特定技能「自動車整備」1号の技能試験は、「自動車整備分野特定技能1号評価試験」と「自動車整備士技能検定試験3級」のどちらに合格してもかまいません(法務省・国土交通省「自動車整備分野の基準について」運用要領、令和6年2月15日一部改正)。海外にいる人や、日本で整備の実務経験がない人が受けられるのは、事実上1号評価試験だけです。3級は日本国内で実務経験を積んだ人や整備専門学校の留学生に向いたルートで、合格すれば特定技能の後も使える国家資格が残ります。自動車整備職種の技能実習2号を良好に修了した人は、どちらの試験も受ける必要がありません。
1号の技能は「評価試験」か「3級」のどちらかで証明する
特定技能1号の外国人は、技能試験と日本語試験の両方に合格する必要があります。自動車整備分野の組み合わせは次のとおりです。
| 区分 | 求められる試験 |
|---|---|
| 技能(いずれか) | 自動車整備分野特定技能1号評価試験/自動車整備士技能検定試験3級 |
| 日本語(いずれか) | 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)/日本語能力試験N4以上 |
| 免除 | 技能実習2号(自動車整備職種・自動車整備作業)を良好に修了した人は技能・日本語とも免除 |
2つの技能試験は、性格がまったく違います。1号評価試験は特定技能のために作られた試験で、日本語でのCBT方式、国内のほか海外でも受験できます。3級は道路運送車両法に基づく自動車整備士の国家資格で、学歴に応じた実務経験を受験資格として求めます。「どちらが簡単か」で選ぶより、「本人が今どこにいて、どんな経歴か」で自然に決まる、と考えるのが実態に合っています。
自動車整備分野特定技能1号評価試験の内容
1号評価試験は一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(JASPA)が実施し、プロメトリックのテストセンターでCBT方式により行われます。JASPAとプロメトリックの案内を整理すると、試験の骨格は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学科試験 | 真偽法(○×式)30問・60分、合格基準65%以上 |
| 実技試験 | 判断等試験 3課題(計9問)・20分、合格基準60%以上 |
| 受験資格 | 試験日に17歳以上(インドネシア国籍は18歳以上)。日本国籍者は受験不可 |
| 実施国 | 日本、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ネパール |
| 受験料 | 日本国内 4,300円(税込)。国外は国ごとに異なる |
| 再受験 | 不合格の場合、試験日の翌日から45日間は同じ試験を受けられない |
| 結果 | 受験の翌日から5営業日以内にマイページで確認。合格者のID番号は30日以内にJASPAのサイトで公表 |
試験の言語は、プロメトリックの案内では日本語とされています。JASPAのページには多言語対応に関する記載もあり、どの部分が翻訳されるのかは受験申込みの画面で確認してください(公式資料では未確認)。
実技試験といっても、工具を使って車を整備する試験ではありません。画像や図を見て、点検・整備の手順や部品の状態を判断する「判断等試験」です。学科の出題は、日常点検、定期点検、エンジン・シャシの構造と機能、工具の使い方、安全作業などの基礎的な範囲にとどまります。
合格率|国内70.4%、フィリピン87.6%
JASPAが試験ごとに公表しているのは合格者のID番号だけで、合格率は載っていません。国土交通省が年度ごとに出している「実施状況報告書」によれば、令和6年度(2024年度)の1号評価試験の結果は次のとおりでした(令和7年10月20日作成)。
| 実施地 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 国内 | 1,844人 | 1,298人 | 70.4% |
| フィリピン | 290人 | 254人 | 87.6% |
| ベトナム | 187人 | 122人 | 65.2% |
国内の受験者のおよそ3割は不合格になっています。国内受験者には、留学生や技能実習で自動車整備以外の職種を修了した人など、日本語での受験に慣れていても整備の知識は独学という人が含まれます。筆者は、この数字を「対策をすれば通るが、対策なしでは3人に1人は落ちる試験」と読んでいます。
学習用のテキスト・問題例(PDF)
JASPAは、1号の学科試験と実技試験の問題例をPDFで公開しています。「特定技能 自動車整備 テキストpdf」で探している人の多くは、この問題例を指しています。問題例は出題形式に慣れるための資料で、試験範囲の全体を網羅した教科書ではありません。基礎の構造と点検の知識は、3級整備士向けの教材で補うのが現実的です。受入れを予定している整備工場が、入社前に問題例と3級の教材を本人に渡しておくと、受験までの期間を短くできます。
3級自動車整備士で1号を満たすルート
3級自動車整備士の技能検定は、「三級自動車シャシ」「三級自動車ガソリン・エンジン」「三級自動車ジーゼル・エンジン」「三級二輪自動車」の種類に分かれています。運用要領は「自動車整備士技能検定試験3級」とだけ書いており、どの種類であれば1号の技能水準を満たすのかは本文で明示されていません(公式資料では未確認)。認証工場で四輪の整備を行う前提であれば、シャシまたはエンジンの3級を想定して、事前に地方運輸局か協議会に確認するのが確実です。
3級の受験には、原則として学歴に応じた実務経験が必要です。JASPAの案内では、高等学校の自動車科を卒業した人は卒業と同時に、機械系の学科を卒業した人は3か月以上、中学校卒業者は6か月以上の実務経験で受験資格を得られるとされています。海外の学歴がこの区分のどこに当たるかは、個別に確認が要ります。国の養成施設(整備専門学校など)を修了した人は、修了した課程の実技試験が修了後2年間免除されます。
受験の実際は、JASPAが実施する「自動車整備技能登録試験」を受けて技能検定の学科・実技の免除を受ける形が一般的です。JASPAの案内によると、試験手数料は学科7,200円、実技14,000円です。
ここから分かるとおり、3級は日本国内で整備の実務に就いているか、養成施設で学んでいる人でなければ受験資格を得にくい試験です。典型的なのは次の2つの場面です。
- 整備専門学校の留学生:在学中または卒業時に3級に合格し、卒業後に「留学」から特定技能1号へ変更する
- 技能実習生:自動車整備職種で実習しながら3級を取得する(この場合は2号の良好修了で試験自体が免除になることが多い)
どちらで受けるべきか|本人の状況別の選び方
整理すると、次のように分かれます。
| 本人の状況 | 向いている試験 | 理由 |
|---|---|---|
| 海外にいて、日本での整備経験がない | 1号評価試験 | 3級は国内の実務経験がないと受験資格を得にくい。評価試験は海外4か国で実施 |
| 日本にいる留学生(整備以外の学校)・他職種の元技能実習生 | 1号評価試験 | 受験資格の制約が少なく、CBTで受験日を選びやすい |
| 整備専門学校の留学生 | 3級(2級を目指す) | 学校の課程の中で受験でき、国家資格として残る |
| 自動車整備職種の技能実習2号を良好に修了 | 試験不要 | 技能・日本語とも免除 |
評価試験の利点は、受験の機会の多さと受験資格の広さにあります。3級の利点は、特定技能の資格を離れても通用する国家資格であること、そして2級整備士への階段の1段目になることです。2級の受験資格には3級取得後の実務経験などが求められ、2級に合格すれば特定技能2号の技能要件や、技術・人文知識・国際業務で整備士として働く道が開けます(自動車整備士を技人国で雇える条件)。
採用する会社の立場では、入口は評価試験で入ってもらい、在職中に3級、さらに2級の取得を支援する、という組み立てが一般的です。入口の試験は在留資格を得るための条件で、長く働いてもらうための条件は別にある、ということです。
元技能実習生の試験免除|「自動車整備作業」の2号修了に限られる
技能実習から特定技能1号に移る人は、実習の職種によって扱いが分かれます。
運用要領によれば、技能試験が免除されるのは「自動車整備職種・自動車整備作業」の第2号技能実習を良好に修了した人です。この人は日本語試験も免除され、試験を受けずに1号へ移行できます。
自動車整備以外の職種(塗装、機械加工、溶接など)で技能実習2号を良好に修了した人は、日本語試験だけが免除されます。技能については1号評価試験か3級に合格する必要があります。職種が近く見えても、たとえば車体の塗装をしていた人が自動車整備の技能免除を受けられるわけではありません。
ここでいう「良好に修了」とは、技能実習を2年10か月以上修了し、技能検定3級または技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格していること、または実習実施者が作成した評価調書で良好な修了が認められることを指します。判断の詳細と2027年4月以降の変更点は技能実習から特定技能への移行は可能?で扱っています。
2027年4月1日に育成就労制度が始まった後も、当分の間は、技能実習2号の良好修了者は業務の関連性があれば試験免除で特定技能1号に移れます(育成就労制度Q&A Q80)。一方、育成就労から特定技能1号に移る人には試験免除がなく、技能検定3級等または1号評価試験と日本語試験の合格が必要とされています(同Q75)。育成就労の時代になると、3級または評価試験の合格は、ほぼすべての人に求められる条件になります。
2号評価試験と2級整備士
1号から2号に進む段階の試験も、同じく2つのルートがあります。運用要領は、「自動車整備分野特定技能2号評価試験」または「自動車整備士技能検定試験2級」の合格に加え、3年以上の実務経験を求めています。
JASPAの案内では、2号評価試験は学科が四択40問・80分(合格基準60%以上)、実技が判断等試験3課題・30分(同60%以上)、国内の受験料は4,800円(税込)です。受験には、試験日の前日までに認証工場での自動車の整備作業について3年以上の実務経験が必要です。2号評価試験は2024年7月に始まりました。国土交通省のページでは、「外国人技能養成講習」を修了した人は2号評価試験のうち実技試験が免除されると案内しています。2号の要件全体は特定技能2号の条件とは?を参照してください。
よくある質問
自動車整備分野特定技能1号評価試験の日程はいつですか?
1号評価試験は、プロメトリックのテストセンターで随時実施されるCBT試験で、年に数回の決まった試験日があるわけではありません。予約はプロメトリックのマイページから行い、空いている日時を選びます。国外の実施状況は国ごとに異なるため、受験予定国の予約画面で確認してください。
特定技能の自動車整備の試験の合格率は?
国土交通省の実施状況報告書によると、令和6年度の1号評価試験の合格率は、国内70.4%、フィリピン87.6%、ベトナム65.2%でした。JASPAが試験のたびに公表しているのは合格者のID番号だけで、回ごとの合格率は公表されていません。
3級自動車整備士を持っていれば、日本語試験も免除されますか?
免除されません。3級は技能試験の代わりになるだけで、日本語はJFT-Basicの合格またはN4以上が別に必要です。日本語試験が免除されるのは、技能実習2号を良好に修了した人です。
評価試験に合格すれば、どの整備工場でも働けますか?
働けるのは、道路運送車両法に基づき地方運輸局長の認証を受けた工場(認証工場)に限られます。受入れ機関は自動車整備分野特定技能協議会への加入も必要です。受入れ側の要件は特定技能自動車整備とは?認証工場の要件・3級整備士・2号への道を技人国と比較で解説しています。個別の事情で判断が変わる点もあるため、採用前に工場の認証の有無を確認してください。
試験の選択は、2級までの道筋から逆算する
1号の試験は、在留資格を得るための入口にすぎません。評価試験は受けやすく、3級は受けにくい代わりに資格として残る。この違いを踏まえると、判断の軸は「本人が5年後にどこにいたいか」になります。
特定技能1号の在留は通算5年が上限で、その先も日本で整備士として働くには、2号評価試験か2級整備士の合格が必要です。筆者は、採用の段階で「入口は評価試験、在職中に3級、3年の実務を積んで2号試験か2級」という道筋を本人と共有しておくことを勧めています。試験の名前を並べるだけでは、本人は次に何を勉強すればよいか分かりません。何年目に何を受けるかを具体的に示すことが、定着の条件にもなります。
根拠資料
- 特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-自動車整備分野の基準について-(法務省・国土交通省・令和6年2月15日一部改正)
- 自動車整備分野(出入国在留管理庁)
- 自動車整備分野における「特定技能」の受入れ(国土交通省)
- 令和6年度 自動車整備分野特定技能評価試験 実施状況報告書(国土交通省・令和7年10月20日)
- 自動車整備分野特定技能評価試験(日本自動車整備振興会連合会)
- 自動車整備分野特定技能1号評価試験(プロメトリック)
- 自動車整備士になるには(日本自動車整備振興会連合会)
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