入国・在留審査要領とは、出入国在留管理庁の審査担当者が、在留資格の認定・変更・更新を判断するときに従う内部の事務処理基準を指します。法令ではなく、入管庁のホームページにも載っていません。情報公開請求をすると開示されますが、ところどころが黒塗りになっています。
当ブログの就労系100本は、2025年12月にスキャンされた開示版の第12編「在留資格」を底本にしています。第12編は、在留資格ごとに「どんな活動が該当するか」「どの基準を満たせばよいか」「何を出させるか」「在留期間を何年にするか」を定めた部分で、外国人を雇う企業にとって最も実務に近い編です。読める部分は審査の手の内そのものですが、黒塗りの部分には何が書かれているか分かりません。読める範囲と読めない範囲を分けて扱うことが、この文書を使うときの前提になります。
この記事でわかること
- 審査要領が入管法・基準省令・公表ガイドラインとどう違うか
- 第12編の章・節の組み立てと、頁番号(15-10、18の3-36など)の読み方
- 黒塗りやOCRの読み取り誤りがある箇所の扱い方
- 審査要領と入管庁の公表資料が食い違うときの判断の順序
審査要領は何を定めた文書か
第12編の冒頭には、この編の目的が1段落で書かれています。ここを読むと、審査要領が何のための文書なのかがはっきりします。
「本編は、各在留資格について、在留資格該当性(在留資格該当範囲)、上陸許可基準適合性、立証資料、在留期間及び審査上の留意点について規定したものである。上陸審査、入国事前審査及び在留審査においては、本編の規定するところにより在留資格及び在留期間を決定する。」
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第1章「目的」1-1
ここに並ぶ5つの言葉が、審査の骨組みです。在留資格該当性とは、外国人が日本で行う活動が入管法の別表に書かれた在留資格の活動に当たるかどうかを指します。上陸許可基準適合性とは、学歴・実務経験・報酬など、法務省令(基準省令)が定める条件を満たしているかどうかを指します。立証資料は、それを裏づけるために提出させる書類です。在留期間は5年・3年・1年などの許可の長さ、審査上の留意点は担当者が判断に迷いやすい場面の扱いです。2つの審査の違いは在留資格該当性と上陸許可基準適合性の違い|審査要領が定める審査の組み立てで詳しく説明しています。
「本編の規定するところにより…決定する」という書き方から分かるとおり、審査要領は担当者を縛る文書です。一方で、申請者を直接縛る法令ではありません。申請者にとっての意味は、担当者がどの順番で、何を根拠に判断するかを事前に知ることができる点にあります。
法令・ガイドライン・審査要領の関係
在留審査に関わる文書は何層にも重なっています。どれが公開され、どれが内部文書なのかを整理すると、次のとおりです。
| 文書 | 性格 | 公開 | 書かれていること |
|---|---|---|---|
| 入管法 | 法律 | 公開 | 在留資格の種類と活動(別表)、変更・更新の「相当の理由」 |
| 基準省令・告示 | 法務省令・告示 | 公開 | 学歴、実務経験、報酬、資本金などの数値基準 |
| 公表ガイドライン・Q&A | 入管庁の公表資料 | 公開 | 変更・更新の考慮要素、許可・不許可事例、提出書類 |
| 入国・在留審査要領 | 内部の事務処理基準 | 非公開(開示請求で一部開示) | 用語の意義、判断の目安、照会先、在留期間の決め方 |
公表ガイドラインと審査要領は内容がかなり重なりますが、厚みがまるで違います。たとえば「日本人と同等額以上の報酬」について、公表資料は通勤手当などの実費弁償を報酬に含めないことまでは書いています。審査要領はさらに、比べる相手を「その企業の日本人大卒者の賃金」「その企業の日本人専門職・研究職の賃金」と具体的に示しています(第12編 1-3)。担当者がどこまで踏み込んで確認するかは、審査要領を読まないと分かりません。
逆に、審査要領にしか書かれていないことを根拠に「これで許可される」と言い切ることはできません。変更・更新のガイドラインは、考慮要素を並べたうえで、すべてに該当しても不許可となることがあると明記しています。審査要領は判断の型を示す文書で、許可を約束する文書ではありません。
第12編の構成:3つの章と在留資格ごとの節
第12編の目次は、第1章「目的」、第2章「在留資格別該当範囲等」、第3章「様式」の3章でできています。中身のほとんどは第2章で、第1節「全般事項」のあと、第2節以降が在留資格ごとの節になっています。就労系で主に使う節は次のとおりです。
| 節 | 内容 | 頁の表記 |
|---|---|---|
| 第1節 全般事項 | 契約、報酬、常勤の職員、派遣、学歴、実務経験、解雇・待機、雇用状況届出、国税庁との情報連携、長期間の出国など | 1-1〜1-36 |
| 第9節 高度専門職 | 1号・2号、特別高度人材制度、優先処理等 | 9-1〜 |
| 第10節 経営・管理 | 令和7年10月改正後の基準、事業所、事業の継続性 | 10-1〜 |
| 第15節 技術・人文知識・国際業務 | 該当範囲、学歴と専攻の関連性、在留期間、実務研修 | 15-1〜 |
| 第16節 企業内転勤 | 転勤の範囲、直前1年の勤務 | 16-1〜 |
| 第18節 技能 | 調理師などの熟練技能と実務経験年数 | 18-1〜 |
| 第18節の3 特定技能 | 1号・2号、立証資料、在留期間、指定書の記載 | 18の3-1〜 |
| 第31節 別表 | 在留資格ごとの立証資料の一覧 | — |
頁番号は「節の番号-その節の中での頁」という形です。15-10なら第15節の10頁目、18の3-36なら第18節の3の36頁目を指します。当ブログで「第12編(開示版)15-10」と書いているのは、この表記に合わせています。
在留資格ごとの節は、おおむね同じ順番で書かれています。第15節を例にとると、「第1 在留資格の審査」の中に、1 在留資格について、2 該当範囲、3 基準、4 審査のポイント、5 立証資料、6 在留期間が並び、最後に「第2 応用・資料編」が付きます。立証資料の欄は「第31節別表のとおり」とだけ書かれ、中身は巻末の別表にまとまっています(第12編 15-20)。自社の申請で何を出すべきかを知りたいときは、該当する節と第31節の両方を見る必要があります。
第1節「全般事項」は全資格の前提になる
読み始める人が見落としやすいのが第1節です。報酬の計算方法、契約の考え方、学歴の判断など、複数の在留資格に共通するルールがここにまとめられ、各節はそれを参照する書き方になっています。技人国の報酬要件の説明には「第1節第2の『報酬』を参照」とあり(第12編 15-19)、個別の節だけを読んでも答えが出ない構造です。たとえば報酬について、第1節は次のように書いています。
「報酬額を基準として一律に判断することは適切ではない」
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第2章第1節第2「報酬」1-3
「月いくら以上なら許可」という線は内部基準にもない、ということです。この一文を知っているかどうかで、給与設計の説明の仕方が変わります。
黒塗りの限界:読めない場所はどこか
開示版には、不開示とされて黒く塗られた部分があります。スキャンした画像を文字に起こすと、黒塗りの部分は意味をなさない文字列になるので、どこが読めないかは特定できます。就労系で影響が大きい箇所は次のとおりです。
| 箇所 | 読める部分 | 読めない部分 |
|---|---|---|
| 第1節第11(1-25〜1-28) | 見出しの末尾「結果の真偽照会」と、照会範囲・照会方法・照会結果の取扱いという項目立て | 見出しの前半、対象となる在留資格、対象の試験等、照会の要件 |
| 第1節第12 長期間の出国(1-28) | 長期間かつ正当な理由のない出国は、在留資格に応じた活動をしていたとは認めない | 何日以上を長期間とみるかの具体的な基準 |
| 第1節第10 国税庁との情報連携(1-23〜1-25) | 消費税の不正還付で重加算税が確定した企業の経営者・従業員の更新等は原則不許可 | 一部の見出しと、対象範囲を画する条件の一部 |
| 第15節 在留期間(15-21〜15-22) | 初回でも具体的な事情がなければ3年を決定する | 1年を決定する「具体的な事情」を示す注6の中身 |
ここで重要なのは、黒塗りの中身を推測で埋めないという姿勢です。長期間の出国がよい例で、審査要領の開示版では日数基準が読めません。公表資料では、経営・管理のQ&Aに、在留期間のうち再入国許可による出国が累計で過半を超える場合を更新審査の消極要素とする目安が載っています。ただしこれは経営・管理のQ&Aに書かれた目安で、一般の変更・更新ガイドラインは「長期間」としか書いていません。技人国や特定技能の人に「過半」という数字をそのまま当てはめてよいかは、どの資料からも確認できません。再入国の仕組みは再入国許可とみなし再入国許可の違い|長期出張・一時帰国で在留資格を失わないためにで整理しています。
黒塗り以外の読めなさ:OCRの誤読
もう一つの限界は、文字起こしの精度です。開示版は紙をスキャンしたPDFなので、文字に起こすと「上陸許可基準」が「上隊許可基準」になるような誤読が混じります。多くは文脈で読み替えられますが、数字の誤読は結論を変えます。自宅待機の取扱い(1-18〜1-19)では、待機期間の通算日数が一方の箇所で「380日」、同じ趣旨の別の箇所で「180日」と読めてしまいます。当ブログでは、このように原本と照らさないと確定できない数字は、本文で断定しない扱いにしています。
審査要領と公表資料が食い違ったら
開示版は2025年12月時点のスキャンです。その後、入管庁は2026年に入ってからも運用を改めており、審査要領の記述が古くなっている箇所があります。当ブログでは、両者が食い違うときは日付の新しい公表資料を結論に置き、審査要領は「内部基準ではこう整理されている」として引用します。代表的な食い違いは次の3つです。
| 論点 | 審査要領(開示版) | 公表資料(新しい方) |
|---|---|---|
| 技人国の派遣 | 原則は常用型派遣。登録型でも、在留期間内に特定の派遣先で活動が見込まれれば差し支えない(1-9〜1-10) | 令和8年3月9日の申請分から、派遣先を確定させてから申請しなければ許可しない(研修後に派遣先が決まる場合だけ例外) |
| 翻訳・通訳・接客の技人国 | 言語能力の水準基準の記載なし | 令和8年4月15日から、CEFR・B2相当が前提。カテゴリー3・4は申請時に証明資料を提出 |
| 経営・管理で2期連続の債務超過 | 増資や救済の具体的な予定があれば、それも踏まえて判断 | 原則として事業の継続性は認められない。例外は設立5年以内の非上場の新興企業についての柔軟な判断 |
派遣の例では、開示版だけを読んで「登録型でも派遣先が見込めれば通る」と考えて申請すると、現在の運用とずれます。派遣の最新の取扱いは派遣社員として外国人を雇うときの就労ビザ|2026年3月から派遣先の確定が必須にで説明しています。
出所の分からない版を使わない理由
インターネット上には、審査要領とされるファイルがいくつも出回っています。筆者は、開示請求で入手した版以外は使わない方針をとっています。
理由は二つあります。一つは、その版がいつ時点のものか確かめられないことです。審査要領は改正のたびに書き換えられ、経営・管理の節も令和7年10月の基準改正に合わせて本文が新基準で書き直され、旧基準は末尾に参考として残るだけになっています(第12編 10-28)。改正前の版を読めば、資本金500万円の時代の基準で判断してしまいます。もう一つは、本物かどうか確かめられないことです。黒塗りのない版が出回っていても、その中身が正しいと示す手段がありません。存在しない基準を前提に書類を作れば、申請者に損をさせます。
企業と外国人本人は、審査要領をどう使うか
審査要領の使い道は、申請書類を担当者の確認順に合わせて組み立てることにあります。技人国を例にとると、審査のポイントの欄には次のように書かれています(第12編 15-19)。在留資格該当性は、申請書の勤務先・職歴・職務上の地位・職務内容欄と立証資料で確認します。基準適合性は、最終学歴・専攻・実務経験年数欄と立証資料で確認します。つまり担当者は、まず業務の中身を見て、次に学歴と報酬を見ます。雇用理由書も、業務の中身を先に、学歴との関係を後に書く方が伝わります。
担当者が追加で何を確かめに来るかも、審査要領から読み取れます。経営・管理の節は「実際に行う業務の内容を確認して判断する」と書き(第12編 10-2)、技人国の実務研修は「在留期間中の活動を全体として捉えて判断する」と書いています(第12編 15-23)。当事務所でも、入管から対象者の1日のタイムスケジュールの提出を求められたことがあります。専門業務が実際に主な業務になっているかを確かめる資料要求で、審査要領の考え方どおりの確認でした。
※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。
資料提出通知が届いたときに、担当者がどの論点を確かめようとしているのかを読み解くのにも、審査要領は役に立ちます。対応の手順は入管から資料提出通知書が届いたら?追加資料の意味と対応方法を審査要領から解説にまとめています。更新が不許可になった場合の立て直しは在留資格の更新が不許可になる理由とは?事例と対処法・企業の注意点を解説を参照してください。
よくある質問
Q. 入国・在留審査要領は誰でも読めますか?
入管庁のホームページで公開されている文書ではありません。情報公開請求を行うと開示されますが、一部が黒塗り(不開示)になっています。
Q. 審査要領に書かれている条件を満たせば必ず許可されますか?
許可は保証されません。審査要領は審査担当者向けの内部基準で、変更・更新の許否は法務大臣の裁量に委ねられています。ガイドラインも、考慮要素のすべてに該当しても不許可となることがあると明記しています。
Q. 審査要領と入管庁のホームページの説明が違うときはどちらを信じればよいですか?
日付の新しい公表資料を優先して判断します。当ブログでは、公表資料の新しい内容を結論とし、審査要領は内部基準での整理として引用しています。
Q. 黒塗りの部分に書かれている内容を推測で補ってもよいですか?
推測で補うべきではありません。長期間の出国の日数基準のように、公表資料で目安が示されているものはその資料で確認し、示されていないものは不明として扱うのが安全です。
次に確認すること
自社の申請に関係するのがどの節かを先に決めてください。技人国なら第1節と第15節、経営・管理なら第1節と第10節、特定技能なら第1節と第18節の3が出発点です。そのうえで、その論点に令和8年以降の公表資料があるかを確認し、新しい方に合わせて書類を組み立てます。申請の直前に基準が変わっていないかを確かめる作業は、書類を作る作業と同じくらい時間をかける価値があります。
根拠資料
- 出入国在留管理庁「入国・在留審査要領」第12編(情報公開請求による開示版、2025年12月スキャン、一部黒塗り)目次、第1章 1-1、第2章第1節 1-3、1-9〜1-10、1-18〜1-19、1-23〜1-28、第10節 10-2、10-28、第15節 15-19〜15-23
- 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(令和8年6月改正)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html
- 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」Q&A https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
- 出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan43.html
- 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』をもって派遣形態で就労する場合の取扱いについて」https://www.moj.go.jp/isa/content/001457164.pdf
- 出入国在留管理庁「翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に従事する場合の在留資格の明確化について」(別紙4)https://www.moj.go.jp/isa/content/001413643.pdf