日本人や永住者の配偶者と離婚・死別した外国人が日本に残るには、在留資格「定住者」への変更が主な方法です。ただし、離婚後の定住者は定住者告示に定めがない「告示外定住」で、法務大臣が個別の事情を見て許可するかどうかを決めます。出入国在留管理庁が公表している許可事例7件・不許可事例6件を見ると、判断の軸は、婚姻の実体があった期間と日本での生活の定着、日本人の実子の監護・養育、生計を立てる収入、素行の4つです。離婚・死別の日から14日以内に入管へ届け出たうえで、配偶者としての活動をしなくなってから6か月を超える前に変更を申請するのが基本の段取りです。
離婚後の定住者は「告示外定住」|告示に定めがない理由
ここでいう定住者とは、入管法別表第二の在留資格「定住者」を指し、「法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者」と定義されています。定住者には2つの入り口があります。
- 告示定住:定住者告示(平成2年法務省告示第132号)に列挙された類型。日系2世・3世、日系人の配偶者、定住者の未成年の実子、6歳未満の養子など。在留資格認定証明書で海外から呼ぶこともできる
- 告示外定住:告示にない類型で、日本にすでに在留している人について、個別の事情を考慮して在留資格の変更で認めるもの
離婚・死別後の定住者は後者です。出入国在留管理庁の「定住者」の案内ページに掲載されている類型も、日系3世や未成年の実子などの告示定住だけで、離婚・死別後の類型は載っていません。
告示外定住の判断は、入管法20条3項の「在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかに尽きます。入管庁は、この判断は「当該外国人の行おうとする活動、在留の状況、在留の必要性等を総合的に勘案して行われるもので、別添にある事例に類似する場合であっても、結論が異なることもあります」と説明しています(2012年7月公表・2017年3月改訂の事例公表文)。
離婚後に日本に残れる4つの類型
公表事例と実務上の取扱いから、離婚・死別後に定住者を検討する場面は、次の4つの類型に分けられます。
| 類型 | 典型的な状況 | 主な判断材料 |
|---|---|---|
| 1. 離婚定住 | 日本人・永住者と相当期間の婚姻生活を送ったうえで離婚 | 婚姻の実体があった期間、在留期間、収入、素行 |
| 2. 死別定住 | 日本人・永住者・特別永住者の配偶者が死亡 | 同上に加え、日本で続ける事業・仕事の必要性 |
| 3. 事実上の破綻 | 離婚は成立していないが、別居して双方が離婚の意思を示している | 破綻の事情(家庭内暴力など)、別居期間 |
| 4. 日本人実子の監護・養育 | 日本人との間の子の親権者として子を育てている(婚姻期間が短くても対象になりうる) | 親権、監護・養育の実績、子との同居 |
類型4は、離婚した場合に限らず、日本人と婚姻していなかった外国人親にも適用される扱いです。1996年(平成8年)7月30日付けの法務省入国管理局の通達(いわゆる730通達)が、日本人の実子を扶養する外国人親の取扱いを示したものとして知られています。専門家が引用する内容によると、要件は、日本人の実子(嫡出子、または日本人父から認知された子)の親権者であること、現に相当期間その実子を監護・養育していることなどです。通達の原文は入管庁のサイトで公表されておらず、要件の正確な文言は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
入管庁の公表事例で見る判断の軸
入管庁は、入管法22条の5(配偶者の在留資格の取消しの前に、変更申請などの機会を与えるよう配慮する規定)の趣旨を踏まえ、「日本人の配偶者等」または「永住者の配偶者等」から「定住者」への変更の許可事例と不許可事例を公表しています。
許可された7件
| No. | 性別 | 在留期間 | 婚姻期間 | 前配偶者 | 別 | 実子 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 女性 | 約6年 | 約6年6か月 | 日本人 | 離婚 | 日本人実子 | 親権者は申請人、監護・養育の実績、訪問介護員として一定の収入 |
| 2 | 女性 | 約5年1か月 | 約3年 | 日本人 | 事実上の破綻 | 無 | 家庭内暴力で破綻、別居し双方が離婚の意思を明示、看護助手として一定の収入 |
| 3 | 男性 | 約13年8か月 | 約6年1か月 | 特別永住者 | 死別 | 無 | 金属溶接業の経営を継続する必要、同事業で一定の収入 |
| 4 | 女性 | 約8年1か月 | 約4年5か月 | 日本人 | 離婚 | 日本人実子 | 家庭内暴力で離婚・PTSD発症、親権者は申請人、監護・養育の実績 |
| 5 | 女性 | 約10年5か月 | 約11年5か月 | 日本人 | 事実上の破綻 | 無 | 家庭内暴力で通算8年以上別居、配偶者が連絡を拒否、弁護士に相談 |
| 6 | 女性 | 約8年8か月 | 約6年 | 永住者 | 事実上の破綻 | 外国人(永住者)実子 | 家庭内暴力で3年以上別居、親権争いで調停不成立・訴訟準備中 |
| 7 | 男性 | 約8年3か月 | 約7年9か月 | 日本人 | 離婚 | 日本人実子 | 親権者は前配偶者、毎月3万円の養育費を継続、会社員として一定の収入 |
許可されなかった6件(要旨)
- 在留約4年10か月・婚姻約3年・日本人実子あり(親権は前配偶者):詐欺と傷害の罪で有罪判決
- 在留約4年1か月・婚姻約3年11か月・永住者と事実上の破綻:単身で約1年9か月、日本国外に滞在
- 在留約4年1か月・婚姻約3年10か月・日本人と死別:単身で約1年6か月、日本国外に滞在。在留中も別居し風俗店で稼働
- 在留約3年4か月・婚姻約1年11か月:家庭内暴力を申し立てた2回目の離婚。初回の離婚で保護を求めた後、間もなく同じ相手と再婚
- 在留約4か月・婚姻約3か月:家庭内暴力を申し立てたが、婚姻同居期間は3か月未満
- 在留約3年3か月・婚姻約2年1か月:日本語学校に通うとして別居したが風俗店に在籍、婚姻の実体があったのは約1年3か月
事例から読み取れる4つの軸
1つ目は、婚姻の実体があった期間と日本での在留の長さです。許可7件の婚姻期間は、いずれも約3年以上でした。実務で「婚姻期間3年」が目安と言われるのは、この傾向と重なります。ただし、不許可事例の2と3は婚姻期間が約4年近くあっても不許可になっています。書類上の婚姻期間より、同居して夫婦として暮らした実体の期間が見られていることは、不許可事例6の「婚姻の実体があったといえるのは、約1年3か月」という書き方からも分かります。
2つ目は、日本との結びつきが続いているかです。不許可事例の2と3は、いずれも単身で1年半以上日本を離れていました。長期の出国は、婚姻の実体と日本での生活の定着の両方を弱めます。
3つ目は、日本人の実子との関係です。許可7件のうち3件は日本人実子がいて、親権者として監護・養育している場合(No.1・No.4)だけでなく、親権は前配偶者にあっても養育費を払い続けている場合(No.7)も許可されています。
4つ目は、生計と素行です。許可事例には「一定の収入あり」「経営を継続する必要あり」という記載が並び、不許可事例には有罪判決や風俗店での稼働が挙がっています。
家庭内暴力の被害は、許可事例の多くに共通する事情です。一方で、不許可事例4・5のように、暴力の申立てがあっても、婚姻期間がごく短い場合や、保護を求めた後に同じ相手と再婚している場合は、許可に結びついていません。
類型別の条件と準備する資料
入管庁は、離婚・死別後の定住者への変更について、類型別の提出書類一覧を公表していません。在留資格変更許可申請書と写真のほか、事情を立証する資料を申請人が組み立てることになります。筆者が類型ごとに用意を勧めている資料は次のとおりです。
離婚定住
- 離婚の記載がある戸籍謄本(前配偶者が日本人の場合)、離婚届受理証明書
- 婚姻期間中の同居を示す資料(世帯全員の住民票の履歴など)
- 住民税の課税・納税証明書、在職証明書または事業の資料
- 離婚に至った経緯と、日本に残る必要性を書いた理由書
- 身元保証書(日本に住む日本人・永住者など)
死別定住
- 配偶者の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍謄本)
- 婚姻期間中の同居を示す資料
- 日本で続ける仕事・事業の資料(公表事例No.3では事業継続の必要性が考慮されている)
- 収入の資料、理由書、身元保証書
事実上の破綻(離婚成立前)
- 別居の時期が分かる住民票
- 家庭内暴力がある場合は、配偶者暴力相談支援センターの相談証明、保護命令、診断書、警察への相談記録など
- 離婚調停・訴訟の書類、弁護士への相談の記録
日本人実子の監護・養育
- 子の戸籍謄本(親子関係、認知、親権者の記載)
- 子と同居していることを示す住民票
- 保育園・学校の在籍証明、母子健康手帳など監護・養育の実績を示す資料
- 親権がない場合は、養育費の送金記録と面会交流の状況
理由書で最も重要なのは、なぜ本国に帰るより日本に残る必要があるのかを、事実で説明することです。「日本が好き」「長く住んでいる」といった一般的な理由だけでは足りません。子の学校、続けている仕事、治療中の病気など、日本を離れると失われるものを具体的に書きます。申請書の書き方は在留資格変更許可申請書の書き方で解説しています。
期限は「14日」と「6か月」|届出と申請のタイミング
離婚・死別の後には、起算点の違う2つの期限があります。
1つ目は、配偶者に関する届出です。入管法19条の16第3号により、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」(配偶者の身分によるもの)、「家族滞在」(配偶者として在留する人)の人は、配偶者と離婚・死別したときに14日以内に出入国在留管理庁長官へ届け出なければなりません。届出を怠った場合は20万円以下の罰金の対象です(入管法71条の5第3号)。届出は、窓口、郵送、出入国在留管理庁電子届出システムで行えます。
2つ目は、在留資格の取消しとの関係です。入管法22条の4第1項7号は、配偶者の身分を有する者としての活動を「継続して六月以上行わないで在留していること」を取消事由にしています(正当な理由がある場合を除く)。この6か月は、離婚届の日からではなく、配偶者としての活動をしなくなった時点から数えるのが原則です。離婚の成立前に長く別居していた場合、離婚の時点ですでに6か月を過ぎていることもあります。
入管庁の在留管理制度Q&Aは、離婚の届出と同時に変更申請をする必要はないとしつつ、早めの申請を勧めています。正当な理由の例としては、子の親権をめぐって調停中の場合や、日本人配偶者の有責を争って離婚訴訟中の場合が挙げられています。離婚後の手続全体と届出の書き方は配偶者ビザで離婚したらどうなる?14日以内の届出と6か月以内の変更の目安で詳しく扱っています。
在留期限が6か月より先に来る場合は、期限までに変更を申請します。「日本人の配偶者等」の更新は、配偶者としての活動を続けていることが前提のため、離婚後に同じ在留資格で更新することは原則としてできません。変更申請が在留期限までに出ていれば、処分まで(最長で期限から2か月)は従前の在留資格で在留できます。期限の考え方は在留資格の変更・更新はいつまでに申請する?で解説しています。
定住者が認められた後|在留期間・就労・永住への道
告示外の定住者の在留期間は、入管法施行規則別表第二で「5年を超えない範囲内で法務大臣が個々の外国人について指定する期間」とされています。告示定住の5年・3年・1年・6月という区分とは異なり、期間は個別に指定されます。
定住者には就労の制限がありません。職種を問わず働けるため、配偶者ビザのときと同じ仕事を続けられます。更新では、収入と納税、子の監護・養育の継続などが見られます。
永住許可に関するガイドライン(2026年2月24日改訂)は、原則10年在留の特例として、「定住者」の在留資格で5年以上継続して在留している場合を挙げています。離婚後に定住者へ変更した人は、定住者として5年を積めば、10年の在留を待たずに永住を申請できる可能性があります。定住者からの永住申請は公式案内をご確認くださいで扱っています。
定住者ビザで離婚した場合はどうなるか
すでに「定住者」を持っている人が離婚した場合は、事情が少し違います。22条の4第1項7号の取消事由は、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の配偶者の身分に基づく在留資格を対象にしており、定住者はその対象ではありません。19条の16第3号の配偶者に関する届出も、定住者は対象外です。
ただし、日系人の配偶者として告示定住で在留している人のように、定住者の許可が配偶者であることを前提にしている場合、離婚すると次の更新で、定住者を続ける理由があるかが改めて審査されます。そのときに見られるのは、離婚定住と同じく、日本での生活の定着、子の監護・養育、収入と素行です。
よくある質問
離婚後の定住者ビザは婚姻期間が何年あれば取れますか?
法令にも公表資料にも年数の基準はありません。入管庁が公表した許可事例7件の婚姻期間は、いずれも約3年以上でした。ただし、婚姻期間が約4年近くあっても、長期の単身出国や素行を理由に不許可になった事例があり、年数だけでは決まりません。日本人の実子の親権者として監護・養育している場合は、婚姻期間が短くても検討の余地があります。
日本人の配偶者と離婚したら、必ず定住者になれますか?
なれるとは限りません。離婚後の定住者は告示外定住で、個別の事情で判断が変わります。定住者が難しい場合は、学歴・職歴に合う就労資格(技術・人文知識・国際業務など)への変更、要件を満たしていれば永住許可申請、再婚による新たな配偶者の在留資格といった選択肢を並行して検討します。
離婚して定住者ビザを取るのにどのくらいの期間がかかりますか?
在留資格変更許可申請の標準処理期間は1か月から2か月とされていますが、告示外定住は個別の事情を審査するため、追加資料を求められて長くなることがあります。定住者の変更の処理期間は統計上の区分が細かく公表されていないため、在留期限と6か月の期限から逆算し、離婚が決まった段階で準備を始めるのが安全です。
定住者と離婚定住の違いは何ですか?
「離婚定住」は法令上の用語ではなく、離婚をきっかけに告示外の定住者として許可される場合を指す通称です。在留資格としては同じ「定住者」で、就労の制限がない点や更新の手続も、他の定住者と変わりません。違いは入り口で、告示に定めがないため、海外から在留資格認定証明書で呼ぶことはできず、日本在留中の変更申請に限られます。
離婚が見えた時点で、残る理由を「記録」として残し始める
離婚後の定住者の審査で問われるのは、日本に残る理由が事実として積み上がっているかどうかです。公表事例で許可された人には、子を育ててきた記録、仕事や事業を続けてきた記録、家庭内暴力から逃れて別居した記録がありました。不許可になった人には、長期の出国や素行の問題がありました。
別居や離婚の協議が始まった段階から、子の学校や保育園の書類、給与明細と住民税の納税記録、相談機関の記録を手元にそろえておくことが、6か月という限られた時間で申請を間に合わせるための現実的な準備です。更新の審査で見られる素行や納税の考え方は在留期間更新の「相当の理由」とはで解説しています。
根拠資料
- 「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」から「定住者」への在留資格変更許可が認められた事例及び認められなかった事例について(法務省入国管理局、2012年7月公表・2017年3月改訂)
- 在留資格「定住者」(出入国在留管理庁)
- 配偶者に関する届出(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法 19条の16・20条・22条の4・22条の5・71条の5(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法施行規則 別表第二(e-Gov法令検索、2026年9月1日時点)
- 永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)(出入国在留管理庁)
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