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船員・パイロットは何の在留資格?技人国・高度専門職1号ロ・技能の区分

旅客機や貨物機のパイロットは、原則として在留資格「技能」です。入国・在留審査要領 第12編(開示版)18-5は、250時間以上の飛行経歴を持ち、航空運送事業に使う航空機に操縦者として乗り組む人を「技能」の対象としています。同時に、審査要領9-3はパイロットを高度専門職1号ロとして扱うとも書いており、ポイントが70点に届く人はそちらを選べます。

同じ航空の仕事でも、航空機関士は技人国(技術・人文知識・国際業務)です(18-6)。船員については、船舶の運航要員としてだけ働く場合は技人国に当たらないとされ(15-17)、技人国に当たる活動を含む場合も所管省庁との協議と本庁への請訓を経て決まります。職種ごとに条文の置き場所が3つの節に分かれているため、まとめて整理します。

この記事でわかること

  • パイロット・航空機関士・船員の在留資格の早見表
  • パイロットの「技能」の要件:250時間の飛行経歴と技能証明
  • パイロットを高度専門職1号ロで受け入れる場合の考え方
  • 船員が技人国に当たらない理由と、例外の手続
  • 航空大学校・海技大学校の卒業が学歴としてどう扱われるか

職種ごとの早見表

先に結論を表にします。根拠はいずれも入国・在留審査要領 第12編(開示版)の該当頁です。

職種 在留資格 要件の要点 根拠
パイロット(機長・副操縦士) 技能(基準7号) 250時間以上の飛行経歴、定期運送用・事業用・准定期運送用操縦士のいずれかの技能証明 18-5〜18-6
パイロット(ポイント70点以上) 高度専門職1号ロ ポイント合計70点以上、年収300万円以上 9-3
航空機関士 技術・人文知識・国際業務 技人国の学歴・実務経験要件 18-6
船員(運航要員のみ) 技人国には当たらない ― 15-17
船員(技人国に当たる活動を含む) 技人国の可能性 所管省庁と協議のうえ決定(本庁へ請訓) 15-17

パイロットが「技能」に入っているのは意外に感じられるかもしれません。「技能」は、日本人で代替できない産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を持つ外国人を受け入れる在留資格で、その特殊な分野の一つに「我が国において従事する技能者が少数しか存在しない産業分野」があります。基準7号の航空機操縦士は、この分野に位置づけられています(18-1)。

パイロットは「技能」:250時間と技能証明

「技能」の基準7号は、パイロットについて次のように定めています。

航空機の操縦に係る技能について250時間以上の飛行経歴を有する者で、航空法(昭和27年法律第231号)第2条第17項に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事するもの

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節 18-5(上陸基準省令「技能」第7号)

要件は3つに分解できます。第一に、250時間以上の飛行経歴。第二に、航空運送事業の航空機に乗り組むこと。第三に、操縦者として業務に従事することです。

ここでいう操縦者とは、定期運送用操縦士、事業用操縦士、准定期運送用操縦士のいずれかの技能証明を持ち、機長または副操縦士として業務に従事する人を指します(18-5)。技能証明を持っているだけでは足りず、審査要領は、機長や副操縦士として従事できる技能証明を持っていても250時間以上の飛行経歴がなければ基準に適合しないと明記しています。

250時間という数字には理由があります。副操縦士として航空運送事業の航空機を操縦できる資格である事業用操縦士と、計器飛行証明の取得に必要な飛行経歴が250時間以上であることに合わせたものです(18-5 注1)。注意したいのは准定期運送用操縦士で、2人操縦機の副操縦士に特化した技能証明として平成24年4月1日に導入され、240時間以上の飛行訓練で取得できます(18-5 注2)。技能証明は取れても、飛行経歴が250時間に届かなければ在留資格の基準は満たしません。

航空運送事業とは、他人の需要に応じ、航空機を使って有償で旅客や貨物を運ぶ事業をいいます(航空法第2条第18項、18-5)。基準の文言は航空運送事業の航空機に限っているため、それ以外の飛行業務に就くパイロットがどう扱われるかは、この箇所からは読めません【要確認】。

報酬が海外から支払われる場合

外国人パイロットは、海外のパイロット派遣会社に所属したまま日本の航空会社の路線を飛ぶことがあります。審査要領は、国内線の外国人パイロットで、日本の機関から報酬が支払われず海外の派遣元会社から支給される場合でも、本邦の公私の機関との契約があれば基準7号に当たると整理しています(18-6)。

ここで重要なのは、報酬の支払元と契約の相手方を分けて考えるという論点です。給与が海外から出ていても、日本の航空会社などとの契約があれば基準7号に当たります。報酬の額は、日本人が従事する場合と同等額以上であることが求められます(18-10)。

審査で確認されること

在留資格の決定時には、まず申請書の入国目的欄が「技能」であること、勤務先・職務内容の欄と所属機関の文書で技能に当たる活動であることが確認されます。あわせて、職歴・実務経験年数の欄で250時間以上の飛行経歴があること、給与・報酬欄と立証資料で日本人と同等額以上であることも確認されます(18-9〜18-10)。更新時は、従前の活動を続けているかが確認されます。在留期間は5年・3年・1年・3月のいずれかです(18-12〜18-13)。技能ビザ全体の要件は技能ビザとは?対象職種・実務経験10年の要件と技人国との違いを審査要領で解説で解説しています。スポーツ指導者やソムリエとの比較はスポーツ指導者・パイロット・ソムリエの技能ビザ|業務区分ごとの経験年数で扱っています。

パイロットを高度専門職1号ロで受け入れる

高度専門職の節には、パイロットについての注記があります。

航空機操縦士(パイロット)が従事する業務については「技能」の在留資格に該当するものとして整理されているところ、航空機操縦士の業務は自然科学の分野に属する航空科学や航空気象学の知識を必要とするのが通常であることから、高度専門職第1号ロに該当するものとして取り扱う。

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第9節 9-3

高度専門職1号ロは、技人国と同じ「自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務」を、ポイント制で上乗せ評価する在留資格です(9-3)。パイロットの業務は本来「技能」の側に整理されていますが、この注記により1号ロの枠で受け入れられます。

筆者が注意を促したいのは、1号ロで申請してもパイロットの基準が消えるわけではない点です。高度専門職1号の活動は、教授から技能までのいずれかの在留資格に相当する活動と必ず重なります。そのうえで、上陸基準省令は、技能などに当たる活動についてはその在留資格の上陸基準にも適合することを求めています(9-5〜9-6)。審査も、前提となる在留資格の該当性・基準適合性を確かめてから高度専門職の審査に進む二段階で行われます(9-34〜9-36)。パイロットの場合、250時間の飛行経歴などの基準7号の要件を満たすことが前提になると筆者は読んでいます。

比較項目 技能(基準7号) 高度専門職1号ロ
主な要件 250時間以上の飛行経歴、技能証明、同等額以上の報酬 左の要件に加え、ポイント合計70点以上、年収300万円以上
在留期間 5年・3年・1年・3月 5年(9-45)
活動の範囲 契約機関での技能の活動 指定書に記載された機関での活動(9-3〜9-4)
平均処理日数(令和8年7月許可分:認定/更新/変更) 90.6日/32.9日/39.4日 38.7日/38.8日/51.5日

1号ロには優遇措置があります(高度人材ポイント制Q&A)。優先処理(認定10日以内、変更・更新5日以内を目安)、永住許可に必要な在留歴の短縮(70点以上で3年、80点以上で1年)、就労する配偶者の学歴・職歴要件の免除などです。一方、1号ロは法務大臣が指定する機関での活動に限られるため、別の航空会社に移るときは在留資格変更の手続が必要です。1号ロの全体像は高度専門職1号ロとは?要件・ポイント・技人国との違い(国際業務は対象外)で整理しています。転職時の手続は高度専門職1号ロで転職したら?在留資格変更許可が必要な理由と指定書・14日以内の届出で解説しています。

航空機関士は技人国

同じ航空機の乗員でも、航空機関士の業務は「技術・人文知識・国際業務」に当たるとされています(18-6)。審査要領が自然科学の代表例として挙げる学問分野には、航空宇宙工学、機械工学、電気工学などが含まれており(15-1)、航空機関士はこれらの知識を使う業務として技人国で整理されていると読めます。

技人国で審査される以上、学歴か実務経験の要件、専攻と業務の関連性、日本人と同等額以上の報酬という通常の要件がかかります。パイロットのように飛行時間で判断されるわけではありません。

船員:運航要員だけなら技人国に当たらない

船員については、技人国の節に独立した項目があります。

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務が該当するとされているところ、一般的に船舶の運航要員としてのみ従事する場合は、同業務に該当しないと考えられる。他方で、船員の業務は多種多様であり、在留諸申請においては「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動も含まれる可能性があり、そのような場合に同在留資格を付与するに当たっては、所管省庁と協議の上、決定することとするので、意見を付して本庁宛て請訓する。

出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節 15-17

前半は原則です。船舶の運航要員としてだけ働く場合は、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務、つまり技人国の業務に当たらないとされています。後半は例外の手続で、技人国に当たる活動を含む可能性がある場合も、地方局だけでは判断せず、所管省庁との協議と本庁への請訓を経て決まります。請訓とは、地方局が本庁に意見を付けて判断を仰ぐ手続を指します。通常の申請より審査に時間がかかることを前提に、採用の日程を組む必要があります。

審査要領のこの項目は、どのような船員の業務なら技人国に当たるのかを例示していません。船員として乗り組む外国人がほかにどの在留資格や手続で扱われるかも、第12編のこの箇所には書かれていません【要確認】。一方、海運会社や造船会社の陸上の部門で、船舶の設計や技術管理のように造船学などの知識を使う仕事をする場合は、船員としての就労ではないため、通常の技人国の審査になると筆者は考えています。

航空大学校・海技大学校の卒業は学歴になるか

航空機関士や陸上の技術職として技人国で申請する場合、学歴要件が問題になります。審査要領は、「これと同等以上の教育を受け」た者に当たる機関を挙げています。設備やカリキュラムの編成で大学と同等と認められる水産大学校、海技大学校(分校を除く)、航空大学校などです(1-10〜1-13)。これらの卒業者は、大学卒業と同等の学歴として扱われます。

高度専門職のポイントでは扱いが分かれます。学歴の項では、各省所管の大学校の卒業者も大卒と同等以上の教育を受けた者に含まれます(9-8〜9-9)。一方、特別加算の「本邦の大学」を卒業した者の加点には、防衛大学校・航空大学校などの大学に準ずる機関は含まれません(9-19〜9-21)。航空大学校を出たパイロットが1号ロを検討するときは、学歴の10点は数えられても、日本の大学卒業の加点は数えられない、という違いに注意してください。

よくある質問

Q. 飛行経歴が250時間に届かない副操縦士は、技能ビザを取れますか?

取れません。入国・在留審査要領 第12編(開示版)18-5は、機長や副操縦士として従事できる技能証明を持っていても、250時間以上の飛行経歴がなければ「技能」の基準に適合しないとしています。准定期運送用操縦士の技能証明は240時間以上の飛行訓練で取得できますが、在留資格の基準は250時間のままです。

Q. 海外のパイロット派遣会社から給与が支払われる場合でも、日本で国内線を飛べますか?

日本の公私の機関との契約があれば、「技能」の基準7号に当たります。審査要領18-6は、国内線の外国人パイロットについて、本邦の機関から報酬が支払われず海外の派遣元会社から支給される場合でも、本邦の公私の機関との契約があれば該当するとしています。

Q. パイロットは高度専門職で申請できますか?

できます。審査要領9-3は、パイロットの業務は「技能」に整理されているものの、航空科学や航空気象学の知識を必要とするのが通常であることから、高度専門職1号ロに該当するものとして扱うとしています。ポイントの合計が70点以上であること、1号ロでは年収300万円以上であることなどが必要です。

Q. 外国人を船員として技人国で雇えますか?

船舶の運航要員としてだけ働く場合は、技人国に当たらないとされています(15-17)。船員の業務の中に技人国に当たる活動が含まれる可能性はありますが、その場合も地方局だけでは決めず、所管省庁と協議したうえで決定する扱いで、本庁への請訓を経るため審査に時間がかかります。

採用の前に確認すること

パイロットを受け入れる場合は、本人の技能証明の種類と飛行経歴の合計時間を先に確認し、250時間に届いているかを見てください。届いていれば、年収と年齢、学歴、職歴でポイントを計算し、70点に届くなら高度専門職1号ロ、届かなければ「技能」で申請するという順で検討します。船員の場合は、予定している業務が運航要員としての業務だけなのか、それ以外の業務を含むのかを職務内容として書き出し、技人国の可能性があるなら請訓を前提にした日程で準備を始めることをおすすめします。

根拠資料

  • 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節「技能」18-1(該当範囲)、18-5〜18-6(第7号 航空機操縦士)、18-9〜18-10(審査のポイント)、18-12〜18-13(在留期間)
  • 同 第15節「技術・人文知識・国際業務」15-1(自然科学の代表例)、15-17(船員の在留資格該当性)
  • 同 第9節「高度専門職」9-3〜9-4(1号ロの該当範囲・パイロットの注記)、9-5〜9-6(上陸基準省令)、9-8〜9-9(学歴の項)、9-19〜9-21(特別加算)、9-34〜9-36(審査のポイント)、9-45(在留期間)
  • 同 第1節「全般事項」1-10〜1-13(大学と同等以上の教育)
  • 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制」ポイント計算表 https://www.moj.go.jp/isa/content/930001657.pdf
  • 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制Q&A」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/newimmiact_3_qa.html
  • 出入国在留管理庁「在留審査処理期間(令和8年7月許可分)」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00140.html