中国人との国際結婚は、中国と日本のどちらか一方で婚姻を成立させ、もう一方の国にもその婚姻を届け出てから、配偶者ビザ(在留資格「日本人の配偶者等」)を申請する流れで進みます。中国に住む相手と結婚する場合は、中国の婚姻登記機関で先に登記し、結婚後3か月以内に、結婚公証書と国籍公証書(いずれも和訳付き)を添えて日本側に婚姻届を出すのが基本形です。どちらの国を先にするかで、そろえる公証書と中国側の扱いが変わります。
中国人との国際結婚の手続きは「どちらの国で先に結婚するか」で決まる
国際結婚では、婚姻が成立する要件は各当事者の本国法で、婚姻の方式(どこでどう届け出るか)は婚姻を挙行する地の法か当事者の一方の本国法で判断されます(法の適用に関する通則法24条)。日本人と中国人の場合、成立させる方法は次の2つです。
| 項目 | 中国で先に結婚(中国方式) | 日本で先に結婚(日本方式) |
|---|---|---|
| 最初の手続 | 中国の婚姻登記機関で婚姻登記 | 日本の市区町村に婚姻届(創設的届出) |
| 婚姻の成立 | 登記し結婚証が交付された時点 | 市区町村で受理された時点 |
| 2番目の手続 | 3か月以内に在中国日本大使館・総領事館か本籍地の市区町村へ婚姻届(報告的届出) | 中国側へ婚姻を反映させる手続(戸籍所在地での登録) |
| 向いている場面 | 相手が中国に住んでいる | 相手が日本に中長期在留している |
在中国日本国大使館は、中国在住の相手との結婚について、中国の方式で婚姻登記を先に行う流れを案内しています。大使館で受理できる婚姻届は、相手国の方式での婚姻手続をしている場合に限られ、中国の登記をしないまま大使館に創設的な婚姻届を出すことはできません。
中国の民法典1047条は、婚姻できる年齢を男性22歳以上・女性20歳以上と定めています。日本の民法(男女とも18歳)より高いため、若い中国人と結婚する場合は、中国側の年齢要件も満たしているかを最初に確認してください。婚姻の成立要件は各当事者の本国法で判断されるので、中国人側はこの年齢に達していなければ、日本で先に結婚する場合でも婚姻届は受理されません。
中国で先に結婚する場合の流れ
1 日本人側は婚姻要件具備証明書を用意する
婚姻要件具備証明書とは、日本人が日本法上、独身であり婚姻できる状態にあることを証明する書類で、中国側では「独身証明」として扱われます。在中国日本国大使館の案内(令和2年4月1日更新)では、日本人が用意する書類は次のとおりです。
- 婚姻要件具備証明書(日本の法務局・地方法務局の長が発行、または在中国の日本大使館・総領事館が発給)
- その中国語訳文(翻訳会社によるもの)
- パスポート
日本の法務局で発行された証明書を中国で使う場合、大使館の案内では外務省と在日本中国大使館の認証が必要とされています。ただし、この案内は中国がハーグ条約(外国公文書の認証を不要とする条約)に加わる前のものです。ハーグ国際私法会議の締約国一覧によれば、中国(中華人民共和国)の同条約は2023年11月7日に発効しています。これにより、日本の公文書を中国で使う場合は、外務省のアポスティーユ(付箋による証明)で足り、中国大使館の領事認証は不要になる扱いが原則です。婚姻登記機関が実際にアポスティーユ付きの証明書をどう受け付けているかは地域で運用が異なる可能性があるため、登記予定の機関への事前確認が必要です(公式資料では未確認)。在中国の日本大使館・総領事館で発給を受けた証明書であれば、この認証自体が要りません。
2 中国人側の書類と婚姻登記
中国人側は、戸籍を示す「居民戸口簿」と身分証明書である「居民身分証」を持参し、配偶者がいないこと、直系血族や三代以内の傍系血族の関係にないことを婚姻登記員に表明します(在中国日本国大使館の案内)。登記は、各地の人民政府が指定する婚姻登記機関(例:北京市民政局婚姻登記処)で、二人がそろって行います。外国人が当事者になる婚姻は、どの婚姻登記機関でも扱えるわけではありません。中国の婚姻登記条例は2025年に改正されており、戸口簿の要否や登記できる機関の範囲が変わったとされていますが、日本人との婚姻への適用の詳細は確認できていないため現時点で公式資料では確定していないため、断定できません。
登記が済むと、二人に「結婚証」が交付されます。この時点で中国法上の婚姻が成立します。
3 結婚公証書を取り、3か月以内に日本へ婚姻届
外国の方式で婚姻が成立した場合、日本人は婚姻成立の日から3か月以内に、その婚姻に関する証書の謄本を在外公館か本籍地の市区町村に提出しなければなりません(戸籍法41条)。ここで使うのが結婚公証書です。
結婚公証書とは、中国の公証処が、二人が婚姻していることを公的に証明する書類を指します。結婚証そのものは夫婦が持つ手帳型の証書で、日本の役所や入管にはその内容を公証した書類を出すのが一般的です。在中国日本国大使館(令和7年6月10日更新)が、日本人と中国人の婚姻届に必要な書類として挙げているのは次のものです。
- 日本人のパスポート
- 婚姻届(2通)
- 結婚公証書(中国人配偶者の戸籍所在地の公証処発行)
- 結婚公証書の和訳
- 中国人配偶者の国籍公証書
- 国籍公証書の和訳
期限の3か月を過ぎた場合は、婚姻届遅延理由書が必要です。大使館に出すと本籍地の戸籍に記載されるまで時間がかかるため、日本に帰ってから本籍地や住所地の市区町村に直接出す方法もあります。本籍地以外に出す場合の戸籍謄本の添付の要否など、市区町村の窓口ごとの扱いは事前に確認してください。報告的届出の一般的な仕組みは国際結婚の手続きの流れ|日本で先に結婚する場合・相手国が先の場合とビザ申請で扱っています。
日本で先に結婚する場合の流れ
相手の中国人が留学生や就労ビザで日本に住んでいる場合は、日本の市区町村に婚姻届を出して先に結婚するのが一般的です。このとき中国人側は、中国法上の婚姻要件を満たしていること、つまり独身で婚姻年齢に達していることを示す書類を出す必要があります。
在日中国大使館・総領事館は、かつて発行していた婚姻要件具備証明書に代えて、本人の無配偶の声明を公証する方式に切り替えたと各種の案内で説明されていますが、本記事では在日中国大使館の一次資料を確認できていないため現時点で公式資料では確定していないため、断定できません。実務では、中国の公証処で発行される出生公証書や未婚(無配偶)公証書、パスポートなどを組み合わせて提出を求められることが多く、書類の組み合わせは市区町村によって異なります。婚姻要件具備証明書が出せず代替書類で届け出る場合は、市区町村が管轄法務局に受理照会を行い、受理までに時間がかかることがあります。代替書類と受理照会の考え方は国際結婚の婚姻届の書き方|婚姻要件具備証明書が出ない国の代替書類と受理証明書で解説しています。
日本で成立した婚姻を中国側に反映させるには、中国人配偶者が婚姻届受理証明書を中国の戸籍所在地の派出所に提出します。在中国日本国大使館の案内では、この受理証明書には外務省と在日本中国大使館の認証が必要とされていますが、2023年11月7日以降はアポスティーユで足りる扱いになるのが原則です(前述)。日本方式で結婚した場合、中国では結婚証は交付されません。この点が、後で述べる配偶者ビザの書類に影響します。
配偶者ビザ申請の流れと中国人の場合の書類
両国で婚姻の手続が済んだら、配偶者ビザを申請します。相手が中国にいる場合は、日本人配偶者が代理人となって地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書の交付を申請し、交付後に相手が中国の日本大使館・総領事館で査証を申請します。在中国日本国大使館の案内では、中国での査証申請は大使館が指定する代理申請機関を通じて行う仕組みです。相手がすでに日本に住んでいる場合は、在留資格変更許可申請になります。
出入国在留管理庁の「日本人の配偶者等」のページで、婚姻関係について求められる主な書類は次のとおりです。
- 日本人配偶者の戸籍謄本(全部事項証明書、婚姻事実の記載があるもの、発行日から3か月以内)
- 申請人の国籍国(外国)の機関から発行された結婚証明書
- 日本人配偶者の身元保証書
- 日本人配偶者の世帯全員の記載がある住民票の写し
- 質問書(中国語・簡体字版と繁体字版も用意されている)
- 夫婦で写ったスナップ写真2〜3葉、SNSや通話の記録など交流を示す資料
- 滞在費用を支弁する人の住民税の課税(非課税)証明書と納税証明書
外国語の書類には日本語の訳文を付ける必要があります。中国で先に結婚した場合、「国籍国の機関から発行された結婚証明書」には、結婚公証書(和訳付き)を使うのが一般的です。日本で先に結婚した場合は中国の結婚証が交付されないため、この欄の書類をどう用意するか、または出せない理由をどう説明するかを申請前に詰めておく必要があります。入管がこの場合にどの書類で代替を認めるかは公表されておらず現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。
審査期間は、出入国在留管理庁の公表値で、2026年7月に処理された「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書交付申請が平均106.5日、変更許可申請が57.4日でした。中国で登記してから日本で配偶者ビザが出るまで、婚姻届の戸籍記載にかかる期間を含めると、半年近くを見込んでおくのが現実的です。
審査で見られる点|交際経緯と書類の整合
配偶者ビザの審査では、婚姻が法律上有効に成立していることに加え、夫婦として実体のある関係かどうかが見られます。戸籍上の婚姻があっても実体がなければ「日本人の配偶者等」には当たらないとした判例の考え方は、最判平成14年10月17日と「活動の実体」で解説しています。質問書では、知り合った経緯、紹介者の有無、交際期間、結婚式の有無、互いの言語でどう意思疎通しているかなどを具体的に書きます。
中国人との結婚で書類の整合が崩れやすいのは、日付と氏名の表記です。結婚証の登記日、結婚公証書の記載、日本の戸籍に記載された婚姻日が一致しているか、中国語の簡体字の氏名と日本の戸籍に記載された漢字表記の対応がそろっているかを、申請前に突き合わせてください。交際期間が短い、年齢差が大きい、結婚紹介所を通じた出会いであるといった事情があれば、その経緯を質問書と理由書で丁寧に説明することが求められます。
なお、日本人と中国人が結婚しても、どちらの国籍も自動的には変わりません。日本の戸籍では夫婦別姓が原則で、日本人配偶者が中国人配偶者の姓を名乗るには、婚姻から6か月以内に市区町村へ外国人との婚姻による氏の変更届を出す必要があります。
よくある質問
中国人と日本人が結婚するにはどうすればいいですか?
中国の婚姻登記機関で登記するか、日本の市区町村に婚姻届を出すかのどちらかで婚姻を成立させ、もう一方の国にも婚姻を届け出ます。中国で先に結婚した場合は、3か月以内に結婚公証書と国籍公証書(和訳付き)を添えて、在中国日本大使館・総領事館か日本の市区町村に婚姻届を出します。そのうえで配偶者ビザを申請します。
中国人と日本人が日本で結婚した場合、中国での登記はどうなるのですか?
中国人配偶者が、日本の婚姻届受理証明書を中国の戸籍所在地の派出所に提出して反映させます。在中国日本国大使館の案内では外務省と中国大使館の認証が必要とされていますが、2023年11月7日の中国のハーグ条約発効後はアポスティーユで足りる扱いが原則です。日本方式の婚姻では、中国の結婚証は交付されません。
中国人と結婚したら国籍はどうなりますか?
結婚しただけでは、日本人も中国人も国籍は変わりません。中国人配偶者が日本国籍を取得するには帰化申請が必要で、日本人の配偶者には住所要件を短縮した簡易帰化の規定があります。中国の国籍法は二重国籍を認めていないため、帰化すると中国国籍は失われます。
中国人と結婚したら苗字は別姓ですか?
日本の戸籍上は、外国人と結婚しても夫婦別姓が原則です。日本人配偶者が中国人配偶者の姓に変えたい場合は、婚姻の日から6か月以内であれば、家庭裁判所の許可なしに市区町村への届出で変更できます。中国も夫婦がそれぞれの姓を保つのが一般的です。
手続を始める前に決めておくこと
中国人との国際結婚で手戻りが起きやすいのは、どちらの国で先に結婚するかを決めないまま書類を集め始めることです。中国方式なら日本人側の婚姻要件具備証明書とその認証(またはアポスティーユ)が先に要り、日本方式なら中国人側の公証書をそろえて市区町村の受理を得ることが先になります。先行する国が決まれば、必要な公証書の種類と取得の順番も決まります。
配偶者ビザまで見据えると、筆者は、相手が中国に住んでいるなら中国方式を先行させ、結婚公証書を入管への提出用にも取得しておく進め方を勧めます。日本方式を選ぶ場合は、中国の結婚証が出ないことを前提に、配偶者ビザで婚姻を証明する書類の組み立てを申請前に固めておいてください。書類の組み合わせは個別の事情で変わるため、迷うときは申請前に専門家へ相談することをお勧めします。在留資格認定証明書が交付された後の入国までの流れは在留資格認定証明書が交付されたら?で扱っています。
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根拠資料
- 婚姻届(在中国日本国大使館・令和7年6月10日更新)
- 在留資格「日本人の配偶者等」(出入国在留管理庁)
- Status table: Convention Abolishing the Requirement of Legalisation for Foreign Public Documents(ハーグ国際私法会議)
- 公文書の証明(アポスティーユ・公印確認)(外務省・令和8年6月1日更新)
- 法の適用に関する通則法(e-Gov法令検索)
- 戸籍法(e-Gov法令検索)
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