トップ人材・専門職採用に活かしたい J-SkipとJ-Findの違いと活用ポイント

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優秀な外国人材の獲得競争が世界的に激化する中、日本政府もトップエリートや若手ポテンシャル層を呼び込むための施策を展開しています。本記事では、2023年4月に導入された「特別高度人材制度(J-Skip)↗」と「未来創造人材制度(J-Find)↗」について、それぞれ対応する在留資格(「高度専門職」と「特定活動」)の対比関係や活用メリット、さらにはJ-Findから高度専門職へのステップアップ戦略について分かりやすく解説します。

ポイント

【J-Find人材を活用した育成・定着ロードマップ】:卒業5年以内のポテンシャル豊かな若手人材(J-Find)を採用し、在留資格「技人国」から「高度専門職」へとステップアップさせて優秀な人材の長期定着を促すキャリアパスがわかります。

【高度専門職への移行メリットと永住申請要件】:一律5年の在留期間付与や配偶者就労・親帯同などの優遇措置に加え、ポイント制(70点/80点)やJ-Skipを活用して永住許可申請までの期間を大幅短縮(最速1年)できる仕組みがわかります。

【令和8年10月改定の永住許可ガイドライン対策】:世帯人数に応じた日本人平均以上の年収基準や将来の年金受給見込額、公的義務の適正な履行(確実な納付)など、最新の審査基準と実務上の注意点がわかります。

【最低年収基準の見直しやJESTA等の最新動向】:高度専門職の最低年収(現行300万円)引き上げ検討の動向や、2028年度運用開始を目指すJESTA(日本版電子渡航認証制度)など、入管手続のデジタル化・厳格化への備えがわかります。

1.日本の「高度外国人材受入れ促進策」と2つの制度

1.1 世界的な優秀人材の獲得競争

高度な技術や専門知識を持つ外国人材(高度外国人材)の誘致は、国のイノベーション創出や経済成長に直結する重要課題です。世界各国でハイレベルな人材の獲得競争が激化する中、日本政府もトップレベルの高度人材や将来有望な若手を呼び込むため、受入れ促進策を展開しています。
実際、2012年の高度人材ポイント制導入以来、2025年末の認定件数(累計)は6万件を突破(65,023件)し、在留資格「高度専門職」で日本に滞在する外国人も3万2,953人に達するなど、高度外国人材の受入れ実績は着実に拡大しています。

出典:入管庁のウェブサイト↗に掲載されている資料
1.2 J-SkipとJ-Findの概要

そうした取り組みの一環として、2023年4月に導入されたのが高度外国人材獲得に向けた2つの制度です。対象となる人材層に応じて、既存の在留資格「高度専門職」をポイント計算なしで取得できる特例ルート「J-Skip」と、在留資格「特定活動」により日本での就職活動・起業準備を認める「J-Find」が設けられました。

比較項目 ① 即戦力のトップ人材向け ② 若手のポテンシャル層向け
制度名称 特別高度人材制度(J-Skip) 未来創造人材制度(J-Find)
対応する在留資格 既存の在留資格「高度専門職」 在留資格「特定活動(未来創造人材)」
主なターゲット 経営幹部、トップレベルの研究者・技術者 優秀な海外大学等(世界トップクラス大学)の卒業生(卒業・修了から5年以内)
制度の役割 拡充された優遇措置で即戦力を招聘する 就職先未定の段階から日本での就職活動・起業準備のための滞在を認める
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次章から、各制度の概要などを見ていきます。

2.【高度専門職】ポイント制と「J-Skip」の仕組み

2.1 在留資格「高度専門職」とは

日本の経済成長やイノベーションに貢献する高度な能力を持つ外国人を対象とした在留資格です。「高度専門職1号」では在留期間5年が付与され、一定期間の活動後に要件を満たして「高度専門職2号」へ変更すると、在留期間が無期限となります。
高度専門職には、段階に応じてそれぞれ以下のような優遇措置が用意されています。

  • 高度専門職1号:永住許可申請に必要な在留期間の短縮(最速1年)、一定の職種における配偶者の就労、一定条件下での親の帯同・外国人家事使用人の雇用など
  • 高度専門職2号:在留期間の無期限化に加え、1号の活動と併せてほぼすべての就労資格に対応する活動を行える(関連事業の経営など、複合的な活動や兼業の幅が大きく広がる)ほか、1号の優遇措置(配偶者就労・親帯同等)も引き続き享受可能

高度専門職には、従事する活動に応じて以下の3分野があります。新規申請時や変更時には、まず従事する活動に応じて以下の3分野のいずれかで高度専門職1号を取得します。一定期間活動した後に移行する「2号」にはこの分野区分はなく、一本化されます。

  • 高度学術研究活動(高度専門職1号イ):大学教授や研究者など
  • 高度専門・技術活動(高度専門職1号ロ):企業の技術者、ITエンジニア、マーケターなど(年収300万円以上の最低年収要件あり)
  • 高度経営・管理活動(高度専門職1号ハ):企業の経営者や役員・管理者など(年収300万円以上の最低年収要件あり)
2.2 基本となる評価ルール「高度人材ポイント制」

高度専門職の在留資格を取得するための基本となる評価の仕組みが「高度人材ポイント制」です。これは、外国人材の能力や実績を客観的な指標で点数(ポイント)化し、一定の基準を超えた場合に出入国管理上の手厚い優遇措置を与える制度です。

具体的には、以下のような項目を組み合わせてポイントが計算されます。

基本項目(経歴・実績・年齢)
  • 学歴:博士、修士、学士などの保有学位(複数の学位を持つ場合も加点)
  • 職歴:従事する業務に関連する実務経験年数(長くなるほど高得点)
  • 年収:担当業務における見込み年収(年齢に応じた年収水準で評価)
  • 年齢:若手人材ほど高いポイントが付与(30歳未満、35歳未満など)
ボーナス項目(特別加算)

  • 日本語能力:日本語能力試験N1(15点)やN2(10点)などの高い語学力

  • 日本での教育歴:日本の大学・大学院を卒業・修了していること(10点)

  • 指定大学・企業:世界トップクラスの大学出身者や、イノベーション促進企業に勤務している場合など

これらのポイントを合算し、合計70点以上に達すると「高度専門職1号」を取得でき、永住許可に必要な在留期間が原則の10年から3年に短縮されます。さらに、80点以上を獲得した場合は、永住許可に必要な在留期間が1年に短縮されるなど、非常に強力な優遇措置を受けることが可能になります。

2.3 ポイント計算不要の特例ルート「特別高度人材(J-Skip)」

J-Skipは、複雑なポイント計算を行わず、所定の活動類型に応じた学歴または実務経験と高い年収要件を満たすことで、特別高度人材として高度専門職1号の在留資格を取得できる特例ルートです。

  • 高度学術研究活動/高度専門・技術活動:修士号以上取得かつ年収2,000万円以上又は関連実務経験10年以上かつ年収2,000万円以上
  • 高度経営・管理活動:経営・管理に関する実務経験5年以上かつ年収4,000万円以上

特別高度人材として「高度専門職1号」で1年以上活動した場合、1年経過した段階で以下のいずれかを申請できるようになります。いずれも所定の要件に基づく審査があります。

  • 高度専門職2号への変更申請:在留期間が無期限となり、活動の自由度が大幅拡大
  • 永住許可の直接申請:通常10年必要な在留期間要件が1年に短縮されるため、2号を経由することなく永住申請が可能(※所定の審査はあります)。

また、特別高度人材については、世帯年収3,000万円以上などの要件を満たす場合、各家事使用人に所定の報酬(月額20万円以上等)を支払うことなどを前提に、外国人家事使用人を2人まで雇用できる追加優遇措置があります。

出典:入管庁のウェブサイト↗に掲載されている資料

3.【在留資格:特定活動】世界トップクラスの大学の若手を呼び込む「J-Find」

3.1 在留資格「特定活動(未来創造人材)」とは

正式な在留資格の手続名は「特定活動(優秀な海外大学等を卒業した者が起業活動・就職活動を行う場合)」といいます。優秀な海外の大学等を卒業した外国人が、日本国内で就職活動や起業準備活動を行うために付与される在留資格です。最長2年間の日本滞在が認められ、配偶者や子の帯同も可能です。

3.2 「未来創造人材制度(J-Find)」の要件

J-Findの在留資格を取得するための主な要件は以下の通りです。

高度専門職へのステップアップが視野に

J-Findの対象となる世界トップクラスの大学の卒業者は、高度人材ポイント制における「指定大学(ボーナス加点10点)」の対象にも該当します。そのため、J-Find(特定活動)で来日して就職活動を行い、採用が決まった場合、年齢、年収、語学力等の組み合わせによっては、「高度専門職1号(70点以上)」の在留資格を取得して(切り替えて)就労を開始できる可能性があります。

出典:入管庁のウェブサイト↗に掲載されている資料
3.3 企業側の活用メリットと実務上の注意点

J-Findでは、指定書に定められた範囲内で、就職・起業活動に必要な資金を補うための報酬活動(アルバイト等)が認められています。企業にとっては、候補者が日本国内に滞在しているため、国内留学生と同様に対面での面接や採用選考を進めやすく、適性を評価しやすい点が大きなメリットです。なお、インターンシップを実施する場合は、活動内容が認められた在留活動の範囲内にあるか、個別に確認する必要があります。

指定書

在留資格の特定活動、特定技能、高度専門職(経営・管理分野等)の外国人に対し、出入国在留管理局が個別に許可した活動内容や勤務先を記載した法務省発行の文書です。原則としてパスポートに添付されます。

実務上の注意点

  • 指定書の確認:J-Findは、あらゆる就労が自由に認められているビザではありません。具体的に認められる活動内容やアルバイトの範囲は、前述の通り、パスポートに添付された指定書で個別に定められています。有給インターンなどで報酬を支払う場合は、その業務内容や勤務時間が指定書の範囲内であるかを事前に確認することが重要です。
  • 雇用状況の届出:J-Findに限りませんが、外国人を雇い入れた場合や離職時には、短期のアルバイトを含め、原則としてハローワークへ「外国人雇用状況の届出↗」を行う義務が事業主に課せられています。
  • 公平な採用選考と国籍差別の防止:求人・採用は、職務に必要なスキルや能力を基準として公平な選考を行うことが求められます。また、国籍を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について差別的な取扱いをしてはなりません。

4.優秀人材定着へ3ステップのロードマップ

J-Findの対象者は卒業後5年以内に限られるため、これからキャリアを本格化させるポテンシャル豊かな若手人材が中心となります。すでに高い実績や年収を備えた即戦力層向けの高度専門職とは異なり、自社で育成しながら将来的な高度専門職へのステップアップを目指す中長期的な人材育成ロードマップを描ける点がJ-Find人材採用の大きな魅力です。
採用初期段階からこうした将来のキャリアの見通し(高度専門職への移行や永住許可申請に必要な在留期間の短縮など)を提示することは、本人が日本で安心して働き続ける大きな動機付けとなり、優秀なグローバル人材の定着・離職防止を後押しする非常に有効な施策となり得ます。

なお、J-Find(特定活動)での就労開始から将来的な高度専門職への移行は自動的な昇格経路ではありません。就職後の職務内容や報酬、在留状況等を踏まえた個別の在留資格変更許可申請が必要となります。

【キャリアステップのイメージ】

ステップ①【来日・就職活動】

J-Findの対象者が在留資格「特定活動」により来日し、国内で就職活動や起業準備活動を行う(最長2年間の滞在・アルバイトが可能)。

ステップ②【採用・就労ビザへの変更】

採用決定後、実際の職務や条件に応じて技術・人文知識・国際業務(技人国)や高度専門職1号等への在留資格変更を申請する。採用時点でポイントが70点以上あり、職務内容その他の要件を満たす場合は、就労開始時から「高度専門職1号」への変更を申請することも可能です。

ステップ③【高度専門職へのステップアップ(ポイント制/J-Skipの活用)】

在留資格「技人国」等で採用した場合でも、入社後の実績、報酬、役職等の向上に応じてまずは高度専門職1号への切り替えを目指します。高度専門職1号へ移行することで、一律5年の在留期間が付与されるほか、永住許可申請に必要な在留期間が大幅に短縮される(ポイント70点以上で3年、80点以上またはJ-Skipで最速1年)など手厚い優遇措置を受けられます。さらに一定期間活動すれば在留期間が無期限となる2号への移行も視野に入るため、優秀人材の長期定着に直結します。
なお、高度専門職への切り替えにあたっては、状況に応じて以下のいずれかのルートを活用します。

  • ポイントルート(高度ポイント制):実務経験、役職、年収、日本語能力などを合算して70点以上に達した場合に移行する標準ルート。
  • J-Skipルート(特別高度人材):所定の実務経験(または学歴)を満たし、高額報酬(年収2,000万円または4,000万円以上等)に達した場合、ポイント計算を省略(スキップ)して移行するルート(家事使用人の帯同等の追加優遇あり)。

5.最新の制度動向チェック

外国人材の受入れをめぐる環境は日々変化しています。外国人材から「選ばれる」企業であるためには、外国人材の採用などにかかわる制度の動向をチェックし、変動等に対応できる体制を整えることも欠かせません。主な注目点をまとめました。

  • 最低年収基準に関する動向:一部報道によると、国は、高度専門職の最低年収基準の引き上げを検討しているそうです。現行制度では高度専門・技術活動および高度経営・管理活動について年収300万円以上が必要です。今後、最低年収基準が引き上げられた場合、採用時や昇給時の給与設定のハードルが上がる可能性があります。高度専門職への移行を視野に入れた雇用管理を行う際は、今後の動向に注意が必要です。

① 収入基準(日本人世帯の平均年収以上)

単に生活できているかだけでなく、世帯人数に応じた「日本人世帯の平均収入」を上回る水準が求められます。
外国人社員が節税目的で海外親族を過剰に扶養に入れている場合、必要年収のハードルが上がり、永住審査で不利になることがあります。企業側からも事前のアドバイスや確認を行うことが推奨されます。

② 年金基準(将来の受給見込額と資産)

将来受給できる年金の見込額が確認されます(標準的な試算指標として「厚生年金30年加入相当の受給水準」が用いられます)。不足する場合でも、それを補える金融資産(預貯金等)を有していれば要件を満たすと評価されます。

③ 公的義務の履行状況(未納・遅納は大きなマイナス要素)

税金や社会保険料は「納期限を守って適正に履行しているか」が確認されます。未納はもちろん、過去に納期限を過ぎて納付した実績(遅納)がある場合は不許可の原因となりうるため、給料天引き(特別徴収)や口座振替の徹底をお勧めします。

なお、高度専門職等による在留期間短縮措置を利用する場合であっても、これらの要件を満たす必要があります。

  • 水際手続のデジタル化の動き(JESTAの創設):政府は2028年度中の運用開始に向け、JESTA(日本版電子渡航認証制度)の導入準備を進めています。JESTAとは米国の「ESTA(エスタ)」をモデルとした制度で、ビザ(査証)免除国・地域からの渡航者が、来日前にオンラインで渡航目的や個人情報を申請し、事前に審査を受ける仕組みです。
    主な対象は観光や短期商用などの短期滞在者であり、入国前に不法就労等のリスクを防止・スクリーニングすることを目的としています。J-SkipやJ-Findといった中長期の就労・在留制度とは対象や目的は異なるものの、日本の外国人入国手続におけるデジタル化・事前チェック精緻化の流れとして、ぜひ押さえておいてください。

これからの外国人採用において企業に求められるのは、法令順守や適切な労働条件の確保という「守り」を徹底しつつ、J-FindやJ-Skipといった優遇制度や明確なキャリアパスという「攻め」を戦略的に活用していくことではないでしょうか。国籍にとらわれず、能力と実績に応じた公平な評価と成長の機会を提供することが、世界中の優秀な外国人材から「選ばれる企業」となり、自社の持続的な成長を実現する鍵となるはずです。

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