特定技能・育成就労に3分野追加 受入れ前に企業が備えるべきことは?

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深刻な人手不足に対応するため、令和8年1月の閣議決定により、「物流倉庫」「リネンサプライ」「資源循環」の3分野が特定技能制度の対象分野に追加されることが決定しました。これらは、2027年4月に始まる育成就労制度でも受入れ対象となります。現在は、各省庁において分野別協議会の立ち上げや、運用要領の整備、各種技能測定試験の実施準備が進められており、実際の受入れ・就労開始は来春ごろになる見込みです。

先の話と思われるかもしれませんが、新分野の受入れには設備・インフラ要件も課されており、準備には一定の期間を要します。制度開始と同時にスムーズに採用活動などを行えるよう、情報収集や社内体制の整備を進めておくことが重要です。 本記事では、受入れを検討する経営者・人事担当者がトラブルを避けてスムーズに受入れを進めるために、どんな点に注意しておくべきかという観点から解説します。

この記事でわかる新分野のポイント

  1. 【リネンサプライ】の備え:自社の施設・設備に求められる「衛生基準認定」の特性や、採用計画を崩さないための申請スケジュールの重要性がわかります。
  2. 【物流倉庫】の体制確認:自社が受入れ可能な「事業者類型」に適合しているかや、倉庫管理システム等の導入・活用など事前に整えるべき体制がわかります。
  3. 【資源循環】の配置と制限:収集運搬専業の受入れ不可など「中間処理」を中心とした適法な業務範囲がわかります。

1.3分野とも上乗せ基準あり

新3分野の受入れを検討する際には、分野ごとに定められた独自の上乗せ基準や、特定技能と育成就労制度(来春始動)のルールの違いなどについて、正確に理解しておく必要があります。
上乗せ基準とは、すべての分野に一律で適用される基本的な在留資格(ビザ)の要件に加えて、各業界の特性や労働環境、安全管理などを考慮し、関係省庁が独自に設けている追加の要件(設備、体制、特定の事業者類型など)のことを指します。具体的には、リネンサプライでの施設の衛生基準認定、物流倉庫での倉庫管理システム、資源循環での協議会による優良機関認証(事前の実地確認等)などの独自ルールが設けられています。そのため、これらの基準について事前に確認を行わずに採用手続きを進めてしまうと、要件不適合などによって在留資格の許可が得られなかったり、予定していた受入れ時期が大幅に遅れてしまったりする可能性があります。

物流倉庫分野に関する国土交通省のウェブサイト

リネンサプライ分野に関する厚生労働省のウェブサイト

2.【リネンサプライ】衛生基準認定の取得必須

リネンサプライとは、ホテルや病院などで使われるシーツ、敷布、タオル、病衣などの繊維製品(リネン類)を貸与(レンタル)し、使用したものを回収、洗濯、仕上げをして再び貸与する、BtoB(企業間取引)のサービスのことです。この分野で外国人を受入れる際、見落とされがちなのが、工場(施設)ごとの「衛生基準の認定」です。

2.1 通常の営業と外国人受入れ時のルールの違い

日本国内で通常のリネンサプライ事業を営むだけであれば、クリーニング業法に基づく保健所の開設確認(検査)をクリアしていれば、法律上は何の問題もなく適法に営業することができます。業界団体などが運営している衛生基準認定や医療関連サービスマークといった各種認定は、あくまで取引先からの信頼獲得や入札要件をクリアするために、各企業が任意(自由選択)で取得するものです。
しかし、特定技能や新設される育成就労制度を利用して外国人を受入れる場合には、ルールが変わります。分野別の上乗せ基準により、本来は任意である衛生基準認定の取得が、外国人を雇用するための必須条件となるからです。

具体的には、自社が扱うリネン類の種類に応じて、外国人が実際に働く事業所(施設)ごとに以下のいずれかの認定を受けている必要があります。これらの認定はいつでも申請できるわけではなく、申請受付時期は団体ごとに決まっている点にも注意してください。

  • ホテルや旅館など(宿泊分野)のリネンを扱う場合:一般社団法人日本リネンサプライ協会が示す「衛生基準認定」の取得が必要
  • 病院や診療所など(医療分野)の寝具類を扱う場合:一般財団法人医療関連サービス振興会が示す「医療関連サービスマーク」の取得が必要
2.2 申請前に認定取得を

長年、適法にリネンサプライ事業を経営している企業であっても、任意の認定であるがゆえに、これらの認定をまだ取得していなかったり、有効期限が切れていたりするケースがありえます。注意すべきは、入管庁や厚生労働省への申請手続き(ビザ申請や計画認定申請)を行う時点で、すでに取得済みの有効期限内の衛生基準認定証(またはサービスマーク認定証)の写しを提出しなければならないという点です。
申請後は、書類審査だけでなく、調査員が実際に自社工場へ立ち入る「実地(立入)調査」も実施されます。

3.【物流倉庫】どの倉庫でも雇えるわけではない

物流倉庫分野では、外国人を受入れられる事業者の範囲が法令上定められています。登録を受けた営業倉庫業者自身(A類型)だけでなく、一定の条件の下で、その倉庫業者から委託を受けて倉庫作業を行う事業者(B類型)なども対象となります。自社がどの受入れ可能類型に該当するかを事前に確認する必要があります。
たとえば、実務上は以下のような違いとなって表れます。

3.1 受け入れられる会社とは
  • 受入れ可能な例(B類型など):登録を受けた倉庫業者から正式に委託(請負)を受けて、その倉庫業者が営業用として登録している倉庫の中で作業を行う請負会社。
    ※特定技能制度の場合には、委託元の倉庫業者と協力して就労支援を行うことを定めた雇用継続協定書の作成など一定の条件が必要です。
  • トラック会社(C類型)の例:運賃とは別に倉庫作業の料金(保管料や梱包料など)を荷主から正式に受け取って、自社倉庫や、自社車両が反復継続的に出入りする荷主の倉庫などで仕分け等の作業を行うトラック会社。
    ※単なるトラックへの「荷物の積み下ろし(荷役)」のみを行わせることは対象外です。
  • 受入れが難しい例:荷主などから依頼を受け、自社が借りた一般的なテナントや作業場(営業倉庫としての登録を受けていない場所)で、仕分けやピッキングなどの作業のみを単独で請け負っている会社。

このように、どの場所で、どのような契約関係のもとで作業を行っているかという法的な位置づけによって、受入れの可否が分かれる仕組みになっています。詳細は必ず分野別運用方針↗などで確認してください。

出典:国土交通省のウェブサイト↗に掲載されている資料
3.2 倉庫管理システムと連携機器・システムの導入が必須

物流倉庫分野では、現場のデジタル化を促すため、以下のIT要件が義務付けられています。

  • 基本システム:入庫管理、在庫管理、出庫管理の3大機能をすべて備えた情報システム(Warehouse Management System :WMSなど)の導入・活用。
  • 連携機器等の活用と報告:上記システムと連携して生産性や安全性を高める機器やシステム(ハンディターミナル等)を継続的に利活用し、分野別協議会への加入後1年以内にその稼働状況を報告すること。

システムの選定やデータ連携のテストには数ヶ月を要することもあるため、採用活動をスタートする前のタイミングで、自社のインフラや運用体制をしっかりと整えておくことが大切です。

4.【資源循環】収集運搬業の許可だけでは受入れ不可

環境省が所管する資源循環分野(廃棄物中間処理)は、安全管理と適正処理の観点から、受入れ企業に非常に厳格なコンプライアンスを要求します。会社のライセンス(許可)と外国人が行う実務内容の2つの観点から確認しましょう。

4.1 資源循環分野の対象となるライセンス

自社に廃棄物処理のライセンスがあるからといって、どの事業者でも外国人を受入れられるわけではありません。資源循環分野の対象となるのは、一般廃棄物処分業または産業廃棄物処分業の許可を持ち、自社の中間処理施設で中間処理(選別、破砕、圧縮、解体、焼却など)を現に営んでいる事業者に限定されています。したがって、ゴミを運ぶライセンスである「収集運搬業」の許可しか持っていない会社は、そもそもこの分野での受入れ機関(雇用主)になることはできません。

4.2 外国人の実務もメインは廃棄物の中間処理であること

仮に処分業の許可を持つ中間処理事業者であっても、雇い入れた外国人の業務配置には細心の注意が必要です。特定技能や育成就労の外国人が従事するメインの業務は、あくまで「廃棄物の中間処理(選別、破砕など)」でなければなりません。選別や破砕といったプロセスに付随する範囲での関連業務(収集運搬等)は認められ得るものの、収集運搬のみを主たる業務とする配置は、資源循環分野の対象業務に当たりません。

4.3 「運搬だけ」の配置は不可

ライセンス(会社側の受入れ可否と実務(外国人側の業務範囲)の双方が「収集運搬のみでは不可」となっているため、

  • ゴミ回収車の運転手や助手として、一日中ルート回収だけをやらせる
  • 中間処理の作業をまったくさせずに、運搬業務だけを任せる

といった配置は不法就労になる恐れがあります。 資源循環分野では、自社の中間処理施設で、中間処理業務にしっかりと従事させることが条件となります。業務範囲の境界線を誤解したまま採用活動やシフト設計を進めてしまうと、ビザ不許可や、受入れ要件違反などのトラブルになりかねないため、慎重な実務設計が必要です。

5.協議会への加入も忘れずに

新3分野の受入れに関して、少なくとも以下の観点は優先的に確認しておきましょう。

  • リネンサプライ:自社の受入れ計画に合わせた「洗濯施設認定」の有無や、取得・更新スケジュールの確認
  • 物流倉庫:自社が受入れ可能な事業者類型に該当するかどうかの確認、および倉庫管理システム等の活用体制の確認
  • 資源循環:廃棄物の中間処理業務を中心とした適法な配置設計

上記の各分野独自の要件とは別に、実際に外国人を受入れる(ビザ申請や計画認定申請を行う)にあたっては、関係省庁が設置する分野別協議会への事前加入が共通して必須となっています。
また、育成就労で認められる本人意向の転籍の制限期間(転籍前に自社での就労を求める最低期間)は分野ごとに異なり、物流倉庫とリネンサプライは1年、資源循環は2年と定められています。
このように、新分野の受入れには「自社が法的な要件を満たしているか」の事前確認が不可欠です。自社で雇えるのか不安がある場合は、行政書士などの専門家へ現状の適合性診断をご相談いただくこともおすすめです。

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