特定技能1号の日本語レベルは、ほとんどの分野で「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上、具体的には日本語能力試験(JLPT)のN4以上か、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のA2.2相当以上で足ります。ただし、介護は介護分野専用の日本語試験が追加で必要で、自動車運送業のバス・タクシー運転者と、鉄道の運輸係員(駅係員・車掌・運転士など)はB1相当、つまりN3以上が原則です。さらに2027年4月1日以降は、特定技能2号にもB1相当の日本語能力が求められます。
特定技能1号の日本語レベルは原則A2.2(N4)
ここでいう「日本語教育の参照枠」とは、文化審議会国語分科会が2021年にまとめた、日本語能力をA1からC2までの6段階で示す枠組みを指します。欧州の言語共通参照枠(CEFR)をもとにしたもので、特定技能・育成就労の日本語要件は、2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針から、この参照枠の段階で書かれるようになりました。A2.2は、A2(基礎段階の上位)をさらに2つに分けた上の段階です。
A2.2相当以上であることは、次のどちらかの試験で証明します。
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2.2相当以上
JLPTは年2回(7月・12月)の実施で、国内外で受験できます。JFT-Basicはコンピューターで受けるCBT方式で、国外の実施国と国内で随時に近い頻度で受験できるため、海外から採用する場合の日程の組みやすさではJFT-Basicに分があります。どちらで証明しても、在留資格の審査上の扱いは変わりません。
入管庁の分野別運用方針の主要記載事項は、特定技能1号と育成就労終了時の日本語水準をA2.2相当以上とし、そのうえで「分野によっては、より高い日本語能力水準を求める場合もある」と注記しています。N4では足りない場面は、この「分野によって」の部分にあります。
分野別の日本語要件一覧(1号・2号)
2026年1月23日閣議決定の分野別運用方針(19分野)から、日本語能力水準を抜き出すと次のようになります。2号の欄の「B1」は、2027年4月1日以降の申請に適用される水準です(入管庁の分野別ページの記載による)。
| 分野 | 1号の日本語要件 | 2号の日本語要件 |
|---|---|---|
| 介護 | A2.2相当以上+介護分野の日本語試験 | 2号なし(介護福祉士の在留資格「介護」へ) |
| ビルクリーニング | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
| リネンサプライ | A2.2相当以上 | 2号なし |
| 工業製品製造業 | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
| 建設 | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
| 造船・舶用工業 | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
| 自動車整備 | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
| 航空 | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
| 宿泊 | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
| 自動車運送業 | トラック:A2.2相当以上/タクシー・バス:原則B1相当以上 | 2号なし |
| 鉄道 | 運輸係員:B1相当以上/それ以外の業務区分:A2.2相当以上 | 2号なし |
| 物流倉庫 | A2.2相当以上 | 2号なし |
| 農業 | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
| 漁業 | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
| 飲食料品製造業 | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
| 外食業 | A2.2相当以上 | B1相当以上 |
| 林業 | A2.2相当以上 | 2号なし |
| 木材産業 | A2.2相当以上 | 2号なし |
| 資源循環 | A2.2相当以上 | 2号なし |
「2号なし」は、分野別運用方針に2号の人材基準が置かれていない分野です。表からわかるとおり、1号の段階でN4を超える日本語を求めているのは、介護、自動車運送業のタクシー・バス、鉄道の運輸係員の3つに限られます。
N4では足りない分野1:介護は分野専用の日本語試験が追加
介護分野の1号は、A2.2相当以上の日本語試験に加えて、介護の現場で使う日本語を測る試験の合格が必要です。現行の運用では「介護日本語評価試験」と呼ばれており、2026年1月の分野別運用方針では「介護特定技能評価試験(日本語)」と表記されています。名称の切替え時期は公表資料で確認できませんでした(公式資料では未確認)。
介護で追加の試験が置かれているのは、利用者の状態を聞き取り、記録を読み書きし、申し送りを行うといった業務の性質上、生活場面の日本語だけでは足りないと判断されているためです。受入れ企業の側から見ると、介護の1号人材は、他分野の1号より一段、業務用の語彙を確認された状態で入ってくるということになります。
技能実習2号(介護職種)を良好に修了した人や、介護福祉士養成施設を修了した人などには、試験免除の扱いがあります。免除の範囲の細部は介護分野の運用要領で確認してください。介護分野の受入れ要件全体は特定技能「介護」とは?で解説しています。
N4では足りない分野2:タクシー・バス運転者はB1(N3)が原則
自動車運送業分野は、業務区分ごとに日本語要件が分かれています。
トラック運転者はA2.2相当以上(N4またはJFT-Basic)です。技能実習2号を良好に修了した人は、トラックに限り日本語試験が免除されます。
タクシー運転者とバス運転者は、原則としてB1相当以上です。B1は、JLPTでいえばN3以上に当たります。旅客を乗せて運転する以上、行き先の聞取り、運賃の説明、事故やトラブルのときの対応を日本語でこなす必要があるためです。
ただし、分野別運用方針はA2.2相当でもタクシー・バス運転者として働ける道を残しています。A2.2相当の人に運転業務を行わせる場合、受入れ企業は次の措置をとる必要があります。
- B1相当以上の日本語能力の修得に向けた日本語学習プランを作成すること
- 乗客対応について必要な指導を受けた自社の従業員を、乗客や関係機関との意思疎通を補助する要員として同乗させること
バスについては、離島や半島振興対策実施地域など一定の地域の路線で、同乗要員を置かない特例も設けられています。つまり、A2.2で採用した場合のコストは「同乗者の人件費」として企業に跳ね返ってきます。筆者は、タクシー・バスで採用するのであれば、最初からN3合格者を探すか、入社前後の日本語学習でN3取得を目標に置く設計にしたほうが、長い目で見て負担が小さいと考えます。
自動車運送業の受入れ要件と、免許取得のための特定活動の扱いは特定技能「自動車運送業」とは?トラック・タクシー・バスの要件と免許取得の特定活動で扱っています。
N4では足りない分野3:鉄道の運輸係員はB1(N3)
鉄道分野は、業務区分ごとに技能試験と日本語要件が決められています。軌道整備、電気設備整備、車両整備、車両製造、駅・車両清掃の5区分はA2.2相当以上ですが、運輸係員だけはB1相当以上です。
運輸係員の業務は、ポイント操作、入換え合図、駅設備の管理・取扱い、旅客案内・貨物取扱い、運行管理、車掌業務、運転士業務などで、指令との無線連絡や旅客への案内放送のように、聞き間違いが安全に直結する場面が含まれます。同じ鉄道会社で採用する場合でも、車両整備の職種ならN4、駅係員ならN3と、配属先で要件が変わる点に注意が必要です。
育成就労の鉄道分野でも、運輸係員は就労開始時からA2.2相当以上、育成就労終了時にB1相当以上が求められ、他の区分より一段高い水準が設定されています。
特定技能2号は2027年4月からB1相当が必要に
現行の特定技能2号は、多くの分野で日本語試験を要件にしておらず、外食業と漁業だけがJLPT N3以上を求めてきました。この扱いは、2026年1月23日閣議決定の分野別運用方針で大きく変わり、2号を置く分野のすべてで「B1相当以上の水準と認められるもの」が人材基準に入りました。入管庁の分野別ページは、この2号の日本語要件を2027年4月1日以降に適用するとしています。
2027年4月以降に2号を目指す1号の人は、2号評価試験と実務経験に加えて、N3相当の日本語が必要になります。N4で入国した1号人材が5年のうちにN3まで上げられるかどうかが、2号へ移行できるかを左右することになります。企業にとっては、1号の採用時点から日本語学習の支援計画を持っておく意味が、これまでより大きくなったということです。
2027年3月31日までの申請と4月1日以降の申請とで取扱いがどう分かれるか(申請中に日をまたいだ場合など)の細部は、入管庁が別途示すとしています(公式資料では未確認)。2号の要件全体は特定技能2号の条件とは?を参照してください。
日本語試験が免除されるケース
日本語試験の免除で最も使われているのは、技能実習2号の良好修了です。技能実習2号を良好に修了した人は、修了した職種・作業が特定技能で従事する業務と関連しているかどうかにかかわらず、1号の日本語要件(A2.2相当)を満たしたものとして扱われます。関連性がある場合は技能試験も免除されますが、関連性がない場合は技能試験の合格が必要です。
ただし、この免除はA2.2相当の要件に対するものです。タクシー・バス運転者のB1や鉄道の運輸係員のB1、介護の分野専用の日本語試験まで当然に免除されるわけではありません。自動車運送業では、技能実習2号修了による日本語試験の免除はトラック運転者に限られています。
2027年4月1日の育成就労制度の施行後も、技能実習2号の良好修了者は当分の間、関連性があれば試験免除で特定技能1号へ移行できます(育成就労Q&A)。一方、育成就労から特定技能1号へ移る人は、技能試験と日本語試験(A2.2相当)の合格が必要です。技能実習からの移行の考え方は技能実習から特定技能への移行は可能?にまとめています。
N4合格者は現場でどこまで話せるか
N4は、日本語能力試験の公式の説明では「基本的な日本語を理解することができる」レベルで、ゆっくり話される日常会話であれば内容がほぼ理解できる、とされています。現場の感覚でいえば、決まった手順の指示や、短い言葉での報告・確認はできても、早口の指示、方言、込み入った説明、電話での応対は難しい、という人が多い段階です。
試験の合格は、在留資格の要件を満たすための証明であって、配属先の業務に必要な日本語力を保証するものではありません。採用面接では、合格証とは別に、実際の業務で使う指示を日本語で伝えて理解できるか、分からないときに質問できるかを確認してください。受入れ後は、作業手順書に写真やふりがなを入れる、指示は短い文で区切るといった、いわゆる「やさしい日本語」での伝え方を現場の日本人側がそろえるだけでも、N4人材の定着は変わります。1号特定技能外国人支援計画には、日本語学習の機会の提供も含まれています。
よくある質問
特定技能の日本語レベルはN4ですか?
原則としてN4(またはJFT-Basic A2.2相当)です。19分野のうち、介護は介護分野の日本語試験が追加で必要で、自動車運送業のタクシー・バス運転者と鉄道の運輸係員はN3相当(B1)が原則です。それ以外の分野と業務区分は、N4かJFT-Basicの合格で1号の日本語要件を満たします。
特定技能2号の日本語レベルは?
2027年4月1日以降は、2号を置くすべての分野でB1相当以上(JLPT N3以上)が必要になります。それまでは、外食業と漁業がN3以上を求め、他の分野は日本語試験を2号の要件にしていません。
介護の特定技能の日本語レベルは?
A2.2相当以上(N4またはJFT-Basic)に加えて、介護分野の日本語試験(介護日本語評価試験)の合格が必要です。介護の現場の言葉や声かけ、記録に関する日本語を確認する試験です。
特定技能のタクシー運転手になるには日本語がどのくらい必要ですか?
原則としてB1相当以上、JLPTでいえばN3以上です。A2.2相当(N4)の人でも、会社が日本語学習プランを作成し、乗客対応の指導を受けた従業員を同乗させる場合に限って、運転業務に就けます。
採用前に確認すべきは「分野」ではなく「業務区分」
特定技能の日本語要件は「N4」と一言で語られがちですが、実際には分野の中の業務区分で要件が変わります。同じ自動車運送業でもトラックとタクシーで、同じ鉄道でも車両整備と駅係員で、求められる日本語が一段違います。そして2027年4月以降は、1号で採用した人が2号へ進めるかどうかにも、N3相当の日本語が関わってきます。
採用計画を立てるときは、配属予定の業務区分の要件を分野別運用方針で確認し、N4で採用する人については、在留期間の中でN3を目指す学習の支援をあらかじめ組み込んでおくことをお勧めします。個別の事情で判断が変わる場面もあるため、免除の可否に迷うときは申請前に確認してください。特定技能の19分野の全体像は特定技能の分野・職種一覧で整理しています。
根拠資料
- 特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(分野別運用方針・2026年1月23日閣議決定)(出入国在留管理庁)
- 分野別運用方針の主要な記載事項(出入国在留管理庁・PDF)
- 自動車運送業分野の分野別運用方針(別紙10・PDF)
- 鉄道分野の分野別運用方針(別紙11・PDF)
- 介護分野の分野別運用方針(別紙1・PDF)
- 特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-リネンサプライ分野の基準について-(日本語試験免除の記載例・PDF)
- 試験関係(出入国在留管理庁)
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