特定技能外国人から受け取る寮費は、自社所有の寮なら実際にかかった建設・改装費と耐用年数と入居人数から、借上げの部屋なら賃料を入居人数で割った額から決めます。周辺の家賃相場を基礎にして額を出す説明は、入国・在留審査要領が「原則としてこの観点からの説明のみでは認められない」としています(18の3-28)。
理由は、市場の家賃には部屋を貸すことで得る利益が含まれているからです。寮費は住居という利益の対価として実費に相当する適正な額でなければならず、その額は雇用条件書と1号特定技能外国人支援計画書の両方に同じ金額で書かれている必要があります。
この記事でわかること
- 寮費の額を入管がどの書類で確認するか
- 借上物件の賃料に含めるもの・含めないもの
- 自己所有物件を原価で算定する方法と、家賃相場が通らない理由
- 耐用年数を過ぎた建物、備品・保険、水道光熱費、原状回復費の扱い
- 算定を誤ったときに受入れ企業が負うリスク
寮費を決める基準はどこにあるか
寮費の基準は、特定技能1号の上陸基準省令のうち、本人が負担する費用についての規定に置かれています。
食費、居住費その他名目のいかんを問わず申請人が定期に負担する費用について、当該申請人が、当該費用の対価として供与される食事、住居その他の利益の内容を十分に理解した上で合意しており、かつ、当該費用の額が実費に相当する額その他の適正な額であり
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 18の3-25(上陸基準省令の引用部分)
ここでいう「定期に負担する費用」とは、本人が入国後に受入れ企業(特定技能所属機関)等へ定期的に支払うことになる費用を指します(18の3-25)。寮費はその代表で、本人が内容を理解して合意していることと、額が実費相当の適正な額であることの両方が求められます。
入管は、この額を2つの書類で確認します。雇用条件書(参考様式第1-6号)の別紙1「賃金の支払」にある賃金支払時の控除項目と、1号特定技能外国人支援計画書(参考様式第1-17号)の住居の欄です。審査要領は、両方の居住費の額が同一であることを確認するとしています(18の3-26)。1号特定技能外国人支援計画とは、受入れ企業が入国前から在留中まで行う生活・職業上の支援の内容を定めた計画を指し、住居の確保もその支援項目の一つです。
支援計画書には、住居が「自己所有物件」か「借上物件」かを書く欄があり、どちらを選んだかで額の説明のしかたが変わります。
| 物件の種類 | 寮費の出し方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 借上物件 | 賃料(管理費・共益費・保険を含む)を入居する特定技能外国人の人数で割った額 | 18の3-26 |
| 自己所有物件 | 建設・改装費(土地代等を除く)、耐用年数、入居人数等から算出した合理的な額 | 18の3-26 |
| 自己所有物件(相場で説明) | 原則として相場による説明だけでは認められない | 18の3-28 |
借上物件は「賃料÷入居人数」
会社が借りた部屋を寮として提供する場合、審査要領は、借上げに要する賃料を入居する特定技能外国人の人数で割った額であることの説明を求めています(18の3-26)。賃料に含めるものと含めないものは、次のように整理されています。
| 賃料に含める | 賃料に含めない |
|---|---|
| 家賃本体、管理費・共益費 | 敷金、礼金、保証金 |
| 借上物件の損害保険・火災保険等 | 仲介手数料、更新手数料、途中解約金等 |
入管庁の特定技能運用要領(令和8年8月)は、借上物件の居住費を、借上費用を入居人数で割った額「以内」としています。そのうえで、敷金・礼金・保証金・仲介手数料・更新手数料・途中解約金は含めず、本人に負担させることもできないとしています。入居時の初期費用を分割して寮費に上乗せする設計は、この基準に反します。
支援の基準の側にも、同じ趣旨の上限があります。会社が自ら借主となって部屋を提供する場合、本人が払う家賃は、会社が結んだ賃貸借契約上の賃料(共益費を含み、同居人がいれば人数で割った額)を超えてはなりません。しかも、近隣の同程度の民間賃貸住宅の賃料相場を超えてもならないとされています(18の3-136)。原価と相場の低い方が上限になると考えておけば、借上物件で迷うことはありません。
自己所有物件は原価で出す
自社が所有する寮を提供する場合は、合理的な額であることを説明します(18の3-26)。その額は、実際に建設・改装等に要した費用(土地の購入代・造成費用等は除く)、物件の耐用年数、入居する特定技能外国人の人数等を踏まえて算出します。考え方としては、建物にかかった費用を耐用年数と入居人数で割り戻す形になります。
ここで重要なのは、自社寮の寮費を「周りのアパートと同じくらい」で決めてはいけない、という論点です。審査要領はこの点を明示しています。
周辺の家賃相場等を勘案し、借り上げた場合の賃料の額を基礎額として、特定技能外国人から徴収する居住費を算出することは、原則としてこの観点からの説明のみでは認められないものである。これは、一般的に家賃の市場価格は賃貸することで得られる利益も含まれているものであることから
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 18の3-28
会社が相場による説明を出してきた場合でも、入管はそれを判断の一要素として勘案するにとどめ、実際の建設・改装費、耐用年数、入居人数からの説明を求めるとされています(18の3-28)。相場の資料を添えることは禁じられていませんが、それだけで額の説明にはなりません。
耐用年数については、国税庁が定める減価償却資産の耐用年数に必ず従わなければならないものではなく、会社の説明を踏まえて総合的に判断するとされています(18の3-28)。独自の年数を使うなら、その根拠を説明できるようにしておく必要があります。支援の基準の側では、自社所有の社宅を提供する場合の家賃は、他の入居者の家賃の額と同等であることも求められています(18の3-136)。同じ寮に日本人社員が住んでいるなら、外国人だけ高い寮費は取れません。
耐用年数を過ぎた建物
耐用年数を経過した建物については、建物にかかる費用を寮費として徴収することは認められません(18の3-28)。古い社員寮をそのまま使う会社にとっては、建物部分の寮費がゼロになるということです。
ただし、次の費用は徴収できる場合があります。本人に利益が帰属し、本人がそれを十分に理解していることが前提で、実費の範囲内で、備品の耐用年数や入居人数等から算出した合理的な額である限り、徴収できるとされています(18の3-28)。
- 寮の改装費
- 寮に付随する家電、家具、食器などの備品
- 火災保険、損害保険等(被保険者や保険金の請求権者が本人であるなど、利益が本人に帰属するもの)
これらは、備品が建物の従物か一体物か、購入品かレンタル品か、自己所有物件か借上物件かを問いません。本人と合意していれば、居住費かその他の費用のどちらかとして徴収してよいとされています(18の3-28〜29)。建物の費用と、備品・保険の費用を分けて積算しておくと、寮が古くなっても説明の組み直しが少なくて済みます。
水道光熱費と食費
水道光熱費は、雇用条件書の別紙1から徴収の有無を確認し、記載された額が明らかに高額であるなど不合理でないかが見られます(18の3-27)。会社の家族や他の特定技能外国人と同居していて、個々の使用量を区分けできない場合でも差し支えないとされ、額に疑義があれば追加で説明を求められます。特定技能運用要領は、水道光熱費を実費を同居人数で割った額以内としています。
食費など、その他の定期負担費用も同じ扱いで、雇用条件書に記載があれば、額が明らかに高額であるなど不合理でないかが確認されます(18の3-27〜28)。
退去時の原状回復費
寮を出るときの室内の原状回復費用は、この基準が対象とする「定期に負担する費用」には当たらないとされています(18の3-29)。関係者から相談があった場合、入管は当事者間で解決を図るよう指導するという扱いです。月々の寮費に原状回復の積立てを上乗せする設計は、定期負担費用の説明と整合しなくなるため、筆者は避けるべきだと考えています。
算定を誤ったときのリスク
寮費の問題は、申請時の書類不備で終わるとは限りません。審査要領は、受入れ企業の欠格事由となる「不正又は著しく不当な行為」の類型に手当・報酬の不払いを挙げ、不適正な食費・住居費の控除は賃金の不払いとなりうるとしています(18の3-78〜85)。この欠格事由に当たると、行為から5年間は特定技能雇用契約の相手方になれません。
支払の段階でも確認があります。口座振込の場合でも、必要に応じて実地調査で振込額と入金額に差異がないかが確かめられます(18の3-104〜105)。受入れ企業は、受入れ・支援に要した費用の額と内訳を記載した帳簿を、特定技能雇用契約の終了日から1年以上備えておく必要もあります(18の3-87〜89)。なお、居住費の確認方法を書いた18の3-27上部の一段落は、開示版では黒塗りで読めません。
給与全体の決め方と控除の関係は特定技能外国人の給料はどう決める?日本人と同等以上の報酬・最低賃金・元技能実習生の扱いで扱っています。寮の広さの基準は特定技能の住居基準|1人7.5㎡・寝室4.5㎡と社宅の条件で扱っています。
2026年の制度変更との関係
対象分野は、開示版の審査要領では16分野ですが(18の3-1〜2)、入管庁の特定技能運用要領(令和8年8月)では19分野で、リネンサプライ、物流倉庫、資源循環が加わっています。寮費の基準はどの分野でも共通です。【要確認】追加3分野の受入れ開始時期は分野別の公表資料で確認してください。
令和9年4月1日からは支援体制の要件が改正され、支援責任者と支援担当者を事業所ごとに常勤の役員・職員から選任し、住居の確保を含む支援業務はこれらの者だけが行えるようになります。支援責任者には養成講習の受講も義務づけられます(当分の間は未修了でも差し支えないとされています)。自社支援の要件は特定技能の自社支援の要件とは?受入れ実績・支援責任者の条件と2027年4月の改正を参照してください。委託先の選び方は登録支援機関とは?選び方・費用相場・自社支援との違いをわかりやすく解説を参照してください。
受入れ後の状況は、令和8年4月1日から年1回となった定期届出(対象期間は4月1日から翌年3月31日、提出期限は翌年5月31日)で確認されます。外食業分野では令和8年4月13日から在留資格認定証明書の交付が一時停止され、外食業1号への変更申請も原則不許可となっているため、外食業で新たに寮を用意する前に受入れ自体が可能かを確かめてください。
在留が長くなる人もいます。旧制度の技能実習修了者は令和9年4月1日以降、技能試験と日本語試験の両方の合格が必要になります。また、特定技能2号評価試験等で合格基準点の8割以上を取った人は一定の要件のもとで通算6年まで1号で在留できます(自動車整備士技能検定2級と航空従事者技能証明は対象外)。長く住む寮では、在留中に建物の耐用年数を超えないかを算定の段階で確かめておくべきです。
よくある質問
Q. 自社寮の寮費を近隣の家賃相場に合わせてもよいですか?
相場を基礎額にする説明だけでは、原則として認められません。市場の家賃には貸すことで得る利益が含まれているためで、実際の建設・改装費、耐用年数、入居人数から算出した合理的な額であることを説明する必要があります。
Q. 借上げ社宅の敷金・礼金を本人に負担させられますか?
負担させられません。特定技能運用要領は、借上物件の居住費の基礎に敷金・礼金・保証金・仲介手数料・更新手数料・途中解約金を含めず、本人に負担させることもできないとしています。
Q. 耐用年数を過ぎた古い寮は、寮費を取れないのですか?
建物にかかる費用は徴収できません。ただし、改装費、家電・家具・食器などの備品、本人に利益が帰属する火災保険・損害保険等は、実費の範囲内で合理的な額であれば徴収できます。
Q. 退去時の原状回復費用も寮費と同じルールで扱いますか?
原状回復費用は、審査要領上の「定期に負担する費用」には当たらないとされています。関係者から相談があった場合は、当事者間で解決を図るよう指導する扱いです。
次に確認すること
まず、提供する住居が自己所有物件か借上物件かを決め、支援計画書の欄と一致させてください。借上物件なら、賃貸借契約書から家賃・管理費・共益費・保険料を拾い、入居人数で割った額が近隣相場も超えていないかを確かめます。自己所有物件なら、建設・改装費の資料と耐用年数の根拠を用意し、建物部分と備品・保険部分を分けて積算します。最後に、その額が雇用条件書別紙1の控除額と支援計画書の居住費に同じ数字で入っているかを照合してから申請してください。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3「特定技能」18の3-1〜2(対象分野・16分野時点)、18の3-25〜29(費用負担に係る合意・居住費・水道光熱費・その他留意事項。18の3-27上部は黒塗り)、18の3-78〜85(不正又は著しく不当な行為)、18の3-87〜89(帳簿の備付け)、18の3-104〜105(報酬の支払方法)、18の3-136(住居の確保に係る支援)
- 出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」(令和8年8月)https://www.moj.go.jp/isa/content/001468647.pdf
- 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正について」https://www.moj.go.jp/isa/10_00263.html
- 出入国在留管理庁「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri10_00002.html
- 出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付の一時停止措置について」https://www.moj.go.jp/isa/03_00176.html
- 出入国在留管理庁「技能実習法施行以前の『技能実習』等を修了した者が『特定技能1号』に移行しようとする場合の取扱いについて」https://www.moj.go.jp/isa/10_00262.html
- 出入国在留管理庁「通算在留期間」https://www.moj.go.jp/isa/10_00233.html