高度専門職の特別加算は、学歴・職歴・年収・年齢とは別に上乗せされる点数で、70点に届くかどうかを最後に決めることが多い項目です。代表的なものは三つあります。イノベーション促進の支援措置を受けている中小企業で働く場合の20点、日本語能力試験N1相当の15点(N2相当は10点)、日本の大学卒業・大学院修了の10点です。
加算どうしは原則として重ねられますが、重ねられない組合せが条文で決まっています。N2相当の10点は、日本の大学卒業やN1相当と重ねられません。世界大学ランキング等による10点は、ランキング・スーパーグローバル大学・イノベーティブ・アジア事業の三つの中では1回だけです。中小企業の加点も、中小企業であることだけでは付かず、国の認定や補助金を受けていることが条件になります。
この記事でわかること
- 特別加算の項目と点数の一覧
- 中小企業が20点になる条件と「中小企業者」の定義
- 日本語能力(N1・N2・BJT)と日本の大学卒業の加点の重ね方
- 世界大学ランキング等・JICA研修・成長分野などその他の加算
- よくある数え間違いと立証資料
特別加算の項目と点数
ここでいう特別加算とは、高度専門職の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」)のポイント表のうち、「特別加算」の項に並ぶ点数を指します。入管庁が公表しているポイント計算表の配点は次のとおりです。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 契約機関がイノベーション促進の支援措置を受けている | 10点(中小企業ならさらに10点、計20点) |
| 試験研究費等比率が3%を超える中小企業で就労 | 5点 |
| 従事する業務に関連する外国の資格・表彰等 | 5点 |
| 日本の大学を卒業、または大学院を修了して学位を授与 | 10点 |
| 日本語能力試験N1相当、または外国の大学で日本語を専攻して卒業 | 15点 |
| 日本語能力試験N2相当(上の2項目に該当しない場合) | 10点 |
| 成長分野の先端的な事業に従事 | 10点 |
| 告示された大学(世界大学ランキング等)を卒業 | 10点 |
| 告示された研修(JICAが実施する研修)を修了 | 5点 |
| 地方公共団体の高度人材受入れ支援措置を受けている機関に所属 | 10点 |
| 投資運用業等に係る業務に従事(1号ロ・1号ハ) | 10点 |
| 事業に自ら1億円以上を投資(1号ハ) | 5点 |
出典:出入国在留管理庁「ポイント計算表」(資料16)。MBA・MOTの5点、1号ハの地位の加点、国家資格の加点は別項目のため、この表には含めていません。
入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節の特別加算の表(9-15〜9-16、9-27〜9-28)で読み取れる点数は、公表資料と一致しています。特別加算の対象を定める告示(高度専門職特別加算告示)は、令和8年3月31日に改正されています。この記事の根拠資料では改正の中身を確認できていないため、支援措置や対象事業の一覧は、申請の直前に入管庁の最新の一覧(令和8年3月時点)で確認してください【要確認】。学歴や年収を含むポイント制全体は高度専門職ポイント計算表の使い方と落とし穴|年収・学歴の数え方と立証資料で扱っています。
中小企業の加点は支援措置を受けていれば20点
特別加算のイとロは、同じ条件で点数だけが違います。契約機関が、告示で定める法律に基づく認定・承認を受けているか、告示で定める補助金等の支援措置を受けていれば、大企業は10点、中小企業は20点です。中小企業に厚く配点した理由を、審査要領は次のように説明しています。
審査要領ではこう書かれている
中小企業は大企業に比べ支払っている報酬が低く、年収での加点が比較的難しいという傾向があることを踏まえ、高度人材外国人が、大企業のみならずより幅広い所属機関で活躍できるようにするため(中略)そこで就労している場合には、大企業よりも加点することとしたものである。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 9-18
対象になる認定・承認は、高度専門職特別加算告示の別表第一に掲げる法律に基づくもの、補助金は別表第二に掲げる国の各省の事業です(9-16〜9-17)。審査要領は、この別表が法律の改正や補助金の廃止に伴って「毎年、改正している」ため、入管庁ホームページの最新の告示を確認するとしています(9-17〜9-18)。以前の申請で加点された認定でも、次の申請で対象から外れていることがあり得ます。
「中小企業者」は中小企業基本法第2条第1項の定義によります(9-45)。
| 業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|---|
| 製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
資本金基準か従業員基準のどちらかを満たせば中小企業者に当たります。業種分類は日本標準産業分類に基づきます(9-45)。
立証資料は、認定・承認の通知書や補助金交付決定通知書の写しと、中小企業者であることを示す資料の二つです。後者は、主たる事業がわかる会社のパンフレット等に加え、登記事項証明書・決算文書・定款のいずれかで資本金の額を、雇用保険・労働保険の資料や賃金台帳の写しで従業員数を示します(9-42)。
研究開発型中小企業の5点
特別加算のハは、試験研究費と開発費の合計が収入金額の3%を超える中小企業で就労する場合の5点です。対象となる事業年度は、申請の日が属する事業年度の前事業年度で、申請の日が前事業年度の経過後2か月以内であれば前々事業年度を使います(9-15〜9-16)。決算期の直後に申請する会社は、まだ確定していない直近期ではなく、その一つ前の期で計算することになります。
3%超の立証には、試験研究費等と売上高が載った財務諸表の写しを使います。確定申告書の控えなどに試験研究費にあたる箇所へ印を付けたものや、税理士・公認会計士・中小企業診断士による証明書(書式自由)でも立証できます(9-43)。個人事業主の場合は、申請の日が属する年の前年(1月から3月の申請なら前々年)の事業所得に係る総収入金額で計算します。条文上、ハにはイ・ロとの重複を除く括弧書きが付いていません。
日本語能力の加点(N1は15点、N2は10点)
日本語能力の加点は二段階です。へは、日本語能力試験N1に合格する能力を試験で証明した人、または外国の大学で日本語を専攻して卒業した人で15点。トはN2に合格する能力を証明した人で10点です(9-19〜9-20)。日本語能力試験のほか、同等の能力を示す試験として、BJTビジネス日本語能力テストの480点以上がN1相当、400点以上がN2相当の例に挙がっています。合格証明書や成績証明書で確認されます。
「日本語を専攻して」とは、外国の大学で日本語学・日本語教育学などの学部・学科・研究科を専攻したことを指し、学部・学科名が記載された卒業証明書で確認されます(9-20)。この「外国の大学」には大学院と短期大学が含まれますが、大学に準ずる機関の卒業者や、大学卒業者と同等以上の教育を受けた者は含まれません。
重ね方の決まりは、トの括弧書きにあります。N2相当の10点は「ホ又はへに該当する場合を除く」とされ、日本の大学卒業(ホ)またはN1相当(へ)に当たる人には付きません(9-20〜9-21)。一方、へにはホとの重複を除く括弧書きがないため、日本の大学を卒業し、N1にも合格している人は10点と15点を重ねて25点になります。
日本語試験の結果について、審査要領には「結果の真偽照会」に関する注記があり、照会の対象となる部分がOCRで判読できません(9-20)。黒塗りの可能性もあります。照会の枠組みを定めた箇所も大部分が黒塗りで、詳細は読み取れません(第1節 第11)。いずれにしても、試験の結果は照会され得るという前提で、正確な証明書を出すことが大切です。
日本の大学卒業の10点と学歴の関係
ホの「本邦の大学」は、学校教育法上の大学と放送大学を指し、大学の別科・専攻科・短期大学・大学院・付属研究所を含みます。防衛大学校や航空大学校など「大学に準ずる機関」は含まれず、その卒業生が学位授与機構から学位を授与された場合も同じです(9-19)。日本の専門学校も含まれません。
審査要領ではこう書かれている
本項と「学歴」の項は並立する。したがって、本邦の大学院を修了して修士の学位を授与された者の場合、「学歴」20点+「特別加算」10点=30点が付与される。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 9-19
ホは、次に述べる告示大学の10点とも重ねて加算できます(9-21)。日本の大学が世界大学ランキングのいずれかに掲載されていれば、その卒業生は学歴の点数に加えて10点と10点を受けられる計算です。一方、JICAの研修が日本の大学・大学院の授業を利用して行われた場合、その研修の5点はホと重ねられません(9-22)。学歴の項の数え方は高度専門職の学歴ポイント|MBA・法務博士・複数の学位の数え方で扱っています。
告示大学・JICA研修
リの10点は、次のいずれかの大学を卒業した人(その大学院の修了者を含む)が対象です(9-21〜9-22)。
- QS、THE、上海ランキング(世界大学学術ランキング)のうち二つ以上で300位以内の外国の大学、またはいずれかに掲載されている日本の大学(いずれも直近のランキングに限る)
- 文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援事業(トップ型・グローバル化牽引型)で補助金の交付を受けている大学
- 外務省のイノベーティブ・アジア事業でパートナー校に指定されている大学
該当する大学のリストは入管庁ホームページに掲載され(令和8年1月時点の一覧)、申請の時点でリストに掲載されていれば足ります。三つの区分に重ねて該当しても加算は1回です。立証は、入管庁ホームページの該当部分の写しと、卒業証明書または学位取得の証明書で行い、この資料を出す場合は学歴の項の卒業証明書を別に出す必要はありません(9-41、9-44)。
ヌの5点は、イノベーティブ・アジア事業の一環としてJICAが日本で実施する、研修期間1年以上の研修の修了者が対象です。JICAの研修修了証明書で確認し、修了者は学歴・職歴などの証明資料を原則として求められません。ただし職歴のポイントを希望する場合は疎明資料が必要です(9-22)。
その他の加算
残りの項目は対象者が限られます。
外国の資格・表彰等(ニ、5点)は、資格であれば大卒でなければ取得できない水準のもの、表彰であれば多数の候補者から極めて少数しか選ばれないものなど、高い専門性を示すものが対象です。対象は法務大臣が関係行政機関の長の意見を聴いて事前に認定するのが原則で、企業表彰・製品表彰は、受賞に当たり申請人が積極的に関与したものに限られます(9-18〜9-19、9-43)。
成長分野の先端的な事業(チ、10点)は、IoTや再生医療などの分野で所管省庁が関与するプロジェクトで、対象事業は事前に認定されリスト化されています。審査要領は、「契約機関が特定のプロジェクトを実施するだけでは加算対象とならず、申請人が当該プロジェクトに実際に従事する場合に加算対象となる」としています(9-21)。所属機関がプロジェクトを実施していることと、本人がその活動に従事していることの両方を立証します。
地方公共団体の支援(10点)は、高度人材の受入れを促進する支援措置として法務大臣が認めたものを受けている機関に属する場合の加算です。補助金等の交付決定通知書の写しなどと、入管庁ホームページの対象事業との照合で確認します(9-22〜9-23)。1号ロ・1号ハの投資運用業等(10点)は、金融商品取引法の第二種金融商品取引業、投資助言・代理、投資運用業に係る業務に従事する場合に付きます。立証には、登録済通知書の写し等と、本人がその業務に従事することを説明する資料の両方が必要です(9-29)。1号ハの1億円以上の投資(5点)は、資本金または出資額を示す資料で確認します(9-45)。
特別加算でよくある数え間違い
ポイント計算表を自己申告で作る段階で、特別加算は数え間違いが集中する項目です。筆者が申請前の確認で特に注意している点を挙げます。
- 日本の大学を出た人がN2の10点も数えている(トはホ・へと重ねられない)
- 世界大学ランキングとスーパーグローバル大学の両方で10点ずつ数えている(リの中では1回だけ)
- 中小企業であることだけで20点を数えている(告示の認定・承認か補助金等が必要)
- 以前の申請で加点された支援措置を、最新の告示で確認せずに数えている
- 会社が成長分野のプロジェクトを実施しているだけで10点を数えている(本人の従事が必要)
- 日本の専門学校や防衛大学校の卒業を「本邦の大学」として数えている
- 試験研究費等比率を、申請日から2か月以内なのに直近の事業年度で計算している
もう一つ見落とされやすいのが、加算の多くが勤務先に結びついていることです。中小企業の加点、研究開発型中小企業の加点、成長分野の事業、地方公共団体の支援、投資運用業等の加点は、転職すれば新しい勤務先で一から判断されます。高度専門職1号で転職するときにポイントを計算し直す手続は高度専門職1号ロで転職したら?在留資格変更許可が必要な理由と指定書・14日以内の届出で扱っています。
計算例:特別加算で70点を超える
特別加算がどれほど効くかを、1号ロで申請する28歳の人の例で示します。筆者作成の計算例で、配点は公表のポイント計算表に沿っています。
| 項目 | 内容 | 点数 |
|---|---|---|
| 学歴 | 日本の大学院で修士 | 20点 |
| 職歴 | 新卒のため3年未満 | 0点 |
| 年収 | 420万円(29歳まで) | 10点 |
| 年齢 | 28歳 | 15点 |
| 特別加算 | 日本の大学院修了 | 10点 |
| 特別加算 | 日本語能力試験N1 | 15点 |
| 特別加算 | 勤務先が支援措置を受けた中小企業 | 20点 |
| 合計 | 90点 |
年収と職歴だけを見れば高度人材とは言いにくい新卒者でも、特別加算を重ねると90点に届きます。勤務先の支援措置がなくても70点で、合格ラインは超えます。80点以上であれば、永住許可申請に必要な在留期間が1年に短縮される優遇の対象にもなるため、中小企業の加点の有無は本人の将来設計に直結します。永住との関係は高度専門職から永住申請|70点で3年・80点で1年の条件とポイントの基準時点で扱っています。
ポイントの立証は、合計70点以上に届く分だけ出せば足ります(9-40)。1年後の永住許可申請を考えている人は80点分が必要です。特別加算で80点を超える人は、加算の資料を省かないでください。
よくある質問
Q. 中小企業に勤めていれば特別加算の20点が付きますか?
中小企業であることだけでは付きません。勤務先が、告示で定める法律に基づく認定・承認を受けているか、告示で定める補助金等の支援措置を受けている場合に、中小企業なら20点、大企業なら10点が付きます。
Q. 日本の大学を卒業していて、N2も持っています。両方の加点を受けられますか?
受けられません。N2相当の10点は、日本の大学卒業またはN1相当に該当する場合を除くとされています。日本の大学卒業の10点だけが付きます。
Q. 日本の大学を卒業し、N1にも合格しています。両方の加点を受けられますか?
N1相当の15点には日本の大学卒業との重複を除く括弧書きがないため、日本の大学卒業の10点と合わせて25点になります。
Q. 転職しても特別加算はそのまま使えますか?
勤務先に結びついた加算(中小企業の支援措置、研究開発型中小企業、成長分野の事業、地方公共団体の支援、投資運用業等)は、転職先で改めて判断されます。本人の学歴や日本語能力に基づく加算は転職で変わりません。
申請前に確認すること
まず、加算を本人に結びつくものと勤務先に結びつくものに分けて、一覧にしてください。本人に結びつくのは、日本の大学卒業、日本語能力、告示大学、JICA研修、外国の資格・表彰です。勤務先に結びつくのは、支援措置、研究開発型中小企業、成長分野の事業、地方公共団体の支援、投資運用業等です。勤務先に結びつく加算は、会社の総務・経理部門に認定・承認の通知書や補助金交付決定通知書があるかを確認し、入管庁の最新の一覧と照合します。重ねられない組合せを外した合計が70点、80点の前後にある場合は、どの資料を出すかで結果が変わるため、申請前に専門家の確認を受けることを勧めます。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 高度専門職 9-15〜9-23(1号イ 特別加算の項)、9-27〜9-29(1号ロ 特別加算の項)、9-40〜9-45(立証資料、中小企業者の定義)
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第1節 第11(試験結果等の真偽照会)
- 出入国在留管理庁 高度人材ポイント制「ポイント評価の仕組みは?」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/newimmiact_3_evaluate_index.html)
- 出入国在留管理庁 ポイント計算表(https://www.moj.go.jp/isa/content/930001657.pdf)