外国人が経営に関与する会社が、消費税の不正還付で重加算税の賦課決定処分を受け、その処分が確定すると、経営者の在留期間更新は原則として不許可になります。影響は経営者にとどまりません。処分を受けた会社への就職を目的とする在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請も原則として許可されず、すでにその会社で働いている外国人社員の更新も同じ扱いです。
この情報は、国税庁から出入国在留管理庁へ直接提供されます。根拠は入国・在留審査要領 第12編の「第10 国税庁との情報連携」(1-23〜1-25)で、一部は黒塗りです。さらに令和8年6月、入管庁は公表資料を改訂し、消費税の不正受還付に加えて所得税・法人税等の重加算税を受けた機関の運営者も「特に消極的な要素」として評価すると明記しました。
この記事でわかること
- 国税庁から入管へ納税情報が提供される仕組み
- 経営者の更新が「原則不許可」になる4つの条件
- 重加算税を受けた会社で働く外国人社員への影響と、黒塗りで確定できない範囲
- 永住者・日本人の配偶者等が経営者の場合の在留期間「1年」
- 令和8年6月の公表資料の改訂と、不許可後の選択肢
国税庁から入管へ、納税情報はどう流れるか
在留審査で税金の状況を確かめる方法として、多くの人が思い浮かべるのは、申請人が提出する課税証明書や納税証明書です。第10が定めているのは、これとは別の経路、つまり国税庁が自ら入管に情報を渡す仕組みです。
「国税庁は、入管法別表第一又は別表第二に掲げる在留資格を有する外国人が経営又は管理に関与する法人又は個人事業主等において、納税の義務に関する悪質な違反があった場合、出入国在留管理庁に対して情報を提供し、出入国在留管理庁は、当該情報を活用して慎重な審査を行い、その結果を国税庁に通知する。」
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版) 1-23〜1-24(第10 1 概要)
入管法の別表第一は、技人国や経営・管理のように日本で行う活動に基づく在留資格を、別表第二は永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者のように身分や地位に基づく在留資格を並べた表です。第10の対象は、このどちらかの在留資格を持つ外国人が経営または管理に関与する法人・個人事業主等です。経営・管理の在留資格の人に限らず、永住者が社長を務める会社も対象に入ります。
情報の流れは一方通行ではありません。国税庁が情報を提供し、入管がそれを使って慎重に審査し、その結果を国税庁に返します。入管の審査結果が税務当局にも共有される循環型の連携です。なお、第10の2の冒頭部分(本庁から連絡を受けた情報と…に続く箇所)と(1)の見出しは黒塗りで、地方の入管が受けた情報をどう扱うかの全体像は読めません。審査要領は情報公開請求で開示された内部基準で、このように一部が伏せられています。
経営者の更新は「原則不許可」
「「経営・管理」の在留資格を有する外国人が運営する企業等が消費税の不正還付に関して重加算税の賦課決定処分を受けた場合(処分が確定している場合)は、原則として在留期間更新許可申請を不許可とする。」
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版) 1-24(第10 2(1)ア)
この一文には、原則不許可になる条件が4つ重なっています。
- 消費税の不正還付であること
- その不正還付に関して重加算税が課されたこと
- 賦課決定処分を受けたこと
- その処分が確定していること
消費税は、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引いて納める税で、仕入れの消費税の方が多ければ差額が還付されます。輸出取引が多い事業者や設備投資をした事業者では、還付申告は珍しくありません。問題になるのはその先で、ここでいう消費税の不正還付とは、架空の仕入れや輸出を装って還付を受けるような不正を指します。重加算税は、事実を隠したり装ったりして申告した場合に課される、加算税の中で最も重いものです(国税通則法68条)。
注記は二つあります。注1は、経営者が「経営・管理」以外の別表第1の在留資格を持つ場合も原則として同様に扱うとしています。技人国や高度専門職の在留資格で会社を経営している人も対象です。注2は、税務上の不服申立て手続中の段階で情報提供を受けたものは、国税庁から改めて結果が提供されるとしています。処分が確定していなければ、原則不許可の条件はまだそろっていないことになります。
例外の余地も書かれています。引き続き在留を認めるに足りる相当の理由がある場合は、地方の入管が意見を付けて本庁に請訓する、つまり本庁の判断を仰ぐとされています。ただし、その直後に審査要領は、消費税不正還付事案は「国庫からの詐取ともいうべき特に悪質な事実」であると書いています。この後に続く部分は黒塗りで読めませんが、請訓の道が広く開いているとは読めない書きぶりです。
そもそも在留期間の更新を許可するかどうかは、法務大臣の広い裁量に属します。マクリーン事件の最高裁大法廷昭和53年10月4日判決(民集32巻7号1223頁)は、外国人には在留を続ける権利も更新を受ける権利も保障されていないと判断しました。更新の審査要件である「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」の判断で、国庫から還付金をだまし取ったという事実がどれほど重く見られるかは、この枠組みから考える必要があります。更新の「相当の理由」の全体像は在留期間更新の「相当の理由」とは|ガイドラインと審査要領で見る素行・納税・社会保険で扱っています。
永住者・日本人の配偶者等が経営者なら、在留期間は原則1年
第10の2(1)アの最後には、別表第2の在留資格を持つ経営者の扱いが書かれています。入管法別表第2の在留資格で在留する外国人が企業等の経営者として活動している場合も、在留を許可するときの在留期間は原則として「1年」とし、納税状況を確認したうえで在留期間の伸長を検討するというものです。
身分系の在留資格は、就労の制限がなく、活動内容で更新が否定されることは通常ありません。それでも、経営する会社が消費税の不正還付で重加算税を受ければ、在留期間は1年に短縮され、毎年の更新で納税状況を確かめられることになります。永住者には在留期間の更新がないため、筆者は、この部分が実際にかかるのは日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者で在留する経営者だと読んでいます。
従業員にも及ぶ:就職・転職・更新が原則として許可されない
第10の中で、企業の人事担当者が最も注意すべきなのは(2)です。
「重加算税賦課処分がされた企業等への就職を目的とした在留資格認定証明書交付申請又は在留資格変更許可申請があった場合は、原則として許可しない。また、既に当該企業等で勤務している者等から在留期間更新許可申請があった場合も同様に取り扱う。」
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版) 1-25(第10 2(2))
対象は三つの場面です。海外から新たに呼び寄せる在留資格認定証明書交付申請、留学生などを採用するときの在留資格変更許可申請、そしてすでに働いている外国人社員の在留期間更新許可申請です。経営者本人の在留だけでなく、会社として外国人を雇い続けること自体が難しくなります。
ただし、(2)の範囲には読めない部分があります。(2)の見出しは黒塗りで、本文も「重加算税賦課処分がされた企業等」と書くだけで、(1)のように「消費税の不正還付に関して」「処分が確定している場合」という限定が本文には置かれていません。後段にも黒塗りがあり、「…には、本庁就労審査係への事前連絡は不要とする」という一文だけが判読できます。【要確認】(2)が消費税の不正還付による処分に限られるのか、処分の確定を要するのかは、開示版の本文からは確定できません。
会社の側から見ると、重加算税は経営者個人の問題にとどまらず、外国人社員全員の在留に波及する経営リスクです。税務調査で還付申告について指摘を受けた段階で、外国人社員の更新時期と採用予定を洗い出しておく必要があります。
処分時の流れ:本庁と国税庁を経由してから通知が届く
第10の案件は、通常の審査とは通知までの手順が違います。審査要領は、審査が終わった後、申請人(代理人を含む)への通知の前に、地方の入管が本庁の在留管理支援部在留管理課就労審査係に意見書と申請書類等を入管WANで送付するとしています。本庁就労審査係は国税庁に審査結果を提供し、地方の入管は本庁から通知発送の指示を受けてから申請人に結果を送ります。
本庁と国税庁を経由する分、結果が出るまでの時間は通常の案件より長くなると筆者は見ています。更新申請中は、在留期間の満了後も処分がされるときか満了日から2か月を経過する日のいずれか早いときまでは、従前の在留資格で在留できます(入管法20条6項・21条4項)。ただし、この間に会社の事業計画を進めるなら、不許可の場合を想定した準備が欠かせません。
公表資料では、消費税以外の重加算税も「特に消極的」
審査要領の開示版(2025年12月スキャン)の後、入管庁は令和8年6月に二つの公表資料を改訂しました。
| 資料 | 令和8年6月の改訂内容 |
|---|---|
| 「経営・管理」の在留資格の明確化等について(外国人経営者の在留資格基準の明確化) | 租税の項目を更新。高額・長期の未納は消極要素とし、「消費税の不正受還付や所得税・法人税等に関して重加算税賦課決定処分があった機関を運営する者」は「特に消極的な要素」として評価する |
| 在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン | 考慮事項7(納税義務等の履行)の注書きに、「当庁からの求めに応じ、関係機関から提供を受けた納税義務等の履行状況に関する情報を踏まえ、許否判断を行う場合があります」と追記 |
審査要領と公表資料を並べると、違いがはっきりします。審査要領は「消費税の不正還付」で「処分が確定している」場合に絞って原則不許可としています。公表資料は、評価の強さを「特に消極的な要素」と表現する一方、対象を所得税・法人税等の重加算税にまで広げています。内部基準では消費税の不正還付を最も重い類型として整理しており、公表資料はそれ以外の重加算税も更新審査で重く見ることを外部に示した、という関係です。
実務の結論は、新しい公表資料に合わせて考えるべきです。消費税に限らず、所得税・法人税等で重加算税を受けた会社の運営者は、経営・管理の更新で特に消極的に評価されます。ガイドラインの注書きからは、国税庁との情報連携が消費税に限らない「納税義務等の履行状況」の情報に及ぶことも読み取れます。経営・管理の更新では、もともと法人の源泉所得税・法人税・消費税などの履行状況を確認するとされています。そのうえで、「納付が義務づけられているものは全て提出が必要」とされています(「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正についてのQ&A 問26)。
経営・管理の節(10-12)も、運営する企業等が消費税の不正還付で重加算税の賦課決定処分を受けた場合(処分確定時)は原則不許可とし、詳細は第1節第10を参照するよう書いています。公租公課の不履行が疑われる場合の是正状況の確認(10-20〜10-21)には黒塗りがあり、是正の段階ごとの扱いは読めません。経営・管理の更新と税金の関係は経営管理ビザの更新と税金・社会保険の未納|公租公課の確認はどこまで及ぶかで詳しく扱っています。
不許可になったら、争う道は二つ
在留期間更新の不許可には、行政不服審査法の審査請求ができません。同法7条1項10号が外国人の出入国・在留に関する処分を適用除外としており、入管庁の在留期間更新許可申請の手続ページにも「不服申立方法 なし」と書かれています。争うなら裁判所に取消訴訟を起こすことになり、実務上は不許可の理由を確かめたうえでの再申請が中心です。詳しくは在留資格の不許可に不服申立てはできない?行政不服審査法の適用除外と取消訴訟を参照してください。経営・管理の更新が不許可になる理由全般は経営管理ビザの更新が不許可になる理由|赤字・債務超過・税金未納の判断基準と再申請を参照してください。
税務の側は別の手続です。重加算税の賦課決定処分に不服があれば、税務上の不服申立てができます。審査要領の注2が示すとおり、不服申立て手続中のものは国税庁から改めて結果が提供されます。処分が取り消されたり変更されたりすれば、入管の判断の前提も変わる可能性があります。税務の手続は税理士の領域で、入管の手続と時期を合わせて進めることが重要です。
よくある質問
Q. 消費税の不正還付で重加算税を受けると、在留期間の更新はどうなりますか?
審査要領では、経営・管理の外国人が運営する企業等が消費税の不正還付に関して重加算税の賦課決定処分を受け、処分が確定している場合、原則として更新を不許可とします。経営者が技人国など別表第1の他の在留資格の場合も原則として同様です。相当の理由がある場合は本庁に請訓する扱いがありますが、消費税不正還付は「特に悪質な事実」とされています。
Q. 会社が重加算税を受けると、そこで働く外国人社員にも影響がありますか?
あります。審査要領は、重加算税賦課処分がされた企業等への就職を目的とした在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請は原則として許可しないとし、すでに勤務している人の更新も同様に扱うとしています。この部分の見出しと一部は黒塗りで、対象となる処分の範囲は本文から確定できません。
Q. 永住者や日本人の配偶者等が経営する会社も対象になりますか?
対象になります。国税庁からの情報提供は、別表第一と別表第二の在留資格を持つ外国人が経営・管理に関与する法人・個人事業主等が対象です。別表第2の在留資格の経営者の場合、在留を許可するときの在留期間は原則として1年とし、納税状況を確認したうえで伸長を検討するとされています。
Q. 消費税以外の税金で重加算税を受けた場合はどうなりますか?
令和8年6月に改訂された入管庁の公表資料は、消費税の不正受還付に加え、所得税・法人税等に関して重加算税賦課決定処分があった機関を運営する者にも触れています。そうした者は、経営・管理の審査で「特に消極的な要素」として評価すると明記されています。
税務調査で還付申告を指摘されたら
税務調査で消費税の還付申告について指摘を受けた段階で、まず顧問税理士と処分の見通しを確認してください。そのうえで、経営者本人と外国人社員全員について在留期限と在留資格を一覧にし、処分が確定する前後にどの申請が来るかを確かめます。採用予定がある場合は、在留資格認定証明書交付申請の時期も同じ表に載せてください。
処分がすでに確定している場合は、次の更新申請で何を説明できるかが焦点になります。請訓の対象となる「相当の理由」をどう組み立てるかは個別の事情に左右されるため、申請の前に入管手続の専門家に相談することをおすすめします。
根拠資料
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第2章第1節 第10 1-23〜1-25(2の冒頭、(1)の見出し、請訓以降の一文の後半、(2)の見出しと後段に黒塗りあり)
- 入国・在留審査要領 第12編(開示版)第2章第10節 10-12、10-20〜10-21(一部黒塗り)
- 出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」(令和8年6月改訂)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan43.html
- 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(令和8年6月改正)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html
- 出入国在留管理庁「在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について」Q&A 問26 https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00237.html
- 出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請」https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-3.html
- 国税通則法68条/行政不服審査法7条1項10号/出入国管理及び難民認定法20条6項・21条4項/最高裁大法廷昭和53年10月4日判決(民集32巻7号1223頁)