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最判平成14年10月17日と「活動の実体」|在留資格は名目でなく実態で判断される

最高裁平成14年10月17日判決は、婚姻が法律上は続いていても、その実体を失い修復の見込みがなければ、「日本人の配偶者等」の在留資格に当たる活動とはいえないと判断しました。在留資格への該当性は、書類の上の身分よりも、実際にどんな生活や活動をしているかで判断する、という考え方を示した判決です。

この判決は身分系の判例ですが、考え方は就労系の在留資格にも共通します。技人国なら「専門業務に主として従事しているか」、経営・管理なら「実質的に経営に従事しているか」が問われ、肩書や登記、契約書の形式だけでは足りません。入国・在留審査要領も、就労系の各節で名目と実態を分けて確認する手順を定めています。

この記事でわかること

  • 最判平成14年10月17日が示した「実体で判断する」という考え方
  • 技人国の「主として従事」と、経営・管理の「実質的に従事」の審査
  • 契約・派遣で、名目と実態がずれやすい場面
  • 入管が実態を確かめる方法と、企業がそろえておく資料

判決が示した考え方

裁判所・日付 最高裁判所 平成14年10月17日判決
対象の在留資格 日本人の配偶者等(身分系)
判断 婚姻が法律上存続していても、実体を失い修復の見込みがなければ、日本人の配偶者等の活動に当たらない
就労系への示唆 身分系の判例だが考え方は共通する。肩書・登記・契約書といった名目より、実際の活動で該当性を判断する

ここでいう「名目」とは、戸籍・登記・契約書・肩書など、書類の上で示される形式を指します。「実体」とは、その人が日本で実際に行っている活動の中身を指します。平成14年判決は、婚姻届が出ていて離婚もしていないという名目があっても、夫婦としての共同生活という実体がなければ、在留資格の前提を欠くとしました。在留資格は、別表に書かれた活動を行う者に与えられるものです。活動が伴わなければ、名目だけを理由に在留を認めることはできない、という筋道です。

在留資格該当性とは、日本で行う活動が入管法別表の在留資格の活動に当たるかどうかを指します。平成14年判決は、この該当性の判断が、活動そのものに向けられることを確認した判決と読めます。該当性の審査の組み立ては在留資格該当性と上陸許可基準適合性の違い|審査要領が定める審査の組み立てで説明しています。

技人国:「主として従事する」の実体

技人国の該当範囲について、審査要領は、一定の業務に「主として従事する活動」が該当するとしています(第12編 15-1)。その業務とは、自然科学・人文科学の技術や知識を必要とする業務、または外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務です。「主として」とは、業務全体の中で専門業務が中心になっていることを指します。職種名が専門職らしくても、実際の一日の大半が別の作業なら、この要件は満たしません。

業務の水準についても、審査要領は、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務であり、単に経験を積んだことで身につく知識では足りないとしています(第12編 15-2)。入管庁の公表資料は、求人に「未経験可、すぐに慣れます。」と書くような業務や、学歴・実務経験の要件を満たさない日本人従業員が一般的に従事している業務は対象にならないと明記しています。

一時的な作業と、主たる活動の区別

実体で判断するといっても、専門外の作業を一切してはいけないわけではありません。ホテル・旅館について公表資料(別紙5)は、フロント業務中に団体客の荷物を運ぶなど、一時的に技人国に当たらない業務を行っても直ちに問題とはしない、と書いています。一方で、それが主たる活動になっていれば、更新不許可等の可能性があるとしています。問われるのは、全体として何が中心かです。

採用当初の実務研修も同じ考え方で扱われます。

「研修期間を含めた在留資格該当性については、在留期間中の活動を全体として捉えて判断する。」

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節第2「応用・資料編」15-23

ここでいう「在留期間中」は、1回ごとの許可期間を指すものでもありません。技人国で在留することが想定される期間全体を指します。日本人の大卒社員にも同じように行う研修で、在留期間の大半を占めないものなら、研修中の現場作業も許容されます。反対に、外国人だけに設定された研修や、雇用契約が3年だけなのに採用から2年間研修する計画は認められません(第12編 15-23〜15-24)。研修の扱いは入社後の現場研修は技人国でできる?審査要領が認める「採用当初の実務研修」の条件で詳しく扱っています。

経営・管理:名ばかり経営者を排除する審査

名目と実体の区別が最もはっきり書かれているのが、経営・管理の節です。審査要領は、申請人が経営や管理の業務に「実質的に参画し、又は従事するものでなければならず、実際に行う業務の内容を確認して判断する」としたうえで、新たに事業を始める場合について次のように書いています。

「開始するとする事業の内容の具体性や、申請人が取得した株式や事業に投下している資金の出所等の事業の開始に至る経緯全般から、申請人が単に名ばかりの経営者ではなく、実質的に当該事業の経営を行う者であるかどうかを判断する。」

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第10節 10-2

資本金を用意し、代表取締役として登記した、というだけでは名目にとどまります。その資金がどこから来たのか、事業の中身がどこまで具体的か、という経緯全体から、本人が実際に経営判断をする人かどうかが見られます。比較的小規模な事業で申請人のほかにも経営者がいる場合は、投資の割合や業務内容をその人たちと比べることも必要だとされています(第12編 10-2)。

公表資料も同じ立場です。共同経営について、入管庁は「役員に就任しているということだけでは」経営・管理に該当しないとしています。そのうえで、複数人が経営に当たる合理的な理由、各人の業務内容の明確さ、各人が経営・管理の対価として報酬を受けることを求めています。令和7年10月改正後の経営・管理のQ&Aは、業務の大半を外部に委託している場合や、経営者として把握すべき情報を把握していない場合は、経営者としての活動実態を認めないとしています。

現場の仕事との兼務も、実体の問題です。審査要領は、経営者が経営の一環として現業に従事することは含まれるとしつつ、主たる活動が現業に従事するものと認められる場合は経営・管理に該当しないとしています(第12編 10-15)。飲食店のオーナーが厨房とホールに立ち続けている実態であれば、登記上の地位にかかわらず該当性が問われます。名ばかり経営者の問題は名ばかり経営者と資金の出所|経営管理ビザで「実質的に経営に従事」と認められる条件で扱っています。現業との兼務は経営管理ビザで現場作業をしてもよい?経営者の現業兼務と業種の制限で詳しく整理しています。

契約と派遣:形式と実態がずれやすい場面

実体で判断する考え方は、誰と契約しているか、どこで働くかという場面にも及びます。

契約の当事者について、審査要領は、支店長が契約書に署名していても、支店長が法人を代理・代表しているなら「法人が契約の当事者である」ことに留意するとしています(第12編 1-1)。見るのは署名欄の名前より、法的に誰が契約主体かという点です。海外の派遣元と日本企業の間の契約書しかない場合でも、6項目が確認できれば、本人と日本企業の間に労働契約が成立していると扱われます(第12編 1-2〜1-3)。6項目とは、本人の特定、使用者の特定、労働契約を結ぶ旨、労働条件、労働基準法の遵守、賃金の直接払いです。形式が機関どうしの契約でも、中身が本人との雇用なら、それを実体として認める仕組みです。

派遣では、雇用主は派遣元でも、在留資格該当性は派遣先で従事する活動に基づいて判断されます(第12編 1-7〜1-9)。令和8年3月9日の申請分からは、派遣先を確定させてから申請しなければ許可を受けられず、審査では派遣元だけでなく派遣先にも業務内容や活動状況を直接確認することがある、と公表されています。技人国の雇用契約書を派遣元と結んでいても、派遣先での実際の業務が単純作業なら、該当性は認められません。

入管は実態をどう確かめるか

ここで重要なのは、実態の確認が申請時の書類だけで終わらないという論点です。入管は、追加資料の要求、更新時の数字の照合、他機関の情報との突合という複数の手段を持っています。

当事務所の案件でも、入管から対象者の1日のタイムスケジュールの提出を求められたことがあります。専門業務が実際に業務の中心になっているかを確かめるための要求でした。別の案件では、指揮命令系統図の提出を求められました。本人が組織のどこに位置し、他社の指揮命令のもとで働いていないかを確かめる趣旨です。どちらも、肩書や契約書では見えない実体を確認するための資料でした。

※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。

更新時には、数字による照合も行われます。技人国の更新では、住民税の課税(又は非課税)証明書と納税証明書で、収入額が契約時の金額であることと納税が行われていることを確認するとされています(第12編 15-20)。経営・管理の更新では、在留資格決定時に出した事業計画書に基づく活動を在留期間中に着実に行っていたことを具体的に説明する資料が求められます(第12編 10-12〜10-13)。ハローワークへの外国人雇用状況の届出の情報も、稼働先や居住地に疑義がある事案では入管が照会し、審査に使う仕組みがあります(第12編 1-20〜1-23)。

実態を示すために企業がそろえる資料

名目と実体を一致させる責任は、第一に受け入れる企業にあります。申請の前に、実態を示す資料を次のように整えておくと、追加資料を求められたときにも慌てずに済みます。

確かめられる点 そろえておく資料の例
専門業務が中心か(技人国) 職務内容を具体的に書いた雇用理由書、1日・1週間の業務スケジュール、担当業務の成果物
組織内の位置づけ 組織図、指揮命令系統図、職務分掌
研修の合理性 日本人社員を含むキャリアステップと研修計画
経営への実質的な関与(経営・管理) 資金の出所を示す通帳等、事業計画書、取締役会議事録、役員ごとの業務分担と報酬
報酬が契約どおりか 雇用契約書、賃金台帳、課税証明書・納税証明書

書類を整えることと、実態を整えることは別の作業です。実態が伴わないまま書類だけを整えれば、追加資料や更新時の照合でずれが表に出ます。任せてはいけない業務の範囲は技術・人文知識・国際業務でやらせてはいけない業務とは?就労制限と企業のリスクを解説で整理しています。

よくある質問

Q. 最判平成14年10月17日は就労ビザにも関係しますか?

判決自体は「日本人の配偶者等」についての身分系の判例です。ただ、名目より実体で在留資格への該当性を判断するという考え方は、技人国の「主として従事する活動」や経営・管理の「実質的に従事」の審査と共通しています。

Q. 肩書を「マネージャー」にすれば技人国の業務として認められますか?

認められません。審査要領は、申請書の職務内容欄と立証資料で実際に行う業務の中身を確認するとしています。肩書が管理職でも、実際の業務が接客や調理など反復訓練で従事できる業務中心であれば、技人国の該当性は否定されます。

Q. 経営・管理ビザで、役員として登記されていれば経営者と認められますか?

登記だけでは足りません。入管庁の公表資料は、役員に就任しているということだけでは経営・管理に該当しないとし、業務の大半を外部に委託している場合なども経営者としての活動実態を認めないとしています。

Q. 入管は実態をどうやって確認しますか?

申請書と立証資料のほか、追加資料の提出を求めることがあります。1日のタイムスケジュールや指揮命令系統図を求められた例があり、派遣の場合は派遣先に直接確認することがあると公表されています。更新時には課税証明書で報酬が契約どおりだったかも確認されます。

申請前に一度、実態を書き出す

申請書を作る前に、対象者の典型的な1週間の業務を時間単位で書き出してみてください。専門業務の比重が半分を超えているか、専門外の作業は研修や一時的な応援として説明できるか、経営・管理なら本人が下している経営判断を具体的に挙げられるか。書き出した内容と雇用理由書・事業計画書の記載が一致していることを確かめたうえで申請すれば、入管から実態を問われたときにも同じ説明を繰り返せます。

根拠資料

  • 最高裁判所平成14年10月17日判決
  • 出入国在留管理庁「入国・在留審査要領」第12編(情報公開請求による開示版、2025年12月スキャン、一部黒塗り)第2章第1節 1-1〜1-3、1-7〜1-9、1-20〜1-23、第10節 10-2、10-12〜10-13、10-15、第15節 15-1〜15-2、15-20、15-23〜15-24
  • 出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan43.html
  • 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」Q&A https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
  • 出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html、別紙5 https://www.moj.go.jp/isa/content/001413644.pdf
  • 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』をもって派遣形態で就労する場合の取扱いについて」https://www.moj.go.jp/isa/content/001457164.pdf