当たらないとされています。派遣開始のおおむね2か月前に、特定技能雇用契約に係る届出を行います。ただし切替えができるのは農業・漁業分野で、派遣元・派遣先の基準を満たす場合に限られます。

派遣を検討する会社が最初に確かめること

特定技能の派遣を検討する会社は、まず受け入れる業務が農業か漁業の業務区分に当たるかを確認してください。それ以外の分野なら、派遣ではなく直接雇用で計画を立て直すことになります。農業・漁業であれば、自社が派遣元の4つの類型のどれに当たるかを、出荷伝票や株主名簿など審査要領が挙げる資料で示せるかを点検します。そのうえで、派遣予定先の全てについて、法令遵守と非自発的離職者・行方不明者の有無、欠格事由を確認します。すでに派遣認定機関として認められている会社は、通知書に書かれた有効期限を確かめ、終期の3か月前までに再度の上申に備えてください。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3「特定技能」18の3-2〜18の3-4、18の3-35、18の3-41〜18の3-43、18の3-91〜18の3-96、18の3-123〜18の3-125、18の3-196
  • 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(令和8年8月)https://www.moj.go.jp/isa/content/001468647.pdf(掲載ページ https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri07_00201.html)
  • 出入国在留管理庁「特定技能制度」トップページ https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html
  • 出入国在留管理庁「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri10_00002.html