JESTAや審査体制強化へ準備進む 入管庁関連の令和9年度概算要求を読み解く

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水際対策の強化や不法就労防止、在留管理(在留資格に関する情報の管理)のデジタル化など、制度改革が進む出入国在留管理行政。それらの施策は、このほど公表された法務省(出入国在留管理庁)の令和9年度予算概算要求資料にも盛り込まれています。
概算要求は国会審議前の要望段階であり確定予算ではありませんが、現場の審査や管理体制が今後どのような方向へ、どれほどの厳格さとスピード感をもって動こうとしているのか、その行方を予算の数字からうかがい知ることができます。 今回は、事業者や外国人申請者にとって実務上、大きな影響を持つと考えられる主要施策と予算について解説します。

1. JESTAの令和10年度導入へ263億円超を要求

査証(ビザ)免除国からの渡航者を対象に、日本への渡航前にオンラインで氏名や渡航目的、滞在先等の情報を申請させ、認証する仕組みとして創設が決まっている「JESTA(日本版電子渡航認証制度)」。入国から出国までの情報の一元的管理を進め、出入国在留管理の一層の適正化を実現する狙いがあります。
JESTAの令和10年度中の運用開始に向けては、単年で263億6,400万円が要望されました。予算は、システムの構築・運用開発などに充てられる見込みで、本格的なシステム実装フェーズへ突入すると考えられます。
JESTA導入後は、米国で運用されているESTA等と同様、事前の認証(または査証)を受けていない場合、原則として日本への入国ができなくなります。海外からの短期出張者や役員、招聘ゲストを受け入れる企業にとっては、従来のように「ビザ免除国だから航空券の手配だけで急きょ来日させる」といった対応が難しくなります。あらかじめ渡航者側がJESTAの事前申請を行い、確実に認証を受けておくこと等が必要となります。また、受入企業側としても、渡航者が所定の手続きを済ませているか確認・管理する体制を整えておくことが望ましいと考えられます。

出典:法務省のウェブサイト↗に掲載されている資料

2. 在留手数料の見直しとあわせた審査・調査体制の強化

在留資格の変更・更新や永住許可の手数料について、入管法上の上限額を引き上げる改正が行われました。これにより、令和8(2026)年10月1日以降に許可を受ける際(または同日以降の申請に係る許可時)の手数料が、許可される在留期間に応じた段階制へと引き上げられました。

「なぜこれほど大幅な見直しが行われるのか」という点について、法務大臣会見や予算関連資料では「手数料収入により確保した財源を最大限活用し、入管庁の人的・物的体制を抜本的に強化するため」と説明しています。国としては、手数料見直しによる歳入増加も見据えつつ、審査体制の強化へ予算を振り向ける方針というわけです。つまり、令和8年10月の値上げは、今後の管理体制を強化するための財源確保という第一歩になります。

そして、その確保された財源がどのように使われるのかを示すのが、続く令和9年度の概算要求です。

「公正な在留管理」に関する予算として807億円(☆)が要求され、定員関係においても出入国在留管理体制の強化等として271人の新規増員(※既存ポストの合理化等を差し引いた入管庁全体の純増は235人)が盛り込まれました。

(☆)下記①と②を合算した金額です。

① インバウンドの増加を踏まえた出入国管理の一層の適正化の推進:約543億円

② 外国人材の適正かつ円滑な受入れ・秩序ある共生社会実現のための取組等:約264億円

増員される国家公務員については、在留資格の取消業務や実態調査(現地調査)、実態のない事業・名義貸しの摘発体制などに重点的に配置される計画となっています。
このように、手数料の見直しと並行して、令和9年度には現場の実態を直接調べる人員(調査官など)が大きく増やされることになります。
強化された審査・調査の目は、外国人を雇用している企業や事業主にも向けられることになるでしょう。だからこそ、申請時だけの書類上の辻褄合わせではなく、日ごろから、適正な雇用管理や事業実態を証明できる証拠書類を整えておくことが、これまで以上に重要になると考えられます。

3. 入管DXで行政データ連携が本格化へ

これまで国は、ビザの種類変更や期間更新、永住許可申請に関し、住民税の課税・納税証明書や、社会保険料の納入証明書などの書類の提出を求めたうえで審査してきました。しかし、マイナンバーカードと在留カードの一体化(特定在留カード↗)をはじめ、入管庁と国税庁・地方自治体との間での情報連携に向けた環境整備が着々と進められています。
今回の予算要求では、「出入国管理DXの推進」として44億2,900万円が盛り込まれました。入管庁では、マイナンバーを通じた行政データ共有基盤「公共サービスメッシュ↗」などを活用し、新たな情報照会システムの構築(2027年以降、順次運用開始予定)を進めています。これにより、税金や社会保険(公租公課)の納付情報を、オンラインで直接、照会・確認できるようになる見込みです。
こうしたデジタルの連携が進めば、これまで申請者が集めて提出していた証明書などの資料(添付書類)を省略できるようになり、利便性が大きく向上すると考えられます。一方で入管庁にとっても、税金や社会保険料の未納、支払いの遅延、未申告所得などの情報を迅速かつ正確に把握し、審査に活かせるため、双方にとってメリットがあります。
申請直前になって急いで納付するといった対応では不許可リスクもありうるため、受入企業および外国人社員自身が、日常的に税と社会保険のコンプライアンスをこれまで以上に徹底しておく必要があります。

2026年6月14日から運用が始まった特定在留カード。出典:入管庁のウェブサイト↗

4. ネット上の不正監視強化に向けた「サイバーパトロール」の導入要望

不法滞在者や不適正な就労を防ぐため、入管庁が掲げる「不法滞在者ゼロプラン↗」の推進に関連して、今回の予算要求にはサイバーパトロールの実現や情報収集・分析機能の強化が含まれています。
これらは、SNSやインターネット上で見られる不法就労先のあっせんや、偽変造在留カードの売買といった不正情報に対し、入管DXの一環としてAI等を活用したネット上の監視・分析体制(サイバーパトロール)を本格化させる取り組みを目指すものです。
従来おこなわれてきた実地での立ち入りや通報に基づく摘発だけでなく、ネット上の募集・あっせん行為そのものへの監視を強化する狙いがあります。

SNS等に潜む違法なあっせん業者や悪質なブローカーを不用意に経由してしまうと、利用した企業側も不法就労助長罪に問われるリスクがありうる点には注意が必要です。自社の採用ルートが適正であるか、雇用者の在留カードをきちんと確認するプロセス(専用アプリでのICチップ読取等)が社内で徹底されているかなど、改めて検証することが求められます。

出典:入管庁のウェブサイト↗に掲載されている資料

5. 制度改正の実行フェーズに向けた備えを

法務省の令和9年度概算要求からは、これまで段階的に打ち出されてきた制度改正が、予算や定員確保を伴う具現化・実行フェーズへと移りつつある方針がうかがえます。
審査手続の迅速化やオンライン化(DX)による利便性の向上が期待される一方で、これと一体となって、行政機関間のデータ連携や実態確認体制の整備も同時に推進されています。
外国人雇用においては、制度や法令の最新動向を把握することは重要です。さらに、審査の現場で確認される日常的な労務管理、税・社会保険等の適切な納付、適正な採用ルートの選択といったことを、社内において着実に運用・定着させておくことが手続の円滑化につながるはずです。

外国人を採用する際は、在留資格の確認や申請だけでなく、採用後の更新・変更手続きや適切な雇用管理も重要です。

保利国際法務事務所では、外国人採用・就労ビザに関するご相談から、在留資格申請、採用後の手続きまでサポートしています。

「この人を採用できる?」
「どの在留資格で申請すればいい?」
「更新や変更の手続きについて相談したい」

といった企業様からのご相談にも対応しています。

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