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偽装結婚の刑罰と罰則|公正証書原本不実記載罪・在留資格取消し・退去強制

偽装結婚の刑罰は、婚姻届を出して戸籍に虚偽の記録をさせた時点で成立する刑法157条1項の公正証書原本不実記載等罪が中心で、法定刑は5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。その婚姻を使って配偶者ビザを取れば、入管法70条1項2号の2の不正取得の罪(3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、または併科)が加わります。外国人側は刑罰とは別に在留資格を取り消され、退去強制の対象になります。日本人の配偶者や仲介者も共犯として同じ罪に問われ、報酬目的の仲介には入管法74条の6の罪も用意されています。

偽装結婚とは|婚姻をする意思のない婚姻届

ここでいう偽装結婚とは、夫婦として生活する意思がないのに、在留資格を得ることなどを目的として婚姻届を出すことを指します。民法742条1号は、当事者間に婚姻をする意思がないときは婚姻を無効としています。最高裁昭和44年10月31日判決は、婚姻をする意思とは、社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思をいうとし、届出の意思があるだけでは足りないと判断しました。

したがって、役所で婚姻届が受理され、戸籍に婚姻の記載がされても、夫婦として共同生活を送る意思がなければ、その婚姻は法律上無効です。偽装結婚が刑罰の対象になるのは、この無効な婚姻を、公務員に対して有効な婚姻であるかのように申し立てて戸籍に記録させるからです。

一方、年齢差が大きい、交際期間が短い、結婚相談所で知り合ったといった事情は、それだけで偽装結婚を意味しません。入管が婚姻の実体を疑うのはどのような点かは国際結婚は永住権目当て?入管が偽装結婚を疑うポイントと見抜き方で扱っています。

刑法157条|公正証書原本不実記載等罪

刑法157条1項は、公務員に対し虚偽の申立てをして、戸籍簿などの権利・義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、またはその原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者を、5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処すると定めています。

現在の戸籍はコンピュータで管理されているため、偽装結婚の婚姻届は「電磁的記録に不実の記録をさせた」後段に当たります。さらに刑法158条1項は、その電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者を同じ刑で処罰するため、報道では「電磁的公正証書原本不実記録・同供用」という罪名で逮捕・起訴される例が多く見られます。未遂も処罰されます(157条3項・158条2項)。

2025年6月1日に刑法改正で懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されたため、条文上の刑は「拘禁刑」と表記されています。それ以前の事件の報道で「懲役」とあるのは、同じ罪の旧表記です。

時効は5年|ただし在留資格の取消しに時効はない

公訴時効は、法定刑の上限が拘禁刑5年であることから、刑事訴訟法250条2項5号(長期10年未満の拘禁刑に当たる罪)により5年です。犯罪行為が終わった時から進行するため(同法253条1項)、婚姻届が受理されて戸籍に記録された時点から数えるのが基本的な考え方です。

ただし、公訴時効が完成して刑事責任を問われなくなっても、入管法上の在留資格の取消しには時効がありません。偽装結婚で得た在留資格は、何年たっても取消しの対象になり得ます。この点は後述します。

入管法70条1項2号の2|在留資格の不正取得罪

偽装結婚の婚姻を使って「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格を得た場合、入管法70条1項2号の2の罪に当たります。同号は、偽りその他不正の手段により、上陸の許可等を受けて本邦に上陸し、または在留資格の変更・更新などの許可を受けた者を、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めています。

刑法157条は戸籍に虚偽の記録をさせた行為、入管法70条1項2号の2は入管から許可を得た行為を処罰するもので、保護している対象が違います。偽装結婚で配偶者ビザまで取得した外国人は、両方の罪に問われることになります。

外国人側に起きること|在留資格取消しと退去強制

刑罰と並んで重いのが、入管法上の処分です。

在留資格の取消し(22条の4)

入管法22条の4第1項は、偽りその他不正の手段により上陸許可や在留許可を受けたこと(1号・2号)、不実の記載のある文書を提出して許可を受けたこと(3号)が判明したときに、法務大臣が在留資格を取り消すことができると定めています。偽装結婚で得た配偶者ビザは、この規定で取り消されます。

取消しの対象には「別表第二」の在留資格、つまり日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、そして永住者も含まれます。偽装結婚で配偶者ビザを得た後に永住許可を受けていた場合でも、その永住許可が偽りの婚姻を前提にしていたのであれば、取消しの対象になり得ます。取消しの前には、入国審査官による意見の聴取の手続があります(同条2項以下)。

令和7年の在留資格取消件数は1,446件で、前年より262件増えています(出入国在留管理庁「令和7年の出入国在留管理業務の状況」)。在留資格別では技能実習と留学が大半で、取消事由別・偽装婚の件数は公表資料では区分されていません。

退去強制(24条2号の2)

22条の4第1項1号・2号で在留資格を取り消された人は、そのまま退去強制事由に当たります(24条2号の2)。3号など他の号による取消しでは、30日以内の出国期間が指定されるのが原則で(22条の4第7項)、その期間を過ぎて残留すると退去強制の対象になるとともに、70条1項3号の3の罪にも当たります。

刑事裁判の結果によっては、別の退去強制事由にも当たります。24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた人(刑の全部の執行猶予を受けた人などを除く)を退去強制の対象としています。

配偶者ビザの外国人を雇っている会社にとっても無関係ではありません。在留資格が取り消された後も、それを知りながら雇用を続ければ、不法就労助長罪(入管法73条の2)の問題になります。考え方は不法就労助長罪とは?で解説しています。

退去強制されると、原則5年間(2回目以降は10年間)は日本に上陸できなくなります(5条1項9号)。退去強制事由の全体像は退去強制事由とは?入管法24条の一覧と会社員が該当しやすいケースで整理しています。

在留特別許可でも偽装婚は保護されない

退去強制手続の中で在留特別許可を求める場合、日本人との婚姻は通常、許可の方向に考慮される事情です。しかし在留特別許可のガイドラインは、考慮する婚姻から「退去強制を免れるために、婚姻を偽装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合」を明示的に除いています。偽装結婚は、在留を認める理由にはなりません。

日本人の配偶者・仲介者が負う責任

偽装結婚は、日本人側の協力がなければ成立しません。「名前を貸しただけ」「報酬を受け取っただけ」という認識でも、刑事責任は外国人と同じ土俵で問われます。

日本人の配偶者

婚姻届には夫婦双方が署名し、届出人になります。日本人の配偶者は、外国人と一緒に市区町村に虚偽の婚姻届を出した者として、刑法157条1項・158条1項の共同正犯になるのが通常です。配偶者ビザの申請で身元保証人になったり、質問書に虚偽の交際経緯を書いたりしていれば、入管法70条1項2号の2の罪の共犯にも問われ得ます。

加えて、戸籍には婚姻の記載が残ります。婚姻を無効にして戸籍を訂正するには、婚姻無効確認の調停・訴訟を経て、確定判決などに基づく戸籍訂正の申請が必要です(戸籍法116条)。後に本当に結婚したい相手ができたとき、この手続を経なければ重婚の問題が生じます。

仲介者・ブローカー

仲介者は、刑法157条・158条の罪の共犯(教唆・幇助または共同正犯)になるほか、入管法74条の6により、営利の目的で他人の不正な上陸許可等の取得(70条1項2号の2に規定する行為)の実行を容易にした者として、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科に処せられます。仲介者が外国人であれば、他の外国人が偽りその他不正の手段で許可を受けることを「あおり、唆し、又は助けた者」として、退去強制の対象にもなります(24条4号ル)。

報酬を受け取った日本人の配偶者が、同じ構図で74条の6に問われるかどうかは、個々の事件での関与の内容によります。条文の適用は個別の事情で判断が変わるため、当事者になってしまった場合は刑事弁護を扱う弁護士に相談してください。

偽装結婚はどのように摘発されるのか

偽装結婚が発覚するきっかけとして、公表資料や報道から読み取れるのは次のような経路です。

  • 配偶者ビザの審査・更新の過程での実態調査(同居の有無、生活実態の確認)
  • 在留資格取消しのための事実の調査(入管法59条の2)
  • 仲介組織の摘発に伴う、過去の婚姻の一斉の洗い出し
  • 第三者からの情報提供

配偶者ビザの更新では、同居の状況や生計の実態を示す資料が毎回求められ、別居や説明の食い違いがあると実地の調査に進むことがあります。更新時に提出する書類と見られる点は国際結婚は永住権目当て?入管が偽装結婚を疑うポイントと見抜き方でも触れていますが、実体のある婚姻であれば、日常の生活の記録がそのまま実態の証明になります。

偽装結婚を告発するとどうなるか

偽装結婚の疑いを知った第三者は、出入国在留管理庁の情報受付の窓口や警察に情報を提供できます。情報提供は匿名でも可能とされています。提供された情報をもとに入管が事実の調査を行い、在留資格取消しや退去強制手続に進むかどうかは、調査の結果次第です。刑事事件としての告発は、刑事訴訟法239条1項により誰でも行えますが、捜査機関が受理するかどうかは、証拠の程度によって変わります。

当事者本人が自首した場合、刑法42条1項により刑が減軽されることがあります(任意的減軽)。ただし、自首によって在留資格の取消しや退去強制が免除されるわけではありません。

よくある質問

偽装結婚の懲役は何年ですか?

刑法157条1項の法定刑は5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。2025年6月1日から懲役は拘禁刑に一本化されました。配偶者ビザを取得していれば、入管法70条1項2号の2の3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)も加わります。実際の量刑は、関与の程度や報酬の有無で変わります。

偽装結婚がバレたらどうなりますか?

外国人は、在留資格を取り消されて退去強制の対象になり、刑事事件として起訴されることもあります。日本人の配偶者も共犯として処罰の対象になり、戸籍には無効な婚姻の記載が残るため、訂正の手続が必要になります。

偽装結婚の時効は何年ですか?

刑法157条の罪の公訴時効は5年です。ただし、時効は刑事責任についてのもので、入管法上の在留資格の取消しには時効がありません。時効が完成した後でも、偽りの婚姻で得た在留資格は取り消され得ます。

偽装結婚の判断基準はありますか?

法律上の基準は、夫婦として社会観念上認められる関係を設定する意思があるかどうかです(最高裁昭和44年10月31日判決)。入管の審査では、同居の有無、交際の経緯、生計の実態、互いの家族との関係などを総合して判断します。個々の事情だけで偽装と決めつけられるものではありません。

実体のある国際結婚を守るために

偽装結婚への処罰が重いのは、戸籍と在留資格という2つの公的な制度を同時に欺く行為だからです。そして、その取締りの厳しさは、実体のある国際結婚の審査にも影響します。審査が慎重になるほど、本物の夫婦にも説明の負担がかかります。

国際結婚をした夫婦が取るべき行動は、交際から結婚に至る経緯、同居の状況、生活費の分担を、写真・通信記録・住民票などの客観的な資料で説明できる状態にしておくことです。配偶者ビザの質問書は事実どおりに書き、在留資格の取消しの仕組みは在留資格の取消しとは?で確認しておくと、不安な点を早めに整理できます。

根拠資料


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