日本語学校の卒業だけを学歴として、技術・人文知識・国際業務(技人国)を取ることは原則としてできません。専修学校の専門課程として設置された日本語学校で「専門士」の称号を得ていても同じです。入国・在留審査要領 第12編(開示版)15-13は、日本語課程の修了者を技人国に「該当しないものと判断して差し支えない」としています。
ただし、道が閉ざされるわけではありません。母国の大学を卒業している人は、その学歴で申請できます。通訳・翻訳などの国際業務であれば、関連する業務に3年以上の実務経験がある人も対象になります。日本語学校は技人国の学歴の根拠にはならず、本人の別の学歴か職歴が根拠になる、というのが審査要領の整理です。
採用する会社が最初に確認すべきなのは、日本語学校に来る前の学歴です。卒業証明書と学位の有無が、申請できるかどうかを決めます。
この記事でわかること
- 日本語課程で専門士を取っても技人国の学歴にならない理由(15-13)
- 母国の大学卒の学歴で申請できる場合
- 国際業務で必要な3年の実務経験と、通訳業務のB2要件
- 留学中のアルバイトと出席状況が就職の審査で見られる点
技人国の学歴要件と「日本語学校」の位置
技人国の基準省令第1号は、自然科学・人文科学の分野の業務に就く人に、次のいずれかを求めています(15-8)。関連科目を専攻して大学を卒業し、またはこれと同等以上の教育を受けたこと(イ)。関連科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了し、告示の要件を満たすこと(ロ)。10年以上の実務経験があること(ハ)。
日本語学校と呼ばれる学校には、専修学校の専門課程として設置されているものと、そうでないものがあります。専修学校でない日本語教育機関は、そもそもロの「本邦の専修学校の専門課程」に当たりません。問題になるのは前者で、専門課程の修業年限や授業時間数を満たせば専門士の称号が付与されることがあります。専門士は、修業年限2年以上・授業時間数1,700時間以上などの要件を満たした人に付与される称号です(1-14)。形式だけを見れば、日本語課程の修了者もロの要件を満たすように見えます。
この形式上のずれを、審査要領は15-13で個別に取り上げています。ここでいう日本語課程とは、「日本語教育機関である専修学校の専門課程(告示日本語教育機関及び認定日本語教育機関の日本語課程)」を指し、15-13はこれを修了した人の扱いを定めています。
審査要領15-13:専門士でも技人国の学歴として評価しない
15-13は、目指す業務の種類ごとに二つの段落で結論を書いています。一つ目は国際業務についてです。
審査要領ではこう書かれている(第12編 15-13)
「日本語教育機関である専修学校の専門課程を修了した者が、外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合、『専門士』の称号を取得していたとしても、関連する業務に三年以上の実務経験を有する場合を除き、『技術・人文知識・国際業務』の基準を満たさない。」
二つ目は、自然科学・人文科学の業務(技術・人文知識)についてです。
審査要領ではこう書かれている(第12編 15-13)
「日本語教育機関は簡易な程度で日本語予備教育を行うことを目的としていることから、たとえ専門士の称号を得ていたとしても、このような主に日本語予備教育を受けた者が修了後において『自然科学又は人文知識の分野に属する必要な技術又は知識を習得している』者とは評価し難い」
続けて、外国の大学で修業年限3年以上の課程を修了して学士に相当する学位を授与された者等を除き、技人国に「該当しないものと判断して差し支えない」としています。
理由の核は、教育の中身です。技人国の業務には「学問的・体系的な知識」が必要とされ(15-2)、専門学校卒の学歴は、専攻した科目と業務の間に「相当程度の関連性」があることを前提に評価されます(15-10)。日本語の予備教育を受けたことは、日本語能力の裏づけにはなっても、たとえば経理やシステム開発に必要な専門知識の裏づけにはなりません。称号の形式より、何を修得したかという実質で学歴を評価する考え方です。なお、15-13の(オ)の直前には意味をなさない文字列があり、黒塗りの可能性があります。
目指す業務と本人の経歴の組合せで整理すると、次のようになります。
| 本人の経歴 | 技術・人文知識の業務 | 国際業務(通訳・翻訳・海外取引など) |
|---|---|---|
| 日本語課程の修了のみ(専門士あり) | 該当しないと判断して差し支えない | 基準を満たさない |
| 日本語課程+関連業務の実務経験3年以上 | 3年では足りない(実務経験なら10年) | 3年の実務経験で対象になり得る |
| 日本語課程+外国の大学卒(学士相当) | 外国の大学の学歴で判断 | 翻訳・通訳・語学の指導は実務経験不要。広報・海外取引などは3年が必要 |
母国の大学を卒業している人は、その学歴で申請する
日本語学校の在籍者の中には、母国で大学を卒業してから来日した人が少なくありません。この場合の学歴の根拠は、日本語学校ではなく母国の大学です。15-13も、外国の大学で修業年限3年以上の課程を修了して学士相当の学位を授与された人「等」を例外としています。
外国の学歴が「大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受け」たことに当たるかは、文部科学省編「諸外国の学校教育」で高等教育機関に位置づけられている機関かどうかで判断されます(1-13)。中国の大学(本科・専科を含む)、専科学校、短期職業大学の卒業者も、技人国ではこれに当たる扱いです(1-13)。一方、日本の専門学校にあたる外国の教育機関の卒業は基準に適合しないとされています(出入国在留管理庁Q&A Q35)。海外の学歴の評価と照会の方法は海外の大学・中国の専科の学歴はどう評価される?審査要領の学歴照会と偽造の確認で扱っています。
大学卒業者の専攻と業務の関連性は「比較的緩やかに判断される」とされ(15-10)、公表資料も外国の大学を含めて柔軟に判断するとしています。日本語学校の在籍者を採用するときは、日本語学校の修了証より先に、母国の大学の卒業証明書と学位の記載を確認してください。大卒と専門学校卒の関連性の違いは大卒と専門学校卒で違う「専攻と業務の関連性」|審査要領15-10の判断の差で詳しく書いています。
国際業務と「関連する業務に3年以上」
国際業務の枠で申請できるのは、翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、服飾・室内装飾のデザイン、商品開発とこれらに類似する業務に限られます(15-17〜15-18)。基準省令第2号は原則として3年以上の実務経験を求めており、審査要領は、この経験は「関連する業務について」のものであれば足りるとしています。大学を卒業した人が翻訳・通訳・語学の指導に就く場合は、3年の経験も要りません。
日本語学校の修了者が3年の実務経験で申請する場合、注意すべき点が二つあります。一つは、日本語学校に在籍している間のアルバイトは実務経験に入らないことです。実務経験は「職業活動として従事した期間」をいい、教育機関に所属している間にアルバイト的に従事した期間は含まれません(1-16)。もう一つは、特定技能・技能実習で働いた期間も、基本的には実務経験と評価されないことです(15-11〜15-12、15-18)。実務経験の数え方は就労ビザの実務経験年数の数え方|アルバイト・インターンは職歴に入るかで整理しています。
2026年4月15日からは、翻訳・通訳や接客など主に言語能力を用いる対人業務について、CEFR・B2相当の言語能力が前提とされました(別紙4)。日本語でB2相当とみなされるものとして、日本語能力試験N2以上やBJT 400点以上が挙げられています。カテゴリー3・4の機関では、申請時にその証明資料の提出が必要です。
留学中の在留状況も審査される
留学から技人国への変更は、在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるかどうかで判断されます。ここで重要なのは、学歴の要件を満たしていても、留学中の在留状況が相当性の判断で別に見られるという論点です。
出入国在留管理庁の「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」は、変更時の考慮の例を挙げています。その一つが、資格外活動で恒常的に週28時間を超えるアルバイトをしていた場合は素行が善良とはみなさないという扱いです。別紙3には、留学中に1年以上、月200時間以上のアルバイトをしていたことが判明して不許可になった事例や、出席率が70%で、欠席中に資格外活動をしていた専門学校卒の不許可事例が載っています。日本語学校の在籍期間も、この審査の対象になります。
手続の時期については、卒業見込みの段階でも変更申請ができ(Q&A Q13)、卒業して学籍がなくなった後はアルバイトができません(Q15)。出入国在留管理庁は、4月入社の場合は12月1日から1月末までに申請するよう求めています。留学からの変更で書類を省略できる扱いが、2025年12月1日から始まっています。対象は、日本の大学卒業(予定)者、一定の世界大学ランキングで300位以内の海外大学の卒業者、留学から就労資格に変更した人を現に雇用し1回以上更新を受けている機関などです。申請の手順は留学から技術・人文知識・国際業務への在留資格変更ガイド|手順・必要書類・不許可対策で確認できます。
よくある質問
Q. 日本語学校で「専門士」を取得していれば、技人国の学歴要件を満たしますか?
原則として満たしません。審査要領は、日本語教育機関である専修学校の専門課程を修了した人は、専門士の称号を取得していても、技人国の業務に必要な技術・知識を修得した者とは評価し難いとしています(15-13)。
Q. 母国の大学を卒業してから日本語学校に通った場合はどうなりますか?
母国の大学の学歴で申請できます。審査要領は、外国の大学で修業年限3年以上の課程を修了して学士相当の学位を授与された人等を、日本語課程の取扱いの例外としています。その場合は、日本語学校ではなく外国の大学の学歴と専攻で基準への適合を判断します。
Q. 日本語学校卒で通訳・翻訳の仕事に就くことはできますか?
日本語課程の修了だけでは難しく、通訳・翻訳などの国際業務では、関連する業務に3年以上の実務経験がある場合を除き基準を満たさないとされています。在学中のアルバイト期間は実務経験に含まれません。大学を卒業していれば、翻訳・通訳・語学の指導は実務経験なしで申請できます。
Q. 日本語学校在学中のアルバイトは、就職の審査に影響しますか?
影響します。出入国在留管理庁は、資格外活動で恒常的に週28時間を超えるアルバイトをしていた場合は素行が善良とはみなさないとしています。留学中に1年以上、月200時間以上のアルバイトをしていたことが判明して不許可になった事例も公表されています。
採用を決める前に確かめること
日本語学校の在籍者に内定を出す前に、三つのことを確かめてください。一つ目は、日本語学校に入る前の最終学歴で、大学(短大・専科を含む)の卒業証明書と学位の記載があるかどうかです。二つ目は、担当させる業務が技術・人文知識の業務か国際業務かで、国際業務なら大卒か、関連業務の3年の職歴があるかを確認します。三つ目は、留学中のアルバイト時間と出席状況で、本人に資格外活動の実績を聞き取っておきます。
母国の大学の学歴も3年の職歴もない場合は、技人国での採用は見送り、日本の大学・専門学校への進学後に採用するか、別の在留資格を検討することになります。在留資格ごとの違いは外国人を採用できる在留資格の種類一覧|企業が選ぶべきビザをわかりやすく解説で確認できます。学歴の読み方に迷う場合は、卒業証明書を手元にそろえた段階でご相談ください。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節「技術・人文知識・国際業務」15-2、15-8、15-10〜15-13、15-17〜15-19
- 同 第2章第1節第5「学歴」1-13〜1-14、第7「実務経験」1-16
- 出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html
- 同 別紙3(許可・不許可事例)https://www.moj.go.jp/isa/content/001413912.pdf
- 同 別紙4(翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務)https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf
- 出入国在留管理庁「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」https://www.moj.go.jp/isa/content/001344550.pdf
- 出入国在留管理庁「在留資格『留学』から就労資格への変更申請を予定されている皆様へ」https://www.moj.go.jp/isa/10_00240.html