特定技能所属機関は、特定技能雇用契約の締結日前1年以内と締結日以後に、外国人と同種の業務に就いていたフルタイムの労働者を非自発的に離職させてはいけません(特定技能基準省令第2条第1項第2号)。人数は問われず、1人でも出せば基準に適合しません。受入れ後に出した場合は、その会社で働く他の特定技能外国人も含めて、在留期間の更新を受けられなくなります。
人員整理のための退職勧奨や希望退職の募集は、非自発的離職に当たるのが原則です。ただし審査要領は、退職勧奨の理由を書面で確認し、一定の事情があれば非自発的離職とみなさない取扱いを設けています。その事情を例示した部分は開示版で黒塗りになっており、判断に迷う事案は地方局から本庁に上申されます。
この記事でわかること
- 非自発的離職者の基準の中身と、対象になる労働者の範囲
- 非自発的離職に当たる離職と、当たらない離職
- 退職勧奨・雇止めの扱いと、黒塗りで読めない部分
- 受入れ後に1人でも出したときの影響と転職支援
- 入管が確認する書類(概要書・労働者名簿・離職証明書)
国内の労働者を外国人で置き換えないための基準
特定技能は、人手不足の分野で外国人を受け入れる制度です。人手が足りないはずの会社が、今いる労働者を辞めさせて外国人で埋め合わせるのであれば、制度の前提と矛盾します。そこで特定技能基準省令は、特定技能雇用契約の適正な履行を確保するための基準の一つとして、次のように定めています。
「特定技能雇用契約の締結の日前1年以内又はその締結の日以後に、当該契約において外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者(次に掲げる者を除く。)を離職させていないこと。」(特定技能基準省令第2条第1項第2号)
審査要領は、この基準の目的を説明しています。現に雇用している国内労働者を非自発的に離職させ、その補填として特定技能外国人を受け入れることを排除するためです(入国・在留審査要領 第12編(開示版)18の3-67)。ここでいう非自発的離職者とは、定年や自己都合などを除き、会社側の事情で離職に至った労働者を指します。
期間の書き方にも注意が必要です。「締結の日前1年以内又はその締結の日以後」は、契約を結ぶ前の1年だけでなく、契約を結んだ後もずっと含むという意味です(18の3-67)。受け入れる前に気をつければ足りる基準ではなく、受け入れている間はずっと守り続ける基準だということです。入管庁の特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年8月)も、締結後も含むこと、1名でも発生させれば不適合となることを明記しています。
対象になる労働者の範囲
どの労働者の離職が問題になるかは、審査要領が次のように定めています。
審査要領ではこう書かれている
「外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者」とは、特定技能所属機関にフルタイムで雇用されている日本人、中長期在留者及び特別永住者の従業員(パートタイムやアルバイトを含まない。)であって、特定技能外国人が従事する業務と同種の業務に従事していた者をいう。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 18の3-68
要素を分けると、①フルタイムで雇われていること、②日本人・中長期在留者・特別永住者であること、③特定技能外国人と同種の業務に就いていたこと、の3つです。パートやアルバイトの離職は対象に入りません。中長期在留者には外国人社員も含まれるため、別の在留資格で働く外国人社員や、先に受け入れた特定技能外国人を会社都合で辞めさせた場合も問題になります。反対に、特定技能外国人と業務が違う部署の社員は、フルタイムであっても③に当たりません。
非自発的離職に当たるもの、当たらないもの
審査要領は、非自発的に離職させた場合として、次の3つの事情を想定しています(18の3-68)。雇止め(期間の定めのある契約を更新しないこと)と、会社による労働者派遣契約の解除に基づく離職も含まれます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 非自発的離職に当たる | 人員整理を行うための希望退職の募集または退職勧奨(天候不順、自然災害、感染症の影響で、経営上の努力を尽くしても雇用を維持することが困難な場合は除く) |
| 非自発的離職に当たる | 労働条件に重大な問題(賃金低下、賃金遅配、過度な時間外労働、採用条件との相違など)があったと労働者が判断した場合 |
| 非自発的離職に当たる | 就業環境に重大な問題(故意の排斥、嫌がらせなど)があった場合 |
| 除かれる | 定年その他これに準ずる理由による退職 |
| 除かれる | 本人の責めに帰すべき重大な理由による解雇 |
| 除かれる | 有期労働契約の期間満了時に、労働者からの更新の申込みを、本人の責めに帰すべき重大な理由その他正当な理由で拒んで終了させた場合 |
| 除かれる | 自発的な離職 |
2つめの類型は「労働者が判断した場合」と書かれています。会社としては条件を変えたつもりがなくても、賃金の遅配や採用時の説明と違う働かせ方を理由に社員が辞めれば、非自発的離職として扱われる余地があります。自己都合退職の届が出ていても、その背景に労働条件の問題があれば、書面の形式どおりには評価されません。
雇止めにも注意が要ります。有期契約の満了で終わった場合でも、除かれるのは、労働者から更新の申込みがあり、会社が正当な理由でそれを拒んだ場合です。人員削減の手段として有期社員の契約を一斉に更新しないといった運用は、非自発的離職に数えられると考えておくべきです。
退職勧奨をしたときの扱い
ここで重要なのは、退職勧奨がすべて非自発的離職と決めつけられるわけではない、という論点です。審査要領は、過去1年以内に退職勧奨等を行っていたことが判明した場合の手順を別に定めています(18の3-69)。
- 会社に、退職勧奨等を行った理由を書いた書面と、それを裏付ける資料の提出を求める
- 書面等から一定の事情が認められ、労働者が退職勧奨等に応じている場合は、非自発的離職とみなさず、基準に適合するものとする
- 例示に当たらず、非自発的離職に当たるか疑義がある場合などは、意見を付して本庁に上申する
問題は、2の「一定の事情」を例示した部分が、開示版では黒塗りになっていることです。どのような事情なら非自発的離職とみなされないのかは、開示された範囲からは読み取れません。確実に言えるのは、人員整理を目的とする退職勧奨は原則として非自発的離職に当たること(18の3-68)と、理由を書面と裏付け資料で説明できなければ有利な扱いは受けられないことの2点です。
筆者は、特定技能外国人を受け入れている会社が社員に退職を勧める場合、その理由と経緯、本人とのやり取りを記録に残し、実行する前に専門家に相談することを勧めています。退職勧奨をした後で説明の材料を集めようとしても、裏付けになる資料は後からは作れません。
1人でも出すと受入れが止まる
非自発的離職者は、人数を問われません。
審査要領ではこう書かれている
非自発的離職者の発生人数についての多寡は問わず、1名でも発生させていれば、本基準に適合しないものとして取り扱う。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 18の3-68
影響は、新しく受け入れる場合と、すでに受け入れている場合の両方に及びます。新しい特定技能雇用契約は、その締結日前1年以内に非自発的離職者がいれば基準に適合しないため、在留資格認定証明書の交付申請や変更申請が通りません。すでに働いている特定技能外国人については、審査要領が次のように述べています。
審査要領ではこう書かれている
受入れ後に非自発的離職者を発生させた場合は、当該特定技能所属機関が雇用する他の特定技能外国人も含め、在留期間更新許可が受けられないこととなるため、特定技能外国人の在留期間満了までに転職を行うことができるよう必要な支援を実施することが必要である旨指導・助言を行う。
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 18の3-69〜18の3-70
1人の日本人社員を会社都合で辞めさせたことが、特定技能で働く全員の更新に影響するということです。特定技能外国人は会社と分野を指定されて在留しているため、更新を受けられなければ、在留期限までに転職して在留資格変更許可を受けるか、帰国するしかありません。会社にとっては、育ててきた人材をまとめて失うことになります。転職の手続は特定技能の外国人は転職できる?在留資格変更許可の手続き・必要書類・審査期間で扱っています。
入管はどの書類で確認するか
初めて受け入れる場合は、申請書(所属機関等作成用)と特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11-1号)を使います。概要書の「3 基準適合性に係る事項」で、同種の業務に就く労働者の離職状況を確認します(18の3-68)。非自発的離職者はいなくても自発的離職者が多いなど、疑いがある場合は、次の資料を求められます。
- 労働者名簿(労働基準法施行規則様式第19号)の写し
- 必要に応じて、ハローワークに出した雇用保険被保険者離職証明書(事業主控え)の写し
労働者名簿は事業場ごとに作成し、3年間保存する義務があるものです(18の3-69)。離職証明書に書いた離職理由と概要書の記載が食い違っていれば、説明を求められることになります。
受入れを続けている場合、概要書は原則として定期届出で出す書類になっており、基準に適合しているかは基本的に定期届出で確認されます(18の3-68〜18の3-69)。定期届出は令和8年4月から年1回になり、対象期間は4月1日から翌年3月31日まで、提出期限は翌年5月31日です(入管庁 定期届出のページ)。概要書の提出を省略できる場合の確認方法は、開示版では黒塗りです。定期届出の書き方は【2026年】特定技能の定期届出とは?年1回化・新様式の書き方と提出期限をわかりやすく解説を参照してください。
活動状況に関する帳簿には、特定技能外国人の雇用状況として、在籍・新規雇用・自発的離職・非自発的離職・行方不明の別を記録することになっています(18の3-87〜18の3-89)。帳簿は特定技能雇用契約の終了日から1年以上、事業所に備え付けます。
会社都合での離職が避けられないとき
業績の悪化などで、特定技能外国人本人との契約を会社の都合で終える場合もあります。この場合、受入れ機関は可能な限り次の受入先が決まるまで支援しなければなりません(18の3-149〜18の3-150)。次の受入先に関する情報提供、ハローワーク等の案内と同行、推薦状の作成などのいずれかに加えて、求職活動のための有給休暇の付与と、離職時の行政手続の情報提供は必須です。自社で支援している会社は、倒産などに備えて代わりの支援者を確保しておく必要があります。
あわせて、受入れの継続が困難になったときは、退職するかどうかにかかわらず、その時点で受入れ困難の届出を出します。1か月以上活動できない事由(生産縮小や休業など)も対象で、事由が生じた日から14日以内に所属機関が届け出ます(入管庁 定期届出のページ)。登録支援機関は代わりに出せません。
農業・漁業で派遣形態をとる場合は、派遣先にも非自発的離職者を発生させていないことが求められます(18の3-91〜18の3-96)。行方不明者の基準や欠格事由とあわせて確認するには、特定技能外国人が行方不明になったら|受入れ機関の責めに帰すべき事由を参考にしてください。あわせて特定技能の受入れ機関の欠格事由|刑罰歴・不正行為5年・役員の確認も参考にしてください。
よくある質問
Q. パートやアルバイトを雇止めした場合も、非自発的離職者に数えられますか?
数えられません。対象は、特定技能外国人と同種の業務にフルタイムで雇用されていた日本人、中長期在留者、特別永住者の従業員で、パートタイムやアルバイトは含まれません。
Q. 退職勧奨に応じて辞めた社員は、非自発的離職者になりますか?
人員整理のための退職勧奨は、天候不順・自然災害・感染症の影響で雇用維持が困難な場合を除き、原則として非自発的離職に当たります。審査要領には、理由を書面で確認し一定の事情があれば非自発的離職とみなさない取扱いもありますが、その事情の例示は開示版で黒塗りです。
Q. 非自発的離職者を1人出すと、どうなりますか?
基準に適合しなくなります。受入れ後に発生させた場合は、その会社が雇用する他の特定技能外国人も含めて在留期間の更新が受けられなくなるため、在留期間の満了までに転職できるよう支援することが求められます。
Q. 本人に重大な問題があって解雇した場合も対象ですか?
対象外です。本人の責めに帰すべき重大な理由による解雇、定年やこれに準ずる理由による退職、自発的な離職は除かれています。
Q. いつまでさかのぼって確認されますか?
特定技能雇用契約の締結日前1年以内と、締結日以後の期間です。契約を結んだ後に発生させた場合も基準に適合しなくなります。
社員を辞めさせる前に確認すること
人員整理、退職勧奨、有期社員の雇止めを考えたら、実行する前に、対象者が特定技能外国人と同種の業務にフルタイムで就いているかを確認してください。該当する場合は、非自発的離職に当たらない方法がないかを検討し、退職勧奨をするならその理由と裏付けを書面に残します。すでに発生させてしまった場合は、在籍する特定技能外国人の在留期限を一覧にし、転職支援の段取りを早めに組むことが先決です。判断に迷う段階で相談してもらえれば、書面の整え方から一緒に検討します。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第18節の3 特定技能 18の3-67〜18の3-70(非自発的離職者を発生させていないこと)、18の3-87〜18の3-89(活動状況に関する帳簿)、18の3-91〜18の3-96(派遣先の基準)、18の3-149〜18の3-150(転職支援)
- 出入国在留管理庁 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年8月)(https://www.moj.go.jp/isa/content/001468647.pdf)
- 出入国在留管理庁 特定技能所属機関・登録支援機関による届出(https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri10_00002.html)