技能実習生1人を団体監理型で3年間受け入れる費用は、福岡県の最低賃金(2026年10月4日から時間額1,114円)で雇う前提で筆者が試算すると、賃金と会社負担の社会保険料を含めて約950万円、そのうち賃金以外の上乗せ費用(初期費用・監理費・在留手続・帰国旅費)は約170万円です。上乗せ費用の中で最も大きいのは、月々の監理費の積み上げです。監理費には法令上の上限額がなく、監理団体ごとに額が違うため、見積もりを比べるときは法令が定める4つの区分に沿って内訳を出してもらうのが近道です。
技能実習生の受け入れ費用は3種類に分かれる
技能実習生の受け入れ費用は、支払う時期と相手で3つに分けると整理しやすくなります。
- 初期費用:監理団体への入会、面接、入国前後の講習、渡航費など、配属までに一度だけかかる費用
- 継続費用:毎月の賃金と社会保険料、監理団体に払う監理費、送出機関に払う送出管理費
- 節目の費用:1号から2号への移行時の在留資格変更、更新、技能検定の受検料、実習終了後の帰国旅費
このうち、法令で費用の種類と徴収の仕方が決まっているのが、監理団体に払う監理費です。技能実習法28条1項は、監理団体が「いかなる名義でも、手数料又は報酬を受けてはならない」と定めたうえで、同条2項で、主務省令で定める「適正な種類及び額の監理費」を、実習実施者に「あらかじめ用途及び金額を明示した上で」徴収できるとしています。監理団体の請求は、この枠の中に収まっていなければなりません。
監理費の中身|法令が定める4つの区分
技能実習法施行規則37条は、監理費の種類を次の4つに限定しています。どの区分も「実費に限る」「額を超えない額」と書かれており、監理団体が利益を上乗せする仕組みにはなっていません。
| 種類 | 対象となる費用 | 徴収できる時期 |
|---|---|---|
| 職業紹介費 | 募集・選抜の人件費・交通費、外国の送出機関へ支払う費用など | 求人の申込みを受理した時以降 |
| 講習費(1号のみ) | 入国前講習・入国後講習の施設使用料、講師・通訳への謝金、教材費、実習生に支給する講習手当など | 各講習の開始日以降 |
| 監査指導費 | 実習実施者への監査・指導の人件費・交通費など | 実習生が業務に従事し始めた時以降、一定期間ごと |
| その他諸経費 | 渡航・帰国の費用、相談・支援の費用、倒産時の対応費用など | 費用が必要となった時以降 |
技能実習制度運用要領(令和8年4月)は、職業紹介費に含まれる「外国の送出機関へ支払う費用」として、送出機関の人件費・事務諸経費・送出管理費などを挙げています。企業の請求書に「送出管理費」が別の行で載っていても、法令上は監理団体が職業紹介費として徴収し、送出機関に支払う整理です。
見積もりで確認すべきなのは、毎月の請求が「監査指導費」なのか、「その他諸経費」の積立てなのかという点です。月額の監理費が安く見えても、帰国旅費や講習費を別建てで後から請求されれば、3年間の総額は変わりません。
監理費は、直接にも間接にも技能実習生に負担させることが禁じられています(施行規則14条3号)。一方で、運用要領は、食事・宿泊施設の提供や日用品の支給の実費は監理費に含まれないため、実習生から徴収して差し支えないとしています。寮費を賃金から控除する場合は、実費の範囲であることと、労使協定などの手続が必要です。
初期費用の内訳|配属までにかかる費用
初期費用には公定の額がありません。参考として、監理団体の一つであるエヌ・ビー・シー協同組合が公表している項目別の相場(2026年7月2日更新)を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 公表されている目安 |
|---|---|
| 監理団体の入会費 | 1万〜3万円(年会費1万〜10万円は別) |
| 入国前の健康診断 | 1万円前後 |
| 現地教育費(入国前講習) | 3万円前後 |
| 渡航費(来日) | 6万円前後 |
| 在留資格の書類作成指導費 | 3万円前後 |
| 保険 | 3万円前後 |
| 入国後講習費 | 6万〜10万円 |
| 講習手当 | 6万円前後 |
| 雇入れ時の健康診断 | 1万円前後 |
| 配属費 | 3万円前後 |
中央の値で足し上げると、おおむね36万円です。現地に面接に行く場合は渡航費と滞在費が加わり、寮を用意する場合は敷金・礼金や家具家電で数十万円が別にかかります。
入国後講習は、実習実施者での業務を始める前に行います。時間数は、一定の要件を満たす入国前講習を行わない場合は「第1号技能実習の総時間数の6分の1以上」、行う場合は「12分の1以上」です(運用要領)。講習期間中は雇用契約に基づく業務ではないため賃金は発生しませんが、運用要領は、食費や居住費に自己負担がある場合には「これと同等以上の額の講習手当」を支払うよう求めています。この講習手当は、講習費として監理団体を経由して企業が負担するのが通常です。
技能実習計画の認定手数料は1件3,900円で、1号と2号でそれぞれ計画の認定を受けます。在留資格認定証明書の交付申請には手数料がかかりません。本人が本国で査証を取る際の査証手数料は、送出機関経由で本人または企業が負担します。
3年間の総額試算|福岡県の最低賃金で雇う場合
ここからは筆者の試算です。前提を明示しますので、自社の条件に置き換えて使ってください。
- 賃金:福岡県最低賃金 時間額1,114円(2026年10月4日発効)× 月173時間 = 月192,722円。入国後講習の1か月を除く35か月分。昇給、賞与、残業代、2027年度以降の最低賃金改定は含めない
- 会社負担の社会保険料:賃金の15%と仮定(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の概算)
- 監理費+送出管理費:月35,000円と仮定(公表例では組合監理費3万〜5万円、送出機関費5千〜1万円)。配属後35か月分
- 初期費用:36万円(上表の中央値の合計。寮の初期費用は含めない)
- 在留手続:1号から2号への在留資格変更と2号の更新を各1回、いずれも在留期間1年の許可で窓口申請の場合、各33,000円(2026年10月1日以降の手数料)
- 計画認定手数料:3,900円×2件
- 帰国旅費:6万円
| 費目 | 3年間の額 |
|---|---|
| 賃金(35か月) | 約674.5万円 |
| 会社負担の社会保険料 | 約101.2万円 |
| 監理費・送出管理費(35か月) | 122.5万円 |
| 初期費用 | 36万円 |
| 在留手続・計画認定の手数料 | 約7.4万円 |
| 帰国旅費 | 6万円 |
| 合計 | 約947.6万円 |
賃金と社会保険料を除いた上乗せ費用は約171.9万円で、1か月あたりに直すと約4.8万円です。 日本人を同じ最低賃金で雇う場合との差は、おおむねこの額と考えてよいでしょう。技能検定(基礎級・3級)の受検料は職種と試験実施機関によって異なるため、ここには入れていません。
もっとも、技能実習生の報酬は「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上」が認定基準です。同じ業務の日本人の新人に最低賃金より高い額を払っているなら、技能実習生にもその額を払う必要があり、総額はその分上がります。最低賃金ぎりぎりの設定を前提に予算を組むと、計画の認定段階で説明がつかなくなるおそれがあります。
帰国旅費・入国費用は誰が負担するか
検索で最も多い疑問が、入国と帰国の費用の負担者です。
帰国旅費は、団体監理型では監理団体の負担と法令で決まっています。技能実習法施行規則52条9号は、監理団体の業務の基準として、技能実習生の一時帰国と実習終了後の帰国に要する旅費を「負担する」ことを定めています。実際には、監理団体がその実費を「その他諸経費」として企業から徴収するのが一般的で、企業から見れば帰国旅費は自社の費用です。実習生本人に負担させることはできません。
途中で帰国する場合も同じです。本人の自己都合で実習をやめて帰国する場合でも、帰国旅費を本人に負担させる扱いは認められていません。途中帰国の手続は公式案内をご確認くださいで扱っています。
入国時の渡航費も、運用要領が「その他諸経費」の例として「技能実習生の渡航及び帰国に要する費用」を挙げており、監理費として企業が負担する形が基本です。問題になるのは、本人が本国の送出機関に払う手数料です。出入国在留管理庁の「技能実習生の支払い費用に関する実態調査」(2022年7月26日公表)では、来日前に送出機関等へ支払った費用の平均は54万2,311円で、国籍別ではベトナムが68万8,143円と最も高く、借金をして来日した人は約55%でした。企業が直接払う費用ではありませんが、実習生の借金は失踪の背景になりやすいとして、育成就労では規制が入りました(後述)。
監理費の仕訳と税務の扱い
経理担当者から見た実務上の論点も整理しておきます。勘定科目は会社の会計方針によりますが、一般には次のように処理されています。
- 月々の監理費:支払手数料、外注費、福利厚生費など、自社で継続して使う科目に統一する
- 入会費・年会費:組合への出資金は資産(出資金)、会費は諸会費
- 初期費用(講習費・渡航費・書類作成指導費など):採用教育費や支払手数料。配属前の支出でも、原則は支出時の費用
- 寮の敷金:差入保証金として資産計上
消費税は、監理費のうち役務の対価に当たる部分は課税仕入れになるのが一般的ですが、組合の会費(賦課金)で対価性のないものは不課税です。請求書で区分が分かれているかを確認し、判断に迷う場合は顧問税理士に確認してください。インボイス(適格請求書)の登録の有無も、監理団体を選ぶ際の確認事項の一つです。
今から技能実習で受け入れる場合の期限
2027年4月1日に育成就労制度が始まると、新たな技能実習計画の認定申請はできなくなります。経過措置により、施行日前に認定を受けた1号の技能実習生は2027年6月30日までに実習を始めれば、そのまま技能実習を続けられます。外国人技能実習機構は、1号の技能実習計画の認定申請を2027年2月までに行うよう求めています。
2025年4月2日以降に入国した技能実習生は、3号に移行できない可能性があります。3号は施行日時点で2号を1年以上行っていることが条件だからです。今から受け入れる場合の費用計画は、3号を含む5年ではなく、1号・2号の3年で組むのが現実的です。経過措置と特定技能との関係は技能実習と特定技能の違いでも触れています。
育成就労に移ると費用はどう変わるか
育成就労制度(2027年4月1日施行)では、費用の構造が次の4点で変わります(育成就労制度運用要領)。
1つ目は、送出機関の手数料の上限です。送出機関は、育成就労外国人の月額賃金の2か月分を超える金額を、費目を問わず本人や家族から受け取ることが禁止されます。上の試算の月給192,722円なら、上限は385,444円です。送出機関が必要とする費用のうち上限を超える部分は、企業側が負担する形に変わると見込まれ、初期費用は技能実習より増える方向です。
2つ目は、転籍時の初期費用の補填です。本人の意向による転籍を受け入れる企業は、転籍元の企業が支出した初期費用の一部を補填しなければなりません。補填額は告示で定める額に按分率(転籍元での期間が1年以上1年6か月未満なら6分の5、2年6か月以上なら4分の1など)を掛けた額です。告示で定める額そのものは現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。受け入れた人が早く転籍すると初期費用の一部しか戻らないため、技能実習より「定着」の経済的な意味が大きくなります。
3つ目は、計画の認定手数料です。育成就労計画は3年1本の計画で、手数料は1件6,100円です。技能実習の1号・2号の2件(計7,800円)とほぼ同じ水準です。
4つ目は、監理団体が監理支援機関に変わることです。監理支援費も外国人本人に負担させることはできず、企業が負担する構造は変わりません。入国後講習は、A1相当の日本語試験に合格していない場合320時間以上、合格していれば220時間以上とされ、講習費の見積もりに影響します。育成就労の費用の詳細は公式案内をご確認ください、制度の全体像は育成就労制度とは?で解説しています。
よくある質問
技能実習生の監理費用はいくらですか?
法令上の上限額はなく、施行規則37条の4区分(職業紹介費・講習費・監査指導費・その他諸経費)ごとに実費を超えない範囲で、各監理団体が定めます。監理団体が公表している例では、月額3万〜5万円程度が多く見られます。監理団体は、あらかじめ用途と金額を明示してから徴収しなければならないため、契約前に区分ごとの内訳を書面でもらいましょう。
技能実習生の月額費用はいくらですか?
賃金・社会保険料に、監理費と送出管理費が加わります。本稿の試算(福岡県最低賃金、月173時間)では、賃金約19.3万円、会社負担の社会保険料約2.9万円、監理費等3.5万円で、月25.7万円前後です。寮を会社が借り上げる場合は、家賃のうち本人から徴収しない部分が加わります。
技能実習生は自己都合退職でも帰国費用を負担できますか?
団体監理型では、監理団体が帰国旅費を負担することが施行規則52条9号で定められており、自己都合による途中帰国でも本人に負担させることはできません。企業は監理団体から実費を請求されるのが一般的です。
技能実習生の入国後講習費用はいくらですか?
公定額はなく、監理団体の講習施設の使用料・講師謝金・教材費・講習手当などの実費です。公表例では講習費6万〜10万円、講習手当6万円前後が目安として示されています。講習時間は、要件を満たす入国前講習をしない場合で1号の総時間数の6分の1以上です。
見積もりは「区分」と「3年総額」の2つの軸で比べる
技能実習生の受け入れ費用は、賃金を除けば3年間で170万円前後が一つの目安になります。ただ、同じ170万円でも、初期に厚く払う監理団体と、月々に均して払う監理団体があります。筆者は、見積もりを比べるときに次の2点をそろえることを勧めます。1つは、施行規則37条の4区分に沿って内訳を並べること。もう1つは、帰国旅費や在留手続の費用まで入れた3年間の総額で比べることです。
そのうえで、2027年4月以降は育成就労との比較が加わります。送出手数料の上限と転籍時の補填によって、初期費用の負担と定着の重みが変わるためです。在留手続の手数料は在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?、手続を専門家に依頼する場合の報酬の考え方は在留資格申請を行政書士に依頼する費用の相場で解説しています。
根拠資料
- 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 28条(e-Gov法令検索)
- 技能実習法施行規則 14条・37条・52条(e-Gov法令検索)
- 技能実習制度 運用要領(出入国在留管理庁・厚生労働省、令和8年4月)
- 技能実習生の支払い費用に関する実態調査について(結果の概要)(出入国在留管理庁、2022年7月26日)
- 令和8年度の福岡県最低賃金の改正決定について答申が行われました(福岡労働局、2026年8月10日)
- 技能実習生の受入れはいくらかかる?項目別に解説(エヌ・ビー・シー協同組合、2026年7月2日更新)
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