高度専門職の年収ポイントで数える年収は、今後1年間に受ける見込みの報酬です。ここでいう年収ポイントとは、ポイント計算表の年収の項目で、見込み年収の額と年齢に応じて付く点数を指します。年収には基本給と賞与を含めますが、残業代と、通勤手当・住宅手当などの実費弁償は含めません。点が付く年収の下限は年齢で変わり、30歳未満なら400万円、40歳以上なら800万円からです。
そのうえで、1号ロと1号ハには年収300万円の足切りがあります。300万円に満たなければ、ほかの項目で何点取っていても合計点はゼロです。学歴や日本語で70点を超えている人でも、年収の見込み額の出し方を誤れば申請の前提が崩れます。
根拠にしたのは、情報公開請求で開示された入国・在留審査要領 第12編第9節(9-10〜9-11、9-23〜9-25、9-29〜9-31)と、入管庁の高度人材ポイント制Q&Aです。これらをもとに、年収の数え方と300万円要件を整理します。なお、審査要領の表の一部はOCRが崩れて読み取れません。
この記事でわかること
- 年収ポイントに含める報酬、含めない報酬
- 残業代を含めない理由と、見込み年収の示し方
- 年齢ごとに変わる年収ポイントの早見表
- 年収300万円に届かないとどうなるか
- 更新や転職で年収が変わったときの影響
年収ポイントでいう「年収」とは
年収ポイントの「報酬」は、上陸基準省令の「研究」「教育」などの基準にいう報酬と同じ意味です。審査要領9-10は、これを「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」と定義し、基本給のほか勤勉手当や調整手当が含まれるとしています。働いたことへの対価かどうか、が線引きの基準です。
| 含める | 含めない |
|---|---|
| 基本給 | 超過勤務手当(残業代) |
| 賞与(入管庁Q&A Q7) | 通勤手当、扶養手当、住宅手当など実費弁償の性格のもの(課税対象となるものを除く) |
| 勤勉手当、調整手当など | 指定されていない会社からの副業収入 |
| 海外の会社から転勤して受け入れられている場合の、その会社から払われる報酬 | ― |
| 複数の機関を指定してもらった場合の、各機関の報酬の合計 | ― |
海外の親会社から転勤してきた社員の場合は、外国の機関から払われる報酬も年収に含めます(審査要領9-11、入管庁Q&A Q9)。ただしQ&Aは、その報酬についても立証が必要だとしています。
複数の勤務先がある人は、指定書で複数の機関を指定してもらえば、それぞれの報酬を合算して点数を計算できます(審査要領9-4)。指定されていない会社からの収入は、年収に入りません。
残業代はなぜ含めないのか
残業代も働いたことへの対価には違いありません。それでも除外される理由を、審査要領は次のように書いています。
超過勤務手当は、一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付であるが、申請時点においてどの程度の超過勤務が生ずるかは不確かであることから、ポイント計算の報酬には含めないこととしている。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 9-11
ここで重要なのは、除外の理由が「見込みとして不確かだから」という論点です。更新のときに過去の実績として残業代が確定していても、入管庁のQ&A(Q8)は、更新時も予定年収で判断するので過去の残業代は含まないと説明しています。毎年の源泉徴収票の額が500万円でも、そのうち80万円が残業代なら、年収ポイントの計算に使えるのは420万円です。
見込み年収で計算する
審査要領9-11は、年収を「今後1年間に所属機関から受ける報酬」と定めています。立証資料の表(9-41)でも、年収は過去の在留における年収を指すものでないと注記され、申請に係る活動で受ける「(予定)年収」を意味するとされています。
したがって、転職や昇給の直後でも、新しい条件の見込み額で計算します。反対に、前年の年収が高くても、今後1年間の見込み額が下がるなら、下がった額で計算することになります。
見込み額は、雇用契約書や労働条件通知書などで示すことになります。金額に疑いがある場合、入管は同じ会社の同じ職種の職員の年収と比べたり、決算書の給与総額を確かめたりします。更新申請なら、本人が過去に受けた報酬額と比べられます(審査要領9-11)。契約書の額と実際の支給額がかけ離れていれば、更新のときに説明を求められると考えておくべきです。
認定証明書の申請では、入国予定年月日の年齢で年収の点数を計算します(審査要領9-7)。年齢の境目にいる人は、入国予定日の書き方で使える年収の段が変わる点にも注意してください。
年齢で変わる年収ポイント
1号イ・1号ロの年収ポイントは、年齢によって点が付く下限が違います。入管庁のポイント計算表の1号ロの配点を、年齢別に並べると次のとおりです。
| 年収 | 30歳未満 | 30〜34歳 | 35〜39歳 | 40歳以上 |
|---|---|---|---|---|
| 1,000万円以上 | 40 | 40 | 40 | 40 |
| 900万円以上 | 35 | 35 | 35 | 35 |
| 800万円以上 | 30 | 30 | 30 | 30 |
| 700万円以上 | 25 | 25 | 25 | 0 |
| 600万円以上 | 20 | 20 | 20 | 0 |
| 500万円以上 | 15 | 15 | 0 | 0 |
| 400万円以上 | 10 | 0 | 0 | 0 |
下限の金額は、厚生労働省の平成22年賃金構造基本統計調査による「大卒・院卒以上(全産業)の平均年収額」を参考に設定されています(審査要領9-11)。その額は、20代約376万円、30代前半約491万円、30代後半約591万円、40代以上約750万円です。同じ年代の平均を上回る人に点を付ける、という考え方です。
年功序列の賃金体系のもとでは若い人ほど年収の点を取りにくいため、1号イ・ロには年齢の点数(29歳まで15、34歳まで10、39歳まで5)が別に設けられています(審査要領9-11〜9-12)。年収500万円の人は、34歳までなら年収15点と年齢10点で25点、35歳になると年収0点と年齢5点で5点になります。誕生日一つで20点動くこともあるわけで、申請の時期を決める際はこの境目を確かめておく必要があります。
1号イの年収表は、審査要領のOCRで読み取れる範囲では、1,000万円以上40点、800万円以上30点、600万円以上20点など1号ロと同じ構造です。一部の段はOCRが欠けているため、申請の際は入管庁の1号イの計算表で確認してください。
1号ハは年齢の区別がない
経営者・管理者の1号ハは、年収1,000万円10点、1,500万円20点、2,000万円30点、2,500万円40点、3,000万円50点です(入管庁のポイント計算表)。審査要領の1号ハの表は、中間の段と点数がOCRで崩れています。年齢による区別はなく、年齢の項目もありません。
審査要領9-30は、その理由を「企業等の経営者・管理者については年功序列的な賃金体系が採られていることは想定されず」と説明しています。加点が1,000万円から始まるのは、1号イ・ロの最高点が1,000万円以上に配点されており、経営幹部はそれより高い報酬を受けるのが通常だからです(審査要領9-31)。1号ハで年収が1,000万円に届かない人は、学歴・職歴・地位などで70点を積む必要があります。
年収300万円要件
1号ロと1号ハには、点数とは別の条件があります。契約機関(1号ハは活動機関)と外国所属機関から受ける報酬の年額の合計が300万円以上であることです(審査要領9-23、9-29)。
「高度専門職1号ロ」の在留資格については、年収が最低基準額に達しない場合は一律に点数をゼロ(不合格)となることを規定したものである。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 9-23
300万円という基準額は、比較的規模の小さい企業や若年層の年収を考慮して設定されたものです。参照されたのは、平成24年賃金構造基本統計調査による小企業(10〜99人)・全学歴・30歳未満の平均年収約290万円です(審査要領9-23)。1号ハも同じ扱いで、300万円に満たなければ合計点はゼロです(審査要領9-30)。
この要件は、点数の足りない分をほかの項目で補えない足切りです。たとえば、博士号(30点)、日本の大学院修了(10点)、N1(15点)、29歳(15点)で合計70点に届く研究開発職を考えます。この人でも、今後1年間の見込み年収が290万円なら合計はゼロとされ、1号ロには当たりません。その場合は、技人国など土台の在留資格で許可を受けるかを確認されることになります(審査要領9-36)。年収の計算に外国所属機関からの報酬を合算できる点は、海外から転勤してきた社員の判断で効いてきます。
2号への変更でも、1号ロ・ハを前提とする場合は年収300万円以上が要件です(審査要領9-47)。なお、特別高度人材(J-Skip)の年収2,000万円・4,000万円の要件も、過去の在留中の年収ではなく、申請に係る活動で受ける予定年収で判断されます(入管庁J-Skipページ)。J-Skipの詳細は特別高度人材制度(J-Skip)とは?年収2,000万円の要件・優遇措置・永住1年を解説で扱います。
更新や転職で年収が変わったら
1号の更新では、指定された活動を続けることに加えて、改めて70点以上あることが確認されます(審査要領9-39)。入管庁のQ&A(Q10・Q11)は、在留中に70点を割り込んでも直ちに在留できなくなるわけではないが、更新時に70点未満なら更新は受けられないと説明しています。
年収が変わらなくても、年齢が上がるだけで点数は下がります。30歳で年収450万円の人は、29歳まで使えた400万円の段が使えなくなり、年収10点と年齢5点を同時に失います。5年の在留期間の終わりに何歳になり、そのときの見込み年収がいくらかを、1号を取った時点で試算しておくと慌てずに済みます。更新の扱いは高度専門職の在留期間更新|更新時も70点が必要か、点数が足りないときで詳しく扱います。
転職では、新しい勤務先での見込み年収で計算し直します。1号の転職は在留資格変更許可申請になるため、年収が下がって70点や300万円を割れば、1号のままでは移れません。計算表の記入手順は高度専門職ポイント計算表の使い方と落とし穴|年収・学歴の数え方と立証資料、1号ロの要件全体は高度専門職1号ロとは?要件・ポイント・技人国との違い(国際業務は対象外)にまとめています。
よくある質問
Q. 残業代を含めれば年収が500万円を超えます。500万円として計算できますか?
できません。審査要領9-11は、申請時点でどの程度の超過勤務が生じるかは不確かであるとして、残業代をポイント計算の報酬に含めないとしています。更新のときも、過去に支払われた残業代は含めません。
Q. 賞与は年収に含めてよいですか?
含めます。入管庁の高度人材ポイント制Q&Aは、基本給・勤勉手当・調整手当等に加えて賞与も報酬に含むと説明しています。今後1年間に受ける見込みの額として、雇用契約書などで示せるようにしておきます。
Q. 前年の年収は300万円未満でしたが、今年から昇給して350万円になります。申請できますか?
年収の要件は今後1年間に受ける見込みの報酬で判断されるため、昇給後の見込み額が300万円以上なら要件を満たします。審査要領9-41も、過去の在留における年収ではなく予定年収を意味するとしています。
Q. 1号イにも年収300万円の要件はありますか?
審査要領と入管庁の計算表で年収300万円以上の要件が置かれているのは、1号ロと1号ハです。1号イの年収の点数も、年齢によって点が付く下限が変わる仕組みは1号ロと同じです。
年収欄を書く前にそろえるもの
年収欄を書く前に、雇用契約書か労働条件通知書で今後1年間の基本給・賞与・手当の見込み額を確かめ、残業代と実費弁償の手当を除いた額を出してください。次に、申請日(認定証明書なら入国予定日)の年齢で、その額に点が付くかを早見表で確認します。1号ロ・ハなら、300万円以上あるかも同時に見ます。
見込み額が年齢の下限や300万円の境目にある場合、賞与の扱いや外国所属機関からの報酬の立証で結果が変わります。資料を手元にそろえた段階で、申請前に専門家へ確認することをおすすめします。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節「高度専門職」9-3〜9-4、9-7、9-10〜9-12、9-23〜9-25、9-29〜9-31、9-36、9-39、9-41、9-47(情報公開請求による開示版。一部黒塗り・OCR不鮮明あり)
- 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/newimmiact_3_index.html、ポイント計算表 https://www.moj.go.jp/isa/content/930001657.pdf
- 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制Q&A」(令和8年4月時点)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/newimmiact_3_qa.html
- 出入国在留管理庁「特別高度人材制度(J-Skip)」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri01_00009.html