帰化の許可は、法務大臣が官報に告示した日から効力を生じます(国籍法10条)。告示の日から本人は日本人となり、そこから、告示の日を含めて1か月以内の帰化届、14日以内の在留カードの返納、本国の国籍喪失の手続が続きます。官報に載るのは住所(市区町村まで)、帰化前の氏名、生年月日の3つで、2025年4月1日以降の官報では、インターネットで閲覧できる期間が発行から90日に限られています。許可の連絡を受けた人と、その家族や勤務先に向けて、告示から数か月の間にやることを順番に並べます。
官報告示とは|帰化の効力が生じる日
官報は、法律・政令の公布や、国の機関の告示を掲載する国の公報です。国籍法10条1項は、法務大臣が帰化を許可したときは官報にその旨を告示しなければならないと定め、同条2項は、帰化はその告示の日から効力を生ずると定めています。
ここで押さえておきたいのは、法務局から許可の連絡を受けた日や、帰化者の身分証明書を受け取った日ではなく、官報に告示された日が日本国籍を取得した日になるという点です。告示の前日までは外国人として扱われ、告示日からは日本人として扱われます。帰化届の期限も、在留カードの返納期限も、この告示日から数えます。
実際の流れとしては、許可が決まると管轄の法務局から本人に連絡があり、法務局に出向いて「帰化者の身分証明書」を受け取ります。そのときに、官報告示の日付と、帰化届の出し方の説明を受けるのが一般的です。申請から許可までの期間については帰化申請の期間はどのくらい?受付から許可まで・面接後の結果待ちの目安【2026年】で扱っています。
官報に載る情報は住所・帰化前の氏名・生年月日
法務省の「帰化許可者の官報告示について」によれば、告示される事項は次の3つです。
- 住所(市町村名まで。政令指定都市と東京23区は区まで)
- 帰化前の氏名
- 生年月日
番地や建物名、帰化後の日本名、国籍は掲載されません。帰化前の氏名は、申請書に記載した本国名で掲載されます。
インターネット版官報で見られるのは90日間
2025年4月1日に「官報の発行に関する法律」が施行され、官報は電子データが正本になりました。官報は行政機関の休日を除いて毎日、午前8時30分に官報発行サイト(kanpo.go.jp)で公開されます。
内閣府の案内によると、同日以降に発行された官報のうち、帰化の告示のようにプライバシーへの配慮が必要な記事は、公開期間が90日に限られます。90日を過ぎると、インターネット上では閲覧できなくなります。また、こうした記事は文字情報を抜き出せない画像形式で公開されるため、サイト内の検索で名前を探すこともできません。
「官報で帰化を確認したいのに見られない」という声の多くは、この90日の期間を過ぎたか、検索では出てこない仕組みによるものです。自分の告示を記録として残したい場合は、告示から90日以内に該当ページを保存するか、官報販売所で官報掲載事項記載書面の交付を受けてください。
自分の告示を確認する方法
告示は、官報本紙の「告示」欄に「法務省告示」として掲載されます。1回の告示に多数の帰化許可者がまとめて掲載されます。確認の手順は次のとおりです。
- 法務局から告示日の連絡を受ける
- 告示日の午前8時30分以降に官報発行サイトを開き、その日の本紙から法務省告示のページを探す
- 住所(市区町村)、帰化前の氏名、生年月日が正しいかを確かめ、ページを保存する
インターネットが使えない人は、国立印刷局や各地の図書館に置かれた閲覧用の端末や掲示で確認できます。書面で手元に残したい場合は、官報販売所に依頼すると、有料で官報掲載事項記載書面の交付を受けられます。
許可後にやることの一覧
告示の後にやることを、期限の順に並べると次のとおりです。
| 手続 | 期限 | 届出先 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 帰化届 | 告示の日を含めて1か月以内 | 新しい本籍地または住所地の市区町村 | 戸籍法102条の2 |
| 在留カードの返納 | 告示の日から14日以内 | 地方出入国在留管理局(郵送可) | 入管法19条の15第1項 |
| 本国の国籍喪失・旅券の返納 | 国によって異なる | 本国の大使館・領事館 | 本国法 |
| 日本の旅券、運転免許、金融機関などの名義変更 | 帰化届で戸籍ができた後、速やかに | 各機関 | 各法令・約款 |
帰化届は告示の日を含めて1か月以内
帰化届は、日本人としての戸籍をつくるための届出です。戸籍法102条の2により、帰化した人は告示の日から1か月以内に届け出なければなりません。大阪市の案内では、期間は「官報の告示の日から告示の日を含め1か月以内」とされ、末日が休日の場合は次の開庁日が期限になります。
届出先は、新しく定める本籍地か、届出人の所在地の市区町村役場です。必要な書類は次の2つです。
- 帰化届書(A3の用紙。日本人の配偶者がいる場合は配偶者の署名が必要)
- 帰化者の身分証明書(法務局長などが交付したもの)
届出人は帰化した本人で、15歳未満の子は法定代理人が届け出ます。帰化届では、本籍地、日本での氏名、父母の氏名、配偶者の有無などを記載します。2025年5月26日に施行された改正戸籍法により、戸籍に氏名の振り仮名が記載されるようになり、振り仮名は「一般に認められている読み方」であることが必要になりました。帰化申請の段階で決めた日本名の読み方が、この基準に照らして問題ないかを届出前に確認しておくと手戻りを防げます。
帰化届が受理されると、戸籍が作られ、住民票も外国人住民としての記載から日本人としての記載に切り替わります。この後の手続の多くは戸籍謄本や新しい住民票を使うため、帰化届は期限いっぱいを待たず、告示後なるべく早く出すのが実務上の定石です。
在留カードは告示の日から14日以内に返納する
日本国籍を取得すると中長期在留者ではなくなるため、在留カードは効力を失います(入管法19条の14第1号)。入管法19条の15第1項は、この場合、その事由が生じた日から14日以内に在留カードを返納しなければならないと定めています。出入国在留管理庁は、期限内に返納しないと罰金に処せられることがあると案内しています。
返納は、地方出入国在留管理局の窓口に持参するか、郵送で行います。郵送先は「〒135-0064 東京都江東区青海2-7-11 東京港湾合同庁舎9階 東京出入国在留管理局おだいば分室」です。返納の理由(日本国籍の取得)と官報告示の日付を書いたメモを同封しておくと、処理が確実です。特別永住者の人は、特別永住者証明書を、効力を失った事由が生じた日から14日以内に出入国在留管理庁長官へ返納します(入管特例法16条1項)。持参先や郵送先は在留カードと同じ扱いでよいか、送る前に地方出入国在留管理局に確認しておくと確実です。
家族で帰化した場合は、子どもの在留カードも忘れずに返納してください。帰化が許可されなかった家族がいる場合、その人の在留カードは引き続き有効で、返納してはいけません。
本国の国籍喪失と旅券の返納
日本の国籍法は二重国籍を原則として認めておらず、帰化の条件として、帰化によって元の国籍を失うことを求めています(国籍法5条1項5号)。元の国籍を失う手続は、本国の法律によって異なります。
- 日本への帰化によって自動的に本国の国籍を失う国もあれば、本国への届出や許可が必要な国もあります
- 帰化申請の段階で、本国の国籍離脱の手続を先に済ませるよう求められる国もあります
- 本国の旅券は、大使館・領事館に返納を求められるのが一般的です
どの手続が必要かは、国籍ごとに大使館・領事館で確認する必要があります。本国に不動産や銀行口座、相続の予定がある人は、国籍喪失の手続と合わせて、本国の財産の扱いを確認しておくべきだと筆者は考えます。国籍を失った後は、本国の身分証明で本人確認ができなくなることがあるためです。
日本の旅券と身分関係の書き換え
帰化届で戸籍ができれば、日本の旅券(パスポート)を申請できます。申請には戸籍謄本が必要で、都道府県の旅券窓口で手続します。帰化直後に海外渡航の予定がある人は、本国の旅券は使えなくなっているため、日本の旅券の発行日数を見込んで日程を組んでください。
このほか、氏名や国籍の変更に合わせて、次のような書き換えが必要になります。
- 運転免許証:本籍(国籍)と氏名の変更(道路交通法94条により速やかに届出)
- マイナンバーカード:氏名などの券面記載事項の変更
- 銀行・証券・保険・携帯電話などの名義変更
- 不動産を持っている場合:所有権登記名義人の氏名変更の登記(2026年4月1日から、氏名・住所の変更日から2年以内の申請が義務)
- 会社の役員である場合:役員の氏名変更の登記(変更から2週間以内)
勤務先が確認すること
帰化した社員は日本人になるため、在留期間の管理や在留カードの確認は不要になります。ハローワークへの外国人雇用状況の届出も、外国人を対象とする制度であり、帰化後の離職時には対象になりません。この届出の仕組みは外国人雇用状況の届出とは?で解説しています。
勤務先で必要になるのは、社会保険・雇用保険・給与システム上の氏名の変更と、社内の名簿の更新です。本人から新しい氏名の分かる書類(戸籍謄本や住民票)を受け取り、各保険の氏名変更の手続を進めてください。
よくある質問
帰化した人は官報に載るのですか?
載ります。国籍法10条により、法務大臣は帰化の許可を官報に告示しなければならず、例外はありません。掲載されるのは住所(市区町村まで)、帰化前の氏名、生年月日です。
帰化者の住所は官報に載りますか?
市町村名まで載ります。政令指定都市と東京23区に住む人は区名までです。番地や建物名は載りません。
官報で帰化が見れないのはなぜですか?
2025年4月1日以降に発行された官報では、帰化の告示のようなプライバシーに配慮すべき記事は、インターネット上の公開期間が90日に限られているためです。また画像形式で公開されるため、サイト内の検索でも名前は出てきません。それ以前に発行された官報の帰化の告示も、インターネット上では閲覧できない扱いです。
帰化したら官報に載ったことの連絡は来ますか?
官報の側から個別に連絡が来ることはありません。許可の連絡と告示日の案内は、申請した法務局から受けます。告示当日の午前8時30分以降に官報発行サイトで確認できます。
帰化届を1か月以内に出さなかったらどうなりますか?
帰化の効力は告示の日に生じているため、日本国籍を失うことはありません。ただし、戸籍法の届出期間を過ぎると、正当な理由がない場合は過料の対象になり得ます。戸籍ができるまで日本の旅券やその他の手続が進められないため、期限内に届け出てください。
告示日を起点に、3つの期限を並べておく
帰化の手続は、許可が出た時点で終わりではありません。告示日を起点に、14日以内の在留カード返納、1か月以内の帰化届、国ごとに異なる本国の国籍喪失という3つの期限が同時に動き出します。法務局から告示日の連絡を受けたら、その日付からそれぞれの期限をカレンダーに書き込み、家族全員分の在留カードと本国旅券の所在を確認しておくと、慌てずに済みます。
帰化した後は、在留資格の更新や、2027年4月から始まる永住者の取消し制度(【2026年10月改定】永住許可の要件厳格化で何が変わる?で背景を整理しています)とは無関係になります。その安定と引き換えに、本国の国籍を手放すことになる点も含め、家族で手続の段取りを共有しておくことを勧めます。帰化申請全体の流れは帰化申請とは?法務局での相談から許可までの流れと期間の目安で解説しています。
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根拠資料
- 国籍法 5条・10条(e-Gov法令検索)
- 戸籍法 102条の2(e-Gov法令検索)
- 帰化許可者の官報告示について(法務省民事局)
- 官報の電子化について(内閣府)
- 公開対象の記事について(官報発行サイト、令和7年4月1日以降の官報)
- 在留カード等の返納(出入国在留管理庁)
- 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法 16条(e-Gov法令検索)
- 帰化届(大阪市)
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