特定技能の生活オリエンテーションは、1号特定技能外国人が入国した後(国内で在留資格を変更した人は変更許可を受けた後)遅滞なく、本人が十分に理解できる言語で、日本での生活、行政手続、相談先、医療、防災・防犯、法的保護の情報を伝える義務的支援です。時間は少なくとも8時間以上が必要で、同じ受入れ機関で働いていた技能実習2号の良好修了者や留学生などが引き続き特定技能で働く場合に限り、4時間で差し支えないとされています。
事前ガイダンスとは、行う時期も中身も違います。事前ガイダンスは在留資格認定証明書の交付申請(国内にいる人は在留資格変更許可申請)の前に、労働条件や入国手続、費用負担など10項目を3時間程度で伝えるもので、生活オリエンテーションは許可を受けて働き始める段階で、生活の土台になる情報を8時間以上かけて伝えるものです。
この記事でわかること
- 生活オリエンテーションに必要な時間(8時間)と、4時間でよい場合の条件
- 説明しなければならない7つの事項と、その具体的な中身
- 実施の時期・方法(対面・テレビ電話・動画視聴)・言語
- 事前ガイダンスとの違い(時期・項目・時間・方法)
- 登録支援機関や外部に委託できるか、記録に残すこと
生活オリエンテーションとは何か
特定技能1号の外国人を雇う会社(特定技能所属機関)は、1号特定技能外国人支援計画を作り、そこに書いた支援を実施します。支援計画のうち必ず行わなければならないものを義務的支援と呼び、生活オリエンテーションはその一つです。根拠は特定技能基準省令3条1項1号ニとホで、ニが情報の提供、ホが届出などの手続を行うときの関係機関への同行その他の支援を定めています(18の3-138〜139)。
ここでいう生活オリエンテーションとは、日本での職業生活・日常生活・社会生活を円滑に送るために必要な情報を、外国人が十分に理解できる言語で提供することを指します。審査要領は、これを入国後(または在留資格変更許可後)遅滞なく行うものと整理しています(18の3-139)。一度説明して終わりにせず、本人が理解できるまで行うことが前提です。
必要な時間は8時間以上
審査要領ではこう書かれている
当該外国人が十分に理解できる言語により実施し、当該外国人が理解できるまで、少なくとも8時間以上実施しなければならない(技能実習2号等から特定技能1号へ在留資格を変更する場合、特定技能1号から転職に伴い同在留資格へ変更する場合等であっても、基本的には全ての事項について情報提供を行う。)。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 18の3-139〜140
1号特定技能外国人支援に関する運用要領(制定履歴の最後は令和7年4月1日の一部改正)も、本人が十分に理解できるまで行う必要があるとしています。そのうえで「少なくとも8時間以上行うことが必要と考えられます」と書いており、審査要領と公表資料の数字は一致しています。審査では、支援計画書(参考様式第1-17号)IV欄「4 生活オリエンテーション」の「ウ 実施予定時間」欄に、8時間以上と書かれているかが確認されます(18の3-145)。
8時間は1日の所定労働時間と同じくらいの長さですが、1日で終える必要があるとは書かれていません。筆者は、生活一般と行政手続を入国直後に、法的保護や年金・脱退一時金の説明を数日後に、と分けて行うほうが、本人の理解度を確かめやすいと考えています。
4時間でよいのは「同じ受入れ機関」で続けて働く場合だけ
審査要領は、時間の例外を一つだけ設けています。「今回の受入れ機関で活動していた技能実習2号良好修了者、留学生等が引き続き特定技能外国人として就労する場合には、生活環境に変化がないことなどを考慮して4時間行うことで差し支えない」(18の3-145)。
| 受入れのパターン | 必要な時間 |
|---|---|
| 海外から新たに入国する | 8時間以上 |
| 他社で技能実習2号を修了した人を採用する | 8時間以上 |
| 特定技能1号の人が転職してくる | 8時間以上 |
| 自社で技能実習2号を良好に修了した人が、引き続き自社で特定技能になる | 4時間で差し支えない |
| 自社で活動していた留学生などが、引き続き自社で特定技能になる | 4時間で差し支えない |
ここで重要なのは、短縮の理由が「生活環境に変化がないこと」だという論点です。日本に長くいる人でも、勤務先が変われば住居、通勤経路、相談先、医療機関が変わります。転職者に対して「日本の生活には慣れているから」と時間を削ると、計画書どおりに実施していないと評価されるおそれがあります。
説明しなければならない7つの事項
審査要領は、生活オリエンテーションで提供する情報をaからgの7つに分け、すべてを義務的支援としています(18の3-139〜144)。
| 事項 | 主な中身(審査要領の例示) |
|---|---|
| a 日本での生活一般 | 金融機関の使い方と帰国時の口座閉鎖、医療機関の受診方法、交通ルール、通勤経路と定期券・ICカード、ゴミの出し方・騒音などの生活ルール、買い物の場所、気象・災害情報の入手方法、日本で違法となる行為 |
| b 届出その他の手続 | 所属機関等に関する届出、住居地の届出、社会保険と税の手続、マイナンバー制度、自転車の防犯登録 |
| c 相談先(社内) | 支援担当者の氏名、電話番号、メールアドレス等 |
| d 相談先(行政等) | 地方出入国在留管理局、労働基準監督署、ハローワーク、法務局、警察署、市区町村、弁護士会・法テラス、大使館・領事館 |
| e 医療機関 | 通訳人がいる病院や医療通訳サービスを導入している病院の名称・所在地・連絡先、医療通訳の費用をカバーする民間医療保険の案内 |
| f 防災・防犯・緊急時 | 自然災害・火災への備え、110番・119番・118番などの通報方法、避難場所 |
| g 法的保護 | 入管法令(在留手続、みなし再入国制度、在留資格の取消し、在留カード)と労働関係法令の知識、違反があったときの相談先、年金の受給資格期間と脱退一時金 |
違法となる行為と、未納が在留に響くことは必ず伝える
aの「日本で違法となる行為」には、在留カードの不携帯が犯罪であること、在留カードや健康保険証の貸し借りの禁止が挙がっています。自分名義の銀行口座・通帳・キャッシュカード・携帯電話を他人に譲渡することが犯罪であることも含まれます。さらに、他人になりすまして宅配便を受け取ることが犯罪であること、などが並んでいます(18の3-141)。口座や携帯電話の譲渡は、本人が軽い気持ちで応じてしまいやすい類型です。
bの社会保険と税の手続では、健康保険・厚生年金保険、国民健康保険・国民年金、源泉徴収と住民税の特別徴収の仕組みを説明します。審査要領はここに、「未納がある場合には在留諸申請が不許可になる場合がある」ことを伝えるよう注記しています(18の3-142)。住民税は前年の給与所得がない場合は入社2年目から納税が始まり、原則として退職した翌年まで納税義務があることも説明事項です。転職や帰国のときに住民税の未納が生じやすいため、筆者はこの部分に時間を割くよう勧めています。国民年金の未納と在留審査の関係は特定技能と国民年金・国民健康保険の未納|24か月分の確認と誓約書の効力で扱っています。
gの法的保護で挙がっている「みなし再入国制度」は、一時帰国のときに直接関係します。出国の日から1年以内に再入国する場合の制度で(出入国審査・在留審査Q&A)、一時帰国の前に改めて確認しておくと安心です。一時帰国の扱いは特定技能で一時帰国はできる?受入れ機関の休暇付与の義務と手続きを参照してください。
説明だけでなく、窓口への同行も含まれる
bの届出と手続については、情報を伝えるだけでなく、必要に応じて行政機関の窓口に同行し、書類作成を補助するなどの支援を行わなければなりません(18の3-141)。住居地の届出や、勤務先が健康保険の適用事業所でない場合の国民健康保険・国民年金の手続は、本人が行う必要があるものです(18の3-141〜142)。生活オリエンテーションの日程は、市区町村の窓口に行ける平日と重ねて組むと効率的です。
いつ、どの方法で、何語で行うか
時期は、入国後(または在留資格変更許可後)遅滞なくです。支援計画書では、aからfの事項に「実施予定:有」のチェックがあり、括弧内の実施予定日から入国後遅滞なく行う見込みがあることが確認されます(18の3-145)。
方法は、支援計画書の「実施方法」欄で「対面」か「テレビ電話やDVD等の動画視聴等」のどちらか、または両方にチェックします(18の3-145)。事前ガイダンスと違い、動画視聴での実施も想定されています。ただ、動画を流すだけでは本人が理解したかを確かめられません。筆者は、動画を使う場合でも支援担当者が同席し、質問を受ける時間を8時間の中に組み込むことを勧めます。
言語は、本人が十分に理解できる言語です(基準省令4条3号)。支援計画書の「イ 実施言語」欄に書いた言語に、雇用条件書(参考様式第1-6号)等の翻訳言語が含まれているかが審査されます(18の3-145)。雇用条件書をベトナム語で交付したのに、生活オリエンテーションを英語だけで行う、という組み方は計画書の段階で指摘されます。
事前ガイダンスとの違い
事前ガイダンスとは、在留資格認定証明書の交付申請の前(国内にいる人は在留資格変更許可申請の前)に、雇用契約の内容や日本でできる活動、入国の手続などを伝える義務的支援です(基準省令3条1項1号イ)。両者を並べると、次のとおりです。
| 事前ガイダンス | 生活オリエンテーション | |
|---|---|---|
| 時期 | 認定証明書交付申請・変更許可申請の前(転職で別の所属機関の特定技能1号へ変更する場合も含む) | 入国後・変更許可後、遅滞なく |
| 項目 | 労働条件、活動内容、入国手続、保証金・違約金がないこと、外国の機関への費用、支援費用を負担させないこと、送迎、住居、相談体制、支援担当者の連絡先の10項目 | 生活一般、届出等の手続、相談先(社内・行政)、医療機関、防災・防犯、法的保護の7項目 |
| 時間 | 3時間程度を理由なく大きく下回らないこと。1時間未満は適切に行ったと認められない | 8時間以上(同じ受入れ機関で継続する場合は4時間で差し支えない) |
| 方法 | 対面またはテレビ電話等で本人確認をして行う。郵送・メールのみは不可 | 対面、またはテレビ電話やDVD等の動画視聴等 |
| 審査要領 | 18の3-129〜132 | 18の3-138〜145 |
事前ガイダンスについて審査要領は、「文書の郵送や電子メールの送信のみによることは認められない」としています(18の3-131)。また、実施時間が1時間に満たない場合は事前ガイダンスを適切に行ったとは認められないと書いています(18の3-132)。計画書に書いた実施予定日が申請日より前の日付になっているかも確認されます(18の3-132)。
二つの支援は目的が違います。事前ガイダンスは、本人が労働条件や費用を理解したうえで契約し、日本に来るかどうかを決めるための情報提供です。生活オリエンテーションは、来日した本人が日本で生活を始めるための情報提供です。事前ガイダンスで住居の概要(広さや家賃)を伝え、生活オリエンテーションで実際の住所の届出やゴミ出しのルールを伝える、というように、同じ話題でも段階が違います。住居の基準は特定技能の住居基準|1人7.5㎡・寝室4.5㎡と社宅の条件で扱っています。
登録支援機関や外部に委託できるか
できます。支援計画の全部を登録支援機関に委託すれば、生活オリエンテーションも登録支援機関が行います。登録支援機関以外の者に支援の一部を委託することも想定されています。その場合は、委託先の氏名・名称、住所、委託契約の内容と範囲を支援計画に書く必要があります(基準省令3条1項3号・4条4号、18の3-154)。ただし、登録支援機関に全部ではなく一部だけを委託する場合、所属機関自身が自社支援の基準(基準省令2条2項各号)に適合しているかが確認されます(18の3-155)。
定期面談と比べると違いがはっきりします。定期面談は主体が支援責任者または支援担当者と条文で決まっているため、全部委託の場合を除いて第三者への委託は認められません(18の3-151)。生活オリエンテーションには、この制限の記載がありません。帳簿の記載事項にも「実施担当者(通訳人及び法的保護に関する情報提供の実施者を含む。)」とあることから(18の3-120)、法的保護の部分を外部の専門家に任せる形も想定されていると読めます。
一方で、2027年(令和9年)4月1日からは、支援業務に従事できる人を支援責任者等に限る改正が施行されます(1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正について)。この改正が、支援の一部を外部の者に委託する形にどう影響するかは公表資料からは読み切れず、【要確認】としておきます。自社支援の要件と改正の全体は特定技能の自社支援の要件とは?受入れ実績・支援責任者の条件と2027年4月の改正で整理しています。
記録に残すこと
自社で支援する会社は、支援の状況に関する帳簿を雇用契約の終了日から1年以上備え置きます(18の3-118)。生活オリエンテーションについて帳簿に含めるべき項目は、本人の氏名・生年月日・国籍・地域・性別・在留カード番号と、実施日時と場所です。さらに、実施内容(情報提供の内容)、実施方法、実施担当者(通訳人と法的保護の情報提供の実施者を含む)の氏名と所属です(18の3-119〜120)。関係機関への同行も、この管理簿の対象に含まれます。事前ガイダンスについては、確認書(参考様式第1-7号)を保存するとされています(18の3-119)。
審査の段階で見られるのは計画書ですが、入国後に外国人から「説明を受けていない」という申告があれば、入管は実施状況を調べます。8時間の内訳を事項ごとに記録し、本人に内容を確認してもらった記録を残しておくと、後から実施を説明できます。定期面談で情報を改めて伝える仕組みは特定技能の定期面談とは?3か月に1回の実施方法・オンラインの条件・報告書にまとめています。
よくある質問
Q. 生活オリエンテーションは何時間必要ですか?
少なくとも8時間以上です。同じ受入れ機関で活動していた技能実習2号の良好修了者や留学生などが、引き続き特定技能外国人として働く場合に限り、4時間で差し支えないとされています。
Q. 他社から転職してきた特定技能外国人も8時間必要ですか?
必要です。審査要領は、転職に伴って特定技能1号へ変更する場合でも基本的には全ての事項について情報提供を行うとしており、4時間の例外は同じ受入れ機関で継続する場合に限られます。
Q. 動画を見てもらう方法でもよいですか?
認められています。支援計画書の実施方法には「対面」と「テレビ電話やDVD等の動画視聴等」があり、どちらか、または両方を選べます。ただし本人が十分に理解できる言語で、理解できるまで行うことが前提です。
Q. 事前ガイダンスと生活オリエンテーションは同じ日にまとめて行えますか?
行えません。事前ガイダンスは在留資格認定証明書の交付申請や変更許可申請の前に行う必要があり、生活オリエンテーションは入国後や変更許可後に行うものなので、実施する時期が制度上分かれています。
次に受け入れる外国人がいるなら、まず支援計画書IV欄の「4 生活オリエンテーション」に書く実施予定時間と実施言語を確認してください。そのうえで、7つの事項を何時間ずつ、誰が、どの言語で説明するかの内訳表を作っておくと、計画書の記載と実施記録の両方がそろいます。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 特定技能 18の3-118〜120(帳簿)、18の3-127〜132(支援計画の記載事項・事前ガイダンス)、18の3-138〜145(生活オリエンテーション)、18の3-151(定期面談の委託制限)、18の3-154〜155(第三者への委託・部分委託)
- 出入国在留管理庁 1号特定技能外国人支援に関する運用要領(https://www.moj.go.jp/isa/content/930004553.pdf)
- 出入国在留管理庁 1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正について(令和9年4月1日施行)(https://www.moj.go.jp/isa/10_00263.html)
- 出入国在留管理庁 出入国審査・在留審査Q&A(https://www.moj.go.jp/isa/immigration/faq/kanri_qa.html)