仮放免とは、退去強制の手続で入管の施設に収容されている外国人について、収容を一時的に解く制度です(入管法54条)。2024年6月10日に施行された改正入管法により、仮放免は「健康上、人道上その他これらに準ずる理由」がある場合に限る制度に改められ、それまで仮放免の条件だった300万円以下の保証金の規定は条文から削除されました。保証金は、新しく作られた監理措置の側に移っています。仮放免は在留資格を与えるものではなく、仮放免中の人は働くことができません。
仮放免とは|収容を一時的に解く制度
ここでいう収容とは、退去強制事由(オーバーステイや不法就労など)に当たる疑いのある外国人や、退去強制が決まった外国人の身柄を、入管の施設に留め置くことを指します。収容の根拠は、調査・審査の段階では「収容令書」、退去強制が確定した後は「退去強制令書」です。
仮放免は、この収容令書または退去強制令書の発付を受けて収容されている人について、入国者収容所長または主任審査官が、期間を定め、条件を付けて、身柄の拘束を一時的に解くものです(54条2項)。あくまで「収容の一時的な解除」で、退去強制の手続そのものは止まりません。仮放免された人は、在留資格のないまま、決められた住居で生活し、呼出しがあれば入管に出頭することになります。
仮放免と混同されやすい言葉を整理しておきます。
- 仮釈放:刑務所で服役している人を刑期の満了前に釈放する刑事手続上の制度で、入管の仮放免とは別物です
- 仮滞在:難民認定申請中の一定の人に、退去強制手続を停止して在留を認める制度(61条の2の4)で、収容を前提としていません
- 在留特別許可:退去強制事由に当たる人に法務大臣が在留を特別に許可する処分で、許可されると在留資格が与えられます
仮放免は、この中で唯一「在留資格も在留の許可も与えない」制度です。
出入国在留管理庁の公表によれば、2025年末時点の被仮放免者は2,429人(退去強制令書発付前442人、発付後1,987人)、被監理者は1,546人です。
2024年改正で何が変わったか
2023年6月に成立した改正入管法(令和5年法律第56号)は、2024年6月10日に施行されました。仮放免については、次の点が変わっています。
仮放免の理由が「健康上・人道上」に絞られた
改正後の54条2項は、仮放免できる場合を「健康上、人道上その他これらに準ずる理由によりその収容を一時的に解除することを相当と認めるとき」と定めています。改正前の54条2項は、情状や請求の理由となる証拠、その者の性格、資産などを考慮して仮放免できるという定め方でした。改正によって、生活の必要や手続の長期化といった事情だけでは仮放免されにくくなり、収容しないで社会の中で手続を進める役割は、新設の監理措置が担う整理になりました。
健康上の理由による請求については、入国者収容所長等は医師の意見を聴くなどして、治療の必要性など健康状態に十分配慮して判断するよう努めなければならない、という規定も加わりました(54条8項)。
保証金の規定がなくなった
改正前の54条2項には「三百万円を超えない範囲内で法務省令で定める額の保証金を納付させ」という定めがあり、仮放免の際には保証金を納めるのが通例でした。改正後の54条にはこの文言がありません。現在、保証金を納めさせる仕組みがあるのは監理措置で、主任審査官は逃亡などを防止するために必要と認めるときは300万円を超えない範囲内で保証金を納付させることができます(44条の2、52条の2)。
ただし改正法附則9条の経過措置により、施行日(2024年6月10日)の時点ですでに仮放免されていた人や、施行日前に請求して処分が出ていなかった人の仮放免の効力と取消しは、改正前の例によります。改正前に保証金を納めて仮放免された人の保証金の扱いも、改正前の規定によって処理されることになります。「仮放免の保証金は返ってくるのか」という疑問は、この旧制度の保証金についての話です。
不許可の理由が書面で示されるようになった
請求に対して仮放免を不許可としたときは、請求した人に理由を付した書面で通知することになりました(54条4項)。期間の延長を不許可とした場合も同じです(54条7項)。
仮放免の不許可に対しては、行政不服審査法による審査請求はできません。同法は外国人の出入国に関する処分を適用除外としているためで、争う場合は取消訴訟によることになります。この仕組みは在留資格の不許可に不服申立てはできない?行政不服審査法の適用除外と取消訴訟で解説しています。
仮放免の請求|誰が・どこに・何を出すか
仮放免を請求できるのは、収容されている本人のほか、その代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹です(54条1項)。会社の上司や同僚は、この中に含まれていません。雇用していた外国人が収容された場合でも、会社が自ら請求人になることはできず、請求人となる親族や代理人を支える立場になります。
請求先は、収容されている施設の入国者収容所長か、地方出入国在留管理官署の主任審査官です。九州で収容されている場合は、福岡出入国在留管理局が窓口になります。局の所在地と予約の方法は福岡出入国在留管理局への行き方・予約方法にまとめています。
提出するものは、入管法施行規則49条1項により、別記第66号様式の仮放免許可申請書と、仮放免の許可を必要とする事由を証する資料です。改正後の要件に照らせば、健康上の理由なら診断書や通院・治療の記録、人道上の理由なら家族の状況(日本人の配偶者や日本で学ぶ子の存在など)を示す資料が中心になります。出入国在留管理庁の案内では、身元保証人に関する資料も求められます。
仮放免の条件と期間
仮放免には、住居と行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務、その他必要と認める条件が付きます(54条2項)。条件の中身は入管法施行規則が定めており、49条3項が準用する48条1項によれば次のとおりです。
- 住居:入国者収容所長または主任審査官が指定する
- 行動範囲:特別の事由があると認めて別に定めた場合を除き、指定された住居のある都道府県の区域内
- 出頭:出頭すべき日時と場所を指定して求められる
- その他:収入を伴う事業を運営する活動、または報酬を受ける活動に従事することの禁止など
4つ目の条件により、仮放免中の人は働くことができません。仮放免者には在留資格がないため、そもそも資格外活動許可を受ける余地もありません。仮放免中の人を雇った会社は、不法就労助長罪(73条の2)に問われるおそれがあります。この論点は仮放免中の外国人は働ける?就労禁止の理由と雇った会社のリスクで詳しく扱います。
仮放免の期間は、3か月を超えない範囲で所長等が定めます(施行規則49条2項)。期間が満了する前に延長を請求でき、許可されると仮放免許可書に新しい期間が書き込まれます(同条7項・8項)。延長の許可も、改正後は健康上・人道上などの理由で引き続き収容を解除することが相当と認められる場合に限られます(54条6項)。延長されないまま期間が満了すると、再び収容されます(55条5項)。
仮放免許可書の見方と携帯義務
仮放免されると、仮放免の期間と付された条件を記載した仮放免許可書が交付されます(54条3項)。様式は入管法施行規則の別記第67号様式です。一般に「仮放免許可証」と呼ばれることがありますが、法律上の名称は仮放免許可書です。
仮放免許可書で確認すべき項目は、次の3つです。
- 仮放免の期間:いつまで仮放免されているか。延長されるたびに新しい期間が記載されます
- 指定住居と行動範囲:どこに住み、どの都道府県の範囲で行動できるか
- 出頭の日時・場所とその他の条件:次にいつ入管に出頭するか、就労禁止などの条件
仮放免された人は、常に仮放免許可書を携帯しなければなりません(23条1項11号)。在留カードの代わりに、この書面が身分と法的地位を示す書類になるためです。携帯義務に違反した場合は10万円以下の罰金の対象になります(76条1号)。警察官や入国警備官から提示を求められたときに拒んだ場合も同様です(同条2号)。
行動範囲の外に出る必要があるとき(別の県の病院に通う、親族の葬儀に出るなど)は、事前に入管の許可を得なければなりません。無断で行動範囲を出ることは、付された条件への違反になります。
仮放免の取消しとその後
入国者収容所長または主任審査官は、仮放免された人が逃亡したとき、逃亡すると疑うに足りる相当の理由があるとき、正当な理由なく呼出しに応じないとき、その他の条件に違反したときは、仮放免を取り消すことができます(55条1項)。取り消されると、仮放免取消書と収容令書または退去強制令書を示されて、再び収容されます(55条3項)。
2024年改正では、罰則も新設されました。仮放免された人が付された条件に違反して逃亡したり、正当な理由なく呼出しに応じなかったりした場合は、1年以下の拘禁刑もしくは20万円以下の罰金、またはその併科の対象になります(72条6号)。改正前は、逃亡しても仮放免の取消しと保証金の没取にとどまっていたため、ここは大きく変わった部分です。
仮放免の「その後」は、手続の段階によって分かれます。収容令書の段階(退去強制令書の発付前)で仮放免された人は、違反調査や審査の手続が続き、その中で在留特別許可が認められれば在留資格を得られます。退去強制令書が発付された後の仮放免は、送還が可能になるまでの間の一時的な措置で、原則として送還に向けた手続が進みます。仮放免されたことが在留を認められる方向の判断を意味するわけではない、という点は誤解の多いところです。
仮放免と監理措置の関係
2024年改正で導入された監理措置は、監理人(親族や支援者など)の監理の下で、収容しないまま退去強制の手続を進める制度です。仮放免との違いを整理すると次のとおりです。
| 項目 | 仮放免 | 監理措置 |
|---|---|---|
| 前提 | 収容されている人の収容を一時的に解く | 収容しないで手続を進める(収容中の人も申請可) |
| 要件 | 健康上・人道上その他これらに準ずる理由 | 逃亡等のおそれの程度、収容により受ける不利益の程度などを考慮 |
| 保証金 | 規定なし(2024年6月10日以降の処分) | 300万円を超えない範囲で納付を条件とできる |
| 監理人 | なし | 監理人による指導・監督と入管への届出 |
| 就労 | 禁止 | 退去強制令書発付前は、許可を受ければ生計維持に必要な範囲で可能な場合がある |
出入国在留管理庁の「監理措置に関するQ&A」によれば、退去強制令書発付前の被監理者は、申請により、生計の維持に必要な範囲内で、就労先を指定するなどの厳格な要件の下で例外的に報酬を受ける活動が認められることがあります。退去強制令書発付後の被監理者は就労できません。両制度の違いと、会社が雇用の可否を確認する方法は監理措置と仮放免の違い|被監理者が働ける場合と会社が通知書で確認することで扱います。
よくある質問
仮放免になる理由は何ですか?
2024年6月10日以降に行われる仮放免は、健康上、人道上その他これらに準ずる理由により、収容を一時的に解除することが相当と認められる場合に限られます(54条2項)。病気の治療が必要な場合や、家族の状況から収容を続けることが人道上相当でない場合などが典型です。
仮放免で働いてもいいですか?
働けません。仮放免の条件として、報酬を受ける活動や収入を伴う事業を運営する活動に従事することが禁止されています(入管法施行規則49条3項、48条1項4号)。条件違反は仮放免の取消し事由になり、雇った側も不法就労助長罪に問われるおそれがあります。
仮放免はいくら払えばいいですか?保証金は返還されますか?
2024年6月10日の改正法施行後に行われる仮放免には、保証金の規定がありません。保証金の納付が条件になり得るのは監理措置で、上限は300万円です。施行前に保証金を納めて仮放免された人の保証金は、改正前の規定によって扱われます。改正前の制度では、仮放免が取り消されずに終了すれば保証金は還付され、逃亡や条件違反で取り消された場合は没取される仕組みでした。
仮放免はどれくらいの期間ですか?
1回の仮放免の期間は3か月を超えない範囲で定められます(入管法施行規則49条2項)。期間満了前に延長を請求でき、認められれば仮放免許可書に新しい期間が記載されます。延長が認められずに期間が満了すると、再び収容されます。
仮放免は不法滞在ですか?
仮放免は収容を一時的に解く措置で、在留資格を与えるものではありません。そのため仮放免中も在留資格のない状態が続きます。ただし、入管が把握したうえで条件を付けて社会で生活することを認めている状態であり、行方が分からない不法滞在とは法的な位置づけが違います。
仮放免許可書を見たら、まず就労の可否を確かめる
仮放免は、収容から社会に戻るための制度に見えますが、法的には「収容が一時的に止まっているだけ」の状態です。2024年改正で、仮放免の入口は健康上・人道上の理由に狭まり、保証金は監理措置に移り、逃亡には刑事罰が付きました。仮放免の役割は、改正前よりはっきりと例外的な措置に位置づけ直されています。
会社や支援者の立場で仮放免中の人と関わるときに確認すべきことは、2つに絞られます。1つは、本人が持っている書面が仮放免許可書なのか、監理措置決定通知書なのか。もう1つは、その書面に就労を認める記載があるかどうかです。仮放免許可書である限り、答えは「働けない」になります。手続の段階や家族の状況によって取り得る選択肢は変わり、個別の事情で判断が変わるため、在留特別許可の可能性を含めて検討するときは専門家に相談してください。
根拠資料
- 出入国管理及び難民認定法 第23条、第54条、第55条、第72条、第76条(e-Gov法令検索)
- 出入国管理及び難民認定法施行規則 第48条、第49条(e-Gov法令検索)
- 仮放免制度について(出入国在留管理庁)
- 監理措置に関するQ&A(出入国在留管理庁)
- 令和6年における入管法違反事件について(出入国在留管理庁・2025年3月14日)
- 令和7年における入管法違反事件について(出入国在留管理庁)
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