特定技能「ビルクリーニング」で外国人を受け入れられるのは、建築物衛生法に基づく「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けた営業所です。従事できる業務は多数の人が利用する建築物の内部の清掃で、ホテルの客室清掃やベッドメイクも、2023年10月17日のビルクリーニング分野特定技能協議会の決定で対象に含まれると整理されています。ただし、ホテル自身が客室清掃要員として雇う場合は、この分野ではなく宿泊分野の要件で考えることになり、そこに線引きの難しさがあります。
ビルクリーニング分野で従事できる業務
出入国在留管理庁の分野ページ(2026年9月4日現在)によると、特定技能1号の業務は「建築物内部の清掃」です。2号はこれに加えて、複数の作業員を指導しながら清掃に従事し、現場を管理する業務と、作業計画の作成・進行管理などのマネジメント業務を行います。
業務の範囲をもう一段具体的に定めているのが、厚生労働省が事務局を務めるビルクリーニング分野特定技能協議会の決定第1号「ビルクリーニング分野特定技能外国人が従事できる業務について」(2023年10月17日)です。この文書が、上位の解説記事ではほとんど引用されていない一方、実務の判断では最も頼りになる資料です。
対象になる建築物と、ならない建築物
ここでいう建築物とは、建築基準法2条1号の「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」を指し、建築設備を含みます。オフィスビル、商業施設、病院、学校、ホテルなど、多数の人が利用する建築物が想定されています。
住宅は除かれます。協議会決定は、住宅(アパートなどの共同住宅を含む)は個人の責任で維持管理すべきものとして建築物衛生法の特定建築物から除かれていると説明し、ハウスクリーニングはビルクリーニングとは別のものと整理しています。家事代行や個人宅の清掃サービスでは、この分野の外国人は受け入れられません。
関連業務として認められるもの
協議会決定は、主たる業務(建築物内部の清掃)と一緒に行える関連業務として、次のものを挙げています。
- 清掃用機械器具の維持管理
- 犬走りやアプローチなど、建築物と構造上一体とみなせる部分の清掃
- 資機材倉庫の整備、建物外部の洗浄(高所の窓ガラス清掃を除く)
- 建築物内外の植栽管理、資機材の運搬
1つの現場で主たる業務と関連業務のすべてを行う必要はありません。ただし、労働時間のすべてを関連業務に充てることは認められません。
従事できない業務
建築物衛生法で別の登録事業として整理されている業務は対象外です。具体的には、空気環境測定、ダクト清掃、飲料水の水質検査、貯水槽清掃、排水管清掃、ねずみ・昆虫等の防除です。機器や設備の内部の清掃も含まれません。総合ビルメンテナンス会社でこれらの部門を持っている場合、特定技能外国人を配置できるのは清掃部門に限られます。
ベッドメイク・客室清掃は対象になるか
検索で最も多い質問が、ベッドメイクができるかどうかです。協議会決定は、ホテルなどの客室清掃作業も対象に含まれるとし、床・浴室・トイレ・洗面台などの清掃からアメニティの補充、ベッドメイクまでを、衛生的で美観の整った客室を「商品として納品する」ための一連の業務として位置づけています。ベッドメイク作業を関連業務として行うことも差し支えないとされています。
整理すると、清掃会社がホテルから客室清掃を請け負い、その現場に特定技能外国人を配置する場合、客室清掃とベッドメイクはビルクリーニング分野の業務として行えます。インターネット上には「ベッドメイクは不可」とする古い記述も残っていますが、2023年10月の協議会決定より前の情報である可能性があります。
ホテルが自ら雇う場合は宿泊分野の問題になる
問題は、ホテルや旅館が自社で外国人を雇って客室清掃をさせたい場合です。ビルクリーニング分野の受入れ機関になるには、雇用する営業所が建築物清掃業などの登録を受けている必要があります。この登録は、建築物の清掃を事業として営む者の営業所を対象とするもので、通常のホテル運営会社は持っていません。
ホテルが直接雇う場合に使うのは宿泊分野です。宿泊分野の1号の業務は「フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供」で、受入れ機関は旅館業法の旅館・ホテル営業の許可を持っている必要があります。客室清掃やベッドメイクを主な業務として宿泊分野で受け入れることは、この業務区分とかみ合いません。宿泊分野の要件は特定技能「宿泊」とは?受入れ要件・できる業務・試験で解説しています。
| 項目 | ビルクリーニング分野 | 宿泊分野 |
|---|---|---|
| 雇用する者 | 建築物清掃業・建築物環境衛生総合管理業の登録営業所 | 旅館業法の旅館・ホテル営業の許可を持つ者 |
| 主たる業務 | 建築物内部の清掃(客室清掃を含む) | フロント、企画・広報、接客、レストランサービス |
| 客室清掃・ベッドメイク | 主たる業務の一部として可 | 主な業務にはできない |
| 所管省庁・協議会 | 厚生労働省・ビルクリーニング分野特定技能協議会 | 国土交通省・宿泊分野特定技能協議会 |
ホテルの客室清掃で外国人の力を借りたい場合、ホテル自身が雇うのか、登録を持つ清掃会社に委託するのかで、使う分野が変わります。筆者は、客室清掃の人手が主な課題であるホテルなら、登録を持つ清掃会社への委託を前提に考えるほうが、制度の設計と合っていると考えます。個別の業務の配分によって判断が変わることがあるため、申請前に業務内容を具体的に書き出して確認してください。
受入れ機関の要件|建築物清掃業などの登録
登録の種類と単位
受入れ機関は、建築物衛生法12条の2に基づき都道府県知事(保健所を設置する市などでは市長)の登録を受けた「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の営業所で、外国人を雇用する必要があります。登録は法人単位ではなく営業所ごとに行われ、有効期間は6年です。
登録には、機械器具などの物的要件、監督者などの人的要件、作業の実施方法や記録の保管などのその他の要件があります。建築物清掃業では、清掃作業監督者(建築物環境衛生管理技術者の免状を持つ人や、所定の講習を修了した人など)を営業所ごとに置き、従事者に研修を受けさせることが求められます。同じ人が複数の営業所の監督者を兼ねることはできません。
登録は任意でも、特定技能では必須
愛知県の案内が説明するとおり、建築物清掃業の登録は、登録を受けていない営業所が「登録を受けた」と表示できないという効果を持つだけで、登録なしに清掃業を営むこと自体は制限されていません。そのため、中小の清掃会社には登録を持たない会社が少なくありません。
特定技能で外国人を受け入れる場合は、この任意の登録が受入れの前提条件に変わります。登録のない清掃会社は、先に都道府県の登録を取ってからでなければ申請に進めません。監督者の資格取得や講習の受講に時間がかかる場合もあるため、採用計画の最初の段階で登録の有無を確認する必要があります。
協議会への加入と実務経験証明書
受入れ機関は、ビルクリーニング分野特定技能協議会の構成員になり、協議会の措置に協力する必要があります。加入は在留諸申請の前に済ませておくものです。協議会の仕組みと分野ごとの窓口は特定技能の協議会とは?加入のタイミング・分野ごとの窓口にまとめています。
分野ページには、受入れ機関の基準として、2号の要件になる実務経験を証明する書類を交付することも挙げられています。1号の外国人が現場で指導的な役割を担い始めたら、その経験を記録しておくと、後の2号への移行が円滑になります。
雇用形態は直接雇用に限られ、派遣での受入れはできません。
外国人本人の要件|試験と日本語
1号評価試験
技能は、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験の合格で証明します。実施機関の公益社団法人全国ビルメンテナンス協会によると、試験はピアソンVUEのCBT方式で、日本を含む18か国で実施されています。
| 区分 | 問題数・配点 | 時間 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 学科試験 | 20問・40点 | 20分 | 60%以上 |
| 実技試験 | 30問・60点 | 30分 | 60%以上 |
受験手数料は国内4,400円(税込)、国外30米ドルです。受験できるのは試験日に17歳以上(インドネシア国籍の人は18歳以上)の人で、国内で受験する場合は在留資格を持っている必要があります。
日本語は、国際交流基金日本語基礎テストでA2.2相当以上、または日本語能力試験N4以上が必要です。ビルクリーニングの技能実習2号を良好に修了した人は、技能試験と日本語試験の両方が免除されます。技能実習からの移行の判断は技能実習から特定技能への移行は可能?で扱っています。
2号の要件
2号の技能は、ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験の合格、または技能検定1級(ビルクリーニング)の合格で証明します。加えて、特定建築物または登録営業所で、複数の作業員を指導しながら清掃に従事し、現場を管理する者としての実務経験が必要です。全国ビルメンテナンス協会によると、2号評価試験の受験資格はこの実務経験が2年以上あることで、受験手数料は16,500円(税込)です。試験は学科(50問・60分)と実技(10問・90分)で、それぞれ100点中65点以上が合格です。
2号の日本語について、出入国在留管理庁は2027年4月以降「日本語教育の参照枠」B1相当以上を求め、取扱いは別途案内するとしています。1号と2号の違い全般は特定技能1号と2号の違いとは?で比較しています。
受入れ見込数
ビルクリーニング分野の受入れ見込数(上限)は、2029年3月末までで32,200人です。受入れ機関ごとの人数枠はありません。
よくある質問
ビルクリーニングの特定技能でベッドメイキングはできますか?
できます。2023年10月17日のビルクリーニング分野特定技能協議会決定は、ホテルの客室清掃を対象業務に含め、ベッドメイクも客室を納品するための一連の作業として位置づけています。ただし、雇用主は建築物清掃業などの登録を受けた営業所であることが前提です。
ビルクリーニングの特定技能の仕事内容は何ですか?
オフィスビル、商業施設、病院、ホテルなど、多数の人が利用する建築物の内部の清掃です。清掃機械の手入れや資機材の運搬などの関連業務も行えますが、関連業務だけに従事させることはできません。住宅の清掃は対象外です。
ビルクリーニングの特定技能試験の合格率はどのくらいですか?
合格率は実施機関が試験回ごとに公表する資料で確認できます。本記事では、回によって変動する数値の掲載は控えます(公式資料では未確認)。合格基準は学科・実技ともに60%以上です。
ビルクリーニングの特定技能2号になるにはどうすればいいですか?
2号評価試験(または技能検定1級)に合格し、複数の作業員を指導して現場を管理した実務経験を持つことが必要です。評価試験の受験には、この実務経験が2年以上必要です。
ビルクリーニングの特定技能の給料はいくらですか?
制度上の金額の定めはなく、同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬であることが求められます。清掃の現場では時給制のパート従業員と比較されることが多いため、比較対象の選び方と、夜間・早朝の割増賃金の扱いを雇用条件書で明確にしておく必要があります。考え方は特定技能外国人の給料はどう決める?で解説しています。
ビルクリーニングの特定技能の管轄省庁はどこですか?
厚生労働省です。分野別の協議会(ビルクリーニング分野特定技能協議会)も厚生労働省が設置しています。
採用の前に、営業所の登録と現場の業務を確かめる
ビルクリーニング分野の受入れは、外国人本人の試験よりも、受け入れる側の条件で止まることが多い分野です。確認の順番は、配属する営業所が建築物清掃業などの登録を持っているか、配置する現場が住宅を除く建築物か、そこでの業務が内部清掃を主にしているか、の3段階になります。
ホテルの客室清掃は、清掃会社が請け負う形であれば対象になります。ホテルが自社で雇うのであれば宿泊分野の問題になり、客室清掃を主な業務にすることはできません。人手が足りないのがどの業務で、その業務を誰が請け負っているのか。この2点を先に整理しておくと、どの分野を使うか、あるいは使えないのかが見えてきます。分野の全体像は特定技能の分野・職種一覧で確認できます。
根拠資料
- ビルクリーニング分野(出入国在留管理庁・2026年9月4日現在)
- ビルクリーニング分野特定技能外国人が従事できる業務について(ビルクリーニング分野特定技能協議会決定第1号・2023年10月17日)
- ビルクリーニング分野における新たな外国人材の受入れ(厚生労働省)
- 宿泊分野(出入国在留管理庁)
- ビルクリーニング特定技能1号評価試験(全国ビルメンテナンス協会)
- ビルクリーニング特定技能2号評価試験(全国ビルメンテナンス協会)
- 特定技能・育成就労(全国ビルメンテナンス協会)
- 建築物登録業について(愛知県)
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