配偶者ビザ(在留資格「日本人の配偶者等」)の不許可は、ほとんどが「婚姻の信ぴょう性の説明が足りない」「夫婦が一緒に暮らす実態がない」「生活を維持できる収入と納税が示せない」「過去の在留状況に問題がある」「提出書類どうしが食い違っている」の5つのどれかに当たります。いずれも、結婚が法律上成立しているかどうかとは別の問題です。不許可の通知を受けたら、まず地方出入国在留管理局で理由を聞き、その理由に対応する立証資料を足してから再申請します。同じ書類で出し直しても、結論はほとんど変わりません。
配偶者ビザの審査で見られるのは「結婚の中身」
配偶者ビザの審査の出発点は、在留資格の該当性です。入管法別表第二は、日本人の配偶者等の在留資格に当たる人を「日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者」と定めています。戸籍に婚姻が記載されていれば、形式的にはこの身分に当たります。
ところが最高裁判所は、形式上の婚姻だけでは足りないと判断しています。最高裁判所第一小法廷平成14年10月17日判決(在留資格変更申請不許可処分取消請求事件)は、日本人との婚姻関係が社会生活上の実質的な基礎を失っている場合、その外国人の活動は「日本人の配偶者の身分を有する者としての活動」に当たらないとしました。夫婦として共同生活を営む実体があるかどうかが、在留資格の該当性そのものに関わるということです。この判決の読み方は最判平成14年10月17日と「活動の実体」で解説しています。
この判断を実務に落としたものが、出入国在留管理庁が「日本人の配偶者等」の申請で求める提出書類です。戸籍謄本と結婚証明書で身分を、住民税の証明書と身元保証書で生活基盤を、そして質問書、夫婦のスナップ写真2〜3葉、SNSや通話の記録で結婚の実態を確認します。入管庁の手続案内は、書類がそろっていない申請について「大幅に審査が遅れる、または不利益処分となり得る」と注意しています。
入国・在留審査要領は、婚姻の信ぴょう性をどの観点から確認するかを審査官向けに定めているとされます。ただ、公開されている審査要領には黒塗りの箇所があり、配偶者の審査で確認する具体的な項目の全体は、筆者が一次資料で確かめることができていません(公式資料では未確認)。以下では、入管庁が公表している提出書類と質問書の設問、判例、在留審査のガイドラインから、不許可の理由を5つの類型に整理します。
配偶者ビザが不許可になる理由5つ
理由1:婚姻の信ぴょう性を説明できていない
最も多いのがこの類型です。質問書は全12設問・8ページで、知り合った経緯、紹介者、結婚までの交際の経過、夫婦間の会話に使う言語、婚姻届の提出の経緯、結婚式の有無、親族の出席状況などを尋ねます。審査官はこの記載と、写真・通話記録・渡航記録などを突き合わせます。
審査で慎重に見られやすいのは、次のような事情がある場合です。
- 交際期間が短い、実際に会った回数が少ない
- 年齢差が大きい
- 共通の言語がなく、どうやって意思疎通しているかの説明がない
- 結婚紹介所やマッチングアプリを通じて短期間で結婚した
- どちらかに離婚歴が複数ある、または短期間に国際結婚を繰り返している
- 親族に結婚を知らせていない、結婚式や親族との面会がない
これらの事情があること自体で不許可になるわけではありません。問題になるのは、事情があるのに説明と裏付けがない場合です。たとえば交際期間が3か月でも、その間の渡航記録、毎日のメッセージの履歴、双方の家族と会った写真がそろっていれば、短さは説明できます。逆に、交際期間が長くても、質問書の経緯欄が数行で、写真が婚姻届の提出日に撮った数枚だけであれば、疑義は残ります。
質問書の書き方と矛盾の防ぎ方は配偶者ビザの質問書の書き方|交際経緯・紹介者欄の記入例と矛盾の防ぎ方で詳しく扱っています。
理由2:夫婦の同居・生活の実態がない
配偶者ビザは、夫婦が日本で共同生活を送ることを前提にした在留資格です。住民票で夫婦が別の住所に登録されている、同じ住所でも実際には一緒に暮らしていない、といった場合は、前述の最判平成14年10月17日の考え方がそのまま当てはまります。
別居には正当な理由がある場合もあります。単身赴任、親の介護、子の進学、DVからの避難などです。こうした事情があれば、別居の理由、期間の見通し、別居中の行き来や生活費の送金の記録を示すことで、婚姻の実体が続いていることを説明できます。説明のないまま別居していると、更新の段階で不許可になったり、短い在留期間になったりします。
入管法22条の4第1項7号は、日本人の配偶者等の在留資格を持つ人が、配偶者の身分を有する者としての活動を正当な理由なく継続して6か月以上行わずに在留している場合を、在留資格の取消事由としています。別居や離婚協議が長引いている場合は、更新の結論だけでなく取消しのリスクも意識する必要があります。
理由3:生計を維持できる収入と納税が示せない
提出書類には、滞在費用を支弁する人の直近1年分の住民税の課税(または非課税)証明書と納税証明書が含まれます。ここで見られるのは、夫婦が日本で生活していける収入があるか、そして税金を納めているかです。
入管法や公表されたガイドラインに、配偶者ビザの年収の基準額は書かれていません。検索では「配偶者ビザが不許可になる収入はいくらですか」という質問が多く見られますが、一律の線はありません。出入国在留管理庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」は、独立の生計を営むに足りる資産または技能について、世帯単位で認められれば足りるとし、公共の負担となっている場合でも人道上の理由があればそれを十分勘案するとしています。
不許可につながりやすいのは、収入の少なさそのものより、次のような状態です。
- 日本人配偶者が無職で、預貯金や親族の援助の見込みも示されていない
- 住民税が非課税で、生活費をどう賄っているのか説明がない
- 住民税や国民健康保険料を滞納している
- 課税証明書の所得額と、質問書や申請書に書いた職業・収入が食い違っている
納税の状況は、更新の審査でも繰り返し確認されます。納税や社会保険の扱いは在留期間更新の「相当の理由」とはで整理しています。
理由4:過去の在留状況や素行に問題がある
外国人配偶者のこれまでの在留状況も審査の対象です。オーバーステイ(不法残留)の経歴、資格外活動の時間超過、留学生として在籍していた学校の出席不良、刑事処分、住居地や所属機関の届出の遅れなどがあると、消極的に評価されます。
特に慎重に見られるのが、結婚の時期と在留の状況が重なる場合です。たとえば、前の在留資格の更新が不許可になった直後に結婚した場合、難民認定申請中に結婚した場合、退去強制手続中に結婚した場合は、在留を続けるための結婚ではないかという観点から、交際の経過をより詳しく説明することが求められます。
交通違反も、回数や内容によっては素行の評価に影響します。軽微な違反が数件あるだけで不許可になることは通常考えにくいものの、飲酒運転や無免許運転のように刑事罰の対象となる違反は別です。
理由5:書類どうし、過去の申請との矛盾
審査官は、今回の申請書類だけでなく、入管が持っている過去の記録も見ています。過去の査証申請、在留資格認定証明書交付申請、以前の配偶者との婚姻での申請、留学や就労の申請の記載と、今回の質問書の内容が食い違っていると、それだけで信ぴょう性に疑いが生じます。
よくある食い違いは、知り合った日や場所、初めて会った時期、交際開始の時期、職歴、家族構成です。夫婦が別々に書いた書類の間で出会いの時期がずれている、日本人配偶者が以前に別の外国人の身元保証人になっている、といった事情も確認されます。
質問書に事実と違うことを書いた場合は、不許可だけで終わりません。偽りその他不正の手段で在留許可等を受けた場合は、入管法70条1項2号の2により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科の対象になります。偽装結婚で婚姻届を出した場合は、刑法157条の公正証書原本不実記載等罪も問題になります。
不許可理由と再申請で補強する資料の対応表
不許可の理由がわかれば、再申請で何を足すべきかが決まります。理由ごとに、再申請で補強を検討する資料を整理すると次のとおりです。
| 不許可の理由 | 再申請で補強する資料の例 |
|---|---|
| 交際経緯の説明不足 | 経緯を時系列で書いた説明書(別紙可)、交際期間中の渡航記録・航空券の控え、日付の入った写真、メッセージ・通話履歴(期間全体が分かるもの)、紹介者の陳述書 |
| 会った回数が少ない・年齢差が大きい | 面会ごとの日付・場所・滞在日数の一覧と裏付け、双方の親族と会った記録、親族からの手紙 |
| 意思疎通の手段が不明 | 使用言語と学習歴の説明、語学学校の在籍証明や試験の合格証、翻訳アプリの使用履歴 |
| 同居の実態がない・別居している | 夫婦同一の住民票、賃貸借契約書(夫婦名義)、公共料金の請求書、別居の理由の説明書と勤務先の辞令・介護の資料、別居中の送金記録 |
| 収入・納税の不足 | 最新年度の課税・納税証明書、雇用契約書・在職証明書・給与明細、預貯金残高証明書、親族の援助の申立書と援助者の収入資料、滞納分の納付書・領収書 |
| 在留状況・素行 | 違反の経緯と反省を記した説明書、その後の適正な在留を示す資料、処分の内容が分かる資料 |
| 書類の矛盾 | 食い違いが生じた理由の説明書、正しい事実を示す客観資料(出入国記録の開示結果など) |
表の資料は、どれも「たくさん出せば許可される」というものではありません。不許可の理由として示された疑義に、正面から答える資料を選ぶことが肝心です。筆者は、再申請の書類をそろえる前に、前回の申請書類の控えを夫婦で読み直し、どこに説明の空白や食い違いがあったかを洗い出す作業を最初に行うべきだと考えます。
不許可になったらどうなるか
通知の受け取り方と理由の聞き方
在留資格認定証明書交付申請が不許可になった場合は、不交付の通知書が届きます。国内での在留資格変更・在留期間更新が不許可になった場合は、通知のはがきで地方出入国在留管理局への出頭を求められ、窓口で結果を告げられます。ハガキの見分け方と、窓口で理由を聞くときの要点は入管から不許可のハガキが届いたら?で解説しています。
入管は、申請者が求めれば不許可の理由を口頭で説明します。聞いた内容はその場でメモを取り、「どの書類のどの点が不足していたのか」「追加で何があれば判断が変わり得たのか」まで具体的に確認します。理由を聞かないまま再申請するのは、前回と同じ位置からやり直すことに近いと筆者は考えます。
在留資格変更・更新が不許可になった場合の在留
国内での変更・更新の申請が不許可になった場合、それまでの在留期間が既に過ぎていれば、そのままでは在留を続けられません。出国の準備のための「特定活動」への変更が認められることがありますが、その期間内に再申請の準備を終えられるとは限りません。在留期間の満了が近い時期の申請では、この点を踏まえて早めに申請することが大切です。
在留資格の不許可には行政不服審査法による審査請求の手続がなく、争うには取消訴訟を起こすことになります。実務上は、理由を確認したうえで再申請する方が現実的な選択肢になることが多いといえます。
再申請の時期
再申請に待機期間はありません。不許可の翌日でも申請はできます。ただし、理由に対応する資料がそろっていなければ、再び不許可になる可能性が高いままです。たとえば「交際期間が短く、実態の確認ができない」という理由であれば、その後の同居や面会の実績そのものが最も強い立証になるため、一定期間の実績を積んでから申請する方が合理的な場合もあります。個別の事情で判断が変わるため、再申請の時期は理由の内容と在留の状況を踏まえて決めてください。
更新で不許可になる事例
初回の許可を受けた後も、更新のたびに婚姻の継続と生活の状況が確認されます。更新の段階で問題になりやすいのは、別居の開始、離婚協議や調停の開始、日本人配偶者の失業と住民税の滞納、住居地や配偶者に関する届出の遅れなどです。
更新の必要書類と審査で見られる点は配偶者ビザ更新の必要書類|住民税の証明書・身元保証書と審査で見られる点で、更新全般の不許可の理由は在留資格の更新が不許可になる理由とは?でまとめています。
よくある質問
配偶者ビザが不許可になる確率はどのくらいですか?
「日本人の配偶者等」だけの不許可率を、出入国在留管理庁は手続案内などで公表していません。出入国管理統計には在留資格認定証明書の交付・不交付などの処理人員が掲載されていますが、在留資格別の不許可率をどの表からどう算出するのが適切かは、筆者が確認できていません(公式資料では未確認)。確率を気にするより、自分たちの事情に疑義を持たれやすい点があるかを確かめ、その点を先回りして説明する方が結論に直結します。
配偶者ビザが不許可になる収入はいくらですか?
基準額はありません。住民税の証明書で見られるのは、夫婦の世帯として生活を維持できるかどうかと、税金を納めているかどうかです。収入が少ない場合は、預貯金、雇用予定証明書、親族の援助の見込みなどで生活が成り立つことを説明します。住民税や国民健康保険料の滞納は、収入の多少より重く見られやすいため、申請前に解消しておくべきです。
別居していると配偶者ビザは不許可になりますか?
別居の理由と婚姻の実体によります。単身赴任や親の介護など正当な理由があり、定期的な行き来や生活費の送金が続いていれば、その事情を説明書と資料で示すことで許可の可能性はあります。一方、夫婦関係の悪化による別居で婚姻の実体が失われている場合は、更新が不許可になったり、在留資格の取消しの対象になったりします。
配偶者ビザが不許可になったらどうすればいいですか?
まず地方出入国在留管理局の窓口で不許可の理由を確認します。そのうえで、理由に対応する資料を足して再申請します。国内での変更・更新の不許可で在留期間が残っていない場合は、出国準備のための在留が認められるかも同時に確認が必要です。再申請に待機期間はありませんが、同じ書類で出し直すことは避けてください。
不許可の理由は「足りなかった立証」の地図になる
配偶者ビザの不許可は、夫婦の結婚そのものを否定する判断というより、申請の時点で入管が確認できた事実では許可の判断に至らなかった、という意味を持ちます。5つの理由のうちどれに当たったのかがわかれば、次に何を示せばよいかは具体的に決まります。
再申請で最初にすべきことは、不許可の理由を正確に聞き取ることです。次に、前回の申請書類の控えを読み直し、理由と照らして説明の空白や食い違いを探します。そのうえで、対応表の資料のうち理由に正面から答えるものを選び、時系列の説明書で全体をつなぎます。理由の聞き取りの段階で論点を取り違えると、再申請の準備全体がずれるため、判断に迷う場合は早い段階で専門家に相談してください。
根拠資料
- 在留資格「日本人の配偶者等」(出入国在留管理庁)
- 在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン(出入国在留管理庁・2026年6月改正)
- 出入国管理及び難民認定法(e-Gov法令検索)
- 出入国管理統計(政府統計の総合窓口 e-Stat)
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