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特定技能外国人が行方不明になったら|受入れ機関の責めに帰すべき事由

特定技能外国人が行方不明になっても、それだけで受入れ機関が基準不適合になるわけではありません。問題になるのは、雇用条件どおりに賃金を払っていない、1号特定技能外国人支援計画を適正に実施していないなど、法令違反や基準に合わない行為が行われていた期間内に行方不明者が出た場合です。その場合は人数に関係なく、1人でも基準に適合しなくなります(特定技能基準省令第2条第1項第3号、入国・在留審査要領 第12編(開示版)18の3-70)。対象には、実習実施者として受け入れた技能実習生も含まれます。

もう一つの落とし穴は届出です。行方不明を入管に届け出ず、本人が摘発されて初めて分かった場合は、それ自体が「不正又は著しく不当な行為」の類型に当たり、5年間の欠格事由になりえます。行方不明が分かったら受入れ困難の届出を出し、失踪当時に違反がなかったことを記録で示せるようにしておくことが、会社の最初の対応です。

この記事でわかること

  • 行方不明者の基準と「責めに帰すべき事由」の意味
  • 技能実習生の失踪も数えられる場合
  • 届出をしないと別の欠格事由になる理由
  • 行方不明の場合は帰国費用の負担義務が外れること
  • 失踪を防ぐためにしてはいけないことと、できること

行方不明者の基準

特定技能基準省令は、特定技能雇用契約の適正な履行を確保するための基準の一つとして、次のように定めています。

「特定技能雇用契約の締結の日前1年以内又はその締結の日以後に、当該特定技能雇用契約の相手方である特定技能所属機関の責めに帰すべき事由により外国人の行方不明者を発生させていないこと。」(特定技能基準省令第2条第1項第3号)

ここでいう「責めに帰すべき事由」とは、賃金の不払いや支援計画の不実施など、法令違反や基準に適合しない行為が行われていた期間内に行方不明者が出た場合を指します。審査要領は、雇用する外国人に行方不明者が出ている場合は受入れ態勢に疑義が持たれることから、この基準を置いていると説明しています(18の3-70)。期間の読み方は非自発的離職者の基準と同じで、契約を結ぶ前の1年に加え、契約を結んだ後もずっと含みます。受け入れている間に違反のある状態で失踪者を出せば、その時点から基準に適合しなくなるということです。

「責めに帰すべき事由」は、失踪当時の違反で決まる

ここで重要なのは、何をもって会社の「責め」とするかという論点です。審査要領は次のように定義しています。

審査要領ではこう書かれている

「責めに帰すべき事由」とは、特定技能所属機関が雇用条件どおりに賃金を適正に支払っていない場合や1号特定技能外国人支援計画を適正に実施していない場合など、法令違反や基準に適合しない行為が行われていた期間内に、特定技能外国人が行方不明となった場合をいう。そのような法令違反や基準に適合しない行為が行われていた場合には、人数に関係なく、特定技能外国人の行方不明者を1名でも発生させていれば、本基準に適合しないこととなる。

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 18の3-70

判断の軸は、失踪の理由を会社が知っていたかどうかでも、本人の性格や事情でもありません。行方不明になった時点で、会社に法令違反や基準不適合の状態があったかどうかです。違反がなければ、行方不明者が出てもこの基準には触れません。反対に、違反のある期間に1人でも出れば、会社の側でどれだけ事情を説明しても基準不適合になります。

審査要領が例に挙げる2つの類型は、どちらも日常の運用の中で起きるものです。賃金については、食費や住居費を賃金から控除している場合でも、控除額が適正でなければ賃金不払いに当たる可能性があるとされています(18の3-81)。支援計画については、3か月に1回以上の定期面談や、相談・苦情への対応体制などが計画どおりに行われていなければ、適正に実施していないことになります。寮費の設定や面談の記録が曖昧な会社ほど、失踪が起きたときに「違反はなかった」と言い切れない状態に置かれます。

技能実習生の失踪も数えられる

この基準の「外国人」は、特定技能外国人だけではありません。審査要領は、特定技能所属機関として受け入れた特定技能外国人と、実習実施者として受け入れた技能実習生の両方を指すとしています(18の3-70)。技能実習生については、特定技能所属機関が実習実施者を兼ねている場合に限って確認されます(18の3-71)。

技能実習と特定技能を並行して受け入れている会社では、技能実習の側で起きた失踪が、特定技能の受入れの基準にも跳ね返ることになります。開示版では、技能実習生の行方不明事案の具体的な確認方法は黒塗りで読み取れません。なお、失踪した技能実習生本人は、正当な理由がない限り特定技能への在留資格変更が認められません(18の3-182〜18の3-183)。

農業・漁業で派遣形態をとる場合は、派遣先にも、行方不明者を発生させていないことが求められます(18の3-91〜18の3-96)。

入管はどう確認するか

初めて受け入れる場合は、申請書(所属機関等作成用)と、特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11-1号)の「3 基準適合性に係る事項」で確認されます(18の3-71)。受入れを続けている場合、概要書は原則として定期届出で出す書類で、基準に適合しているかは基本的に定期届出で確認されます。定期届出は令和8年4月から年1回になり、4月1日から翌年3月31日までを対象に、翌年5月31日までに提出します(入管庁 定期届出のページ)。

会社が備え付ける活動状況の帳簿にも、雇用状況として在籍・新規雇用・自発的離職・非自発的離職・行方不明の別を記録することになっています(18の3-87〜18の3-89)。帳簿は特定技能雇用契約の終了日から1年以上保存します。

届け出ないことのほうが重い

行方不明者の基準は、会社に責めがある場合に限って適用されます。これに対し、届出をしなかったことは、責めの有無と関係なく別の欠格事由に当たりえます。

審査要領ではこう書かれている

特定技能外国人が失踪したにもかかわらず、これを届け出ることなく、失踪した特定技能外国人が摘発されるなどして初めて、失踪していたことが地方出入国在留管理局で明らかになった場合や、活動状況の届出や支援の実施状況の届出を履行するよう再三指導を受けたにもかかわらず、これを履行しない場合等が該当する。

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 18の3-82

これは、欠格事由のうち「届出の不履行又は虚偽の届出」の説明です。特定技能雇用契約の締結日前5年以内とその後に不正行為をした者は、特定技能雇用契約の相手方になれません(18の3-78)。しかも審査要領は、罰金刑に処せられたかどうかを問わないとしています(18の3-83)。失踪への対応を先送りにすると、行方不明者の基準よりも長く、5年にわたって受入れができなくなるおそれがあります。

届出は所属機関が行う随時届出で、登録支援機関は代わりに出せません(入管庁 定期届出のページ)。入管庁は、受入れの継続が困難になった場合は、退職するかどうかにかかわらず、その時点で届け出るよう案内しています。随時届出の期限は、事由が生じた日から14日以内です。連絡が取れないまま数日が過ぎた段階で、社内の判断を待たずに届出の準備を始めてください。

届出とあわせて、失踪当時の状況を記録にまとめておきます。直近の給与明細と振込の記録、寮費などの控除の内訳、定期面談の報告書、相談対応の記録が、会社に責めがなかったことを示す材料になります。

帰国費用の負担義務は、行方不明では外れる

受入れ機関は、特定技能外国人が帰国費用を負担できない場合、帰国の原因を問わず費用を負担し、航空券の手配などの措置をとる必要があります。ただし審査要領は、この「原因を問わず」から行方不明の場合を除いています(18の3-43〜18の3-45)。帰国費用は原則として本人が負担するものであり、本人が自ら行方をくらました場合にまで会社の負担を求めるものではないという整理です。

失踪を防ぐために、してはいけないこと

失踪を恐れるあまりに会社がとりがちな手段の多くは、それ自体が5年間の欠格事由に当たる不正行為です(18の3-80〜18の3-82)。

行為 審査要領上の評価
逃走防止のために旅券や在留カードを預かる 本人の意思に反する保管は、逃走防止の名目でも「旅券又は在留カードを取り上げる行為」に当たる
携帯電話を没収する、外出を制限する 外部との連絡を遮断する行為は「私生活の自由を不当に制限する行為」に当たる
預貯金通帳を会社が管理する 本人の意に反する取上げは「人権を著しく侵害する行為」の例とされている
保証金を取る、逃走時の違約金を定める 「保証金の徴収等」に当たる。一定期間勤務すれば貸付金の返済を免除する契約や、途中退職で残額を一括返済させる契約も含まれる

できるのは、支援を計画どおりに行うこと

会社にできる対策は、支援計画を確実に実施することです。定期面談は、外国人本人と監督者のそれぞれと3か月に1回以上行います。双方の同意があればオンラインでもよく、その場合は録画を雇用契約の終了日から1年以上保管し、問題や第三者の介入が疑われるときは改めて対面で行います(1号特定技能外国人支援に関する運用要領)。相談・苦情への対応は、勤務日に週3日以上、休日に週1日以上対応できる体制とし、就業時間外など相談しやすい時間帯を設定します(18の3-146〜18の3-148)。対応は、本人が十分に理解できる言語で行える体制が必要です(18の3-117〜18の3-118)。

記録の形も決まっています。支援の状況に関する帳簿には、支援実施体制、支援の委託契約、支援対象者のほか、事前ガイダンス、住居、生活オリエンテーション、日本語学習、相談、交流、転職支援、定期面談の各管理簿を含みます。これらは、雇用契約の終了日から1年以上、事業所に備え付けます(18の3-118〜18の3-123)。支援計画に基づく支援を怠ったことがないことも、締結日前5年以内とその後にわたって別の基準として問われます。支援を省いた期間に失踪が起きれば、行方不明者の基準と支援を怠った基準の両方に触れることになります。

筆者は、こうした支援の記録は、失踪を防ぐ手段であると同時に、失踪が起きたときに会社に責めがないことを示す証拠でもあると考えています。定期面談の運用は特定技能の定期面談とは?3か月に1回の実施方法・オンラインの条件・報告書で扱っています。寮費の決め方は特定技能の寮費・家賃の決め方|審査要領が認めない「家賃相場での徴収」で扱っています。ほかの受入れ停止の要因は特定技能の非自発的離職者|1人でも出すと受入れが止まる理由と退職勧奨を参照してください。あわせて特定技能の受入れ機関の欠格事由|刑罰歴・不正行為5年・役員の確認を参照してください。

よくある質問

Q. 特定技能外国人が1人行方不明になったら、受入れができなくなりますか?

行方不明になったことだけでは基準不適合になりません。賃金を雇用条件どおりに払っていない、支援計画を適正に実施していないなど、法令違反や基準に合わない行為が行われていた期間内に行方不明となった場合に、1人でも基準に適合しなくなります。

Q. 技能実習生の失踪も、特定技能の受入れに影響しますか?

影響します。この基準の「外国人」には、実習実施者として受け入れた技能実習生も含まれます。特定技能所属機関が実習実施者を兼ねている場合に確認の対象になります。

Q. 行方不明を入管に届け出なかった場合はどうなりますか?

失踪を届け出ず、本人が摘発されるなどして初めて判明した場合は、欠格事由の「届出の不履行又は虚偽の届出」に当たるとされています。締結日前5年以内とその後の不正行為は欠格事由になるため、長期間受入れができなくなるおそれがあります。

Q. 行方不明になった外国人の帰国費用は、会社が負担しなければなりませんか?

受入れ機関は、本人が帰国費用を負担できない場合に原因を問わず負担する必要がありますが、行方不明の場合はこの対象から除かれています。

Q. 失踪を防ぐためにパスポートを会社で預かってもよいですか?

本人の意思に反して旅券や在留カードを保管することは、逃走防止の名目であっても不正行為の類型に当たり、欠格事由になります。

連絡が取れなくなったら、最初にやること

本人と連絡が取れなくなったら、まず寮や同僚への確認で所在を探し、行方不明と判断した時点で受入れ困難の届出の準備を始めてください。同時に、直近の給与と控除の記録、定期面談と相談対応の記録を集め、失踪当時に違反がなかったかを点検します。記録に不備が見つかった場合でも、届出を遅らせる理由にはなりません。同じ職場の他の特定技能外国人との面談を早めに行い、同じ不満を抱えていないかを確かめることも欠かせません。対応に迷う場合は、届出の段階から相談してください。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 特定技能 18の3-43〜18の3-45(帰国担保措置)、18の3-70〜18の3-72(行方不明者の発生)、18の3-78〜18の3-84(不正又は著しく不当な行為)、18の3-87〜18の3-89(活動状況に関する帳簿)、18の3-91〜18の3-96(派遣先の基準)、18の3-117〜18の3-118(理解できる言語での支援体制)、18の3-118〜18の3-123(支援状況の帳簿・支援を怠ったこと)、18の3-146〜18の3-148(相談・苦情への対応)、18の3-182〜18の3-183(変更が認められない在留資格)
  • 出入国在留管理庁 特定技能所属機関・登録支援機関による届出(https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri10_00002.html)
  • 出入国在留管理庁 1号特定技能外国人支援に関する運用要領(https://www.moj.go.jp/isa/content/930004553.pdf)
  • 出入国在留管理庁 特定技能制度トップページ(https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/index.html)