留学生やワーホリ人材の採用実務 就労ビザへの変更手続きやスケジュール管理

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国内で生活している外国人を新たに自社の戦力として迎える際、多く活用されているのが留学生の新卒採用や、ワーキング・ホリデー(以下、ワーホリ)人材の雇用です。すでに日本での生活経験があり、日常会話や日本の習慣に慣れている点は企業にとって大きな魅力ですが、採用実務においては在留資格(ビザ)のルールを正しく理解しておかないと思わぬトラブルや不許可リスクにつながります。
本記事では、留学生やワーホリ人材を雇用する際に、企業の人事担当者が押さえておくべきスケジュール、手続きのポイント、そして過去の就労実態に関する注意点を分かりやすく解説します。

この記事でわかるポイント

【ワーホリ人材雇用の手続と制約】:日本国内で就労系の在留資格(就労ビザ)へ直接切り替えられる国・地域の判断基準や、パスポート「指定書」の就労期間制限、雇用保険の取扱いがわかります。

【留学生採用の誤解解消とスケジュール】:在留カードの残期限が短くても適切に就労ビザへ変更できれば採用可能であること、4月入社に向けた前年12月ごろからの早期申請手順、卒業直後のアルバイトの注意点がわかります。

【不許可を防ぐ過去の就労実態チェック】:週28時間制限(オーバーワーク)に関すること、今後の行政データ連携の流れ、採用前に社内で徹底すべき確認実務がわかります。

1. ワーホリ(特定活動)から就労ビザへの変更手続き

ワーホリ(ワーキング・ホリデー↗)は、日本と協定を結んだ国・地域の青少年に対し、休暇目的の滞在と、その滞在費用を補うための就労を認める制度です。日本は昭和55年(1980年)にまずオーストラリアとの間でワーホリ制度を開始し、2026年4月1日現在で32か国・地域との間で導入しています。在留資格上の区分は「特定活動↗」となります。

在留資格「特定活動」

「特定活動」は、一般的な就労ビザ(技術・人文知識・国際業務等)や留学ビザと異なり、法務大臣が個々の外国人について具体的に活動内容を指定する「オーダーメイド型」の在留資格です。
そのため、在留カードの表面には単に「特定活動」とだけ記載され、具体的な就労条件や制限事項はパスポートにホチキス留めされる「指定書」という文書で個別に指定されます。ワーホリもこの「特定活動」の一種であるため、個別の指定書を確認することが実務上の出発点となります。
ワーホリ中の人材を、正社員や契約社員として自社で雇用するため就労ビザへ切り替える(変更する)際の注意点を見ていきましょう。

東京労働局の資料「外国人の雇用に関するQ&Aの表
出典:東京労働局の資料「外国人の雇用に関するQ&A↗」
1.1 日本国内で変更申請できる国・地域の確認

ワーホリから「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などの就労ビザへ日本国内で直接変更できるかどうかは、二国間協定の趣旨等により国籍・地域ごとに取扱いが異なります。
本来、ワーホリは帰国を前提とした制度であるため、入管実務では、在留資格の変更申請を受け付ける前に「そもそも日本国内での変更申請が認められる対象か」を事前に確認する審査部門への事前相談が原則として必要とされています。
ただし、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、韓国、ドイツの5か国については、この事前相談を経ることなく、直接申請手続きを進めることが認められています↗。
一方、これら以外の国・地域については、原則通り事前に入管の審査部門へ相談し、国内での変更申請が可能かどうかを個別に確認したうえで手続きを進める必要があります。

1.2 パスポート添付の「指定書」の確認

ワーホリで滞在する外国人のパスポートには、入国時に「指定書」と呼ばれる用紙が指定・添付されています。ここには、その人が日本で活動できる具体的な条件が記載されています。

  • 就労期間・就労先の制限:国・地域ごとに、同一の雇用主のもとで就労できる期間などの制限が設けられている場合があるため、パスポートの指定書に記載された制限内容を確認する必要があります。
  • 職種の制限:パチンコ店やキャバクラ、麻雀店などの風俗営業関連での就労は、国籍を問わず一切禁止されています(清掃や厨房等の業務も不可です)。

このように、ワーホリ期間中にアルバイトとして受け入れる際は、指定書に記載された就労制限期間を超えていないか、自社の業種が制限に抵触していないかを必ず確認してください。

1.3 雇用保険・税務上の取扱いと契約管理の注意点

ワーホリ制度による入国者は、滞在中の雇用については原則として雇用保険の適用除外となります。一方、就労系の在留資格へ変更して雇用する場合は、通常の労働者と同様、週の所定労働時間や雇用見込みなどの雇用保険上の要件(週20時間以上など)を満たせば、原則として雇用保険の対象となります。
また、ワーホリ中は雇い入れ時の税務・労務手続きについて、一般の就労ビザで働く外国人とは異なる点があるため、あらかじめ専門家に確認しておくことをお勧めします。

  • 税務(所得税):滞在期間や生活の実態により税法上の「非居住者」に該当する場合は、国内源泉所得(給与)から一律20.42%の源泉徴収が必要となるケースがあります。通常の「居住者」と誤認して年末調整等を行ってしまうと、後の税務調査で追徴等のトラブルが生じる恐れがあります。
  • 契約期間:すでに説明した通り、指定書に同一雇用主のもとでの就労期間制限等がある場合、その期間を超える雇用契約の更新はできません。

2. 留学生の新卒採用スケジュールと在留資格変更手続き

日本の大学や専門学校を卒業する留学生を4月入社で採用する場合に重要なのが「留学ビザから就労ビザへの変更申請」のスケジュール管理です。

2.1 在留カードの有効期限だけで採用可否を判断しないで

留学生の在留カードを確認したら、期限が残り数ヶ月しかなかった。この場合、採用をあきらめるべきでしょうか?早々にあきらめる必要はありません。
在留カードに記載されている期限は、あくまで「学生(留学ビザ)」として日本に滞在できる期間を示しているに過ぎません。留学生を社員として雇い入れたい場合は、卒業に合わせて「就労可能なビザへの切り替え(在留資格変更許可申請)」を行います。

  • 特定技能の場合:必要な技能試験・日本語試験等に合格し、その他必要な基準も満たしていれば、卒業後に「特定技能1号」へ変更申請を行うことで、通算最大5年間の勤務が可能です。
  • 「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の場合:大学や専門学校を卒業(学位や専門士の取得)し、専攻内容と担当業務の関連性、日本人と同等以上の報酬額や業務内容に応じた語学力(※対人業務等で一定の言語能力が要件となる場合があります)など、定められた要件を満たすことで「技人国」への変更許可を受け、就労できます。
2.2 ビザが出る前に雇用契約を結んでも大丈夫?

入管へビザの変更申請を行う際には、採用後の活動内容や労働条件を明確にする書類(雇用契約書や労働条件通知書等)が原則として必要です。しかし、就労に必要なビザが許可されるか分からない段階で、先に雇用契約を結んでも大丈夫なのでしょうか。
実務上は、契約書等の中に「本契約は、入管から指定の在留資格の変更許可を受けることを条件として効力を生じる(万一不許可となった場合は契約を失効とする)」という停止条件(留保条項)を記載して契約を締結する方法があります。
これにより、万が一ビザが認められなかった場合に企業側へ不要な雇用義務が発生するリスクを防ぎつつ、正式な入管手続きを進めることができます。

2.3 ビザの変更申請は誰が行うの?

ここまで、外国人の雇用にあたり在留資格の切り替え手続きが必要なことを説明しましたが、ではこの手続きは誰が行うのでしょうか。法律上のルールと、現場での一般的な実務対応は以下のようになっています。

制度上、手続きを行うことができる人

入管法上、在留資格変更許可申請を行えるのは主に以下の方たちです。

  1. 外国人留学生本人(原則的な申請人)
  2. 所属機関の職員(※オンライン申請の利用承認を受けている企業担当者や、申請取次承認を受けている企業担当者)
  3. 申請取次行政書士・弁護士(本人や企業から依頼を受けた専門家)
実務現場での主な対応パターン

実際の採用現場では、企業の体制や状況に応じて主に2つのパターンに分かれます。手続きの遅延や書類の不備で4月入社に間に合わなくなるリスクを防ぐため、実務上は企業側が主導してスケジュールを管理して行政書士を活用するか、本人へ丁寧に書類を案内する体制を整えておくことが多いようです。

パターンA:行政書士への依頼、または自社オンライン申請(企業主導)
不備による再提出等を防ぐため、企業側が「申請取次行政書士」に依頼して申請手続きを一任するケースや、企業側でオンライン申請アカウントを使って人事担当者が申請を取次ぐケースです。

パターンB:企業が書類を準備し、本人が入管窓口へ行く(本人申請)
企業側は「所属機関作成用」の申請書類や決算書等の必要書類を作成して本人に渡し、留学生本人が地元の出入国在留管理局(入管)の窓口へ出向いて申請するケースです。

2.4 4月入社に向けた「12月からの早期申請」と提出手順

例年3月に卒業する留学生の変更申請は、全国から申請が集中するため審査に時間がかかります。仮に申請が遅れて審査結果の交付が4月以降にずれ込んだ場合、卒業後はアルバイトも会社での勤務もできないため、新ビザが届くまでの1〜2ヶ月間、本人は無収入で待機せざるを得なくなります。
こうした事態を防ぎ、4月1日の入社日に合わせてスムーズに就労を開始できるよう、出入国在留管理庁では例年、前年の12月1日から早期の変更申請を受け付ける運用を行っています。

  • 12月〜1月:「卒業見込証明書」を添えて入管へ変更申請を提出します。多くの大学・専門学校では10月〜12月頃から卒業見込証明書の発行が可能になります。
  • 3月(卒業後):大学等から正式な「卒業証明書」が発行され次第、入管へ追加提出します。
  • 4月1日前後:審査完了後、新ビザ(在留カード)の交付を受け、入社日に合わせて就労開始します。
2.5 卒業後は在留資格「留学」での就労は不可

留学生の新卒採用実務で、企業側が注意すべきは、「卒業後、就労ビザへの変更許可までの期間の就労」です。以下は重要なポイントです。

①学生でなくなった時点で「アルバイト(資格外活動)」は認められなくなる

留学生が持っている「資格外活動許可(週28時間以内のアルバイト許可)」は、学校に「在学していること」が絶対の前提条件となっています。そのため、3月に大学や専門学校を卒業して学籍を離脱した時点で、たとえ在留カードの有効期限が残っていたとしても、資格外活動許可に基づいてアルバイトをすることはできなくなります。

②「留学」の身分のままでは、たとえ週28時間でも働かせられない

特定技能や「技術・人文知識・国際業務」などへの変更手続き(審査)が長引き、卒業までに新しい就労ビザの交付が間に合わなかった場合、本人は「留学」の在留資格のまま日本に滞在することになります。
しかし、すでに学生ではなくなっている以上、この「留学」の在留資格のままでは、たとえ週28時間以内のアルバイトであっても、報酬を受ける就労はできません。

③ 企業が負う不法就労助長罪のリスク

「入社前研修だから」「4月までの準備期間だから」といった理由で、卒業後から新ビザ受取までの間にアルバイトや報酬を伴う実務に従事させてしまうと資格外就労(不法就労)となり、企業側も不法就労助長罪に問われる法的リスクが生じかねません。
卒業から新しい就労ビザへの変更許可を受けるまでの期間は、報酬を受ける就労をさせないことを社内で徹底し、スケジュール管理を行うことが不可欠です。

2.6 卒業から入社まで期間が空く場合(内定待機)

卒業後、すぐには就職できない場合もあり得ますが、その間、アルバイトなどを行うことは認められないのでしょうか。
9月卒業の留学生を翌年4月に入社させるケースなど、卒業から入社までに数ヶ月以上の期間が空く場合は、「特定活動(内定待機)」という在留資格へ変更申請を行うことで、日本に滞在しながら入社日を待つことが可能です。在留資格上の正式名称は「特定活動」で、パスポート添付の「指定書」にて内定待機目的の活動が指定されます。
「内定待機」は内定者・企業双方にとって安心な制度ですが、所定の手続きや誓約書の準備が必要となるため、卒業時期が近づいた段階で早めに準備を進めましょう。実務上の重要ポイントは以下の通りです。

  • 待機期間のルール:内定後1年以内かつ卒業後1年6か月以内に入社する必要があります。秋卒業で翌春入社のケースは、基本的には認められます。
  • 待機中のアルバイト:資格外活動許可を取得すれば、待機期間中も週28時間以内のアルバイトが可能です。
  • 内定先での事前インターンシップ:内定先で採用前にインターンシップを行う場合などは、個別に資格外活動許可を受けることで、週28時間を超える活動が認められる場合があります。

3. 留学生時代のオーバーワークに要注意

留学生の在留資格を変更申請する際、入管の審査で厳しくチェックされるポイントの一つが「留学時代のアルバイト状況(過去の就労実態)」です。

3.1 資格外活動制限の週28時間以内というルール

留学生のアルバイトは、原則としてすべてのバイト先を合算して「週28時間以内」と定められています。大学等の学則で定められた長期休業期間(夏休み等)に限り、1日8時間までの就労が認められます。
たとえば2箇所でバイトを掛け持ちしている場合、各店舗での就労は週15時間であっても、合計すると週30時間となり制限違反(オーバーワーク)となってしまいます。

3.2 過去の就労実態の確認と行政データ連携

留学生を就労ビザへ変更する審査において、過去のアルバイトについては前項の通り、資格外活動許可の範囲である原則週28時間以内を守っていたかが確認対象となります。資格外活動許可の範囲を超えた就労は、在留資格変更・更新の審査における不許可リスクとなり得ますので、採用前には、本人から勤務先ごとの勤務期間、勤務時間、時給、源泉徴収票等を確認し、資格外活動許可の遵守状況を把握しておくことが重要です。

入管の審査において、実際には下記のような確認が行われます。

  • 課税証明書(所得額)からの確認:在留資格変更許可申請では、住民税の課税証明書や納税証明書その他の資料の提出を求められることがあります。課税証明書には前年の所得額が記載されるため、所得額が在学状況や資格外活動許可の範囲からみて不自然に高い場合には、その収入の内容や勤務実態について追加の説明を求められる可能性があります。継続的な時間超過が認められれば、就労ビザへの変更許可における不利益な事情となり得ます。
  • 行政データ連携の推進:現在は申請者本人がマイナンバーカード経由で自らの課税・納税情報を取得するなどして提出することが可能ですが、今後は行政機関間のデータ連携(2027年3月以降順次運用予定)により、課税情報などの行政情報を入管の審査において確認しやすくなる環境が整っていくとみられます。
3.3 採用前の確認実務

内定を出す前の段階で、本人に対して過去のアルバイト状況(掛け持ちの有無、勤務時間、収入額など)を丁寧に確認し、オーバーワークでなかったか確認をしておくことが大切です。
また、採用面接時には在留カードの裏面で「資格外活動許可」の印字を確認し、そもそもアルバイトが認められていたか確認するとともに、出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリケーション↗」などを活用して、カードの真偽やICチップ情報の確認を社内プロセスとして定着させておくと安心です。

入管庁のウェブサイトに掲載されている在留カード裏面見本
出典:入管庁のウェブサイト↗に掲載されている資料

4. 正しい知識を収集し、円滑な採用を

留学生やワーホリ人材の採用では、在留カードの期限や資格名だけで判断せず、卒業や雇用形態に応じたビザ変更手続きまで見据えて準備することが、円滑な採用・雇用管理につながります。
卒業後も在留資格「留学」のまま報酬を伴うアルバイトに従事することや、過去のオーバーワークは、認識不足からトラブルに発展しやすい重要な注意点です。事前の適切なヒアリングや在留カード等読取アプリを活用した確認を行い、自社の貴重な戦力としてスムーズに雇用できるよう取り組みを進めてください。

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