ここでいう特定技能の対象分野とは、制度発足時の12分野から、現在は対象分野が拡大している制度上の対象業種の一覧を指します。「特定技能イコール介護と外食くらい」というイメージのまま止まっている経営者に出会うことがありますが、それはすでに古い理解です。
数年前に一度調べただけで「うちの業種は対象外だった」と判断してしまうと、実際には対象になっているのに機会を逃す、ということが起こり得ます。分野ごとに受入れ要件はまったく異なりますし、対象業務区分も細かく定められていますが、まず全体像を押さえておかなければ、自社が使える制度なのかどうかの判断そのものができません。
ここでは、特定技能の対象分野を一覧で整理したうえで、近年追加された分野、工業製品製造業の再編、分野ごとの受入れ見込数の考え方を解説します。
この記事でわかること
- 特定技能の対象分野一覧(2026年時点)
- 近年追加された分野とその背景
- 工業製品製造業への名称変更・区分拡大の概要
- 分野ごとの受入れ見込数の考え方
- 自社の業種がどの分野に当たるかの調べ方
特定技能とは(おさらい)
特定技能は、人手不足が深刻な特定の産業分野で、一定の技能水準と日本語能力を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。制度の全体像や1号・2号の違いについては特定技能とはで詳しく解説しているので、初めて調べる方はまずそちらを読んでおいてください。この記事では、対象分野そのものの一覧と、直近の変化に絞って解説します。
特定技能の対象分野一覧
2026年時点で、特定技能の対象分野は次の通りです。制度発足時の12分野に、2024年に3分野が追加され、あわせて工業製品製造業の再編も行われています。
| 分野 | 備考 |
|---|---|
| 介護 | 制度発足当初からの分野 |
| ビルクリーニング | 制度発足当初からの分野 |
| 工業製品製造業 | 旧・素形材/産業機械/電気電子情報関連製造業から名称変更・区分拡大 |
| 建設 | 制度発足当初からの分野 |
| 造船・舶用工業 | 制度発足当初からの分野 |
| 自動車整備 | 制度発足当初からの分野 |
| 航空 | 制度発足当初からの分野 |
| 宿泊 | 制度発足当初からの分野 |
| 農業 | 直接雇用・労働者派遣の両方が可能 |
| 漁業 | 制度発足当初からの分野 |
| 飲食料品製造業 | 制度発足当初からの分野 |
| 外食業 | 新規受入れが一時停止されている時期あり |
| 自動車運送業 | 2024年追加 |
| 鉄道 | 2024年追加 |
| 林業 | 2024年追加 |
| 木材産業 | 2024年追加 |
外食業については、直近で新規受入れの取り扱いに動きがありました。すでに外食業での受入れを検討している、または受け入れている企業は特定技能「外食業」の新規受入れ停止で最新の対応方針を確認しておいてください。
また、介護・宿泊のように以前からある分野でも、要件や運用が小さく見直されることがあります。たとえば介護分野では人員配置基準の考え方、宿泊分野では対象となる施設の範囲など、分野が古くからあるからといって内容が固定されているわけではありません。特定技能「介護」とはや特定技能「宿泊」とはでも、それぞれの分野の最新の要件を解説しているので、対象分野が分かったら、その分野の個別記事もあわせて確認する流れをおすすめします。
2024年に追加された自動車運送業・鉄道・林業・木材産業
2024年、特定技能の対象分野に自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野が追加されました。これらはいずれも、慢性的な人手不足が社会問題として取り上げられてきた業種です。トラック・バス・タクシーの運転手不足、鉄道の運転士・保守要員の不足、林業の担い手不足、木材加工の現場の人手不足、それぞれの実情に対応する形で分野が新設されています。
「うちの業種は前に調べたときは対象外だった」という会社ほど、この追加を知らないまま外国人採用の検討をやめてしまっている印象があります。分野が追加されたからといって、要件が緩いわけではありません。それぞれ独自の技能試験・受入れ協議会への加入義務などが設けられているため、対象になったからすぐ受け入れられるという単純な話でもありません。ただし、選択肢に入っていること自体を知らないままでは、検討のスタートラインにすら立てないままです。まずは自社の業種が対象に入ったかどうかを確認するところから始める必要があります。
工業製品製造業への名称変更・区分拡大
もう一つ、既存の受入れ企業に影響が大きいのが、旧・素形材産業/産業機械製造業/電気・電子情報関連産業という3分野が統合され、「工業製品製造業」という新しい名称・区分に再編された点です。単なる名称変更ではなく、対象となる業務区分も拡大しているため、これまで対象外だと思っていた製造工程が新たに対象に含まれるようになったケースもあります。
すでに製造業でほかの分野・在留資格の外国人を雇用している企業ほど、この再編の影響を受けやすいです。区分ごとの詳しい内容、JAIM(一般社団法人ものづくり産業特定技能協議会にあたる組織)への加入義務については特定技能「工業製品製造業」とはで詳しく解説しているので、製造業の方は必ずあわせて確認してください。
とくに注意したいのは、旧区分のもとで受入れ計画や協議会加入の手続きを済ませていた企業です。区分の再編にともなって、加入している協議会の名称や、対象業務区分の記載内容を確認し直す必要が出てくる場合があります。「以前受け入れたときと同じ手続きで大丈夫だろう」と思い込まず、既存の受入れがある企業ほど、区分再編の内容を一度確認しておく必要があります。
分野の増え方を時系列で振り返る
特定技能は2019年の制度発足時、14分野でスタートしました。その後、分野の統廃合や再編を経て、現在は受入れ可能な分野が更新されています。この間の変化をざっくり整理すると、次のような流れです。
- 2019年:制度発足。介護・ビルクリーニング・建設・造船舶用工業・自動車整備・航空・宿泊・農業・漁業・飲食料品製造業・外食業に加え、当時の素形材産業・産業機械製造業・電気電子情報関連産業の3分野を含む14分野でスタート
- その後、製造業3分野が「工業製品製造業」として整理・拡大
- 2024年:自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野を追加
こうして振り返ると、特定技能は決して「発足時のまま止まっている制度」ではなく、社会の人手不足の状況にあわせて、対象範囲を継続的に見直してきた制度だということが分かります。今後もこの傾向は続くと見られるので、数年に一度は対象分野の一覧をアップデートして確認しておく習慣をつけておくといいです。
技人国・技能実習との使い分けの考え方
外国人採用を検討する企業の相談でよくあるのが、「特定技能・技人国・技能実習、結局どれを使えばいいのか分からない」という声です。分野一覧を見る前に、まずこの3つの大枠を整理しておくと理解がスムーズになります。
| 特定技能 | 技人国 | 技能実習 | |
|---|---|---|---|
| 対象業務 | 対象分野の現場業務 | 分野を問わずホワイトカラー業務 | 技能移転の対象となる職種 |
| 学歴要件 | 技能試験・日本語試験の合格 | 大卒・専門卒相当 | なし |
| 単純労働 | 分野内であれば可 | 不可 | 実習計画の範囲内で可 |
「自社の業種が特定技能の分野に入っているかどうか」を確認するのは、この使い分けの入口にすぎません。分野に入っていたとしても、担ってもらいたい業務がホワイトカラー寄りなら技人国のほうが向いている場合もありますし、逆に技能移転を重視するなら技能実習(または今後の育成就労)という選択肢も残っています。技能実習と特定技能の違いをより詳しく知りたい場合は技能実習と特定技能の違いを確認してください。
分野ごとの受入れ見込数について
特定技能には、分野ごとに「向こう5年間の受入れ見込数」という考え方があります。これは分野所管省庁が、業界の人手不足の状況を踏まえて設定するもので、分野によって規模の大小がかなり違います。介護や飲食料品製造業のように受入れ規模が大きい分野もあれば、漁業や林業のように規模が小さい分野もあります。
ここで気をつけたいのは、受入れ見込数はあくまで政策上の目安であって、個別の企業が「上限に達したから採用できない」という話とは基本的に別だということです。ただし、外食業のように分野全体の状況によって新規受入れの取り扱いが見直されることもあるため、自社が検討している分野の直近の動向は必ず確認しておく必要があります。具体的な数字は分野によって年ごとに公表内容が更新されるため、この記事では個別の数値までは踏み込みません。おおまかな傾向として、製造業・介護・外食のように従来から人手不足が深刻だった分野は受入れ規模が大きく、逆に新設分野は当初の規模がまだ小さい、という傾向で捉えておくとイメージがつかみやすいです。最新の数字は出入国在留管理庁が公表している分野別の運用方針・基本方針で確認してください。
受入れ見込数の規模感を気にする企業もいますが、実務上もっと大事なのは「自社が動き出すタイミングで、その分野の技能試験がどれくらいの頻度で実施されているか」「受入れを希望する国・地域から、どの程度の人材供給が見込めるか」という点です。分野全体の規模が大きくても、試験の実施回数が少なかったり、希望する国での実施がまだ始まっていなかったりすると、実際に採用できるまでの期間は長くなります。分野を選ぶ際は、この実務的な見通しもあわせて確認しておくことが重要です。
分野ごとに異なる受入れ団体・協議会
分野一覧を見て「対象になっている」と分かっても、それだけで受け入れられるわけではありません。多くの分野で、受入れ企業に対して分野ごとの協議会・受入れ団体への加入が義務づけられています。建設分野のJAC、工業製品製造業のJAIM、農業・漁業それぞれの特定技能協議会など、分野によって団体の名称も加入手続きも異なります。
「特定技能だから、どの分野でも同じ流れで受け入れられるだろう」と考えていると、この加入手続きの存在に気づかず、後から慌てることになります。分野によっては、協議会への加入が受入れ計画の認定条件そのものになっている場合もあるので(建設分野が典型例です)、対象分野が分かった時点で、その分野特有の団体・協議会が存在するかどうかもあわせて確認しておく必要があります。
複数分野にまたがる事業を展開している企業の考え方
近年増えている相談の一つが、複数の事業を手がける企業から「うちはどの分野に当てはまるのか」という問い合わせです。たとえば農業生産と農産物加工・直売を一体で行っている法人、製造業と物流の両方を担っている企業などは、業務の実態に応じて複数の分野をまたいで検討する必要が出てきます。
この場合、外国人1人にすべての業務を横断的に担わせるのではなく、「どの部署にどの分野の外国人を配置するか」を事業部門ごとに切り分けて考えるのが基本です。1人の外国人に生産も加工も配送もまとめて担当させようとすると、どの分野の対象業務にも完全には当てはまらない、宙ぶらりんな状態になりかねません。業務を整理してから制度に当てはめる、という順序を守る必要があります。
自社の業種がどの分野に当てはまるかの調べ方
分野一覧を見ただけでは、「うちの業種はどこに当てはまるのか」が分からないという相談は非常に多いです。判断のポイントは次の通りです。
- 業種名ではなく業務内容で照らし合わせる:分野名は業種の通称と一致しないことが多いので、実際にやってもらう作業内容で確認します
- 分野ごとの業務区分を確認する:同じ分野でも複数の業務区分に分かれていることが多く、区分によって試験内容や受入れ要件が変わります
- 受入れ協議会への加入要否を確認する:分野によって加入義務のある協議会・団体が異なります
「製造業だから工業製品製造業だろう」と決めつけて進めると、実際には別の分野に該当していた、というすれ違いも起こります。判断に迷う場合は、業務内容を具体的に書き出したうえで、行政書士など専門家に確認してもらうのが確実です。特定技能全体の制度理解については、あらためて特定技能とはもあわせて確認しておくと、自社の状況を整理しやすくなります。
よくある質問
Q. 特定技能の対象分野はいくつありますか?
2024年に自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の分野が追加され、それまでの12分野から16分野に拡大しています。加えて工業製品製造業の分野は名称変更と区分拡大が行われているため、業種によって対象範囲が広がっています。
Q. 分野ごとの受入れ見込数はどこで確認できますか?
分野別の受入れ見込数は、出入国在留管理庁が分野所管省庁と共に公表している基本方針・分野別運用方針に記載されています。分野によって上限の考え方や見直し時期が異なるため、最新の公表資料を確認することをおすすめします。
Q. 工業製品製造業とはどんな分野ですか?
従来の素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業が再編・拡大された分野です。対象区分が広がり、名称も変更されているため、既存の受入れ企業にも影響があります。詳しくは工業製品製造業を解説した別記事で扱っています。
Q. 自社の業種がどの分野に当てはまるか分かりません。どう調べればいいですか?
分野ごとに対象業務区分が細かく定められているため、自社の業務内容と照らし合わせて確認する必要があります。判断が難しい場合は、行政書士など専門家に業務内容を伝えて確認してもらうのが確実です。
分野が増えたことで採用市場に起きている変化
対象分野が広がったことで、これまで特定技能とは無縁だと思われていた業種でも、外国人材の採用を検討する企業が増えています。自動車運送業・鉄道・林業・木材産業といった分野は、そもそもこれまで在留資格を通じた外国人採用の経験がない企業がほとんどです。そのため、受入れ体制や社内のノウハウがまだ十分に蓄積されていない状態でスタートすることになります。
経験がないこと自体は悪いことではありません。ただし、経験がないぶん、支援計画の作成や届出のタイミングなど、実務面でつまずきやすいのも事実です。新設分野で受入れを検討している企業ほど、最初の1人目の受入れは専門家と一緒に進めて、社内に実務のノウハウを蓄積していく進め方をおすすめします。2人目以降は、その経験をもとに自社でスムーズに回せるようになるはずです。
分野選びで判断に迷ったときの相談の仕方
自社の業種・業務がどの分野に当てはまるか判断に迷う場合、行政書士に相談する際は、業務内容をできるだけ具体的に伝えることが大事です。「製造業です」「農業関連です」といった大まかな説明だけでは、正確な分野の判断はできません。実際にどんな作業を、どんな設備・工程で行っているのか、1日の業務の流れをある程度具体的に説明できると、判断の精度が上がります。
複数の分野にまたがる可能性がある場合は、「どの分野で受け入れるのが自社にとって一番現実的か」という観点も含めて相談する必要があります。制度上どちらの分野にも当てはまり得る場合でも、協議会への加入のしやすさや、対象となる技能試験の実施状況によって、実務上の進めやすさは変わってきます。
もう一つ、相談の際に有効なのが、過去に他社が同じ分野で受け入れた際にどんな書類の指摘を受けたか、どんなつまずきがあったかという実例を聞くことです。制度の条文だけを読んでも、実務でどこがボトルネックになるかまでは見えてきません。複数分野の受入れ実績がある専門家に相談すれば、条文の解釈だけでなく、審査の現場で実際に起きていることまで踏まえたアドバイスをもらえます。
今後さらに分野が増える可能性について
特定技能は人手不足の状況に応じて対象分野を見直す制度設計になっているため、今後も新しい分野が追加されたり、既存分野の区分が見直されたりする可能性は十分にあります。実際に、これまでも数年おきに分野の追加・再編が行われてきました。
「今は対象外だから関係ない」と思っている業種でも、数年後には対象になっているかもしれません。まだ決まっていない話について今から準備する必要はありませんが、業界団体の動向や、関係省庁の審議会の議論を意識しておくと、対象分野が追加されたタイミングで他社より一歩早く動き出せます。当事務所でも、分野の追加や制度改正があった際には、あらためて情報を発信していく予定です。
逆に言えば、外国人材の採用を検討する企業にとって、「今の分野一覧」を鵜呑みにしすぎるのも考えものです。数年前の一覧を見て諦めていた企業が、今回の記事のように分野が広がっていることを知って検討を再開する、というケースは今後も増えていくはずです。定期的に最新の分野一覧を確認する習慣をつけておくことが、結果的に採用の選択肢を広げることにつながります。
まとめ
特定技能の対象分野は、制度発足当初からかなり広がっています。数年前の情報のまま「うちは対象外」と判断しているなら、一度その前提を疑ってみる価値があります。分野が増えたからといって審査が甘くなったわけではありませんが、選択肢が広がっていることを知らないまま検討を打ち切るのはもったいない話です。自社の業種がどの分野・区分に当たるのか、まずはそこから整理してください。
分野が分かったら、次はその分野特有の要件・受入れ団体・協議会の有無を確認し、最後に自社の業務内容と照らし合わせて本当に対象業務に当てはまるかを詰めていく。この順番さえ踏めば、特定技能の導入検討はそれほど難しい作業ではありません。判断に迷う段階が来たら、そこで専門家に相談すれば十分です。
依頼するかどうかで迷っている方は在留資格の申請は行政書士に依頼すべきかと行政書士に依頼する費用の相場も参考にしてください。