国民健康保険・国民年金に加入する義務がある人が特定技能の在留資格変更や更新を申請すると、入管は申請月の前々月までの24か月分の納付状況を確認します。未納が見つかっても即座に不許可にはならず、納付の指導と期限つきの資料提出の機会が与えられます。ただし国民年金には納付を猶予する制度がないため、期限内に納めなければ要件を満たさないものとして扱われます(入国・在留審査要領 第12編(開示版)18の3-186)。
期限内に納めきれない事情がある人には、「公的義務履行に関する誓約書」(参考様式第1-26号)という手当てがあります。誓約書を出せば今回の申請では不履行と扱われませんが、効力は次の更新までです。審査要領は、誓約どおりに義務が履行されていなければ「更新を認めない」としています(18の3-192)。
この記事でわかること
- 国民健康保険・国民年金の納付を確認されるのは誰か
- 24か月分の確認で提出する書類
- 未納が見つかったときの指導と納付期限の目安
- 公的義務履行に関する誓約書が使える「特段の事情」と、次回更新での扱い
- 令和8年6月のガイドライン改正で加わった情報連携
確認されるのは、加入義務がある人
審査要領18の3-185が確認の対象としているのは、「国民健康保険及び国民年金保険への加入及び保険料の納付が義務付けられている者」です。ここでいう加入義務がある人とは、会社の健康保険・厚生年金保険に加入しておらず、自分で国民健康保険・国民年金に加入して保険料を納める必要がある人を指します。会社が健康保険・厚生年金保険の適用事業所で、特定技能外国人がそこに加入していれば、保険料は給与から天引きされ、会社が納めます。この場合に問題になるのは、会社の側の社会保険料の納付状況です。
本人の国民健康保険・国民年金が問題になるのは、主に次のような場面です。
- 留学生など、他の在留資格から特定技能に変更する人
- 転職の間に退職期間があり、その間に国民健康保険・国民年金の加入義務が生じた人
- 勤め先が健康保険・厚生年金保険の適用事業所でない個人事業主である人
3つ目については、在留期間にも影響があります。個人事業主は厚生年金保険の適用事業所でない場合が多く、本人の国民健康保険料と国民年金保険料の支払い義務が時効により2年で消滅します。そのため審査要領18の3-181は、特定技能1号・2号とも在留期間の上限を「2年」とするとしています。2年ごとの更新で、納付状況を確認できるようにする設計です。
個人事業主の会社の場合は、事業主本人の国民健康保険・国民年金も確認されます。特定技能所属機関が健康保険・厚生年金保険の適用事業所でないときは、審査要領18の3-60〜18の3-61が確認方法を定めています。事業主の被保険者記録照会回答票や国民年金保険料領収証書の写し(24か月分)で、事業主自身の加入と納付を確認します。受け入れる側の事業主の年金未納も、受入れの可否に関わるということです。
24か月分の確認で提出する書類
本人の国民健康保険・国民年金について、審査要領18の3-185〜18の3-186が挙げる書類は次のとおりです。番号の部分は、いずれもマスキングを施したものに限られます。
| 制度 | 加入の確認 | 納付の確認 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | マイナポータルからダウンロードした医療保険の資格情報の写し、または資格確認書の写し(保険者番号・被保険者等記号・番号をマスキング) | 国民健康保険料(税)納付証明書 |
| 国民年金 | 被保険者記録照会回答票(基礎年金番号をマスキング)で、加入していることと過去24か月間に加入期間があることを確認 | 国民年金保険料領収書の写し(申請月の前々月までの24か月分全て)、または被保険者記録照会(納付) |
国民年金保険料領収書の写しを24か月分全て提出した場合は、被保険者記録照会回答票による加入の確認は省略が認められます(18の3-186)。領収書を紛失している人は、記録照会の書類で代えることになります。
審査要領のこの部分には、墨消しとみられる箇所があります。国民健康保険料の納付証明書や国民年金の記録から、何をもって未納と判断するかの具体的な基準の部分が読めません【要確認】。以下では、開示されている指導と期限の運用を中心に整理します。
未納が見つかったときの指導と期限
未納が判明しても、審査はそこで終わりません。審査要領は、保険料を納付するよう指導し、指導からおおむね1か月後か、特例期間の満了日の1か月前のいずれか早い日までを目安に、納付したことを示す資料の提出を求めるとしています。期限内に資料が出れば、納付義務を履行しているものと評価されます(18の3-185〜18の3-186)。
ここで重要なのは、国民健康保険と国民年金で救済の幅が違うという論点です。国民健康保険は、すぐに払えなくても市町村役場に相談し、換価の猶予・納付の猶予・納付受託といった納付緩和措置の適用を受ければ、その旨の証明書や通知書で履行と評価されます。国民年金には、この道がありません。
審査要領ではこう書かれている(第12編 18の3-186)
「なお、国民年金については、納付(税)緩和措置は存在しないため、所定の期間を超えて納付しなければ、要件を満たしていないものとして取り扱う。」
| 国民健康保険 | 国民年金 | |
|---|---|---|
| 期限内の納付 | 履行と評価 | 履行と評価 |
| 納付緩和措置 | 換価の猶予・納付の猶予・納付受託の証明で履行と評価 | 制度がない |
| 市町村の分納計画 | 分納中なら誓約書の提出で今回は不問(次回更新で完納していなければ不許可) | ― |
| 期限を過ぎた場合 | 上記の手当てがなければ不履行 | 要件を満たさないものとして扱う(誓約書の「特段の事情」に当たる場合を除く) |
指導の期限は「おおむね1か月後」と「特例期間満了日の1か月前」の早いほうです。在留期限の直前に申請すると、指導を受けてから納付するまでの時間が短くなります。未納に心当たりがある人は、申請前に納めてから申請するのが最も確実です。
誓約書の効力は次の更新まで
期限内にどうしても納めきれない人のための手当てが、公的義務履行に関する誓約書(参考様式第1-26号)です。審査要領は、これを使える場面を「特段の事情」がある場合に限っています。
審査要領ではこう書かれている(第12編 18の3-186〜18の3-187)
「当該誓約書を提出した上で在留が許可された者が次回の在留期間更新許可申請において納付義務を履行していない場合には更新は許可されないこととなる。」
「特段の事情とは、滞納した税や保険料を即時に納付することができないものの1年以内であれば納付できる場合、市町村が作成した分納計画に従って納付することとしている場合、納付緩和措置(換価の猶予、納税(納付)の猶予又は納付受託等)又は社会保険料の納付免除措置の準備を行っているものの時間を要する場合などをいう。」
誓約書の要件は、本人に是正する意思があること、在留期間(特例期間を含む)の満了日までに履行できない特段の事情があること、当局の指導に従って次回の更新申請までに速やかに履行すると誓約することの三つです。納付免除等を申請中の人について、申請書の控えなどの提出を求めることは要しないとも書かれています(18の3-187)。
誓約書は、未納を帳消しにする書類ではありません。今回の申請で不履行と扱わない代わりに、次の更新申請を「約束が守られたかの確認の場」にするものです。更新時の確認について、審査要領18の3-192は、直近の申請で誓約書の扱いに従って在留を許可した人については、誓約どおりに義務が履行されていなければ更新を認めないとしています。筆者は、誓約書を出した人には、次回更新の前に完納を示す書類をそろえる予定表を一緒につくるよう勧めています。
ガイドライン改正で加わった情報連携
審査要領より新しい動きとして、出入国在留管理庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」が令和8年6月に改正されました。考慮事項の7「納税義務等の履行」に、「当庁からの求めに応じ、関係機関から提供を受けた納税義務等の履行状況に関する情報を踏まえ、許否判断を行う場合があります」という注書きが加わっています。同じガイドラインは、国民健康保険料等の高額・長期の未納で悪質なものは、税の未納と同じように扱うとしています。
この改正は、申請者が出した書類だけでなく、関係機関から入管に提供された情報でも納付状況が見られうることを公表したものです。24か月分の領収書をそろえることの意味は、以前より重くなっていると筆者は考えます。社会保険料の滞納が更新に与える影響の全体像は社会保険料の滞納は在留資格の更新に影響する?企業が確認すべきポイントを解説で扱っています。更新の「相当の理由」の考え方は在留期間更新の「相当の理由」とは|ガイドラインと審査要領で見る素行・納税・社会保険で扱っています。
住民税の未納は会社の責任になることがある
年金・保険料と並んで確認される住民税については、本人の責任か会社の責任かで評価が分かれます。会社が給与から特別徴収した住民税を市町村に納めていなかったために本人の未納が判明した場合があります。このときは、会社が特定技能基準省令の法令遵守の基準に適合しないものとして扱われ、「特定技能外国人本人が納税義務を履行していないものと評価しない」とされています(18の3-187)。天引きされていたはずの住民税が未納になっている場合は、まず会社の納付状況を確認してください。
転職で2社以上から給与を得た年は、本人が確定申告をしなければならないことが多く、ここが申告漏れの典型になります(18の3-187)。転職の手続全体は特定技能の外国人は転職できる?在留資格変更許可の手続き・必要書類・審査期間で扱っています。
未納を防ぐために会社ができること
審査要領は、未納の予防を支援の中にも組み込んでいます。1号特定技能外国人支援の生活オリエンテーションでは、社会保障と税の手続を説明する際に、「未納がある場合には在留諸申請が不許可になる場合がある」ことを伝えることとされています。また、会社が適用事業所でない場合や本人が適用事業所を退職する場合には、国民健康保険・国民年金の手続を外国人自身が行う必要があることも説明項目になっています(18の3-142)。会社都合で契約を終える場合の転職支援には、離職時に必要な国民健康保険や国民年金の手続の情報提供が含まれます(18の3-150)。
退職する特定技能外国人に、次の会社に移るまでの国民年金・国民健康保険の手続を具体的に伝えておくことは、その人の次の申請を守ることにもつながります。
よくある質問
Q. 国民年金の未納が見つかったら、すぐに不許可になりますか?
すぐには不許可になりません。審査要領は、未納があれば納付を指導し、指導からおおむね1か月後か特例期間満了日の1か月前のいずれか早い日までを目安に、納付したことを示す資料の提出を求めるとしています。ただし国民年金には納付緩和措置がないため、その期間内に納付しなければ要件を満たさないものとして扱われます。
Q. 公的義務履行に関する誓約書を出せば、未納があっても許可されますか?
在留期間の満了日までに納付できない特段の事情がある場合に限り、誓約書(参考様式第1-26号)の提出で今回は不履行と扱わないとされています。特段の事情とは、1年以内なら納付できる場合、市町村の分納計画に従って納付している場合などです。次回の更新申請で納付していなければ、更新は許可されません。
Q. 会社で厚生年金に入っている特定技能外国人も、国民年金を確認されますか?
審査要領が国民健康保険・国民年金の確認対象としているのは、その加入と納付が義務付けられている人です。会社が健康保険・厚生年金保険の適用事業所なら、保険料は会社が納めます。ただし、留学生から変更する人や、転職の間に退職期間があった人は、その期間に国民健康保険・国民年金の加入義務があったかを確認されます。
申請前に確認する順番
特定技能の変更・更新を控えた人に国民健康保険・国民年金の加入期間がある場合は、まず申請月の前々月から24か月をさかのぼり、国民年金保険料領収書がそろっているかを確認してください。欠けている月があれば、申請前に納付します。国民健康保険は市町村で納付証明書を取り、未納があれば納付するか、市町村に相談して分納計画や納付緩和措置の適用を受けます。そのうえで、すぐに完納できない事情が残る場合に限って誓約書を用意し、次回更新までに完納する計画を立ててください。個人事業主の会社で受け入れる場合は、事業主自身の国民年金の納付状況も同時に確認が必要です。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3「特定技能」18の3-59〜18の3-61、18の3-142、18の3-150、18の3-181、18の3-185〜18の3-187、18の3-192
- 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html