高度専門職の学歴ポイントは、持っている学位のうち最も高いもの1つで決まります。博士30点、修士または専門職学位20点、大学卒業またはこれと同等以上の教育10点で、博士と修士を両方持っていても30点、学士と修士を持っていても20点です。学位を重ねて点数が増えるのは、異なる分野で複数の学位を持つ場合(5点)と、1号ロ・1号ハでMBA・MOTを持つ場合(5点)に限られます。
名称で判断を誤りやすいのが、法務博士やJ.D.、M.D.です。いずれも「博士」「Doctor」を名乗りますが、入国・在留審査要領はこれらを修士と同列に扱い、20点として計算します。日本の大学・大学院を出た人は、学歴とは別の「特別加算」でさらに10点が付くため、学歴だけを見て点数を低く見積もる失敗も起きます。
この記事でわかること
- 博士・修士・学士の点数と、学位を重ねても合算されない理由
- 法務博士・J.D.・M.D.が修士として数えられる根拠
- MBA・MOTの加点が1号ロ・1号ハだけに付く点
- 「複数の分野」の加点を受けられる学位の組合せ
- 学歴を立証する書類と、専攻が読み取れないときの対応
学歴ポイントの配点
高度専門職1号は、学歴・職歴・年収・年齢などの項目ごとに点数を付け、合計70点以上で認める仕組みです。この点数表を定めているのが、高度専門職の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」)で、学歴はその最初の項目にあたります。入管庁が公表しているポイント計算表の配点は次のとおりです。
| 学歴 | 1号イ(研究) | 1号ロ(専門・技術) | 1号ハ(経営・管理) |
|---|---|---|---|
| 博士の学位 | 30点 | 30点 | 20点 |
| 修士の学位・専門職学位 | 20点 | 20点 | 20点 |
| 大学卒業またはこれと同等以上の教育 | 10点 | 10点 | 10点 |
| 複数の分野の博士・修士・専門職学位 | +5点 | +5点 | +5点 |
| MBA・MOT(経営管理に関する専門職学位) | 対象外 | +5点 | +5点 |
出典:出入国在留管理庁「ポイント計算表」(資料16)。1号ハは博士と修士を区別せず20点です。
入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節の学歴の表(9-8、9-23、9-30)は、開示版のOCRで点数欄が崩れており、1号イの博士と複数分野の欄、1号ロ・1号ハの表本体は読み取れません。点数は公表資料のポイント計算表を基準にし、審査要領は各段の意味を確かめる資料として使います。ポイント制全体の組み立ては高度専門職ポイント計算表の使い方と落とし穴|年収・学歴の数え方と立証資料で扱っています。
学位を重ねても点数は足されない
学歴の表には、下の段に「(イに該当する場合を除く。)」「(イ又はロに該当する場合を除く。)」という括弧書きが付いています。上の段に当てはまる人は下の段では数えない、という意味です。審査要領はこの括弧書きの趣旨を、数字を挙げて説明しています。
審査要領ではこう書かれている
ロの「(イに該当する場合を除く。)」とは、博士の学位と修士の学位の両方を有している場合は、点数は30点である(30+20=50点とはならない)ことを規定したものである。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 9-9
1号ロの説明でも、大学を卒業した後に修士を取った人は20点で、10点と足して30点にはならないと同じ整理を繰り返しています(9-24)。学士・修士・博士をすべて持つ人も、学歴の項は博士の30点だけです。
| 持っている学位 | 学歴の項の点数(1号ロ) |
|---|---|
| 学士のみ | 10点 |
| 学士+修士 | 20点 |
| 修士+博士(同じ専攻) | 30点 |
| 学士+修士+博士(同じ専攻) | 30点 |
ポイント計算表を自己申告で作るとき、学歴の欄に複数のチェックを入れてしまう例は少なくありません。入管はポイント計算表を申請人の自己申告として受け取り(9-40)、各項目の立証資料と突き合わせて計算し直します。過大な申告は審査の中で修正されるだけですが、70点すれすれの人にとっては、修正後の点数で合否が分かれます。
法務博士・J.D.・M.D.はなぜ修士扱いなのか
学歴の表の「修士」の段には、修士の学位と並んで「専門職学位」が入っています。専門職大学院を修了した人に授与される学位を、専門職学位と呼びます(学位規則第5条の2)。名称に「博士」「修士」の文字を含むものがありますが、研究者養成の博士・修士とは別の学位です。審査要領は例として、法科大学院の「法務博士」と教職大学院の「教職修士」を挙げています(9-8)。
海外の学位も同じ考え方で扱います。米国のロースクールやメディカル・スクールが授与するJ.D.やM.D.は、学術論文を発表せずに職業人養成の課程を修了しただけで授与され、実質的に修士号に相当するのが通例です。審査要領はこれを理由に、J.D.やM.D.を「修士号取得者と同列に取り扱う」としています(9-9 注2)。
したがって、法務博士もJ.D.もM.D.も、学歴の項は20点です。J.D.のほかに研究学位の博士(Ph.D.)を持っていれば、博士の30点になります。学位の名称ではなく、研究学位か職業学位かで点数が決まると覚えておくと判断を誤りません。
MBA・MOTの5点は1号ロ・1号ハだけ
経営に関する専門職大学院を修了して「経営学修士(専門職)」等を授与されたことを、審査要領は経営管理に関する専門職学位と呼び、いわゆるMBA・MOTがこれに当たると説明しています(9-24)。海外で授与された相当する学位も含まれます。
公表のポイント計算表は、MBA・MOTを「+5点」と整理しています。MBAは専門職学位なので修士の段で20点、これに5点が上乗せされて25点になる計算です。一方、1号イ(研究者)については、審査要領が、MBA・MOTに係る加点は1号イには適用しないと明記しています(9-9)。研究職で申請する人のMBAは、修士の20点として数えるにとどまります。
博士を持つ人がMBAも持っている場合に、30点へさらに5点が乗るのかどうかは、1号ロ・1号ハの学歴の表本体がOCRで読めないため、この記事の根拠資料では確定できません【要確認】。該当する人は、ポイント計算表の記載と審査要領の原本で確認してください。
「複数の分野」の加点を受けられる組合せ
学歴の表の最後の段は「複数の分野において博士若しくは修士の学位又は専門職学位を有していること」です。この段は上位の学位の点数に上乗せされる5点で、他の段と違い、合算が前提になっています。
審査要領ではこう書かれている
学位の組み合わせを問わず、専攻が異なれば加点することとし、学位記又は学位証明書により専攻が確認できない場合は、これに加え成績証明書の提出を求めて専攻を確認する。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 9-9
ここで重要なのは、対象が博士・修士・専門職学位に限られている点です。条文に列挙されていない学士は、この段の組合せに入りません。法学の学士と工学の修士を持つ人は、専攻は異なっていても複数分野の加点を受けられない、というのが条文の読み方です。反対に、工学修士と米国のMBA、化学の博士と法務博士のように、修士以上の学位を異なる専攻で2つ持っていれば、組合せを問わず5点が付きます。
判断の分かれ目になるのは専攻の同一性です。経済学修士と経営学修士のように近い分野では、学位記の専攻名だけでは違いが伝わらないことがあります。審査要領が成績証明書で専攻を確認するとしているのはこの場面で、履修科目の一覧から専攻の違いを示せるよう、あらかじめ取り寄せておくのが確実です。
「大学卒業と同等以上の教育」に入る学歴
10点の段の「大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受けた」は、技術・人文知識・国際業務の上陸基準にある学歴要件と同じ意味だとされています(9-9)。審査要領が挙げる範囲は次のとおりです。
- 大学には大学院と短期大学を含む(短期大学士、専門職大学の「学士(専門職)」も大学卒業にあたる。第1節 1-10)
- 高等専門学校の卒業者
- 防衛大学校など各省が所管する大学校の卒業者
- 専修学校の専門課程の卒業者のうち「高度専門士」の称号を持つ人
- 海外の学歴は、文部科学省編「諸外国の学校教育」で高等教育機関とされている機関の卒業者(第1節 1-13)
日本の専門学校で「専門士」の称号を得た人は、技術・人文知識・国際業務では学歴要件を満たせますが、高度専門職の学歴ポイントでは「高度専門士」に限られるため、10点は付きません。中国の専科の卒業者は「大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受け」た者として扱われます(第1節 1-13)。海外の学歴の評価は海外の大学・中国の専科の学歴はどう評価される?審査要領の学歴照会と偽造の確認で詳しく扱っています。
学歴ポイントが0点でも、高度専門職を諦める必要はありません。高度専門職1号ロの審査は、まず技術・人文知識・国際業務などの前提となる在留資格に当てはまるかを見て、そのあとでポイントを計算する二段階で行われます(9-37〜9-38)。前提の在留資格を実務経験で満たし、職歴と年収で70点に届く人は現にいます。職歴の数え方は高度専門職の職歴ポイント|実務経験の数え方と1号ロ・1号ハの違いを参照してください。
日本の大学を出た人は特別加算で10点
日本の大学を卒業した人、または日本の大学院を修了して学位を授与された人には、学歴の項とは別に、特別加算として10点が付きます。この二つが重なるかどうかについて、審査要領は明確に答えています。
審査要領ではこう書かれている
本項と「学歴」の項は並立する。したがって、本邦の大学院を修了して修士の学位を授与された者の場合、「学歴」20点+「特別加算」10点=30点が付与される。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 9-19
ここでいう「本邦の大学」には、短期大学、大学院、大学の別科・専攻科が含まれ、防衛大学校や航空大学校など「大学に準ずる機関」は含まれません(9-19)。世界大学ランキング等で告示された大学の卒業による10点とも重ねて加算できますが、日本語能力試験N2相当の10点とは重ねられません。特別加算の全体像は高度専門職の特別加算|中小企業・日本語能力・日本の大学卒業のボーナスポイントにまとめています。
計算例:学歴と関連する加算だけで何点になるか
ここまでの規則を、学歴に関係する点数だけで当てはめると次のようになります。いずれも1号ロで申請する場合の筆者作成の計算例で、年収・年齢などの他の項目は含めていません。
| 学歴 | 学歴の項 | 上乗せ | 合計 |
|---|---|---|---|
| 母国の大学で学士 | 10点 | なし | 10点 |
| 日本の大学で学士、日本の大学院で修士(同じ専攻) | 20点 | 日本の大学卒 10点 | 30点 |
| 母国で法学の学士、米国でJ.D. | 20点 | なし(学士は複数分野の対象外) | 20点 |
| 母国で工学の修士、米国でMBA | 20点 | MBA 5点、複数分野 5点 | 30点 |
| 母国で化学の修士と化学の博士 | 30点 | なし(同じ専攻) | 30点 |
4行目は、学位を重ねた人がもっとも点数を伸ばせる形です。技術系の修士を持つ人が社会人になってからMBAを取ると、学歴だけで30点に届きます。70点の合格ラインのうち30点を学歴で確保できれば、残りは年収と年齢で組み立てやすくなります。
学歴の立証資料
学歴ポイントの立証資料について、審査要領の表は、該当する学歴の卒業証明書と学位取得の証明書を挙げています(9-41)。告示された大学の卒業による特別加算の資料を出す場合は、重ねて出す必要はありません。複数分野の加点を主張する場合で、学位記や学位証明書から専攻が読み取れないときは、成績証明書を追加します。
立証の範囲にも決まりがあります。ポイントの立証は、合計点が70点以上あることを示す資料が出ていれば足り、全項目の立証は求められません(9-40)。ただし、1年後の永住許可申請を考えている人は80点分の立証が必要です。学歴で80点に届くかどうかが決まる人は、学歴の資料を省かないでください。永住との関係は高度専門職から永住申請|70点で3年・80点で1年の条件とポイントの基準時点で扱っています。
所属企業がカテゴリー1・2の場合に簡素化されるのは、在留資格ごとに定められた基本の提出書類です(9-40)。ポイント計算表と各項目の疎明資料は別に列挙されているため、学歴の資料が不要になるわけではありません。過去の申請で出した学歴の資料は、発行から1年以上たっていても転用が認められています(9-41)。
海外の卒業証明書に疑義があるときは、在外公館を通じた照会が行われることがあります(第1節 1-13〜1-14)。照会が入ると審査期間が延び、記載の誤りが見つかれば学歴ポイントどころか申請全体の信用に響きます。卒業年月や学位名が他の書類とそろっているかは、提出前に確認しておくべき項目です。
よくある質問
Q. 法務博士(J.D.)は博士として30点になりますか?
30点にはなりません。法務博士は専門職大学院の修了者に授与される専門職学位で、審査要領はJ.D.やM.D.も含めて修士と同列に扱うとしています。学歴の項は20点です。研究学位の博士(Ph.D.)を別に持っていれば30点になります。
Q. 学士と修士を持っていると30点になりますか?
なりません。学歴の項は最も高い学位1つで数えるため、学士と修士を持つ人は20点です。審査要領も「20+10=30点とはならない」と明記しています。
Q. MBAを持っていると何点になりますか?
1号ロ・1号ハでは、専門職学位としての20点にMBA・MOTの5点が上乗せされ、25点になります。1号イ(研究者)にはMBA・MOTの加点が適用されないため、20点です。
Q. 学士と修士で専攻が違えば「複数の分野」の5点が付きますか?
条文上、複数分野の加点の対象は博士・修士・専門職学位で、学士は含まれていません。修士以上の学位を異なる専攻で2つ以上持っている場合に5点が付きます。
申請前に確認すること
まず、手元の学位記と卒業証明書を並べ、学位の種類(研究学位か専門職学位か)と専攻名を一覧にしてください。そのうえで、最も高い学位1つの点数、修士以上の学位が異なる専攻で2つあるか、MBA・MOTがあるか、日本の大学や告示大学の卒業に当たるかを順に確認します。専攻名が似ていて違いが伝わりにくい場合は、成績証明書を先に取り寄せておくと審査で慌てずに済みます。合計が70点前後、または80点前後になる人は、学歴の数え方ひとつで永住までの年数が変わるため、申請前に専門家の確認を受けることを勧めます。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 高度専門職 9-8〜9-9(1号イ 学歴の項)、9-19(特別加算 本邦の大学)、9-23〜9-24(1号ロ 学歴の項)、9-30(1号ハ 学歴の項)、9-37〜9-38(審査の順序)、9-40〜9-41(ポイント計算・立証資料)
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第1節 1-10〜1-14(学歴)
- 出入国在留管理庁 高度人材ポイント制「ポイント評価の仕組みは?」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/newimmiact_3_evaluate_index.html)
- 出入国在留管理庁 ポイント計算表(https://www.moj.go.jp/isa/content/930001657.pdf)