特定技能の協力確認書とは、特定技能所属機関(受入れ企業)が、特定技能外国人の働く事業所と住む場所がある市区町村に対して、「地方公共団体から共生社会の実現のための施策に協力を求められたら応じます」と約束する書面です。2025年4月1日施行の特定技能基準省令の改正で受入れ機関の基準に加わり、在留資格の申請前に市区町村へ提出しておくことが必要になりました。提出先は入管ではなく市区町村で、福岡市と北九州市はいずれもオンラインでしか受け付けていません。本記事では、出入国在留管理庁のQ&Aと両市の案内をもとに、提出の時期、提出先の決め方、再提出が必要になる場面を整理します。
協力確認書は2025年4月1日から受入れ機関の基準になった
ここでいう共生施策とは、地方公共団体が外国人住民を含む地域の暮らしのために行う取組を指します。出入国在留管理庁は、各種行政サービス、交通・ゴミ出しのルール、医療・公衆衛生、防災訓練・災害対応、地域イベント、日本語教室などに関する施策を例に挙げています。
根拠は、2025年2月17日に公布され、同年4月1日に施行された2つの省令改正です。特定技能基準省令(平成31年法務省令第5号)2条1項12号の2に、特定技能所属機関の基準として「特定技能雇用契約の当事者である外国人に関し、地方公共団体から、共生社会の実現のために実施する施策に対する協力を要請されたときは、当該要請に応じ、必要な協力をすることとしていること」が加わりました。同時に、1号特定技能外国人支援計画の基準として、支援計画が地方公共団体の共生施策を踏まえたものであることも追加されています。
背景には、2024年3月29日の閣議決定で特定技能の対象分野が12分野から16分野に広がり、1号特定技能外国人の5年間の受入れ見込数が約34万5千人から82万人に引き上げられたことがあります。このとき「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針」に、受入れ機関が地域の共生社会の実現に寄与する責務が書き込まれました。協力確認書は、その責務を個々の受入れ機関が市区町村に対して書面で示す手続です。
協力確認書は義務か
協力確認書の提出そのものを直接義務づける条文があるわけではありません。ただし、特定技能基準省令2条1項12号の2は特定技能所属機関の基準で、在留資格の申請書(所属機関作成用)には、協力確認書の提出年月日と提出先を記載する欄(3(32))があります。協力確認書を出していなければ、申請書のこの欄に「有」と書けず、基準に適合していることを示せません。実務上は、特定技能外国人を受け入れる限り避けて通れない手続です。
一方で、市区町村に提出した協力確認書の写しや受理証明を入管に出す必要はありません。申請書に提出日と提出先を記載すれば足りると、出入国在留管理庁は案内しています。
提出する時期|新規受入れと、すでに受け入れている場合
提出のタイミングは、受入れの状況によって2つに分かれます。
| 受入れの状況 | 提出の時期 |
|---|---|
| 初めて特定技能外国人を受け入れる | 特定技能雇用契約を締結した後、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請を行う前 |
| 2025年4月1日時点ですでに受け入れていた | 2025年4月1日以降、その外国人について初めて在留資格変更許可申請または在留期間更新許可申請を行う前 |
2025年4月以前から受け入れている会社でも、次の在留期間更新の前に提出が必要です。在留期間が長く、2025年4月以降まだ一度も更新や変更の申請をしていない外国人がいる会社は、この手続が済んでいない可能性があるため、次の更新申請までに提出を済ませておきます。
同じ事業所で2人目以降を受け入れるときは、原則として再提出は不要です。基本的に一度、該当する市区町村に提出すれば足りるとされています。
提出先の決め方|事業所と住居地の市区町村の両方
協力確認書の提出先は、特定技能外国人が活動する事業所の所在地の市区町村と、住居地の市区町村の両方です。両者が同じ市区町村なら1通で足ります。都道府県や地方出入国在留管理局に出す必要はありません(Q&A Q05)。
福岡県内でよくある配置で考えると、次のようになります。
- 福岡市博多区の工場で働き、福岡市東区の社員寮に住む:福岡市に1通
- 福岡市南区の事業所で働き、春日市に住む:福岡市と春日市に1通ずつ
- 北九州市小倉北区の事業所で働き、同じ市内の八幡西区に住む:北九州市に1通
政令指定都市は、区ではなく市に提出します。福岡市は「福岡市への提出となり、区役所では受付を行っておりません」と明記しています。ただし、同じ政令指定都市の中でも、区をまたいで活動する事業所が変わる場合は、新しい事業所の所在地を記載した協力確認書を改めて市に提出する必要があります(Q&A Q17)。東京23区の場合は、各特別区に提出します。
派遣形態の場合は、派遣元の特定技能所属機関が、外国人が実際に活動する派遣先の事業所がある市区町村に提出します(Q&A Q14)。特定技能で派遣ができるのは農業分野と漁業分野に限られます。
海外から呼び寄せる場合で、入国後の住居がまだ決まっていないときは、予定している事業所と住居の市区町村に提出し、入国後に別の市区町村で活動・居住することになったら、その市区町村に改めて提出します(Q&A Q19)。国内で在留資格を変更する人が、許可後に別の市区町村へ引っ越す予定であれば、引越し先の市区町村に出します(Q&A Q20)。
協力確認書の書き方|記載するのは7項目
協力確認書の様式は出入国在留管理庁が用意しており、宛先の市区町村長名、提出日のほか、次の項目を記入します。
- 特定技能所属機関名(正式名称。個人事業主は氏名)
- 事業所の所在地
- 担当者連絡先(部署・担当者名)
- 電話番号
- メールアドレス
- 派遣先機関名(派遣形態の場合のみ)
- 派遣先事業所の所在地(派遣形態の場合のみ)
直接雇用なら1から5までを書きます。2には、特定技能外国人が実際に活動している事業所の所在地を書きます。本社勤務なら本社、支店や工場で働くならその所在地です。同じ市区町村の中に複数の事業所がある場合は、1枚にまとめて記載できます。
記載例の留意事項によれば、3の担当者は市区町村との連絡窓口になる人で、支援責任者や支援担当者である必要はありません。書くのは特定技能所属機関の情報で、登録支援機関の名称や連絡先ではない点に注意が必要です。支援を全部委託していても、市区町村から協力要請を受けるのは受入れ企業です。
様式の変更履歴
協力確認書の様式は、2025年4月の運用開始後に2回改められています。2025年7月30日には、派遣形態の場合に派遣先機関名と派遣先事業所の所在地を記入できる欄(上記6・7)が加わりました。2026年3月23日には、出入国在留管理庁が「協力確認書に係る事務の円滑化を目的として」様式を改善しています。現行の様式の本文には、協力確認書の記載内容がその市区町村の属する都道府県に提供されることへの同意文が入っています。2026年3月の改善で具体的にどの箇所が変わったかは、出入国在留管理庁の案内では明示されていません(公式資料では未確認)。
古い様式で提出済みの場合に出し直す必要があるとは案内されていませんが、これから提出する分は、出入国在留管理庁のウェブサイトから最新の様式を取得して使うのが確実です。オンライン提出の市区町村では、入力フォームの項目がそのまま様式の役割を果たします。
福岡市・北九州市への提出方法
福岡県内の2つの政令指定都市は、どちらもオンライン提出に一本化しています。
| 項目 | 福岡市 | 北九州市 |
|---|---|---|
| 提出方法 | オンライン申請ページ(福岡市の電子申請) | 北九州市電子申請サービス「協力確認書入力フォーム」 |
| 紙・窓口 | 区役所では受け付けない | 紙での提出は受け付けない |
| 担当課 | 総務企画局国際部多文化共生課(電話092-711-4022) | 政策局グローバル挑戦部国際政策課(電話093-582-2146) |
| 独自の入力項目 | 提出の理由(新規か変更か)、雇用形態、担当者メールアドレス、所属機関の分野、代理人提出の場合の提出者情報 | 市の案内ページでは特に示されていない |
福岡市の入力フォームには、提出完了確認メールが届く担当者メールアドレスの欄があります。在留資格の申請書に記載する提出日は、このメールで確認できる日付にしておくと、後で説明を求められたときに困りません。北九州市は、市の多文化共生の取組として、北九州国際交流協会、相談窓口、日本語教室、外国人向けの災害・防災情報のページを案内しています。
福岡市・北九州市以外の市町村は、窓口、郵送、メール、電子申請など受付方法がまちまちです。市町村名と「協力確認書」で検索し、各市町村のページで確認します。出入国在留管理庁も、提出方法は各市区町村のウェブサイトで確認するか直接問い合わせるよう案内しています。
再提出が必要になる場面・不要な場面
協力確認書は一度出せば済むとは限らず、記載した事項が変わると再提出が必要になります。出入国在留管理庁のQ&Aの整理は次のとおりです。
再提出が必要な場面は、次のようなものです。
- 特定技能所属機関の名称、担当者、連絡先など、記載事項が変わった(Q09)
- 外国人が活動する事業所が、協力確認書を出していない市区町村の事業所に変わった(Q10、Q15)
- 同じ政令指定都市の中で、別の区の事業所に異動した(Q17)
- 外国人が、協力確認書を出していない市区町村に転居した
- 個人事業主が法人化した、別法人を設立したなど、特定技能所属機関が別の法人になった(Q11)
逆に、次のような場合は市区町村への報告や再提出は不要です。
- 外国人が転職・転出・帰国した(Q12)
- 在留資格の申請が不許可になった(Q13)
- 事業所の移転先の市区町村に、他の外国人のためにすでに協力確認書を出している(Q16)
事業所の所在地が変わる場合は、市区町村への協力確認書とは別に、入管への特定技能雇用契約の変更に係る届出も必要です(Q10の注記)。こちらは変更の日から14日以内が期限で、特定技能の随時届出とは?届出が必要な場面の早見表と14日以内の提出方法で扱っています。
支援計画書の「共生施策関係」欄との関係
協力確認書と対になるのが、1号特定技能外国人支援計画書(参考様式第1-17号)の「Ⅴ 共生施策関係」欄です。ここには、共生施策を確認した市区町村名と確認日を書きます。Q&AのQ28によれば、共生施策を確認した市区町村は、協力確認書を提出する市区町村と同じです。
共生施策の確認は、基本的に市区町村のウェブサイトを閲覧して行うことが想定されています。出入国在留管理庁は、「○○市 外国人 生活ガイド」「○○市 外国人 共生」などで検索して確認する方法を例示しています。福岡市であれば市の外国人支援のページ、北九州市であれば前述の多文化共生の取組のページが確認先になります。
この欄の内容や、支援計画の各支援項目に書いた共生施策を踏まえた取組を後から変更した場合は、支援計画の変更に係る届出が必要です(Q&A Q32、Q33)。支援計画書全体の書き方は公式案内をご確認ください。
協力要請に応じないとどうなるか
協力確認書を出した後、市区町村や都道府県から実際に協力を求められることがあります。想定されている要請は、アンケート調査やヒアリングへの協力、行政サービス・ゴミ出しのルール・防災訓練・日本語教室などの情報を外国人に周知することなどで、原則として文書で届きます。
出入国在留管理庁は、次のような要請は本件の取組で想定していないとしています。
- 条例などの根拠がないのに、地域イベントへの参加を強制したり、拠出金を求めたりするもの
- 地方公共団体以外の機関への協力を求めるもの
- 共生施策や特定技能外国人の支援と明らかに関係がないもの
- 社会通念上、受入れ機関や外国人に過大な負担が生じるもの
正当な要請に応じない場合、地方出入国在留管理局が事情を確認したうえで、指導・助言を行うことがあります。さらに、協力が可能なのに行わず、外国人に必要な支援が確保されず、支援計画の適正な実施に重大な支障が生じていると認められる場合は、改善命令等の対象になり得ます(Q&A Q26)。改善命令に違反すると、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されます(入管法71条の3)。
よくある質問
特定技能の協力確認書は誰が作成・提出しますか?
作成するのは特定技能所属機関で、行政書士が作成することもできます。提出は、所属機関の役員・職員のほか、弁護士、行政書士、登録支援機関の職員などの代理人が行うこともできます(Q&A Q08)。市区町村から求められた場合を除き、代理人の委任状は不要です。福岡市のオンラインフォームでは、代理人が提出する場合に提出者の氏名・所属・連絡先と、所属機関との関係を入力します。
協力確認書はいつから必要になったのですか?
2025年4月1日からです。同日以降に初めて特定技能外国人を受け入れる場合は、雇用契約の締結後、在留資格の申請前に提出します。それ以前から受け入れている場合は、同日以降に初めて在留期間更新や在留資格変更を申請する前に提出します。
協力確認書以外に市区町村へ出す書類はありますか?
ありません(Q&A Q21)。市区町村に提出するのは協力確認書だけで、雇用契約書や在留カードの写しなどを添付する必要はありません。
協力確認書を出したことを入管にどう示せばよいですか?
在留資格の申請書(所属機関作成用)の3(32)欄に、協力確認書を提出した年月日と提出先の市区町村長を記載します。写しや受理証明の添付は不要です。オンライン申請については、出入国在留管理庁のQ&A(Q34)が、システム改修までの当面の間、フリー欄に「(32)有」と提出日・提出先を入力する方法を案内しています。現在のオンライン申請の入力画面がこの案内のとおりかは、申請時に確認してください(公式資料では未確認)。
協力確認書は「地域の窓口を1つ持つ」手続と捉える
協力確認書は、記載項目が少なく、オンラインなら数分で終わる手続です。そのため形式的な書類と受け取られがちですが、制度の設計を見ると、市区町村と受入れ企業の間に連絡経路を1本通すことが目的になっています。市区町村からの防災情報や日本語教室の案内が確実に外国人に届くかどうかは、協力確認書に書いた担当者が、受け取った情報を社内でどう回すかにかかっています。
実務の判断軸としては、協力確認書の担当者を、支援計画の共生施策欄を更新する担当者と同じ人にしておくことをお勧めします。事業所の新設や社員寮の移転があったとき、協力確認書の再提出、支援計画の変更届出、雇用契約の変更届出の3つが同時に発生するためです。福岡県内で複数の市町村にまたがって受け入れている会社であれば、市町村ごとの提出日と提出方法を一覧にしておくと、更新申請のたびに申請書の3(32)欄を迷わず書けます。福岡での特定技能の受入れ全体の流れは福岡で外国人を採用したい企業へ|就労ビザ・特定技能の相談先と手続きの流れ、運用要領の読み方は特定技能の運用要領とは?で解説しています。個別の事情で提出先の判断が変わることもあるため、迷うときは申請前に確認してください。
根拠資料
- 特定技能制度における地域の共生施策に関する連携(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度における地域の共生施策に関する連携に係るQ&A(出入国在留管理庁)
- 協力確認書 記載例(直接雇用の場合)(出入国在留管理庁)
- 特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令 第2条(e-Gov法令検索)
- 特定技能所属機関協力確認書の提出について(福岡市・2025年7月17日更新)
- 「特定技能」の在留資格を持つ外国人受入れ機関の皆様へ(協力確認書の提出について)(北九州市・2025年4月1日更新)
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