帰化申請の履歴書は、「その1」に出生の時から現在までの居住関係・学歴・職歴・身分関係を日付順に空白期間なく書き、「その2」に出入国歴、技能・資格、賞罰を書く書類です。法務局の「帰化許可申請のてびき」(令和6年6月版)は、年を日本の元号で書くこと、本国での職歴や来日後のアルバイト歴も含めること、出入国歴は法定住所期間の分を最短でも最近1年間書くことを求めています。難しいのは書式よりも、パスポートの出入国記録や過去の在留申請で出した経歴と1日単位で食い違わないようにすることです。
帰化申請の履歴書は「その1」と「その2」の2枚でできている
履歴書は、帰化許可申請書、親族の概要、動機書、生計の概要などと並んで、申請者本人が作る書類の1つです。様式は各法務局のウェブサイトでWord形式が公開されており、福岡法務局の「帰化許可申請書類等(Word版)」のページでも、履歴書(その1・その2)と出入国歴表を入手できます。用紙はA4判で、動機書と違ってパソコンで作成してかまいません。15歳未満の申請者は履歴書を作る必要がありません。
2枚の役割は次のとおりです。
| 様式 | 書く内容 | てびきの主な指示 |
|---|---|---|
| 履歴書(その1) | 年月日ごとの居住関係・学歴・職歴・身分関係 | 出生の時から日付順に、空白期間のないよう詳しく。年は日本の元号 |
| 履歴書(その2) | 出入国歴、技能・資格、賞罰 | 出入国歴は法定住所期間の分(最短でも最近1年間)、賞罰は過去から現在までの全て |
履歴書が他の作成書類と違うのは、ほぼすべての記載が別の公的記録で裏付けられる点です。居住関係は住民票と閉鎖外国人登録原票、学歴は卒業証明書、職歴は在勤証明書と年金の加入記録、出入国歴はパスポートと入管の出入国記録で確かめられます。審査担当者はこれらを並べて読むため、履歴書は「思い出して書く書類」ではなく、記録を写して並べる書類と考えたほうがうまくいきます。書類全体の一覧は帰化申請の必要書類一覧|会社員・自営業・配偶者別の書類と取得先にまとめています。
履歴書(その1)の書き方|出生から現在まで元号で空白なく
その1は、左から「年」「月」「日」、続いて「居住関係」「学歴・職歴」「身分関係」の欄が並ぶ時系列の表です。1行に1つの出来事を書き、同じ日付に複数の出来事があれば欄を分けて並べます。
学歴は小学校から、転校・中退・学部まで
てびきは、学歴について転校、中途退学、卒業の学部等も書くよう求めています。本国の学校名は、本国の正式名称を日本語で書き、所在地の都市名を添えると伝わりやすくなります。日本の日本語学校、専門学校、大学はもちろん、途中で辞めた学校も書きます。卒業証明書や在学証明書を添付する学校は、証明書の入学・卒業年月と履歴書の年月が一致しているかを確認してください。
職歴はアルバイトも、職務内容まで
職歴には「本国での職歴や日本に入国した後に行ったアルバイト歴も含む」とされ、具体的な職務内容も書きます。「株式会社○○入社」だけで終わらせず、「営業職として法人向けの機械部品の販売を担当」のように仕事の中身を1行添えます。留学中のアルバイトは、資格外活動許可の範囲(原則週28時間以内)で働いていたかが別の書類からも分かるため、勤務先と期間を正確に書きます。
転職の間に無職の期間があれば、その期間も書きます。「令和3年4月 株式会社○○退職」「令和3年6月 株式会社△△入社」と書くと2か月の空白が生じますが、その間の出来事(求職活動、一時帰国、職業訓練など)が居住関係や身分関係の欄になければ、面接で聞かれることになります。空白期間をなくすというのは、何もしていない期間を消すことではなく、その期間に何をしていたかを書くことです。
居住関係は住民票・登録原票の住所と一致させる
居住関係の欄には、出生地、来日、転居の事実を書きます。日本での転居は、住民票(2012年7月9日以降)と閉鎖外国人登録原票(それ以前)に記録された住所と年月日を合わせます。住民票の異動日と実際の引越し日がずれている人は多いのですが、履歴書には公的記録の日付を使い、ずれが大きい場合は面接で説明できるようにしておきます。
身分関係は婚姻・出生・父母の死亡・事実婚まで
身分関係の欄には、婚姻、離婚、子の出生、養子縁組のほか、父母の死亡と事実婚も書くとてびきは指示しています。婚姻は、日本の役所に届け出た日と本国での登録日が異なることがあり、どちらの日付かを「婚姻届出(○○市長)」のように届出先と合わせて書くと、戸籍や婚姻証明書との照合がしやすくなります。
その1の記入例|会社員の場合
記入例として、本国の大学を卒業後に留学で来日し、日本で就職・転職・婚姻した会社員を想定します(人物は架空で、書き方の例示です)。
| 年 | 月 | 日 | 居住関係 | 学歴・職歴 | 身分関係 |
|---|---|---|---|---|---|
| 平成6 | 5 | 12 | ベトナム国ハノイ市で出生 | 父○○・母○○の長男として出生 | |
| 平成12 | 9 | 5 | ハノイ市立○○小学校入学 | ||
| 平成28 | 6 | 30 | ハノイ○○大学経済学部卒業 | ||
| 平成28 | 7 | 1 | 株式会社○○(ハノイ市)入社(経理事務) | ||
| 平成29 | 3 | 31 | 同社退職(留学準備のため) | ||
| 平成29 | 4 | 5 | 留学のため来日、福岡市博多区○○に居住 | ○○日本語学校入学 | |
| 平成29 | 5 | 10 | ○○(飲食店)でアルバイト(令和元年3月まで、接客) | ||
| 平成31 | 3 | 15 | ○○日本語学校卒業 | ||
| 平成31 | 4 | 1 | 福岡市南区○○に転居 | ○○専門学校国際ビジネス科入学 | |
| 令和3 | 3 | 15 | ○○専門学校卒業 | ||
| 令和3 | 4 | 1 | 株式会社△△入社(貿易事務) | ||
| 令和5 | 8 | 31 | 同社退職(転職のため) | ||
| 令和5 | 9 | 1 | 株式会社□□入社(営業、現在に至る) | ||
| 令和6 | 11 | 3 | ○○○○と婚姻(福岡市南区長に届出) |
ポイントは3つあります。1つ目は、来日の行に在留目的(留学)を書いていることです。在留資格の変遷は法務局も入管の記録で確認できますが、履歴書の流れと在留資格の変更時期(留学から技術・人文知識・国際業務へ)が合っていると、読み手は疑問を持ちません。2つ目は、本国での職歴を、退職理由も含めて書いていることです。3つ目は、アルバイトの期間を終わりまで書いていることです。行が多くなって1枚に収まらなければ、同じ様式を2枚目として続けます。
履歴書(その2)の書き方|出入国歴・技能資格・賞罰
出入国歴は法定住所期間分、最短でも直近1年
その2の出入国歴の表は、「回数」「期間」「日数」「渡航先」「目的、同行者等」の列で構成されています。てびきは記載範囲を「法定住所期間におけるもの」とし、ただし最短でも最近1年間の出入国歴を書くとしています。ここでいう法定住所期間とは、国籍法が申請者ごとに求める日本での住所の期間を指し、一般の申請者なら国籍法5条1項1号の「引き続き5年以上」です。日本人の配偶者のように国籍法7条で住所要件が緩和される人は、その短い期間が法定住所期間になりますが、それでも直近1年分は必ず書きます。
法務大臣は2026年3月27日の閣議後記者会見で、同年4月1日から帰化の審査で原則として10年以上の在留を求める運用にすると説明しましたが、この運用で出入国歴の記載範囲も10年に広がるのかは、法務局の公表資料で確認できていません(公式資料では未確認)。記載範囲は、初回相談の際に担当者の指示を受けてください。制度の経緯は帰化の厳格化|2026年4月から何が変わった?居住10年・納税5年確認と申請中の扱いで扱っています。
期間の列には出国日と入国日を「令和7年8月10日〜令和7年8月20日」のように書き、日数の列には出国日と入国日を両方含めて数えた日数を書くのが一般的です(数え方に迷う場合は法務局に確認します)。てびきの記載例では出張による出国が複数並び、最後に総出国日数を合計しています。目的は「一時帰国(親族訪問)」「出張(取引先との打合せ)」「観光」のように具体的に、同行者は「妻、長男」のように書きます。回数が多くて欄に収まらない人は、出入国歴表を別に作って添付します。
技能・資格
運転免許の取得日、日本語能力試験のレベルなどを書きます。運転免許は免許証の「他」「二・小・原」欄などに記載された取得年月日と合わせます。日本語能力試験は合格した年月とレベル(N2など)を書き、合格証明書の写しがあれば添えます。業務上の資格(簿記、ITパスポートなど)も書いてかまいません。
賞罰は交通違反まで、過去から現在まで全て
てびきは賞罰欄を「過去から現在までの全てのもの」と指示しており、記載例には交通違反の反則金の例があります。駐車違反やスピード違反で反則金を納めたものも書きます。帰化申請では運転記録証明書(過去5年分)も添付するため、書き漏らしはすぐに分かります。5年より前の違反も、覚えている範囲で書いておくほうが安全です。本国での処罰歴も含まれます。
出入国歴を空白なく書く方法|パスポートと出入国記録の開示請求
出入国歴を記憶だけで書くと、ほぼ確実に日付がずれます。正確に書くための資料は2つです。
1つ目はパスポートです。法務局には、現在のものだけでなく所持するすべてのパスポートについて、使用済みの全ページの写しを出すよう求められます(東京法務局「帰化許可申請書に添付する書類」2026年9月4日更新)。日本の空港で顔認証ゲートを使った場合は、出国・帰国のスタンプが押されていないことがあります。スタンプのない出入国は、パスポートだけでは日付を確認できません。
2つ目は、出入国在留管理庁が保有する本人の出入(帰)国記録です。個人情報保護法に基づく保有個人情報の開示請求で、自分の出入国記録を取り寄せることができます。請求は「出入(帰)国記録に係る開示請求書」の様式を使い、本人確認書類を付けて出入国在留管理庁の開示請求先に提出します。入管庁の案内では、出入(帰)国記録の開示には請求からおおむね1か月かかります。手数料は1件300円(収入印紙)です。
履歴書を作る順序としては、開示された出入国記録を基準に日付を確定させ、パスポートのスタンプで渡航先を確認し、航空券の控えや勤務先の出張記録で目的を補う、という流れが確実です。開示の結果が届くまでに1か月程度かかるため、法務局の初回相談の直後、ほかの書類の収集と並行して請求しておくと、申請の時期を遅らせずに済みます。
2012年7月8日以前から日本に住んでいた人は、居住関係の確認のために閉鎖外国人登録原票の写しも取り寄せます。こちらも開示請求で、1件300円、請求先は出入国在留管理庁総務課出入国情報開示係です。入管庁は、請求が多く決定までに時間がかかっているとしています。
永住申請時の経歴・過去の在留申請との整合を取る
帰化申請をする人の多くは、それまでに在留資格の変更・更新を何度も経験し、永住者になっている人も少なくありません。そのたびに入管に出した申請書には、学歴・職歴が書かれています。永住許可申請書(入管法施行規則別記第34号様式)にも、今回の入国後の学歴・職歴を書く経歴欄がありました(書き方は永住許可申請書の記入例|経歴・滞在年数・扶養家族欄の書き方参照)。
法務局は、帰化の審査で入管の記録も確認します。過去の申請書に書いた入社日と履歴書の入社日が違う、在留資格変更の申請で書いた卒業年月と卒業証明書が違う、といった食い違いがあると、どちらが事実かを確かめる手間が生じ、面接で理由を聞かれます。食い違いが意図的でなくても、説明の時間はとられます。
整合を取る方法は、手元の控えと公的記録を突き合わせることに尽きます。
- 過去の在留申請書・永住許可申請書の控え(手元になければ、依頼した行政書士の保管分)
- 年金の加入記録(ねんきんネットや年金事務所で取得できる被保険者記録)で、厚生年金の資格取得日・喪失日を確認する
- 雇用保険の被保険者記録や、各勤務先の在勤証明書・退職証明書
- 住民票の除票、閉鎖外国人登録原票の住所履歴
年金の資格取得日は入社日、喪失日は退職日の翌日として記録されるため、職歴の年月日を確定させる裏付けとして使いやすい資料です。過去の申請書にどうしても事実と違う記載があった場合は、履歴書は事実に合わせて書き、違いが生じた理由を法務局の担当者に正直に説明してください。過去の記載に合わせて事実を曲げると、他の記録との食い違いが増えるだけです。個別の事情で扱いは変わるため、過去の申請内容に不安がある人は、書類を作る前に相談することをお勧めします。
よくある質問
帰化申請の履歴書は手書きでなければいけませんか?
手書きでなくてかまいません。てびきは動機書だけを本人の自筆(パソコン不可)としており、履歴書を含むそのほかの書類はパソコンで作成できます。用紙はA4判で、各法務局のWord版の様式を使うのが簡単です。
履歴書の年は西暦で書いてもいいですか?
てびきは「年」について日本の元号で書くよう指示しています。本国の証明書が西暦でも、履歴書には元号に直して書きます。平成と令和の境目(平成31年4月30日と令和元年5月1日)をまたぐ出来事は、年号の書き間違いが起きやすいので注意してください。
出入国歴はどこまでさかのぼって書きますか?
法定住所期間(一般の申請者なら5年)の分を書き、どの場合も最短で最近1年間の分は書きます。2026年4月からの居住期間の運用が記載範囲に影響するかは確認できていないため(公式資料では未確認)、相談時に法務局の指示を受けてください。
出入国の日付が分からないときはどうすればいいですか?
出入国在留管理庁に本人の出入(帰)国記録の開示請求をします。結果が出るまでおおむね1か月かかるため、早めに請求してください。顔認証ゲートの利用でパスポートにスタンプがない出入国も、この記録で確認できます。
アルバイトや短期間で辞めた仕事も書く必要がありますか?
書きます。てびきは、本国での職歴と来日後のアルバイト歴も職歴に含め、職務内容も記載するよう求めています。短期間の仕事を省くと、年金や住民税の記録との間に説明のつかない空白が生じます。
履歴書は最初に作り、他の書類の基準にする
帰化申請の書類づくりでは、履歴書を後回しにしがちです。筆者は逆に、出入国記録の開示請求と年金記録の取得を最初に済ませ、履歴書を真っ先に確定させることをお勧めします。履歴書の年月日が固まれば、親族の概要、生計の概要、動機書に書く来日の経緯も、同じ日付を使って迷わず書けます。履歴書は他の書類すべての基準線になるからです。
手順としては、出入国記録と閉鎖外国人登録原票の開示を請求する、届くまでの間に学歴・職歴の証明書と年金記録をそろえる、そろえた書類を持って法務局の初回相談で記載範囲の確認を受ける、の3段階です。福岡法務局は、必要書類を事前に準備したうえで相談を予約して来庁するよう案内しています。面接では、この履歴書に沿って経歴を聞かれます(面接の内容は帰化申請の面接で聞かれること|質問の類型と、書類との食い違いが不許可を招く理由参照)。自分で書いた履歴書を、面接の前にもう一度自分の言葉で説明できるか読み返しておいてください。帰化の手続全体の流れは帰化申請とは?法務局での相談から許可までの流れと期間の目安で確認できます。
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根拠資料
- 帰化許可申請のてびき(令和6年6月)(甲府地方法務局掲載)
- 帰化許可申請書類等(Word版)(福岡法務局)
- 帰化許可申請書に添付する書類(東京法務局・2026年9月4日更新)
- 帰化許可申請(法務省)
- 個人情報保護・開示請求(出入国在留管理庁)
- 外国人登録原票の開示請求について(出入国在留管理庁)
- 国籍法(e-Gov法令検索)
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