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外国人の所得税が免除される場合|租税条約の学生・事業修習者・教授免税と届出書

外国人の所得税が免除されるのは、出身国と日本の租税条約に学生・事業修習者・教授などの免税条項があり、その条件に当てはまる人が「租税条約に関する届出書」を最初の給与の支払日の前日までに出した場合です。在留資格や国籍だけで所得税が免除される仕組みはなく、日本で働いて給与を受け取る外国人には、日本人と同じ所得税がかかるのが原則です。同じ「留学生」でも、中国の学生は日本でのアルバイト代まで免税になる一方、ベトナムやインドの学生は国外から送られてくる生活費しか免税にならない、というように、結論は条約ごとに大きく違います。

この記事は、外国人を雇う会社の人事・経理担当者と、免税を受けたい本人に向けて、免除の3つの類型、国別の条文の違い、在留資格ごとの当てはめ、届出書の出し方を整理します。

外国人の所得税が免除されるのは租税条約の特例だけ

日本の所得税法は、国籍で課税を区別していません。日本に住所があるか、1年以上居所がある人は「居住者」として、非居住者は日本で生じた所得について、それぞれ課税されます。外国人かどうかは、課税の有無を決める要素になっていません。

この原則に例外を設けているのが租税条約です。財務省の一覧によると、日本が結んでいる二重課税の除去などを主な内容とする租税条約は、2026年6月26日現在で70か国・地域に及びます。条約の多くに、次のような人の一定の所得を、滞在先の国(ここでは日本)で免税とする条項が置かれています。

類型 条項の対象 免税になる所得の典型
学生 教育を受けるために滞在する学生 生計・教育のための給付(条約によってはアルバイト代も)
事業修習者・事業習得者 企業などで訓練を受ける人 生計・訓練のための給付、一定額以下の報酬
教授・研究者 大学などで教育・研究を行うために一時滞在する人 教育・研究の報酬(期間は2年または3年が多い)

ここでいう事業修習者とは、企業や職業訓練の場で技術や技能を身につけることを主な目的として滞在する人を指します。事業習得者は、本国の企業に雇われたまま日本で実務経験を積む人などを指すことが多く、条約によって名称と範囲が違います。

学生・事業修習者・教授以外にも、短期出張者の給与に関する短期滞在者免税(多くの条約で年183日以下など)がありますが、これは本国の会社から給与を受け取る出張者向けの規定で、日本の会社に雇われる外国人社員にはほぼ当てはまりません。この記事では扱いません。

国によって免税の範囲は大きく違う

免税条項の中身は、条約ごとに書き方が違います。財務省が掲載している条約本文(日英併記)で、外国人の受入れが多い国の条文を確認すると、次のようになります。

相手国 学生・事業修習者 教授・研究者
中国(日中租税協定・1983年署名) 21条:生計・教育・訓練のための給付又は所得を免税。国外払いに限らず、金額・期間の上限なし 20条:最初の到着日から3年以内の教育・研究の報酬を免税
韓国(日韓租税条約・1998年署名) 20条:国外からの支払を免税。加えて学生は奨学金・給与の合計が年2万米ドル以下なら免税(連続5年まで)。事業修習者は1年以内の勤務で年1万米ドル以下の報酬を免税 21条:2年以内の滞在で、韓国で課税される教育・研究の報酬を免税
フィリピン(日比租税条約・1980年署名) 21条:国外からの送金等に加え、学生の役務報酬は年1,500米ドル以下を免税(連続5年まで)。本国企業の被用者として1年以内の実務経験を積む人は年4,000米ドル以下を免税 20条:2年以内の一時滞在で教育・研究の報酬を免税
インドネシア(日インドネシア租税協定・1982年署名) 21条:学生は日本での役務報酬が年60万円以下なら免税(最初の到着から5課税年度)。本国企業の被用者として12か月以内の実務経験を積む人は年180万円以下を免税 20条:2年以内の一時滞在で教育・研究の報酬を免税
ベトナム(日越租税協定・1995年署名) 20条:国外から支払われる生計・教育・訓練のための給付のみ免税 条項なし
インド(日印租税条約) 20条:国外から支払われるもののみ免税(国税庁 質疑応答事例) (公式資料では未確認)

(財務省「我が国の租税条約等の一覧」掲載の各条約本文、国税庁 質疑応答事例「学生のアルバイト代」から筆者整理。条文の細かな要件は原文で確認してください)

この表で最も差が大きいのは、日本の会社から受け取る給与やアルバイト代が免税になるかどうかです。中国の条約は「給付又は所得」と書き、支払元を限定していないため、国税庁も中国から来日した大学生のアルバイト代を免税としています。一方、ベトナムやインドの条約は「国外から支払われるもの」に限っているため、日本でのアルバイト代は免税になりません。韓国・フィリピン・インドネシアは、国外からの支払を免税にしたうえで、日本での報酬を一定額まで免税とする中間型です。

フィリピンの年1,500米ドルやインドネシアの年60万円は、日本で働く人の年収としては少ない額です。筆者は、この上限は留学生の小遣い程度のアルバイトを想定したもので、フルタイムに近い働き方ではすぐ超えると考えています。上限を超えた年に、超えた部分だけが課税されるのか、全額が課税されるのかは条文の書き方によって読み方が分かれるため、(公式資料では未確認)として税務署に確かめてください。

在留資格別に見る免税の当てはまり方

租税条約は在留資格を要件にしていませんが、実務では、どの在留資格で滞在しているかが条項に当てはまるかを判断する手がかりになります。

留学:大学・大学院・短大の学生は学生条項の対象

大学、大学院、短期大学など学校教育法1条の学校で学ぶ「留学」の学生は、学生条項の典型的な対象です。専門学校(専修学校の専門課程)の学生は、次に述べる国税庁の質疑応答事例が「専修学校又は各種学校に在学する就学生」をまとめて適用外としているため、大学生と同じ扱いにはなりません。中国の学生であればアルバイト代も免税、韓国・フィリピン・インドネシアの学生は上限額まで免税、ベトナムの学生は国外からの仕送りだけが免税、という違いがそのまま当てはまります。

日本語学校・専門学校の学生:学生条項は適用されない

注意が必要なのが日本語学校で学ぶ学生です。国税庁の質疑応答事例は、日本語学校などの専修学校又は各種学校に在学する就学生について、学生・事業修習者・事業習得者の免税条項の適用はないとしています。在留資格は同じ「留学」でも、日本語学校生であるというだけでは免税にならず、居住者か非居住者かを判定して、通常どおり源泉徴収することになります。中国から来た日本語学校生を雇う会社が、大学生と同じように届出書を受け取って源泉徴収をしないでいると、後で徴収漏れを指摘されるおそれがあります。

研修:事業修習者条項の典型

在留資格「研修」は、公的機関の研修や非実務の研修を受ける活動で、報酬を受ける活動は認められていません。研修生が受け取る研修手当は、生計や訓練のための給付として、事業修習者条項の対象になり得ます。中国の研修生であれば日中協定21条の「訓練のための給付」に当たると考えられますが、研修手当の性質は受入れ機関の支給方法によって違うため、個々の条約で確認が必要です(公式資料では未確認)。

技能実習・育成就労:雇用契約による給与は慎重に判断

技能実習生は、日本の実習実施者と雇用契約を結んで給与を受け取ります。中国の条約は「事業修習者(business apprentice)」「研修生(trainee)」を対象にし、支払元を限定していないことから、技能実習生の給与も免税になるのではないかという質問がよくあります。しかし、技能実習は労働関係法令が適用される雇用であり、専ら訓練のために滞在しているといえるかどうかで判断が分かれます。国税庁が技能実習生の給与について条約の適用を明示した公表資料は確認できませんでした(公式資料では未確認)。届出書を受け付ける前に所轄税務署に確認してください。2027年4月1日に始まる育成就労も、雇用契約による就労である点は同じです。

教授:大学の教員は教授条項、ただし期間に注意

大学などで教育・研究を行う在留資格「教授」の人は、教授条項の対象になり得ます。期間は条約によって2年または3年で、国税庁の質疑応答事例は、日仏租税条約について、雇用契約の期間ではなく日本での滞在期間で判定するとしています。3年の予定で招へいし、1年ごとに契約を更新する場合でも、2年を超えて滞在すれば、その条約では免税の対象から外れる時点が問題になります。

「教授」と「技術・人文知識・国際業務」「教育」との線引きは研究職・大学・学校の先生は技人国か|「教授」「研究」「教育」との線引きで解説しています。在留資格が「教授」でも、条約上の教授条項に当たるかは、滞在の目的と期間、相手国での課税の有無など条約の要件で判断されます。

技術・人文知識・国際業務などの就労資格:原則として免除なし

会社員として働く技術・人文知識・国際業務、特定技能、企業内転勤などの人には、学生・事業修習者・教授の条項は当てはまりません。留学中に免税を受けていた人も、就職して就労資格に変わった後の給与は課税対象です。留学から就職する時期の在留手続は留学から技術・人文知識・国際業務への在留資格変更ガイドで確認できます。

租税条約に関する届出書の出し方

免税を受けるための書類は、「租税条約に関する届出書(教授等・留学生・事業等の修習者・交付金等の受領者の報酬・交付金等に対する所得税及び復興特別所得税の免除)」です(国税庁 手続A3-11)。根拠は、租税条約等実施特例法の施行省令(実施特例省令)8条などです。

項目 内容
提出期限 入国の日以後最初に報酬・交付金等の支払を受ける日の前日まで
提出方法 支払者(勤務先・アルバイト先)ごとに作成し、支払者に提出。支払者がその所轄税務署に提出
添付書類 留学生は在学証明書、修習者は修習者であることを証明する書類、交付金等の受領者は交付金等の受領を証明する書類
記載事項に異動があったとき 同じ期限・方法で改めて提出
特典条項がある条約 特典条項に関する付表(様式17)を添付

実務で押さえたい点は3つあります。

一つ目は、支払者ごとに出すことです。アルバイト先を2か所掛け持ちしている留学生は、それぞれの会社経由で届出書を出す必要があります。

二つ目は、会社を経由することです。本人が税務署に直接出す手続はなく、会社が受け取って会社の所轄税務署に提出します。会社は届出書の写しと添付書類を保管し、源泉徴収をしない根拠を説明できるようにしておきます。

三つ目は、学校を卒業したり転校したりして記載事項が変わったときに、出し直しが必要なことです。大学を卒業して日本語学校に移った人や、就職した人は、学生条項の対象から外れることがあります。

届出書を出し忘れて源泉徴収された場合

最初の支払日までに届出書が出ておらず源泉徴収された場合でも、条約の要件に当てはまっていれば、「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」で取り戻せます(国税庁 手続A3-14)。還付請求書と租税条約に関する届出書をそれぞれ作成し、源泉徴収をした支払者に提出して、支払者から税務署に出してもらいます。提出期限は特に定められていませんが、納付があった日から5年を経過すると時効で請求権が消滅します。

帰国した後に還付を請求する場合は、還付金の受取りや税務署とのやりとりのために、代理人や納税管理人を決めておくと手続が進めやすくなります。代理人が提出・受領する場合は委任状とその翻訳文を付けます。

住民税は市区町村への別の届出が必要

所得税の届出書を出しても、住民税は自動的には免除されません。租税条約で住民税の免除を受けるには、住所地の市区町村に別の届出を出す必要があり、神戸市は毎年3月15日までの提出を求め、「税務署へ提出した届出だけでは住民税の免除は受けられない」と案内しています。住民税の課税の仕組みと届出の詳細は外国人の住民税はいつからかかる?来日1年目がゼロの理由と租税条約による免除で扱っています。

在留期間の更新や永住の申請では、住民税の課税・納税証明書が提出書類になります。租税条約で免除を受けていると、証明書の所得欄や税額が少なく、あるいはゼロになるため、審査で収入の実態を確認される場合があります。免除を受けた根拠となる届出書の控えは、在留手続のためにも保管しておくよう本人に伝えてください。納税状況と在留審査の関係は在留期間更新の「相当の理由」とは|ガイドラインと審査要領で見る素行・納税・社会保険で解説しています。

会社が免税の判断で間違えやすい点

免税を適用するかどうかを最終的に確認するのは、源泉徴収義務を負う会社です。本人の「国では免税だと聞いた」という説明だけで源泉徴収をやめると、要件に当たらなかった場合に、会社が不足額と不納付加算税を負担することになります。

筆者が特に注意を勧めるのは次の場面です。

  • 日本語学校生:在留資格は留学でも学生条項の対象外
  • ベトナム・インドなどの学生:国外からの支払のみが免税で、日本でのアルバイト代は課税
  • 韓国・フィリピン・インドネシアの学生:日本での報酬の免税に年額の上限がある
  • 教授:滞在期間の上限(2年・3年)は雇用契約の期間ではなく滞在期間で数える
  • 卒業・就職:学生でなくなった時点で条項の対象から外れる

所得税の免除に当たるかは、条約の条文と本人の滞在の実態によって個別の事情で判断が変わります。判断に迷うときは、届出書を受け取る前に会社の所轄税務署か税理士に確認してください。

よくある質問

日米租税条約で免税になるのは何ですか?

米国から来日した学生・事業修習者が、生計・教育・訓練のために国外から受け取る給付が、日米租税条約の学生・事業修習者の条項で免税の対象になるとされています。日本でのアルバイト代が免税になるか、教授の免税条項があるかは、現行条約(2003年署名、2019年改正議定書発効)の条文で確認が必要です(公式資料では未確認)。なお、米国の大学教授が個人の資格で来日して講演を行い、日本に恒久的施設がない場合は、自由職業者の条項(7条)により日本では免税とされ、この場合も届出書の提出が必要です(国税庁 質疑応答事例)。

技能実習生は租税条約で免税になりますか?

技能実習生は日本の実習実施者と雇用契約を結んで給与を受け取っているため、事業修習者の条項に当たるかどうかは慎重な判断が必要です。国税庁が技能実習生の給与への条約の適用を明示した公表資料は確認できませんでした(公式資料では未確認)。会社が独自に源泉徴収をやめず、所轄税務署に確認してから扱いを決めてください。

日中租税協定で免税になるのは何ですか?

日中租税協定21条により、専ら教育・訓練を受けるために日本に滞在する中国の学生・事業修習者・研修生が、生計・教育・訓練のために受け取る給付又は所得は免税です。国税庁は、中国から来日した大学生の日本でのアルバイト代も免税としています。また20条により、大学などで教育・研究を行う中国の教授等は、最初に到着した日から3年以内の教育・研究の報酬が免税になります。

外国人社員の所得税はどう計算しますか?

免税の対象でない外国人社員の所得税は、日本人と同じく、居住者であれば給与所得の源泉徴収税額表で毎月源泉徴収し、年末調整で精算します。非居住者であれば、原則として20.42%で源泉徴収します。居住者・非居住者の判定は外国人労働者の税金の基本|所得税・住民税の居住者判定と企業の源泉義務で扱っています。

免税の判断は「在留資格」より「条約の条文」から

外国人の所得税の免除は、在留資格や国籍から自動的に決まるものでもありません。出身国との条約が何を免税にしているかで決まります。会社が最初にやることは、採用する外国人の国籍と、在学先・研修先・勤務先の種類を確認し、該当する条約の条文を財務省の条約一覧で読むことです。そのうえで、対象になる人からは最初の給与日の前日までに届出書と添付書類を受け取り、会社の所轄税務署に出し、記載事項が変わるたびに出し直す。住民税の届出は市区町村に別に出す。この流れを入社手続のチェックリストに組み込んでおけば、徴収漏れと取りすぎのどちらも防げます。

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