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興行ビザが厳しい・下りない理由|報酬・施設・契約書で不許可になる7つのパターン

興行ビザが厳しいと言われる理由は、上陸基準省令が演劇・歌謡・舞踊・演奏などの公演について、申請人本人の経歴、招へい機関の体制、公演する施設の3つを別々に審査する仕組みをとっており、1つでも欠けると不許可になるからです。とくに厳しいのは、公的機関の主催や客席100人以上の会場といった類型に当たらず、実績のある招へい機関でもない場合に使う「基準1号ハ」で、月額20万円以上の報酬を招へい機関が支払う義務を明示した契約、5名以上の常勤職員、13平方メートル以上の舞台、出演者が客の接待に従事するおそれがないことなどが同時に求められます。2023年8月1日の改正で要件は類型ごとに緩和されましたが、1号ハの厳しさはほぼそのまま残っています。

興行ビザが厳しいのは「人身取引対策」の経緯があるから

興行の基準がここまで細かいのには理由があります。かつて興行の在留資格は、フィリピンなどから来日した女性が「歌手」「ダンサー」の名目で飲食店に送り込まれ、実際には接客に従事させられる経路として使われ、人身取引の温床と国際的に批判されました。政府は2004年12月に「人身取引対策行動計画」をまとめ、これを受けた基準省令の改正で、外国の機関が認定した資格だけで経歴要件を満たせる扱いが削られるなど、興行の審査は大きく厳格化されました。

2023年8月1日の改正は、この厳格化の枠組みを維持しながら、問題が生じるおそれの少ない公演の要件を緩めたものです。出入国在留管理庁は改正の狙いを、適正に実施している実績がある招へい機関が受け入れる場合には要件を大幅に緩和し、問題が生じるおそれが少ない場合には要件を緩和する、と説明しています。裏を返せば、実績のない招へい機関が飲食を伴う施設で公演させる形は、今も最も厳しい審査を受けるということです。

区分の全体像(1号イ・ロ・ハ、2号、3号)は興行ビザとは|2023年8月改正後の1号イ・ロ・ハ・2号・3号と招へい機関の要件で整理しています。本記事は、不許可につながりやすい要件を「どこで欠けやすいか」という観点から並べ直します。

まず確認したいのは「1号ハで申請していないか」

同じ来日公演でも、どの基準で申請するかで難易度がまったく違います。基準1号ロ(公的機関の主催、学校での公演、客席部分の収容人員100人以上で飲食の有償提供と接待がない施設、1日50万円以上の報酬で30日以内の在留など)に当たれば、施設の広さや職員数、申請人の経験年数は問われません。1号イは、招へい機関の経営者・管理者に興行業務3年以上の経験があること、欠格事由がないこと、過去3年間の報酬を全額支払っていることなど、招へい機関の適格性だけで判断されます。

1号ハは、この2つのどちらにも当たらない場合の受け皿です。「興行ビザが下りない」という相談の多くは、実際には1号ロで申請できた公演を1号ハで組んでいるか、1号イの要件を満たさない招へい機関が1号ハの要件も満たせていないケースです。スタンディングで100人以上を収容できるライブハウスは1号ロ(4)の対象になると入管庁が明確にしているため、会場の収容人員を確認するだけで区分が変わることもあります。

以下の7つのパターンは、主に1号ハで問題になる要件です。

不許可パターン1|報酬の月額20万円が契約書に明示されていない

1号ハは、申請人と本邦の機関との契約が「当該機関が申請人に対して月額二十万円以上の報酬を支払う義務を負うことが明示されているもの」であることを求めています。ここで欠けやすいのは3つの点です。

1つ目は、金額が書かれていても月額に換算できない書き方です。「公演1回につき○円」「売上に応じて支給」のような定め方では、月額20万円以上の支払義務が明示されているとは読みにくく、筆者は月額の固定額を条項に書くよう勧めています。

2つ目は、支払義務を負う主体です。基準が求めているのは、日本の招へい機関が申請人本人に支払う義務です。海外のプロダクションや仲介業者に出演料を払い、そこから本人に渡す形では、日本の機関が本人に対して支払義務を負っていることになりません。

3つ目は、報酬からの控除です。入管庁の提出書類一覧は、活動内容・期間・地位・報酬を証する文書について、「報酬から控除される費用や報酬受領後に支払うべき費用が予定されている場合には、その額及び算定根拠を明示した文書」の提出を求めています。寮費、渡航費、仲介手数料などを差し引いた結果、手元に残る額が20万円を大きく下回る契約は、名目上の月額を満たしていても審査で問題になります。

不許可パターン2|招へい機関の常勤職員が5名に届かない

1号ハの招へい機関には、外国人の興行に係る業務について通算3年以上の経験を持つ経営者または管理者がいること、5名以上の職員を常勤で雇用していることが求められます。提出書類でも、経営者・常勤職員の名簿(5名以上の雇用が必要)と、経営者・管理者の興行業務3年以上の経験を証する資料が指定されています。

小規模なイベント会社や個人事業主が初めて外国人の出演者を呼ぶ場合、この2つが最初の壁になります。アルバイトや業務委託のスタッフは常勤職員に数えられず、興行業務の経験も、日本人アーティストの公演運営だけでは「外国人の興行に係る業務」の経験と評価されにくいと考えられます。

不許可パターン3|舞台・控室・従業員数の施設要件を満たさない

1号ハでは、公演が行われる施設について、次の要件をすべて満たす必要があります(上陸基準省令 興行の項1号ハ(3))。

  • 不特定かつ多数の客を対象として外国人の興行を行う施設であること
  • 13平方メートル以上の舞台があること
  • 9平方メートル以上の出演者用の控室があること(出演者が5名を超える場合は、1名につき1.6平方メートルを加算)
  • 施設の従業員の数が5名以上であること
  • 施設を運営する機関の経営者や常勤職員が欠格事由に当たらないこと

提出書類として、営業許可書の写し、間取りが分かる施設の図面、客席・控室・外観の写真が求められます。図面上の舞台面積が13平方メートルに足りない、控室が物置と兼用で出演者の人数分の面積がない、といった点は書類の段階で分かってしまいます。出演者が5名を超える公演では、控室の必要面積は9平方メートルに超過人数×1.6平方メートルを足した広さになるため、8名の公演なら9+3×1.6=13.8平方メートル以上が必要です。

なお、その施設で興行の在留資格で活動する人が申請人以外にいない場合は、施設の要件のうち欠格事由の部分だけを満たせばよいとされています。

不許可パターン4|出演者が客の接待をするおそれがある

興行の審査で最も警戒されているのが、出演者が実際には客の接待に従事する形です。ここでいう接待とは、風営法2条3項の「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」を指し、客の隣に座って会話をする、酒を注ぐといった行為が典型です。

基準は、公演施設が風営法2条1項1号の営業(キャバレー、社交飲食店など客の接待をして飲食させる営業)を営む施設である場合、専ら客の接待に従事する従業員が5名以上いること、そして興行の在留資格で在留する者が客の接待に従事するおそれがないと認められることを求めています。接待を担う日本人などの従業員が十分にいて、出演者が接待に回る必要のない体制であることを示せなければ、許可は出ません。

このパターンは審査の段階だけの話ではありません。許可を受けた後に出演者が接待に従事すれば、興行の在留資格で認められていない活動をしたことになり、資格外活動として本人が処罰や退去強制の対象になりえます。店舗の経営者は不法就労助長罪(入管法73条の2)に問われるおそれがあり、法定刑は現行で3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、2027年4月1日からは5年以下・500万円以下に引き上げられます。構造は不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法で解説しています。1号イの招へい機関についても、1号ロ(4)の施設についても、接待をしないことが要件の前提になっている点は共通です。

不許可パターン5|申請人の「2年以上」の経歴を証明できない

1号ハでは、申請人本人が、外国の教育機関で当該活動に係る科目を2年以上の期間専攻したこと、または2年以上の外国における経験を有することが必要です。報酬が1日500万円以上の公演であれば、この要件は問われません。

問題になるのは、経験を裏づける資料の弱さです。提出書類は「申請人の経歴書及び活動に係る経歴を証する文書」とされており、過去の公演のチラシ、出演契約書、報道記事、所属していた団体の在籍証明などで、2年という期間の経験を客観的に示す必要があります。SNSへの投稿やプロフィール文だけでは、期間と活動実態の両方を立証するには足りません。

不許可パターン6|招へい機関が過去3年の報酬を全額払っていない

1号イと1号ハのどちらでも、招へい機関が過去3年間に締結した契約に基づき、興行の在留資格で在留した外国人に支払う義務を負った報酬の全額を支払っていることが要件です。入管庁は、この点について申立書の提出を求め、必要に応じて追加資料を求める運用を示しています。1号ハの提出書類一覧では、契約書、領収書、振込記録、給与台帳等の会計帳票、納税関係書類、決算書・法人税申告書のいずれかで支払を証明するとされています。

過去に1円でも未払いがあれば要件を欠くため、現金手渡しで領収書を取っていない、源泉徴収の記録がないといった管理の甘さが、数年後の申請で不許可の原因になります。

不許可パターン7|経営者・常勤職員が欠格事由に当たる

招へい機関と施設運営機関の経営者・常勤職員が、人身取引等への関与、過去5年間の不法就労助長行為、過去5年間の申請書類の偽変造、入管法74条〜74条の8または売春防止法6条〜13条の罪による刑の執行終了等から5年未満、暴力団員(離脱後5年未満を含む)のいずれかに当たれば、それだけで基準を満たしません。役員の一人に該当者がいる場合も同じです。申請書類には、欠格事由に該当しないことの申立書を添付します。

2号・3号の不許可は「日本人と同等額以上の報酬」で決まる

演劇等以外の興行(スポーツ、格闘技、サーカスなど)の2号と、興行以外の芸能活動(宣伝、放送番組・映画の製作、商業用写真の撮影、商業用の録音・録画)の3号は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが基準です。一律の金額はないため、同じチームの日本人選手や、同種の撮影に出演する日本人モデルの報酬水準との比較で判断されます。報酬の考え方は就労ビザの「日本人と同等額以上の報酬」とはで扱っています。3号は活動の類型が4つに限定されているため、予定している活動がどれに当たるかを先に確認する必要があります。

よくある質問

興行ビザは厳しいですか?

区分によります。公的機関の主催や客席100人以上の会場での公演(1号ロ)、実績のある招へい機関による公演(1号イ)は、2023年8月1日の改正で要件が緩和されました。厳しいのは、そのどちらにも当たらない1号ハで、申請人・招へい機関・施設の三方向の要件をすべて満たす必要があります。

興行ビザが下りないとどうなりますか?

在留資格認定証明書が交付されなければ、出演者は興行の在留資格で来日できません。報酬を受けて公演に出演する活動は短期滞在では行えないため、公演自体を中止するか、区分や会場を見直して再申請することになります。不許可の通知を受けたら、入管で不許可の理由を確認できます。進め方は入管から不許可のハガキが届いたら?で解説しています。

興行ビザで接待はできますか?

できません。興行の在留資格で認められているのは公演への出演や芸能活動で、客の隣に座って会話や飲食の相手をする接待は含まれません。接待に従事させれば、本人は資格外活動、店舗側は不法就労助長罪に問われるおそれがあります。

興行ビザはYouTuberでも取れますか?

日本での動画配信そのものを目的にした興行ビザは想定されていません。3号の芸能活動は、商品・事業の宣伝、放送番組・映画の製作、商業用写真の撮影、商業用の録音・録画に限られ、日本人と同等額以上の報酬を受けることが必要です。企業の広告案件への出演のように、この類型に当たり報酬の支払元がはっきりしている活動であれば検討の余地がありますが、自分のチャンネルの運営が中心の活動がどの類型に当たるかは個別の事情で判断が変わります。

無報酬でも興行ビザは必要ですか?

報酬を受けない公演への出演は、短期滞在の範囲で行える場合があります。ただし、出演料の名目がなくても、滞在費の負担や謝礼が実質的な対価と評価されれば、報酬を受ける活動と判断されるおそれがあります。

申請の前に、区分・会場・契約の順で点検する

興行ビザの不許可を避けるために招へい側が最初にすべきなのは、書類を集めることより、申請する区分を確定させることです。公演の会場の収容人員と飲食提供の方法、1日あたりの報酬額を確認すれば、1号ロで申請できるかどうかが分かります。当たらなければ自社が1号イの招へい機関要件を満たすかを確かめ、それでも1号ハになるなら、7つのパターンを1つずつ潰していく、という順番です。

1号ハで申請する場合、施設の図面と写真、常勤職員の名簿、契約書の報酬条項は、申請前に第三者の目で確認しておくことを勧めます。どれも申請後に補正しにくく、公演日が迫ってからでは会場や契約を組み替える時間がありません。申請書類の具体的な揃え方と申請の流れは興行ビザの必要書類と申請の流れ|区分別の一覧と招へい契約書・公演計画・報酬の立証で扱います。

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