JESTA(ジェスタ、電子渡航認証制度)とは、ビザ免除で日本に短期滞在する外国人に、渡航前にオンラインで情報を提供させ、出入国在留管理庁長官の認証を受けることを入国の条件とする制度です。2026年5月29日に成立し、同年6月5日に公布された改正入管法(令和8年法律第32号)で創設が決まりました。施行日は2029年3月31日までの間で政令で定める日とされ、政府は2028年度中の導入を目指しています。認証を受けていない人は航空機に搭乗できなくなるため、海外の取引先や親族を日本に呼ぶ企業・個人にとって、これまで「ビザ不要」で済んでいた招へいに1つ手続が加わることになります。
JESTAとは|「ビザ免除」でも入国前の審査が必要になる制度
ここでいう電子渡航認証とは、ビザ(査証)を免除されている国の旅行者に対し、渡航前にオンラインで氏名・旅券情報・渡航目的などを提出させ、入国させてよいかを事前に確認する仕組みを指します。米国のESTA、カナダのeTA、韓国のK-ETA、2025年から本格運用が始まった英国のETAなどが同じ種類の制度で、日本版ESTAと呼ばれるのはこのためです。
現在の日本では、米国、韓国、台湾、欧州各国など74の国・地域(外務省の一覧、2025年9月1日時点)の人は、観光や短期の商用であればビザなしで日本に来られます。空港での上陸審査を受けるまで、出入国在留管理庁はその人の渡航目的を確認する機会を持っていません。出入国在留管理庁の資料によれば、2025年に観光等の目的で短期滞在の上陸許可を受けた人は約3,846万人で、その約8割がビザ免除の対象者でした。
JESTAは、この「査証審査を受けずに入国できる人」に対し、入国前のスクリーニングを行うものです。出入国在留管理庁は改正法の概要で、目的を2つ挙げています。1つは不法残留などを企てる外国人の入国を防ぐこと、もう1つは認証を受けた人の上陸審査を円滑にし、空港での待ち時間を短くすることです。
改正入管法の成立と施行日|いつから始まるか
JESTAを定めた法律の正式名称は「出入国管理及び難民認定法及び出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特例に関する法律の一部を改正する法律」です。経緯を時系列で整理すると、次のとおりです。
- 2026年3月10日:法律案を閣議決定し、国会に提出(第221回国会閣法第20号)
- 2026年4月28日:衆議院本会議で可決
- 2026年5月29日:参議院本会議で可決、成立
- 2026年6月5日:公布(令和8年法律第32号)
施行日は、改正の内容ごとに分かれています(出入国在留管理庁「令和8年入管法等改正法について」、同法附則第1条)。
| 改正の内容 | 施行日 |
|---|---|
| JESTA(認証)に関する改正規定(本体) | 2029年3月31日までの間において政令で定める日 |
| 認証の準備行為(施行日前の情報提供・認証) | 2028年10月31日までの間において政令で定める日 |
| 在留資格の変更・更新・永住許可の手数料の上限引上げ | 2027年3月31日までの間において政令で定める日 |
JESTA本体の施行日は、2026年9月29日時点でまだ政令で定められていません(公式資料では未確認)。報道では政府は2028年度中の導入を目指すとされ、法律上の期限は2029年3月31日です。
注目したいのは、附則第2条の準備行為の規定です。施行日以後に日本に入ろうとする外国人は、施行日前でも情報を提供して認証を受けることができ、その認証は施行日以後に正式な認証とみなされます。つまり、施行日より前に申請の受付が始まる設計になっています。受付開始日は附則第1条第3号により2028年10月31日までの政令で定める日です。
同じ改正法で、在留資格の変更・更新の手数料の上限が1万円から10万円に、永住許可が30万円に引き上げられました。この上限の範囲内で政令が改正され、2026年10月1日から実際の手数料額が改定されます。手数料改定の内容は在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?で解説しています。
対象者|誰がJESTAの認証を受けるのか
改正法が認証の対象とするのは、次の3つのグループです(改正後の入管法第4条、第7条の2、第15条の2)。
- 査証免除対象者で、日本で短期滞在の活動を行おうとする人(第7条の2)
- 日本に上陸せず、日本を経由して他国へ行く直行通過者(第4条)
- クルーズ船の乗客(船舶観光上陸)、寄港地上陸や通過上陸の許可を受けて一時的に上陸する人(第15条の2)
企業や個人の招へいに直接関係するのは1のグループです。改正後の入管法第7条第1項第5号は、査証免除対象者で短期滞在の活動を行おうとする人について、第7条の2の認証を受けたことを上陸のための条件に加えました。
短期滞在の活動には、観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習や会合への参加、業務連絡などが含まれます。海外の取引先が商談や会議のために来日する場合も、ビザ免除国の国籍であればJESTAの対象になります。台湾の居住者(特例法の対象者)も、改正特例法によって査証免除対象者とみなされ、対象に含まれます。
JESTAの対象にならない人
次の人は、JESTAの対象になりません。
- ビザが必要な国の人(中国、フィリピン、ベトナムなど):これまでどおり在外公館で短期滞在ビザを取得する。インドネシアのように、IC旅券を在外公館で事前登録した人に限って免除される国もあり、その場合は免除の対象者がJESTAの対象になると考えられる
- 就労や留学など中長期の在留資格で入国する人:在留資格認定証明書とビザで入国する
- 再入国許可(みなし再入国許可を含む)で戻る中長期在留者:改正後の第3条第1項第4号ハで除かれている
- トラスティド・トラベラー・プログラム(TTP)の登録を受けた人、国の行政機関の長が招へいする人、法務省令で定める人:第7条第1項第5号イからハで除かれている
改正法には、JESTAの認証を受けられなかった場合でも、有効な査証を持っていれば上陸の条件を満たすというただし書も置かれています。ビザ免除国の人でも、事情があってJESTAの認証が得られない場合には、在外公館でビザを取る道が残るということです。
経過措置として、出入国の公正な管理を害するおそれが少ないとして法務省令で定める国・地域の外国人については、施行日から6か月間はJESTAの認証がなくても入国できるとされています(附則第3条)。どの国・地域が対象になるかは、今後の法務省令で決まります(公式資料では未確認)。
審査される内容と、認証を受けた後の入国
認証の条件は、改正後の入管法第7条の2に4つ定められています。
- 有効な旅券を持っていること
- 日本で行おうとする活動が虚偽のものでないこと
- 在留しようとする期間が、短期滞在の在留期間(90日、30日、15日、15日以内の日を単位とする期間)を超えないこと
- 上陸拒否事由(入管法第5条第1項各号)のいずれにも該当しないこと
提供する情報は「法務省令で定める事項」とされ、電磁的方式、つまりオンラインで提供します。報道や政府の説明では、氏名、旅券情報、渡航目的、滞在先などが想定されていますが、入力項目の詳細は法務省令で定められる予定で、2026年9月29日時点では公表されていません(公式資料では未確認)。
ここで重要なのは、JESTAが「入国のたびに」認証を受ける設計になっている、という論点です。出入国在留管理庁の概要は、厳格な出入国管理の観点から新規入国の度に認証をする、と明記しています。米国のESTAは一度承認されると2年間有効ですが、JESTAは渡航ごとに申請するものとして制度が組まれています。年に何度も来日する取引先にとっては、毎回の手続になります。
認証を受けて来日した人は、上陸のための条件に適合していれば、旅券への上陸許可の証印(シール)が省略されます(改正後の第9条第4項)。出入国在留管理庁は、実務上はウォークスルー型ゲートを活用するとしています。あわせて、トラスティド・トラベラー・プログラムの登録者などに交付されていた特定登録者カードは、交付しないこととされました。
手数料
改正後の入管法第67条の3は、認証を受けようとする時(情報の提供時)と、認証を受ける時の2段階で、政令で定める額の手数料を納めることを定めています。申請時の手数料は実費を勘案して、認証時の手数料は実費に加えて出入国管理に要する費用などを勘案して定めるとされています。具体的な金額は政令で定められる予定で、現時点では決まっていません(公式資料では未確認)。
航空会社・船会社に課される義務
JESTAを実効性のあるものにするため、改正法は運送業者(航空会社・船会社)に2つの義務を課しました(改正後の入管法第56条の2)。
1つは報告義務です。日本に入る航空機の航空券を発行するときは、発行の時までに、予約者の氏名など法務省令で定める事項を出入国在留管理庁長官に報告しなければなりません。出入国在留管理庁長官は、報告を受けたら遅滞なく、その人を日本に入らせることが相当かどうかを運送業者に通知します。
もう1つは運送禁止義務です。相当でない旨の通知を受けた運送業者は、その人を航空機に乗せて日本に入らせてはなりません。ただし、出発後に通知を受けた場合はこの限りでなく、その場合は速やかに報告する義務があります。報告義務や運送禁止義務に違反した運送業者には、過料が科されます(改正後の第77条)。
招へいする側から見ると、航空券の発行段階でJESTAの状況が照合され、認証がない人や相当でないと判断された人は、チェックインの段階で搭乗できなくなるということです。これまでのように「空港に着いてから上陸審査で説明すればよい」という対応は取れなくなります。
企業の招へい実務はどう変わるか
JESTAが始まると、ビザ免除国から取引先や技術者、親族を呼ぶ場面で、次の3点を見直す必要が出てきます。
1 渡航前の準備期間を確保する
ビザ免除国の取引先であれば、これまでは航空券を取れば来日できました。JESTA導入後は、渡航前に認証を受けておく必要があります。審査にかかる時間は制度の詳細が決まっていないため不明ですが、急な来日の予定が入る業種では、社内の招へい手順に「JESTAの認証を受けたか」の確認を加えることになります。
2 渡航目的の説明と実際の活動を一致させる
認証の条件の1つが「活動が虚偽のものでないこと」です。短期滞在でできる活動は、商談、会議、見学、アフターサービスなどに限られ、報酬を受ける活動や就労はできません。JESTAの申請で「商談」と申告しながら、実際には日本の工場で作業に従事させる、といった運用は、虚偽の申告として上陸拒否や次回以降の認証の拒否につながる可能性があります。
短期滞在で研修や技術指導を行える範囲は短期滞在で研修・会議・技術指導はできる?報酬が出ると就労になる線引きで扱います。短期滞在の外国人に報酬を払って働かせた場合、招へいした企業は不法就労助長罪(入管法第73条の2)に問われるおそれがあります。企業の責任の範囲は不法就労助長罪とは?企業が問われる責任・罰則と防ぐための確認方法で解説しています。
3 認証が得られない場合の代替手段を用意する
過去に日本で不法残留したことがある人や、上陸拒否事由に当たるおそれがある人は、JESTAの認証を受けられない可能性があります。改正法は、この場合でも有効な査証があれば上陸の条件を満たすとしているため、在外公館でビザを申請する道は残ります。
ビザ免除国の一覧と滞在できる日数は、日本のビザ免除国一覧|査証免除で滞在できる日数と入国時の注意で整理しています。JESTAの対象になるのは、この一覧に載っている国・地域の人です。
Visit Japan Webとの違い
日本への入国時には、現在も「Visit Japan Web」というオンラインサービスで、入国審査と税関申告の情報を事前に登録できます。JESTAと混同されやすいのですが、両者は性格が異なります。
Visit Japan Webは、入国手続を速く済ませるための任意の事前登録で、登録しなくても入国できます。これに対してJESTAは、認証を受けたことが上陸の条件になる法律上の制度で、認証がなければ航空機に乗れません。JESTA導入後にVisit Japan Webの機能がどう整理されるかは、現時点で公表されていません(公式資料では未確認)。
よくある質問
JESTAとは何ですか?
JESTAは、ビザ免除で日本に短期滞在する外国人に、渡航前にオンラインで情報を提供させ、出入国在留管理庁長官の認証を受けることを入国の条件とする電子渡航認証制度です。2026年6月5日に公布された改正入管法で創設されました。
日本のJESTAはいつから導入されますか?
法律上は、2029年3月31日までの間において政令で定める日から施行されます。政府は2028年度中の導入を目指しており、施行日の前から申請の受付を始める準備行為の規定もあります。具体的な開始日は政令で決まり、2026年9月29日時点ではまだ決まっていません。
JESTAは何の略ですか?
Japan Electronic System for Travel Authorizationの略とされています(報道・民間の解説による表記)。法律上は「認証」という言葉で規定されており、JESTAという名称は法律の条文には出てきません。
入管法改正でJESTAはどうなったのですか?
2026年3月10日に閣議決定された法律案が、5月29日に参議院で可決・成立し、6月5日に公布されました。同じ法律で、在留資格の変更・更新・永住許可の手数料の上限引上げも行われています。JESTAの部分は、政令で施行日が定められるのを待つ段階です。
ビザが必要な国の人もJESTAを申請するのですか?
申請しません。JESTAの対象は査証免除対象者です。中国、フィリピン、ベトナムなどビザが必要な国の人は、これまでどおり在外公館で短期滞在ビザを取得して来日します。
導入までに企業が決めておくこと
JESTAは、ビザ免除国の人を「手続なしで呼べる人」から「渡航前に認証が必要な人」に変える制度です。手数料の額、申請サイト、入力項目、審査にかかる時間といった運用の詳細は、これから政令と法務省令で決まります。
一方で、制度の骨格は法律で確定しています。入国のたびに認証が必要なこと、航空券の発行時に照合されること、虚偽の申告が上陸拒否につながること、認証が得られなくてもビザを取る道が残ることです。海外の取引先を定期的に招へいする企業は、この骨格をもとに、招へいの担当部署と渡航者本人のどちらが申請を管理するか、急な来日にどう対応するか、を今のうちに決めておくことができます。
筆者は、制度の開始そのものより、「短期滞在で何ができて何ができないか」を渡航前に申告させられる点が、実務上の影響として大きいと考えています。これまで曖昧にされがちだった短期商用と就労の線引きを、招へいする企業の側で説明できるように整えておくことが、導入後の搭乗拒否や上陸拒否を避ける近道になります。個別の渡航者が認証を受けられるかどうかは個別の事情で判断が変わるため、過去の在留歴に不安がある場合は、早めに専門家に相談してください。
根拠資料
- 令和8年入管法等改正法について(出入国在留管理庁)
- 改正法の概要(JESTA(電子渡航認証制度)の創設、在留資格の変更許可等に係る手数料の額の上限額の引上げ等)(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法及び出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特例に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第32号)(出入国在留管理庁)
- 新旧対照条文(出入国在留管理庁)
- 閣法 第221回国会 20 議案審議経過情報(衆議院)
- ビザ免除国・地域(短期滞在)(外務省)
- 新導入の「JESTA」とは 認証なければ入国不可へ 改正入管法(毎日新聞・2026年5月29日)
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