在留カードの住所変更は、新しい住所に移った日から14日以内に、新住所の市区町村の窓口で在留カードを提出して行います。出入国在留管理局(入管)に出向く必要はなく、手数料もかかりません。市区町村で転入届や転居届を在留カードと一緒に出せば、それがそのまま入管法上の住居地の届出として扱われるためです。14日を過ぎると罰則の対象になり、さらに旧住所を出てから90日を過ぎても届け出ていないと在留資格の取消事由に当たります。
在留カードの住所変更は市区町村の窓口で行う
在留カードを持つ中長期在留者が引っ越したときの届出は、入管法19条の9第1項に定められています。条文は「新住居地に移転した日から十四日以内に」「新住居地の市町村の長に対し、在留カードを提出した上、当該市町村の長を経由して、出入国在留管理庁長官に対し、その新住居地を届け出なければならない」としています。
ここでいう住居地とは、日本における主たる住居の所在地を指します。届出の相手は法律上は出入国在留管理庁長官ですが、窓口は市区町村です。市区町村が入管の代わりに届出を受け付け、その情報を入管に送る仕組みになっています。この事務は地方自治法上の第一号法定受託事務とされており(入管法68条の2)、市区町村は国の事務を法律に基づいて代行している立場です。
さらに19条の9第3項は、在留カードを提出して住民基本台帳法の転入届(22条)・転居届(23条)などを出したときは、それを入管法の届出とみなすと定めています。外国人住民も2012年7月9日から住民基本台帳の対象になっているため、日本人と同じ転入届・転居届を在留カード持参で出せば、入管への届出は同時に済みます。書類を二重に出す必要はありません。
在留カードの住所変更を入管でやろうとして窓口で断られる、という行き違いは今も起きています。入管が扱うのは在留期間の更新や在留資格の変更、在留カードの再交付などで、住居地の届出は扱っていません。転職したときに本人が入管に出す「所属機関に関する届出」(19条の16)とは窓口が違う、と覚えておくと混乱が減ります。所属機関の届出は所属機関に関する届出とは?転職・退職時に本人が14日以内に出す届出で扱います。
引っ越しのパターン別の手続き
出入国在留管理庁の手続案内(住居地の変更届出)によれば、手続の骨格は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 入管法19条の9第1項 |
| 期限 | 新住居地に移転した日から14日以内 |
| 窓口 | 新住居地の市区町村の担当窓口 |
| 持ち物 | 届出書(転入届・転居届)、在留カード |
| 手数料 | かからない |
| 届出者 | 本人(16歳以上)。16歳未満や病気などで出頭できない場合は同居の16歳以上の親族。代理の場合は委任状、病気の場合は診断書の提示が必要 |
同じ市区町村の中で引っ越す場合は、転居届を1回出せば終わります。別の市区町村に引っ越す場合は、旧住所の市区町村で転出届を出して転出証明書を受け取り(マイナンバーカードを持っていればマイナポータルからの転出届も使えます)、新住所の市区町村で転入届を在留カードと一緒に出します。入管法上の14日のカウントは新住所に移った日から始まり、転入届の14日(住民基本台帳法22条)と同じ期間です。
窓口で在留カードを出すと、市区町村が新しい住居地をカードに記載(ICチップへの記録を含む)して、その場で返してくれます(19条の9第2項が準用する19条の7第2項)。住所変更で在留カードそのものが新しく作り直されることはなく、手続にかかる時間も窓口の混雑次第で、通常は当日中に終わります。
2026年6月14日以降に交付されている新様式の在留カードや特定在留カードでも、住居地は券面の記載事項に含まれています。ただし新様式のカードで住居地の変更を券面のどこにどう反映するかについて、出入国在留管理庁の公開資料では確認できていません(公式資料では未確認)。いずれにしても手続は市区町村の窓口で行い、本人や会社が券面に手書きで書き込んではいけません。
14日を過ぎたら|20万円以下の罰金と更新審査への影響
14日の期限を過ぎても、まず届け出ることが先決です。期限後でも市区町村は届出を受け付けます。そのうえで、法律上どういう扱いになるかを知っておく必要があります。
入管法71条の5第2号は、19条の9第1項に違反して新住居地を届け出なかった者を「二十万円以下の罰金」に処すると定めています。罰金は刑事罰です。これとは別に、住民基本台帳法の側でも、正当な理由なく転入届などを出さなかった場合の過料(行政上の制裁で、刑事罰ではありません)が定められています。数日の遅れですぐに刑事手続に進むことは考えにくいものの、条文上は罰金の対象になる行為だという点は押さえておくべきです。
実務でより現実的に効いてくるのは、次の在留審査です。出入国在留管理庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」は、中長期在留者について、住居地の届出を含む入管法上の届出義務を履行していることを考慮要素に挙げています。永住許可に関するガイドラインも、公的義務の一つとして入管法上の届出を適正に履行していることを求めています。届出の遅れが一度あっただけで直ちに不許可になるとは限りませんが、審査では住居地の届出日が記録として残っており、遅れの理由を聞かれる可能性があります。更新審査の考え方は在留期間更新の「相当の理由」とは|ガイドラインと審査要領で見る素行・納税・社会保険で詳しく扱っています。
期限を過ぎてしまったときは、窓口で遅れた事情を正直に説明し、入院や長期出張など客観的な理由があればその資料を控えておくことをお勧めします。次の更新申請で理由書に書く材料になるからです。
90日を超えたら在留資格の取消事由になる
届出の遅れが14日を大きく超えて90日に達すると、話は罰則から在留資格そのものに移ります。入管法22条の4第1項は、住居地に関して次の3つを在留資格の取消事由に挙げています。
- 8号:新たに中長期在留者となった人が、上陸許可などを受けた日から90日以内に住居地を届け出ないこと
- 9号:中長期在留者が、届け出た住居地から退去した日から90日以内に新住居地を届け出ないこと
- 10号:中長期在留者が虚偽の住居地を届け出たこと
ここで重要なのは、9号の90日の起算点です。14日の届出期限は「新住居地に移転した日」から数えますが、9号の90日は「届け出た住居地から退去した日」から数えます。旧住所を引き払ったあと、ホテルや知人宅を転々として次の住所が決まらないまま時間が過ぎると、新住所に移る前から90日の時計は動いています。
22条の4は別表第一・別表第二の在留資格を対象としており、別表第二に含まれる永住者も取消しの対象から外れていません。就労資格の人だけの問題ではないということです。
もっとも、8号と9号には「届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除く」という括弧書きがあります。出入国在留管理庁は2012年7月に、正当な理由があるとして取消しを行わない具体例を公表しています。
- 勤めていた会社の急な倒産やいわゆる派遣切りなどで住居を失い、経済的困窮などにより新たな住居地を定めていない場合
- 配偶者からの暴力(DV)を理由として避難や保護を必要としている場合
- 病気治療のため医療機関に入院しているなど医療上やむを得ない事情があり、本人に代わって届出を行うべき者がいない場合
- 転居後の急な出張で再入国許可により出国中である場合
- 頻繁な出張で1回あたりの日本での滞在期間が短いなど、在留活動の性質上住居地を設定していない場合
逆に言えば、単に忘れていた、忙しかったという理由は、この具体例のどれにも当たりません。
10号の虚偽の住居地の届出は、期間の問題ではなく内容の問題です。実際には住んでいない場所を住居地として届け出た場合がこれに当たり、取消事由になるだけでなく、71条の2第1号の罪(1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金)にも当たります。この罪で拘禁刑に処せられた中長期在留者は、24条4号の4により退去強制事由にも該当します。取消しの手続全体と企業への影響は在留資格の取消しとは?取消事由と外国人を雇用する企業への影響を解説で解説しています。
会社が引っ越しのときに確認しておきたいこと
住居地の届出は本人の義務で、会社が代わりに届け出る仕組みにはなっていません。窓口に出向けるのは本人か、同居の親族など限られた人です。それでも会社の側でできることはあります。
1つは、社宅や寮の入退去を会社が管理している場合に、入居日と退去日を記録しておくことです。9号の90日は旧住居からの退去日から数えるため、会社が退去日を把握していれば、次の住所が決まらない社員に早めに声をかけられます。
2つ目は、引っ越し後に在留カードの住居地欄を確認し、新しい住所が反映されていることを見届けることです。採用時の確認と同じ要領で、カードの記載を目で確かめれば足ります。在留カードの見方は在留カードとは?表面・裏面の見方と記載事項|採用時に確認すべき欄で扱っています。
3つ目は、社内の住所情報と在留カードの住居地を一致させておくことです。在留期間更新の申請書には本人の住居地を書く欄があり、所属機関が作成する部分と本人の記載がずれていると、審査で確認の手間が生じます。給与計算上の住所、社会保険の届出、在留カードの住居地が同じ住所になっているかを、引っ越しのたびに揃えておくと後の手続が楽になります。
なお、在留カードの住所変更とは別に、運転免許証、銀行口座、携帯電話などの住所変更は本人がそれぞれ行う必要があります。これらは入管法の問題ではありませんが、郵便物が届かないことで入管からの通知(資料提出通知書など)を見落とす原因になり得ます。
よくある質問
在留カードの住所変更の14日を過ぎたらどうなる?
期限後でも市区町村の窓口で届出はできます。法律上は入管法71条の5第2号の罰金(20万円以下)の対象になる行為で、次の在留期間更新や永住申請の審査では、届出義務を守っていたかどうかが考慮されます。旧住所から退去した日から90日を過ぎると、正当な理由がない限り在留資格の取消事由(22条の4第1項9号)に当たります。気づいた時点ですぐに届け出てください。
在留カードの住所変更はどこでできますか?入管ですか?
新しい住所の市区町村役場(政令指定都市は区役所)の住民登録の窓口です。入管では受け付けていません。転入届や転居届を在留カードと一緒に出せば、入管法上の住居地の届出も同時に済みます。
在留カードの裏面に自分で手書きで住所を書いてもいいですか?
いけません。住居地の記載は、届出を受けた市区町村が行います(入管法19条の9第2項、19条の7第2項)。本人や会社が書き込むと、カードの記載事項を勝手に変えたことになり、本人確認の場面でトラブルの原因になります。
在留カードの住所変更にはどのくらい時間がかかりますか?
窓口で転入届・転居届と一緒に手続すれば、通常はその日のうちに住居地が記載されたカードが返されます。カードが新しく発行されるわけではないため、入管の審査のような待ち時間はありません。引っ越しシーズンの3月・4月は窓口が混むため、時間に余裕を持って出向くことをお勧めします。
ホテルやマンスリーマンションを住所として届け出られますか?
住居地は「日本における主たる住居の所在地」で、実際に生活の本拠として住んでいる場所を届け出ます。一時的な宿泊先を形式的に届け出ると、実態と異なる届出と評価されるおそれがあります。主たる住居と言えるかどうかは滞在の期間や実態によるため、迷うときは市区町村の窓口で相談してください。
引っ越しの日付を2つ記録しておく
在留カードの住所変更で覚えておくべき数字は、新住所に移った日から14日と、旧住所を出た日から90日の2つです。14日を守れば罰則の問題は生じず、90日を超えなければ在留資格の取消事由にもなりません。どちらも、引っ越しの日付が分かっていれば計算できます。
手続そのものは市区町村の窓口で完結し、書類も在留カードと転入届・転居届だけです。難しい手続ではないからこそ、忘れたときの説明がしにくくなります。本人の側では旧住所の退去日と新住所への移転日を控えておくこと、会社の側では社宅の入退去日と在留カードの記載を確認すること。この2つがそろっていれば、次の更新審査で届出の履歴を聞かれても困ることはありません。
届出が大きく遅れてしまった場合や、住所が定まらない期間があった場合は、個別の事情で判断が変わるため、更新申請の前に専門家に相談してください。
根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 第19条の7〜第19条の9、第22条の4、第71条の2、第71条の5(e-Gov法令検索)
- 住居地の変更届出(中長期在留者)(出入国在留管理庁)
- 在留資格の取消し(入管法第22条の4)(出入国在留管理庁)
- 在留カードとは?(出入国在留管理庁)
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