日系4世(日本人の曾孫)が日本に住むための在留資格は2つあります。日系3世の定住者などに扶養される未成年で未婚の子であれば定住者告示6号の「定住者」になれ、それ以外の18歳以上35歳以下の人は「特定活動(日系四世)」で最長5年、日本文化を学びながら働くことができます。後者は2023年12月28日の制度見直しで、通算5年の在留と日本語能力試験N2相当の日本語力などを満たせば「定住者」へ変更できるようになりました。本人と家族、受け入れる企業やサポーターの立場から、要件を条文と出入国在留管理庁の手引きに沿って整理します。
日系4世とは曾祖父母が日本人である人
ここでいう日系4世とは、海外に移住した日本人(一世)から数えて4世代目、つまり曾祖父母が日本人である人を指します。日系2世は「日本人の配偶者等」、日系3世は定住者告示3号・4号の「定住者」で受け入れられてきましたが、4世には本人の血統だけで取得できる在留資格がありません。定住者告示の3号・4号は「実子の実子」(孫)までしか書いておらず、曾孫は対象外だからです。世代ごとの在留資格の違いは日系三世とは?定住者ビザの対象範囲と日系二世・四世との違いを家系図で確認で家系図にしています。
そのため日系4世が日本に来る方法は、次のどちらかになります。
| 経路 | 在留資格 | 主な要件 | 在留期間 |
|---|---|---|---|
| 親に扶養されて来る | 定住者(告示6号ハ) | 日系3世などの定住者(1年以上の在留期間)に扶養される、未成年で未婚の実子、素行善良 | 定住者として更新 |
| 本人が単独で来る | 特定活動(告示43号・日系四世) | 18〜35歳、日本語能力、サポーターの支援など | 6月、その後1年ごと、通算5年まで |
親と一緒に、または親に呼ばれて18歳未満で来日する場合は、6号ハの定住者として受け入れられ、年齢制限や日本語要件はありません。告示の読み方は定住者告示とは?1号〜8号の対象者一覧と号ごとの立証資料・告示外定住との違いで扱っています。本記事の中心は、18歳以上の日系4世が単独で来日するための特定活動です。
特定活動(日系四世)の要件
特定活動(日系四世)の根拠は、特定活動告示(平成2年法務省告示第131号、最近改正は令和8年4月8日法務省告示第31号)の43号と別表第十です。43号は活動の内容を、別表第十は本人の要件を定めています。
43号が定める活動
43号が認めるのは、日系四世受入れサポーターから必要な支援を無償で受けられる環境のもとで行う「日本文化及び日本国における一般的な生活様式の理解を目的とする活動(日本語を習得する活動を含む。)」と、その活動に必要な資金を補うための範囲で報酬を受ける活動(風俗営業等を除く)です。在留は通算5年を超えない期間に限られます。
制度の建前は日本文化を学ぶための在留資格で、就労はその費用を補う位置づけです。ただし出入国在留管理庁の手引きには、就労時間の上限や業種の限定(風俗営業等を除く)は書かれていません。
別表第十が定める本人の要件
別表第十に並ぶ要件を平易に言い換えると、次のとおりです。
- 日本人の子として出生した者の実子の実子の実子(曾孫)であること
- 申請時の年齢が18歳以上35歳以下であること
- 帰国のための航空券またはその購入資金を持っていること
- 日本での滞在中、独立の生計を営めると見込まれること
- 健康であること
- 素行が善良であること
- 日本での滞在中の死亡・負傷・疾病に備える保険に加入していること
- 年齢と在留年数に応じた日本語能力を試験で証明していること
- その年の在留資格認定証明書の交付総数が、法務大臣の定める受入れ枠を超えていないこと
9号の受入れ枠は、手引きで「年間4千人」とされています。枠を超えた後の申請には在留資格認定証明書が交付されない場合があります。
日本語能力の段階
日本語の要件は、年齢と在留年数で3段階に分かれています。
| 場面 | 18〜30歳 | 31〜35歳 |
|---|---|---|
| 入国時 | 基本的な日本語をある程度理解できる(N5相当) | 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる(N3相当) |
| 通算1年を超えて在留する更新 | 基本的な日本語を理解できる(N4相当) | N3相当(入国時に証明済み) |
| 通算3年を超えて在留する更新 | N3相当、かつ日本文化等の理解が十分に深まっていること | 同左 |
証明に使える試験として、手引きは日本語能力試験(JLPT)、J.TEST実用日本語検定、日本語NAT-TESTを挙げています。N4相当の例は、JLPTのN4以上、J.TESTのD-Eレベル試験350点以上、NAT-TESTの4級以上です。
31歳以上の人は入国の時点でN3相当が必要になるため、入国のハードルは30歳以下の人より高くなります。30歳以下の人は入国時のN5相当で来日できますが、2回目の更新(通算1年を超える時点)までにN4、4回目の更新(通算3年を超える時点)までにN3に上げる必要があり、日本語の学習を続けることが在留を続ける条件になっています。
日系四世受入れサポーターの役割
日系四世受入れサポーターとは、来日した日系4世の生活を無償で支える日本在住の個人や団体を指します。43号が「支援を無償で受けることができる環境の下で」と定めているため、在留の前提になる存在です。
サポーターになれる人
個人の場合、日本に住んでいれば日本人でも外国人でもなれます。外国人の場合は、永住者・特別永住者か、3年以上日本に在留し、3年以上の在留期間を決定されている定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等に限られます。1人のサポーターが支援できる日系4世は最大3人です。
団体の場合は、日系4世が住む地域で国際交流や地域社会への奉仕を目的として活動する非営利の法人がなれます。出入国関係法令に違反して刑に処せられた人や暴力団関係者などは、個人・団体を問わずサポーターになれません。
手引きの要件には親族を除く定めがないため、親戚がサポーターになることもできると読めます。日本に住む日系3世の叔父や叔母が永住者や3年の在留期間を持つ定住者であれば、個人サポーターの要件を満たします。
サポーターがすること
サポーターの支援内容は、入国前の在留資格認定証明書の申請手続きへの協力、少なくとも2か月に1回の連絡による生活状況の把握、問題が起きたときの助言などです。更新のときには、サポーターが記入した生活状況報告書を提出します。支援はすべて無償で行わなければなりません。
サポーターの支援が必要なのは、在留が通算3年を超えるまでです。43号のかっこ書が「通算して三年を超えた日以後は、当該環境下にあることを要しない」と定めているため、4年目以降はサポーターがいなくても在留を続けられます。
企業がサポーターを兼ねることについて、手引きは団体の要件を「非営利の法人」としているため、営利企業は団体サポーターになれません。雇用主の役員や社員が個人としてサポーターになることは制度上排除されていませんが、支援の無償性と雇用関係が混ざらないよう、役割を分けておくのが無難です(公式資料では未確認)。
申請の流れと更新で出す書類
海外にいる日系4世が来日する場合、日本にいるサポーターなどが代理人となって、地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書の交付を申請します。身分関係の立証には、曾祖父母の戸籍謄本または除籍謄本から本人の出生証明書まで、四代の身分関係をつなぐ書類が必要になります。日系3世の申請より一代多い分、氏名の綴りや生年月日の食い違いを補う作業も増えます。書類が足りずに不交付になった場合の考え方は在留資格認定証明書が不交付になる理由とは?で解説しています。
最初の在留期間は6月で、その後は1年ごとに更新します。更新では、日本文化等習得状況報告書、預貯金残高証明書・在職証明書または雇用契約書、住民税の課税(非課税)証明書と納税証明書、サポーターが記入した生活状況報告書を出します。日本文化の習得状況が問われるのは、この在留資格が学ぶための在留資格だからで、働いているだけで日本語や日本文化の学習の実績がないと、更新で不利に評価されるおそれがあります。
2023年12月28日から定住者への移行が可能に
制度の見直しで最も大きいのは、5年の在留を終えた日系4世が「定住者」へ変更できるようになったことです。2018年7月の制度開始当初は、通算5年で帰国することが前提でした。
出入国在留管理庁の手引き(令和5年12月28日改訂)は、定住者への変更の条件として次の点を挙げています。
- 特定活動(日系四世)で日本文化等を習得する活動を適切に通算5年間行ったこと
- 日常的な場面で使われる日本語に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できることを試験で証明していること(JLPTのN2以上、またはBJTビジネス日本語能力テスト400点以上)
- 素行が善良であること
- 独立の生計を営めること
- 公的義務を履行していること
定住者になれば、在留期間の上限はなくなり、更新を続けることで日本に住み続けられます。就労の制限もなくなり、一定の年数を経れば永住許可の申請も視野に入ります。
特定活動(日系四世)の告示には、扶養される配偶者や子の在留を認める号がありません。そのため日系四世として在留している間は、家族を「家族滞在」などで呼び寄せる道が用意されていません。定住者になった後の配偶者や子は、定住者告示5号・6号の要件に当たるかで判断されることになりますが、手引きには家族の呼び寄せについての記載がなく、個別の事情で判断が変わる部分です(公式資料では未確認)。
日系4世を雇う企業が確認すること
特定活動(日系四世)の人を雇う場合、在留カードの在留資格欄は「特定活動」、就労制限欄は「指定書により指定された就労活動のみ可」となります。パスポートに添付された指定書で、日系四世としての活動が指定されていることを確認します。指定書の見方は特定活動の指定書とは?見方・どこにあるか・紛失時の対応を見本で確認で扱っています。
業種は風俗営業等を除いて限定されていないため、製造、飲食、介護、小売など幅広い職場で雇えます。ただし在留期間が6月または1年と短く、更新のたびに日本語能力と日本文化の習得状況が問われます。フルタイムで長時間働かせ、日本語学習の時間を確保できない勤務にすると、本人の更新に響くおそれがあります。
雇い入れたときは、ハローワークへの外国人雇用状況の届出が必要です。仕組みは外国人雇用状況の届出とは?で解説しています。本人が定住者に変更した後は就労制限がなくなり、雇用の管理は在留期限の確認が中心になります。
よくある質問
「日系4世」とはどういう意味ですか?
海外に移住した日本人から数えて4世代目の人、つまり曾祖父母が日本人である人を指します。親が日系3世、祖父母が日系2世という関係です。
日系4世の在留資格は何ですか?
日系3世の定住者などに扶養される未成年で未婚の実子なら「定住者」(告示6号ハ)、それ以外の18〜35歳の人は「特定活動(日系四世)」です。日系4世であることだけで取得できる在留資格はありません。
日系4世は定住者になれますか?
なれます。18歳未満で親に扶養されて来日する場合は最初から定住者です。特定活動(日系四世)で来日した人も、2023年12月28日以降は、通算5年の適切な在留とN2相当の日本語能力などを満たせば定住者へ変更できます。
日系4世の特定活動に就労制限はありますか?
風俗営業等に従事できないことを除き、業種の制限はなく、手引きに就労時間の上限も書かれていません。ただし在留の目的は日本文化の理解と日本語の習得で、就労はその資金を補う位置づけです。更新では日本語能力と日本文化の習得状況が確認されます。
36歳以上の日系4世は来日できませんか?
特定活動(日系四世)は申請時の年齢が35歳以下であることが要件なので、36歳以上では使えません。就労資格など他の在留資格の要件に当たるかを検討することになります。
「学ぶ5年」を「住み続ける入口」にできるか
特定活動(日系四世)は、2018年7月の導入当初、受入れ枠の年4千人に対して利用が伸びませんでした。日本経済新聞に掲載された国外就労者情報援護センター理事長の寄稿(2023年3月)によれば、2022年9月末までの累計は141人です。5年で必ず帰国しなければならないことが、利用をためらわせる理由の一つでした。
2023年12月28日の見直しで、この5年は日本に住み続けるための入口にもなりました。その分、日本語をN5相当からN2相当まで引き上げ、日本文化の学習の実績を積み上げることが、5年間を通じた課題になります。本人は来日前から5年後の日本語の目標を置いておくこと、サポーターと雇用先は学習の時間を確保できる生活と勤務の形を一緒に考えることが、この制度を使い切る条件になります。
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根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号、最近改正令和8年4月8日法務省告示第31号)43号・別表第十(出入国在留管理庁)
- 日系四世の更なる受入制度(出入国在留管理庁)
- 日系四世受入れ制度の手引き(出入国在留管理庁・令和5年12月28日改訂)
- 定住者告示(平成2年法務省告示第132号、最近改正令和3年10月28日法務省告示第220号)(出入国在留管理庁)
- 要件緩和進め日系4世増やせ(日本経済新聞・2023年3月、二宮正人 国外就労者情報援護センター理事長)
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