外国人を派遣社員として雇い、取引先に派遣すること自体は、技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)などの就労ビザで認められています。ただし2026年3月9日の申請分から、派遣先を確定させてから申請しなければ許可を受けられない運用に変わりました。根拠は、出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』をもって派遣形態で就労する場合の取扱いについて」(令和8年7月)です。
入管の内部基準である入国・在留審査要領の開示版(2025年12月スキャン)は、登録型派遣でも、在留期間中に特定の派遣先で働く見込みがあれば差し支えないとしていました(第12編(開示版)1-9)。公表資料のほうが新しいため、現在の結論は「派遣先の確定が必須」です。例外は、新規採用者に研修をした後でなければ派遣先が決まらない場合に限られます。
審査の対象になるのは、派遣先で実際に行う仕事です。派遣会社の担当者と、派遣で働く外国人本人の両方に向けて、2026年の変更点と、審査要領が定める判断の枠組みを整理します。
この記事でわかること
- 派遣社員の在留資格は派遣先の業務で判断されるという審査要領の原則
- 2026年3月9日からの変更点(派遣先の確定・誓約書・個別契約書)
- 研修後に派遣先が決まる場合の例外と、更新時に求められる書類
- 常用型派遣・登録型派遣の扱いとカテゴリーの決まり方
- 特定技能・技能で派遣する場合の違い
雇い主は派遣元、審査されるのは派遣先の仕事
派遣会社に雇われて取引先で働く外国人について、審査要領は第1節第4「労働者派遣事業を営む企業等へ就職する外国人の取扱い」で扱いを定めています。中心となるのは次の一文です。
審査要領ではこう書かれている
申請人が本邦において行おうとする活動は、派遣先において従事しようとする活動に基づき、在留資格該当性を判断する。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第2章第1節第4 2(1)(1-9)
ここでいう在留資格該当性とは、日本で行う活動が、その在留資格として法律が定める活動に当たるかどうかを指します。派遣の場合、雇用契約を結ぶのは派遣元ですが、日々の仕事の中身を決めるのは派遣先です。そのため入管は、派遣元の事業内容より、派遣先で何をするかを見ます。公表資料の「就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」(令和8年7月)のQ24〜Q27も、活動内容は派遣先の業務で判断すると説明しています。
派遣元がIT企業でも、派遣先の現場で行う作業が技人国の範囲に入らなければ許可は出ません。入管庁が公表している不許可例には、専門学校卒の申請人で、派遣先が小売店であり、実際の業務が接客販売だったものがあります(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について 別紙3)。技人国で派遣する場合に派遣先で認められる業務の範囲は技術・人文知識・国際業務ビザは派遣で受け入れ可能?派遣先の業務内容と審査の注意点でも扱っています。
2026年3月9日から変わったこと
入管庁は令和8年7月に「在留資格『技術・人文知識・国際業務』をもって派遣形態で就労する場合の取扱いについて」を更新し、令和8年3月9日の申請分から提出書類を変えました。審査要領の開示版と並べると、違いは次のとおりです。
| 論点 | 審査要領(開示版・2025年12月スキャン) | 公表資料(令和8年7月) |
|---|---|---|
| 派遣先が決まっていない申請 | 登録型派遣でも、在留期間内に特定の派遣先で活動が見込まれれば差し支えない(1-9) | 申請時点で派遣先が確定していなければ許可等を受けられない。必ず派遣先を確定させてから申請する |
| 例外 | 記載なし | 新規採用者に研修をした後でなければ派遣先が決まらない場合 |
| 在留期間 | 派遣に特有の記載なし | 派遣契約期間に応じた在留期間を決定する |
| 派遣先への確認 | 記載なし | 派遣元だけでなく派遣先にも業務内容や活動状況を直接確認することがある |
| 追加された提出書類 | ― | 申請人の派遣労働に関する誓約書(派遣元用・派遣先用)、労働者派遣個別契約書 |
ここで重要なのは、派遣先の確定が「望ましい」ではなく「条件」になったという論点です。審査要領の開示版の扱いでは、登録型でも派遣先の見込みがあれば足りるとされていたため、派遣先の確定前に申請する余地がありました。公表資料は、在留資格を先に取ってから派遣先を探す順序では原則として許可しないと明言しています。在留期間が派遣契約期間に応じて決まるようになったことも、派遣先との契約を先に固めておく必要性を強めています。
【要確認】公表資料の表題は技人国を対象としています。技能など他の就労資格で派遣する場合に同じ書類がどこまで求められるかは、この資料からは読み取れません。技能については、在留資格「技能」のページが、派遣の場合は派遣先での活動内容の資料を提出書類に挙げています。
研修後に派遣先が決まる場合の例外
公表資料が例外として認めるのは、新規採用者に研修をした後でなければ派遣先が決まらない場合だけです。この場合は、次の書類を出して申請します。
- 研修の内容を示す資料
- 派遣先で予定する業務の範囲を具体的に書いた労働条件通知書
- 派遣元の誓約書(2種)
研修が終わって派遣先が決まったら、派遣先の誓約書と労働者派遣個別契約書を作成し、派遣元が保管します。これらは次回の更新申請のときに提出します。合理的な理由なく出せない場合は、今後の審査で消極事由になるとされています。
研修期間そのものの扱いにも注意が必要です。入管庁の別紙1は、採用当初の研修で技人国に当たらない業務をすることを、日本人の大卒社員等にも同じように行う研修の一環で、在留期間の大半を占めないものに限って認めています。研修が1年を超える場合は研修計画の提出を求められます。研修の条件は入社後の現場研修は技人国でできる?審査要領が認める「採用当初の実務研修」の条件で詳しく扱っています。
常用型派遣と登録型派遣
審査要領は、派遣労働者を二つに分けています。派遣先があるかどうかにかかわらず派遣会社と雇用契約が結ばれている形を常用型派遣、派遣先があるときだけ雇用契約が生じる形を登録型派遣と呼びます(1-9)。そのうえで、在留資格の審査では次のように扱うとしています。
審査要領ではこう書かれている
派遣労働者には、上記(3)のとおり常用型派遣と登録型派遣があるところ、原則として常用型派遣であることを要する。ただし、登録型派遣であっても、許可する在留期間内に派遣元との雇用契約に基づき、特定された派遣先において許可する在留資格に係る活動を行うことが見込まれる場合は、登録型派遣であっても差し支えない。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第2章第1節第4 2(2)(1-9)
在留資格は、在留期間中その活動を継続することを前提に与えられます。派遣先がないあいだ雇用契約も消える登録型派遣では、その前提が崩れやすいため、原則として常用型が求められてきました。2026年3月からの運用では、常用型であっても派遣先を確定させてから申請する必要があります。常用型で雇用されていることは、派遣先の確定に代わるものではありません。
カテゴリーは派遣元で決まる
就労系の在留資格では、雇用する機関の規模や納税実績によって提出書類がカテゴリー1〜4に分かれています。審査要領は、派遣労働者についても「雇用契約を締結している機関に基づき」提出資料を求めるとしています(1-9)。派遣先が上場企業でも、派遣元がカテゴリー3であれば、カテゴリー3の書類が必要です。
もう一つ、留学生を採用するときの書類省略にも注意があります。入管庁は2025年12月1日から、日本の大学を卒業(予定)した留学生などが留学から技人国へ変更する場合に、カテゴリー2と同じ書類省略を使えるようにしました。ただし派遣形態は対象外です(入管庁「在留資格『留学』から就労資格への変更申請を予定されている皆様へ」)。留学生の変更手続全体は留学から技術・人文知識・国際業務への在留資格変更ガイド|手順・必要書類・不許可対策で確認してください。
派遣法の制限と「適法性」の要件
審査要領は、在留資格の前提となる契約に基づく活動が「本邦において適法に行われるものであることを要する」としています(1-1)。派遣の場合、労働者派遣法に違反する派遣は、この適法性の問題になります。審査要領は第1節第4で派遣法の概要として、次の制限を挙げています(1-7〜1-9)。
- 派遣先への派遣期間は原則1年で、3年まで延長できるが、労働者の代表の意見を聴く義務がある
- 建設業務、警備業務、港湾業務には派遣できない。医療業務も、紹介予定派遣など一部を除き派遣できない
- 派遣社員を派遣先からさらに別の会社へ派遣すること(再派遣)はできない
なお、開示版の派遣法概要には、「特定労働者派遣事業」「一般労働者派遣事業」の区分や政令で定める業務の列挙など、記載が古いまま残っているとみられる部分があります。派遣法の現行規定は、審査要領の概要に頼らず別途確認してください。
入管が派遣の現場で確かめること
公表資料は、審査の際に派遣元だけでなく派遣先にも業務内容や活動状況を直接確認することがある、としています。書類上の業務内容と派遣先での実際の仕事が合っているか、誰の指揮命令で働いているかは、派遣先への確認で表に出ます。
ケース:指揮命令系統図の提出を求められた
当事務所が扱った案件で、組織図のどこに本人が位置し、誰の指揮命令のもとで働いているのかを示す資料の提出を、入管から求められたことがありました。組織内の位置づけと、他社の指揮命令下に置かれていないかを確認する趣旨です。派遣の場合は、派遣元と派遣先のどちらが何を指示するのかを、契約書と実際の運用の両面で説明できるようにしておく必要があります。
※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。
業務委託や請負の形で外国人を取引先に常駐させる場合も、実態が派遣であれば同じ問題が生じます。業務委託の扱いは業務委託・フリーランスで就労ビザは取れる?「本邦の公私の機関との契約」の継続性で扱っています。
特定技能・技能で派遣する場合
特定技能で派遣が認められるのは、分野別運用方針で労働者派遣を採ることとしている農業分野と漁業分野だけです(18の3-41〜18の3-43)。しかも、雇用期間のすべてについて派遣先と派遣期間が定められていることが求められます。特定技能雇用契約書、労働者派遣契約書、派遣計画書(参考様式第1-12号)、就業条件明示書で、すべての派遣先の名称・住所と派遣期間が確認されます。派遣先が決まっていない契約は、この段階で認められません。派遣元・派遣先それぞれの基準は特定技能で派遣はできる?農業・漁業に限られる理由と派遣元・派遣先の基準を参照してください。
技能(外国料理の調理師など)で派遣する場合は、在留資格「技能」のページが、派遣の場合は派遣先での活動内容を明らかにする資料を提出書類に挙げています。
派遣元と派遣先がそろえておくもの
2026年3月以降の技人国の派遣申請で、派遣元と派遣先が準備するものを並べると次のとおりです。
| 誰が | 準備するもの |
|---|---|
| 派遣元 | 雇用契約書・労働条件通知書(派遣先で行う業務を具体的に記載)、申請人の派遣労働に関する誓約書(派遣元用)、カテゴリーに応じた派遣元の資料 |
| 派遣先 | 申請人の派遣労働に関する誓約書(派遣先用) |
| 両者 | 労働者派遣個別契約書(派遣期間が在留期間の決定に使われる) |
| 研修後に派遣先が決まる場合 | 研修内容の資料、派遣先で予定する業務範囲を書いた労働条件通知書、派遣元の誓約書2種。派遣先決定後の誓約書・個別契約書は派遣元が保管し、次回更新時に提出 |
在留中の外国人社員の派遣先が変わる場合、入管法19条の16・19条の17の届出との関係は、審査要領の第9編の2に委ねられています(1-10)。派遣先の変更で業務内容が変わるなら、その業務が現在の在留資格の範囲に入るかを先に確かめてください。
よくある質問
Q. 派遣社員として外国人を雇って技人国ビザを取れますか?
取れます。ただし在留資格該当性は派遣先で従事する業務で判断されます。2026年3月9日の申請分からは、派遣先を確定させてから申請しなければ許可等を受けられません。
Q. 派遣先が決まる前に在留資格の申請をしてもよいですか?
原則として許可を受けられません。例外は新規採用者に研修をした後でなければ派遣先が決まらない場合で、研修内容の資料、派遣先で予定する業務範囲を書いた労働条件通知書、派遣元の誓約書2種を出して申請します。
Q. 登録型派遣でも就労ビザは許可されますか?
審査要領は原則として常用型派遣を求め、登録型は在留期間内に特定の派遣先で活動が見込まれる場合に限り差し支えないとしています。2026年3月からは、いずれの形でも派遣先の確定が申請の前提になっています。
Q. 派遣の場合、カテゴリーは派遣元と派遣先のどちらで決まりますか?
派遣元で決まります。審査要領は、派遣労働者についても雇用契約を締結している機関に基づいて提出資料を求めるとしています。
Q. 特定技能の外国人を派遣で受け入れられますか?
農業分野と漁業分野に限られます。雇用期間のすべてについて派遣先と派遣期間が定められていることが必要です。
派遣先が決まる前に動いておくこと
派遣会社として外国人を採用する予定があるなら、内定を出す前に、どの派遣先で、どの業務を、どれだけの期間任せるかを固めてください。そのうえで、派遣先に誓約書の作成と労働者派遣個別契約書の締結を依頼し、派遣先の業務が技人国の範囲に入ることを説明できる資料を集めます。研修を挟む計画であれば、研修内容と、研修後の業務範囲を労働条件通知書に具体的に書いておくことが、申請の前提になります。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第2章第1節第1「本邦の公私の機関との契約」(1-1)
- 同 第2章第1節第4「労働者派遣事業を営む企業等へ就職する外国人の取扱い」(1-7〜1-10)
- 同 第18節の3 特定技能 第2 2(1)オ(18の3-41〜18の3-43)
- 出入国在留管理庁 在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもって派遣形態で就労する場合の取扱いについて(令和8年7月)(https://www.moj.go.jp/isa/content/001457164.pdf)
- 出入国在留管理庁 就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)(https://www.moj.go.jp/isa/content/001344550.pdf)
- 出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について 別紙1(https://www.moj.go.jp/isa/content/001413640.pdf)・別紙3(https://www.moj.go.jp/isa/content/001413912.pdf)
- 出入国在留管理庁 在留資格「留学」から就労資格への変更申請を予定されている皆様へ(https://www.moj.go.jp/isa/10_00240.html)
- 出入国在留管理庁 在留資格「技能」(https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/skilledlabor.html)