「永住許可に関するガイドライン」は、入管法22条2項が定める永住許可の3要件(素行善良・独立生計・国益適合)について、出入国在留管理庁が審査の考え方を公表した文書です。2026年9月29日時点の現行版は2026年2月24日改訂版で、国益要件の中身として「原則10年在留」「公的義務の適正な履行」「最長の在留期間」などを定め、10年を短縮する特例を8つ置いています。一方、2026年8月4日には改定案が公表されて意見募集が終わっており、収入の基準や配偶者特例の年数が変わる可能性があります。読むときは、現行版と改定案を分けて扱うことが出発点になります。
永住許可に関するガイドラインとは|法律・ガイドライン・審査の関係
永住許可の法的根拠は入管法22条です。同条2項は、申請者が「素行が善良であること」「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」に適合し、かつ「その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り」許可することができると定めています。条文には「10年」という年数も、年金の納付も書かれていません。
ここでいうガイドラインとは、この抽象的な3要件を、審査で実際にどう判断するかの目安として示したものを指します。法令でなく行政の基準という位置づけのため、ガイドラインを満たしても許可が保証されるわけではありませんが、ガイドラインから外れる申請は、外れる理由を申請者側で説明しなければ許可されにくい、という関係にあります。
ガイドラインは大きく2つの部分で構成されています。「1 法律上の要件」で3要件の意味を説明し、「2 原則10年在留に関する特例」で年数の短縮を定める構成です。
法律上の要件をガイドラインはどう書いているか
素行善良要件
ガイドラインは「法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること」と説明しています。刑事罰がないことに加え、交通違反の反復や入管法上の届出義務違反なども評価の対象になります。
独立生計要件
「日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること」とされています。現行版には年収の金額が書かれていません。世帯単位で判断されることや、年収の目安の考え方は永住権の年収条件|300万円は目安?扶養家族の人数と2026年改定案で変わる基準で詳しく扱います。
入管法22条2項ただし書により、日本人・永住者・特別永住者の配偶者又は子は、素行善良要件と独立生計要件に適合することを要しません。難民の認定を受けた人と補完的保護対象者は、入管法61条の2の14により独立生計要件に適合しなくても許可され得ます。いずれも国益要件は免除されません。
国益要件のア〜オ
国益要件について、2026年2月24日改訂版は次の5つを挙げています。
- ア:原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、このうち就労資格(「技能実習」と「特定技能1号」を除く)又は居住資格で引き続き5年以上在留していること
- イ:罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付、入管法に定める届出等の義務)を適正に履行していること
- ウ:現に有している在留資格について、入管法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること
- エ:現に有している在留資格について、上陸許可基準等に適合していること
- オ:公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
整理すると、アは「年数」、イは「履歴」、ウとエは「現在の在留状態」、オは「健康」を見ています。このうち申請直前に取り返しがつかないのは、イの履歴です。
「公的義務」の意味|期限内に履行したかが問われる
ここで重要なのは、ガイドラインが公的義務を「納めたかどうか」ではなく「期限内に納めたかどうか」で評価すると明記している点です。2026年2月24日改訂版の注記は、申請時点で納付済みであっても、当初の納付期限内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価するとしています。
公的義務として列挙されているのは、次の4種類です。
- 納税(所得税、住民税など)
- 公的年金の保険料の納付(厚生年金、国民年金)
- 公的医療保険の保険料の納付(健康保険、国民健康保険)
- 入管法に定める届出等の義務(住居地の届出、所属機関に関する届出など)
会社員の場合、所得税・住民税(特別徴収)・厚生年金・健康保険は給与から天引きされるため、本人の未納は起きにくい仕組みです。問題になりやすいのは、転職の空白期間に国民年金・国民健康保険へ切り替えた期間、住民税が普通徴収になった期間、個人事業主として働いた期間です。提出書類では住民税の課税・納税証明書が直近5年分、公的年金・医療保険の納付状況が直近2年分求められるため、少なくともこの期間の納付日が審査の目に触れます。
4つ目の届出義務は見落とされがちです。転職時の所属機関に関する届出(14日以内)を出していない人は、税や年金を完納していても公的義務の不履行として評価されます。届出の漏れは、気づいた時点で遅れて提出するほかありません。
原則10年在留に関する特例の一覧
ガイドラインは、国益要件アの「原則10年」を短縮する特例を8つ定めています。
| 特例 | 必要な在留年数 |
|---|---|
| (1) 日本人・永住者・特別永住者の配偶者 | 実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ引き続き1年以上本邦に在留(実子等は引き続き1年以上在留) |
| (2) 「定住者」の在留資格で在留する人 | 定住者として5年以上継続して在留 |
| (3) 難民の認定を受けた人・補完的保護対象者 | 認定後5年以上継続して在留 |
| (4) 外交・社会・経済・文化等の分野で我が国への貢献があると認められる人 | 5年以上本邦に在留 |
| (5) 地域再生計画の区域内で特定活動の活動を行い、貢献が認められる人 | 3年以上継続して在留 |
| (6) 高度専門職のポイントが70点以上の人 | 70点以上を維持して3年以上継続して在留、又は3年前の時点を基準に70点以上 |
| (7) 高度専門職のポイントが80点以上の人 | 80点以上を維持して1年以上継続して在留、又は1年前の時点を基準に80点以上 |
| (8) 特別高度人材 | 特別高度人材として1年以上継続して在留、又は1年前の時点を基準に特別高度人材の基準に該当 |
特例を読むときの注意点は2つあります。
1つ目は、特例が短縮するのは国益要件アの在留年数だけだという点です。イの公的義務、ウの最長の在留期間、エの基準適合は特例の対象者にもそのまま求められます。日本人の配偶者でも、在留期間「1年」の配偶者ビザでは申請できないのはこのためです。
2つ目は、(4)の「我が国への貢献」には別の基準があることです。出入国在留管理庁は「我が国への貢献があると認められる者への永住許可のガイドライン」(平成29年4月26日改定)を別に公表しており、受賞歴や研究実績、公共の職務などの具体的な類型を示しています。
高度人材の特例は、在留資格が「高度専門職」でなくても、ポイント計算で基準を満たしていたことを立証すれば使えます。基準時点の考え方は高度専門職から永住申請|70点で3年・80点で1年の条件とポイントの基準時点、特別高度人材は特別高度人材制度(J-Skip)とは?で解説しています。
「最長の在留期間」と2027年3月31日の経過措置
国益要件ウは、現に持っている在留資格の最長の在留期間で在留していることを求めます。技術・人文知識・国際業務や日本人の配偶者等であれば、施行規則別表第2の最長は「5年」です。
2026年2月24日改訂版は、この要件に経過措置を置いています。2027年3月31日までの間は、在留期間「3年」を持っていれば最長の在留期間をもって在留しているものとして扱います。さらに、2027年3月31日の時点で在留期間「3年」を持っている人は、その在留期間内に処分を受ける場合に限り、初回に限って同じ扱いを受けられます。2027年4月1日以降に初めて「3年」を得た人は、この経過措置の対象になりません。
従来は、長いあいだ「当面、在留期間『3年』を有する場合は最長の在留期間をもって在留しているものとして取り扱う」という運用が続いていました。2026年2月の改訂は、この「当面」に2027年3月31日という終期を付けたものと読めます。
改訂履歴と改定案の時系列
ガイドラインは何度も改訂されています。本記事で一次資料により日付を確認できたものを時系列で並べます。
- 2017年4月26日:「我が国への貢献があると認められる者への永住許可のガイドライン」改定
- 2024年11月18日:永住許可に関するガイドライン改訂(出入国在留管理庁の旧掲載ページの表題で確認)
- 2026年2月24日:永住許可に関するガイドライン改訂(現行版)。上陸許可基準等への適合(エ)の明記、公的義務の期限内履行の明確化、最長の在留期間の経過措置の終期を設定
- 2026年8月4日:法務大臣が改定案を公表。e-Govで意見募集(案件番号315000140、締切2026年9月4日)。同時に「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案」も公表
- 2026年10月1日:改定案で収入に関する要素の適用開始とされている日(予定)。同日、永住許可の手数料が1万円から20万円に改定
- 2027年3月31日:最長の在留期間の経過措置の期限
- 2027年4月1日:改定案のその他の項目の適用開始(予定)。永住者の在留資格の新たな取消事由も同日施行
2024年11月18日版より前の改訂(高度人材の特例の追加、公的義務の明記、特別高度人材の追加など)の日付と内容は、出入国在留管理庁の現行ページに履歴が掲載されておらず、本記事では確認できていません(公式資料では未確認)。
2026年8月4日の改定案で示された主な変更
e-Govに掲載された改定案と概要によれば、主な変更点は次のとおりです。
- 独立生計要件:現在及び将来において日本人と同等水準以上の経済条件を求め、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達していることを求める
- 年金見込額:日本人世帯の平均収入を上回る年収水準で30年間厚生年金に加入した場合の見込額に達しているかを評価し、不足する場合は申請時の年齢に応じた補填資産で補えるかを見る
- 日本語能力:CEFR・B1相当を求める(高度人材外国人とその家族、初等・中等教育を累計6年以上受けた人、一定の永住者の子は必ずしも求めない)
- 配偶者特例:婚姻3年・在留1年を、それぞれ5年・3年に伸長
- 特例の追加:構造改革特別区域内で特定事業等に従事し貢献が認められる人(3年以上)
- 公的義務:過去の義務違反や過去の滞納処分も、原則として消極的に評価
適用時期について、概要は「令和9年4月から(収入に関する要素は本年10月施行)」としています。改定案本文は、収入に関する部分を、改定日から6か月前の日以降の申請であって改定日に申請中の案件にも適用するとしています。改定日が2026年10月1日であれば、2026年4月1日以降に申請して審査中の案件に、新しい収入の基準が及ぶことになります。
2026年9月29日時点で、意見募集の結果と改定の確定版は公表されていません。確定版の内容と適用範囲は現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。改定案が企業の人事施策に与える影響は【2026年10月改定】永住許可の要件厳格化で何が変わる?で扱っています。
よくある質問
永住許可に関するガイドラインはどこで確認できますか?
出入国在留管理庁のウェブサイト「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」に掲載されています。改定案は、e-Govパブリック・コメントの案件番号315000140(意見募集は2026年9月4日に終了)で閲覧できます。
ガイドラインを満たせば必ず永住許可されますか?
されません。入管法22条2項は「許可することができる」と定めており、永住許可は法務大臣の裁量に委ねられています。ガイドラインは審査の目安で、同じ年数・同じ年収でも、納付の履歴や素行の内容によって結論が分かれます。
税金を後からまとめて払えば問題ありませんか?
ガイドラインは、申請時点で納付済みでも当初の納付期限内に履行されていない場合は原則として消極的に評価するとしています。まとめて納めることは必要ですが、それだけで評価が回復するわけではありません。改定案では、過去の滞納処分も消極評価の対象と明記されています。
永住申請のガイドラインの「就労資格で5年」に特定技能は入りますか?
特定技能1号と技能実習は、就労資格の5年から除かれています。特定技能2号、技術・人文知識・国際業務などは就労資格に含まれます。
在留期間3年のまま2027年4月以降に申請できますか?
2027年3月31日の時点で在留期間「3年」を持っている人は、その在留期間内に処分を受ける場合に限り、初回だけ最長の在留期間として扱われます。それ以外で2027年4月1日以降に申請する場合は、原則として在留期間「5年」が必要です。
ガイドラインは「申請の可否」より「申請の時期」を決める道具として読む
永住許可に関するガイドラインを読んで分かるのは、許可されるかどうかの答えというより、いつ申請すべきかの判断材料です。在留年数は数えれば分かり、公的義務の履歴は取り寄せれば分かり、在留期間は在留カードを見れば分かります。この3つを並べると、いま申請できるのか、次の更新で5年を得てからにすべきか、納付履歴がきれいになるまで待つべきかが見えてきます。
2026年から2027年にかけては、手数料の改定、収入基準の導入、経過措置の終了、配偶者特例の見直しが続けて予定されています。個別の事情で判断が変わるため、現行版と改定案のどちらの基準で審査されるかを確認したうえで、申請の時期を決めてください。永住の3要件の全体像は永住権の条件とは?素行善良・独立生計・国益の3要件と原則10年在留、手数料は在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?にまとめています。
根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 第22条・第61条の2の14(e-Gov法令検索)
- 永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)(出入国在留管理庁)
- 永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)(出入国在留管理庁・旧掲載ページ)
- 我が国への貢献があると認められる者への永住許可のガイドライン(平成29年4月26日改定)(出入国在留管理庁)
- 「永住者」の適正化に係るパブリック・コメントの実施について(出入国在留管理庁)
- 永住許可に関するガイドライン改定案に係る意見募集について(e-Govパブリック・コメント・案件番号315000140)
- 永住許可に関するガイドライン改定(案)(概要)(e-Govパブリック・コメント・2026年8月)
- 法務大臣閣議後記者会見の概要(法務省・2026年8月4日)
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