高度専門職1号ロとは、法務大臣が指定した会社などとの契約に基づいて、自然科学や人文科学の知識・技術を要する業務に従事する人のための在留資格です。エンジニア、研究開発職、企画・経理などの専門職が典型で、ポイント合計70点以上と、年収300万円以上の2つが条件になります。
業務の範囲は技術・人文知識・国際業務(以下「技人国」)とほぼ重なりますが、技人国の「国際業務」の部分は1号ロに含まれません。通訳・翻訳、語学指導、海外取引の窓口のように、外国の文化に根ざした感受性を使う仕事は、点数が何点あっても1号ロの対象外です。入管の内部基準である入国・在留審査要領が、その理由まで書いています。
根拠にしたのは、情報公開請求で開示された審査要領 第12編第9節(9-2〜9-58、一部はOCRが崩れて読み取れない箇所あり)と、入管庁の高度人材ポイント制の公表資料です。これらをもとに、1号ロの活動の範囲、要件、技人国との違い、切り替えるときの書類と審査期間を整理します。
この記事でわかること
- 1号ロでできる仕事と、国際業務が外れる理由
- 70点と年収300万円、2つの要件の中身
- 技人国との違い(転職・副業・在留期間・永住)
- 1号ロに切り替えたほうがよい人、技人国のままでよい人
- 必要書類と、公表されている審査期間
1号ロの活動の範囲
入管法別表第一の二の表は、1号ロの活動を「法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動」と定めています。平成26年改正前の高度人材ポイント制でいう「高度専門・技術活動」と同じ活動です(審査要領9-3)。
「法務大臣が指定する機関」とは、在留資格を決めるときに交付される指定書に書かれる勤務先を指します(審査要領9-3)。指定は一つに限られないため、複数の機関を指定してもらい、それぞれの報酬を合算して年収の点数を計算することもできます(審査要領9-4)。
「関連する事業を自ら経営する活動」は、本来の仕事で培った知識や技術を生かした事業の経営を想定しています。ただし「当該活動と併せて」と規定されているため、本来の仕事をやめて経営だけをすることは認められません(審査要領9-4〜9-5)。
範囲には、技人国より広い部分もあります。審査要領9-3は、航空機操縦士(パイロット)の業務は本来「技能」に整理されているものの、航空科学や航空気象学の知識を要するのが通常であるため、1号ロに該当するものとして扱うとしています。職種ごとの区分は船員・パイロットは何の在留資格?技人国・高度専門職1号ロ・技能の区分で扱っています。
なぜ「国際業務」は対象外なのか
1号ロの業務の定義は、技人国の定義と同じ文言です。違いは一点だけで、審査要領はこう書いています。
「高度専門職1号ロ」の在留資格においては、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に相当する活動のうち「国際業務」の部分は含まれない。これは、「国際業務」は「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」であり、「高度専門職1号ロ」の在留資格の概念には適しないとともに、思考や感受性のレベルの高低をポイントで測ることは困難であるからである。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 9-4
ここでいう国際業務とは、翻訳・通訳、語学の指導、広報・宣伝、海外取引業務、服飾や室内装飾のデザイン、商品開発など、外国の文化を背景にした発想や感性を使う業務を指します(基準省令の技人国の項)。学歴や年収のように数字で比べられる尺度がないため、点数制の在留資格にはなじまない、というのが審査要領の整理です。
実務で問題になるのは、一人の社員が技術系の仕事と通訳などを兼ねている場合です。1号ロで申請するなら、雇用契約書や業務内容の説明で、主たる業務が自然科学・人文科学の知識を要する業務であることを示す必要があります。翻訳・通訳や接客など言語能力を使う対人業務が中心の社員は、技人国で在留することになります。令和8年4月15日からは、その場合にCEFR B2相当の言語能力が前提になっています(入管庁「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について 別紙4)。
1号ロの要件
1号ロの審査は二段階で進みます(審査要領9-35)。一段目は、技人国などの土台になる在留資格の在留資格該当性と上陸許可基準適合性です。在留資格該当性とは予定している活動が入管法の活動に当たるかどうか、上陸許可基準適合性とは法務省令の学歴や報酬の基準を満たすかどうかを指します。技人国が土台なら、大学卒業などの学歴か10年以上の実務経験と、業務との関連性が必要です。二段目で、1号ロに当たるかと、ポイントの基準を満たすかが審査されます。
加えて、上陸基準省令第2号により、活動が日本の産業や国民生活に与える影響などの観点から相当でない場合は、基準に適合しないとされます。日本人の就職や労働条件への影響、治安への影響なども判断材料です(審査要領9-6)。
ポイントの配点は次のとおりです(入管庁のポイント計算表による。審査要領の1号ロの表は点数欄のOCRが崩れている段があります)。
| 項目 | 基準と点数 |
|---|---|
| 学歴 | 博士30/修士・専門職学位20/大卒10。専攻が異なる複数の学位で+5、MBA・MOTで+5 |
| 職歴(従事する業務の実務経験) | 10年以上20/7年以上15/5年以上10/3年以上5 |
| 年収 | 1,000万円40/900万円35/800万円30/700万円25と600万円20(39歳まで)/500万円15(34歳まで)/400万円10(29歳まで) |
| 年齢 | 29歳まで15/34歳まで10/39歳まで5 |
| 研究実績 | 特許・補助金を受けた研究・論文などのいずれかで15(審査要領9-25) |
| 資格 | 業務に関連する日本の国家資格など(計算表では1つ5点) |
| 特別加算 | 日本語N1相当15・N2相当10、日本の大学卒業10、イノベーション支援を受けた機関10(中小企業はさらに10)など |
そしてもう一つが年収の下限です。ここで重要なのは、300万円の要件がほかの項目と足し引きされない足切りだという論点です。
「高度専門職1号ロ」及び「高度専門職1号ハ」の在留資格については、高度専門職省令の規定により、300万円に満たない場合は、他の項目の点数にかかわらず、合計点は零となることに留意する。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 9-25
年収は今後1年間に受ける見込みの報酬で、残業代や通勤手当などの実費弁償は含めません(審査要領9-10〜9-11)。数え方は高度専門職の年収ポイント|残業代・見込み年収と年収300万円要件、計算表全体の書き方は高度専門職ビザとは?1号イ・ロ・ハの違い・ポイント制・優遇措置を審査要領で解説から各記事へたどれます。
技人国との違い
同じ仕事をしていても、在留資格が技人国か1号ロかで、転職・副業・家族・永住の扱いが変わります。
| 技術・人文知識・国際業務 | 高度専門職1号ロ | |
|---|---|---|
| 業務の範囲 | 技術・人文知識・国際業務 | 技術・人文知識(国際業務は対象外) |
| 在留期間 | 5年・3年・1年・3月のいずれか | 一律5年 |
| 働ける会社 | 特定の会社に限られない | 指定書で指定された機関 |
| 転職 | 同じ在留資格の範囲なら14日以内の届出 | 在留資格変更許可申請が必要 |
| 永住に必要な在留歴 | 原則の要件による | 70点以上で3年、80点以上で1年 |
| 配偶者・親・家事使用人 | 配偶者は家族滞在(就労は資格外活動許可の範囲) | 配偶者の就労、条件つきで親・家事使用人の帯同 |
| 処理 | 通常の処理 | 優先処理の対象 |
1号ロの配偶者は、学歴や職歴の要件なしに就労できます(同居と、日本人と同等額以上の報酬が必要)。親の帯同は世帯年収800万円以上、家事使用人の帯同は世帯年収1,000万円以上などの条件つきです(入管庁 高度人材ポイント制Q&A)。
1号ロは、範囲が技人国より広い面も持っています。技人国は入管法上、教授・経営・管理・法律・会計業務・医療などの在留資格に当たる活動を除外していますが、1号ロにはその除外がありません。審査要領9-37は、1号ロについて「他の活動と重複する活動が除外されていないため」、1号イや1号ハに相当する活動をする場合も対象になりうるとしています。また、70点に届かなかったときに想定される在留資格として、技人国のほか法律・会計業務、医療、企業内転勤などを挙げています。
同じ会社で取締役に昇進した場合の扱いも、入管庁のQ&A(Q24)に書かれています。1号ハへの変更は「受けることはできますが、受ける必要はありません」とされています。
転職・副業で気をつけること
1号ロの最大の制約は、働く機関が指定されていることです。審査要領9-37は、1号で在留する人が活動内容を変更する場合は、契約機関の変更を含めて在留資格変更の対象になるとしています。技人国のように14日以内の届出だけで転職を済ませることはできず、新しい勤務先の条件でポイントを計算し直す必要があります。転職後の年収が下がれば70点を割ることもあります。詳しくは高度専門職1号ロで転職したら?在留資格変更許可が必要な理由と指定書・14日以内の届出で扱います。技人国の転職手続と比べたい場合は技術・人文知識・国際業務の外国人が転職したら?企業に必要な届出と手続きを解説が参考になります。
副業も同じ考え方です。1号イと違い、1号ロには指定された機関以外との契約による活動が含まれていません。
「高度専門職1号ロ」に従事する外国人は企業等に雇用されて就労することが想定され、多くの場合就業規則に兼業禁止規定が置かれていると考えられるので、契約機関以外の機関での就労を資格外活動許可にかからしめても、そのことが当該外国人の活動について不合理な制約であるということにはならないと考えられる。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 9-3〜9-4
指定されていない会社から仕事を受けるなら、資格外活動許可を取るか、その会社も指定してもらう必要があります。後者なら報酬を合算して年収の点数を計算できます(審査要領9-4、9-46)。
更新にも注意が必要です。1号の更新では、指定された活動を続けることと、改めて70点以上あることが確認されます(審査要領9-39)。入管庁のQ&Aは、在留中に70点を割っても直ちに在留できなくなるわけではないが、更新時に70点未満なら1号としての更新は受けられないと説明しています。年齢が上がると年齢の点数が下がり、年収の点が付く下限も上がるため、5年後の更新時の点数は申請時より低くなりやすい点を見込んでおいてください。
必要書類
申請書は、土台になる在留資格の様式を使います(審査要領9-35)。提出する書類は3つの層に分かれます(審査要領9-40〜9-45)。
- 土台となる在留資格(技人国など)の提出書類。勤務先がカテゴリー1・2に当たる会社なら、在留資格を決める申請では申請書とカテゴリーを立証する資料のみ、更新では申請書のみ
- 高度専門職ポイント計算表(1号ロの様式、自己申告)
- 計算表の各項目を立証する資料:卒業証明書と学位取得の証明書、在籍した機関が作成した在職証明書、予定年収を証する文書、日本語能力試験の合格証明書、補助金交付決定通知書の写しなど
カテゴリーとは、会社の規模や源泉徴収税額などに応じて提出書類の量を決める区分を指します。点数の立証は、合計70点以上(1年後に永住申請を予定するなら80点以上)あることを示せば足り、全項目の資料は求められません(審査要領9-40)。過去の申請で出した資料は、申請日から1年以上前に発行・作成されたものでも転用できます(審査要領9-40〜9-41)。
審査期間と70点に届かなかったとき
審査要領9-58は、高度専門職の申請は「全て優先処理するものとする」とし、目安を認定証明書10日以内、変更・更新5日以内としています。ただ、入管庁が公表した令和8年7月許可分の平均処理日数では、1号ロは認定証明書38.7日、更新38.8日、変更51.5日でした。目安は努力目標であり、研究実績を申出で評価する場合や資料に疑義がある場合は目安の対象外にもなります。入社日から逆算し、変更なら2か月程度の余裕を見ておくのが現実的です。
入管の計算で70点に届かなかった場合も、すぐに不許可となるわけではありません。ほかに当たる区分があればその区分で計算し直され、どの区分でも届かなければ、技人国など土台の在留資格で許可を受けるかを確認されます(審査要領9-36〜9-38)。
当事務所で扱った事例
1号ロの審査で最初に見られるのは、土台となる技人国の該当性です。当事務所が扱った技人国の案件では、業務そのものには十分な専門性があったにもかかわらず、雇用理由書の書き方が原因で単純作業と誤認されたことがありました。業務の中身に問題はなく、説明の粒度が足りなかったことが原因です。1号ロで申請する場合も、点数の資料をそろえる前に、業務内容の説明がこの水準を満たしているかを確認してください。
※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。
1号ロに切り替えるべきか
判断の軸は、今後5年の予定です。永住許可をできるだけ早く申請したい人、親を呼び寄せたい人、配偶者に就労制限なく働いてもらいたい人は、1号ロの利点が大きくなります。70点を超えていれば、技人国のまま更新を重ねるより、永住までの道のりが短くなります。
反対に、数年以内に転職を考えている人や、年収が300万円前後で揺れる人、通訳などの国際業務の比重が大きい人は、技人国のほうが扱いやすい場合があります。1号ロは転職のたびに変更許可が必要で、条件が変わるたびに点数を計算し直すことになるからです。筆者は、点数だけでなく、この5年の働き方の見通しと合わせて選ぶことをおすすめしています。
よくある質問
Q. 通訳・翻訳の仕事で高度専門職1号ロは取れますか?
取れません。1号ロの業務は技人国と同じ言葉で定義されていますが、「国際業務」の部分は含まれないと審査要領9-4に明記されています。通訳・翻訳や語学指導が中心の仕事は、技人国で申請することになります。
Q. 1号ロになると、副業は自由にできますか?
自由にはできません。指定書で指定された機関以外の会社の仕事をするには、資格外活動許可が必要です。関連する事業を自ら経営することは、本来の仕事と併せて行う場合に限って認められます。
Q. 1号ロの年収の下限はいくらですか?
契約機関と外国所属機関から受ける報酬の年額の合計が300万円以上であることが必要です。300万円に満たない場合は、ほかの項目で何点取っていても合計点がゼロになります。
Q. 技人国のままでいるより1号ロに変えたほうが得ですか?
永住を早めたい、親を呼び寄せたい、配偶者にフルタイムで働いてもらいたいといった希望がある人には利点が大きい資格です。一方、転職のたびに在留資格変更許可申請が必要になるため、転職を予定している人は時期を考えて選ぶ必要があります。
Q. 1号ロで同じ会社の取締役に昇進したら、1号ハに変更しなければなりませんか?
変更する必要はありません。入管庁の高度人材ポイント制Q&A(Q24)は、1号ハへの変更を「受けることはできますが、受ける必要はありません」と説明しています。
切り替えを考えたら確認する順番
技人国から1号ロへの切り替えを考えたら、次の順で確認してください。まず、いまの業務が国際業務でなく、技術・人文知識の業務として説明できるか。次に、今後1年間の見込み年収が300万円以上あり、残業代を除いた額で計算しているか。最後に、入管庁の1号ロのポイント計算表で70点、永住を急ぐなら80点に届くか。3つがそろえば、変更申請の準備に進めます。
業務内容の説明や区分の選び方で迷う場合は、雇用契約書と計算表の下書きを用意したうえで、申請前に専門家へ相談してください。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節「高度専門職」9-2〜9-7、9-10〜9-11、9-23〜9-25、9-35〜9-46、9-58(情報公開請求による開示版。一部黒塗り・OCR不鮮明あり)
- 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/newimmiact_3_index.html、ポイント計算表 https://www.moj.go.jp/isa/content/930001657.pdf
- 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制Q&A」(令和8年4月時点)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/newimmiact_3_qa.html
- 出入国在留管理庁「在留審査処理期間(令和8年7月許可分)」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00140.html
- 出入国在留管理庁「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」別紙4 https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
- 出入国管理及び難民認定法 別表第一の二の表「高度専門職」「技術・人文知識・国際業務」、基準省令 技術・人文知識・国際業務の項