ミャンマーから新たに特定技能人材を呼ぶ場合、日本の入管手続とは別に、ミャンマー政府が認定した送出機関を通じた紹介、ミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP)による求人票の承認、本人の海外労働身分証明カード(OWIC)の取得が必要です。一方、日本にすでに住んでいるミャンマー人を採用する場合は、送出機関を通す必要はなく、企業が直接採用して在留資格変更を申請できます。海外からの採用は、ミャンマー側の制度変更と国内情勢の影響を受けやすく、入社日が読みにくいことを前提に計画を立てる必要があります。
ミャンマー特定技能の現状|在留者は4万人超で国籍別3位
出入国在留管理庁の公表資料によると、2025年12月末の特定技能在留外国人390,296人のうち、ミャンマー国籍は44,523人(11.4%)でした。ベトナム、インドネシアに次ぐ3番目で、2024年12月末の27,348人から1年で約1.6倍に増えています。
日本とミャンマーは、特定技能に関する協力覚書(MOC)を2019年3月28日にネーピードーで署名しました。MOCは、悪質な仲介事業者の排除と適正な送出し・受入れを目的とする2国間の取決めで、2024年3月29日に継続期間を5年間更新する文書が署名・交換されています。
人数が増えている一方で、ミャンマーからの新規入国には、本国の制度改革や情勢に起因する遅れが繰り返し生じてきました。この点は後半で整理します。
ミャンマーから呼ぶ場合の手続きの流れ
出入国在留管理庁の「ミャンマー国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ」は、ミャンマーから新たに受け入れる場合の手続を次の順で示しています。
- 受入れ企業が求人票を作成し、ミャンマー政府の認定を受けた現地の送出機関に提出する
- 送出機関が求人票をMOLIPに提出し、許可・承認を得る
- 送出機関が承認済みの求人票をもとに人材を募集し、企業は紹介を受けて雇用契約を結ぶ
- 企業が地方出入国在留管理官署に在留資格認定証明書交付申請を行う
- 本人がMOLIPにOWICを申請する
- 本人が在ミャンマー日本国大使館に在留資格認定証明書を提示して査証を申請する
- 本人がミャンマー出国時にOWICを提示して出国し、上陸許可を受けて「特定技能」の在留資格が付与される
同じ資料のフローチャートでは、求人票はまず在日ミャンマー大使館に提出され、ミャンマー側の委員会と労働省での確認・承認を経て、承認通知が送出機関に届く流れになっています。求人票の内容確認は日本国内の大使館から始まる、という点は押さえておいてください。
出入国在留管理庁は、ミャンマー側の手続を行ったことを証明する書類を、在留諸申請で提出する必要はないとしています。ただし、入管の審査で問われないことと、ミャンマー側の手続を省略できることは別の話です。OWICがなければ、在留資格認定証明書と査証があっても、本人はミャンマーを正規に出国できません。
認定送出機関の利用はミャンマーからの採用では必須
ここでいう認定送出機関とは、ミャンマー政府から海外への労働者の送出しを認められた現地の事業者を指します。出入国在留管理庁の資料は、ミャンマーの制度上、ミャンマーから新たに受け入れる場合は、認定を受けた現地の送出機関を通じて人材の紹介や雇用契約の締結を求められる、と説明しています。インドネシアのように「送出機関の利用は任意」という整理にはなっていません。
認定送出機関のリストは、ミャンマー政府から提供されたものが出入国在留管理庁の「ミャンマーに関する情報」ページに掲載されており、無効とされた機関の一覧も別に公開されています。送出機関と契約する前に、両方のリストで名称を照合してください。技能実習で取引のある送出機関であっても、無効リストに載っていないかは改めて確認が必要です。
送出機関の役割の範囲にも注意が必要です。出入国在留管理庁のフローチャートは、認定送出機関による求職者の人選はあっせんに当たるため、そうした行為を行うなら日本国内の職業紹介事業者としての許可を得る必要がある、と注記しています。送出機関が候補者を選んで日本の企業に推薦する形をとる場合は、日本側で職業安定法上の許可を持つ事業者が関与しているかを確認してください。
OWIC(海外労働身分証明カード)とは
OWIC(Overseas Worker Identification Card)とは、ミャンマー国民が海外で働く際に、MOLIPが発行する身分証明カードを指します。現地では「スマートカード」と呼ばれることもあります。出入国在留管理庁の資料は、特定技能外国人として来日予定のミャンマー国籍の方は、ミャンマーの制度上、海外で就労する場合にはMOLIPにOWICの申請を行う必要があるとしています。
OWICの発給は、たびたび遅れてきました。出入国在留管理庁は、ミャンマー労働省による送出し制度の改革と、2025年3月に起きたミャンマー中部の地震の影響でOWICの発給が遅れていることを理由に、2025年4月から、在ミャンマー日本国大使館で有効な査証を取得しているミャンマー国籍の方について、就労に関する在留資格認定証明書(それに係る家族滞在を含む)の有効期間を3か月から6か月に延長しています。延長は「当面の間」とされ、2026年9月29日時点で出入国在留管理庁のページは掲載が続いています。
この特例の条件は、査証を取得していることです。在留資格認定証明書の交付から3か月以内に査証を取得できなければ、特例の対象になりません。査証申請そのものが遅れた場合に備え、認定証明書の交付日と査証の取得日は企業側でも管理しておく必要があります。
日本に住んでいるミャンマー人を採用する場合
留学生や技能実習修了者など、日本に在留しているミャンマー人を特定技能で採用する場合の流れは、ずっと簡素です。
- 受入れ企業と本人が特定技能の雇用契約を結ぶ(現地の送出機関を通す必要はなく、企業が直接採用活動を行う)
- 本人が在日本ミャンマー大使館でパスポートの申請(更新)を行う
- 本人が地方出入国在留管理官署に「特定技能」への在留資格変更許可申請を行う
出入国在留管理庁の資料は、国内在住者について、現地の送出機関を通じて雇用契約を結ぶ必要はないと明記しています。ミャンマーから呼ぶ場合と比べて、求人票の承認もOWICも流れに入っていません。
ただし、2のパスポートの手続は軽く見ないほうがよい点です。在留資格変更許可申請には有効な旅券が必要で、有効期限が迫っている場合は、大使館での更新が終わるまで申請の準備が止まります。旅券の更新にどの程度の期間がかかるかは時期によって変わるため(公式資料では未確認)とし、採用を決めた段階で本人に旅券の有効期限を確認してもらってください。
本国情勢を理由とする「特定活動」(いわゆる緊急避難措置)で在留しているミャンマー人も、特定技能の要件を満たせば、在留資格変更の対象になります。緊急避難措置の在留資格と就労の範囲はミャンマー人の特定活動(緊急避難措置)|就労可否・更新・資格変更で扱います。
ミャンマー情勢が採用に与える影響|企業が見ておくべき3つのリスク
ミャンマーからの採用で、企業が計画に織り込むべきリスクは次の3つです。
1つ目は、ミャンマー側の制度変更による手続の停止や遅延です。OWICの発給遅延は、出入国在留管理庁が在留資格認定証明書の有効期間を延長する理由になったほどで、日本側で書類がそろっても出国の段階で止まることがあります。出国前に労働当局の許可を別途求める運用が現地で報じられるなど、手続の細部は短い間隔で変わっています。2026年9月29日時点のミャンマー側の最新の運用は(公式資料では未確認)で、送出機関から最新の手順を書面で受け取ることを勧めます。
2つ目は、兵役制度の影響です。ミャンマーでは2024年2月に人民兵役法の施行が発表され、若年層の男性を中心に海外就労の手続に影響が出たと報じられています。男性の海外就労申請の受付停止や再開といった運用の変化も報じられていますが、現時点の扱いは現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。採用候補者が兵役の対象年齢にあたる場合、手続の途中で出国できなくなる可能性を排除できません。
3つ目は、地震や治安情勢による物理的な遅れです。査証を申請する在ミャンマー日本国大使館や、健康診断・書類取得のための移動が、情勢によって制約を受けることがあります。
こうしたリスクを踏まえると、ミャンマーからの新規採用では、入社日を固定して逆算するより、入社日に幅を持たせた計画にするほうが現実的です。同じ時期に国内在住のミャンマー人の採用も並行して検討する、という選択肢もあります。
タイ経由の入国(タイ在住ミャンマー人の採用)
タイで働いているミャンマー人を、タイから日本の特定技能として呼ぶ「タイ経由」のルートが話題になることがあります。日本の入管手続としては、在留資格認定証明書を取得した後、本人が居住している国の日本大使館で査証を申請する流れになります。タイに正規に在留しているミャンマー人であれば、在タイ日本国大使館での査証申請が考えられます。
一方で、タイ在住者の場合にもミャンマー側の手続(認定送出機関の関与、MOLIPの承認、OWIC)が必要かどうかについて、出入国在留管理庁の資料は手続を「ミャンマーから新たに受け入れる場合」と「日本に在留する方を受け入れる場合」の2つしか示していません。タイ経由の場合の扱いは、公表資料で確認できないため現時点で公式資料では確定していません。申請前に出入国在留管理庁または所轄官庁の公式案内をご確認ください。タイでの在留資格が不安定な人の場合、査証申請の段階で問題になる可能性もあります。このルートを検討するときは、駐日ミャンマー大使館と在タイ日本国大使館に事前に確認してください。
日本側の要件は国籍で変わらない
ミャンマー人であっても、特定技能の要件は他の国籍と同じです。本人は分野別の技能試験と日本語試験に合格するか、技能実習2号を良好に修了している必要があります。ミャンマーは介護、農業、外食業など多くの分野で技能試験の国外実施国に含まれています。
受入れ企業には、雇用契約の基準、日本人と同等以上の報酬、1号特定技能外国人支援計画の作成と実施、分野別協議会への加入などが求められます。制度の全体像は特定技能とは?1号・2号の違い・対象分野・受入れ手続きを参照してください。送出機関に支払う手数料のうち、本人に負担させてはいけない費用の線引きは特定技能の費用で本人負担にできないもの|支援費用・保証金・送出手数料の線引きで整理します。
よくある質問
ミャンマーの特定技能人材を派遣で受け入れることはできますか?
国籍にかかわらず、特定技能で派遣形態が認められているのは農業と漁業の2分野だけです。それ以外の分野では、受入れ企業が直接雇用する必要があります。詳しくは特定技能で派遣はできる?農業・漁業に限られる理由で解説しています。
ミャンマーから特定技能で出国することは禁止されていますか?
日本側の制度で、ミャンマー国籍者の特定技能での入国は禁止されていません。ミャンマー側でも、認定送出機関を通じた手続とOWICの取得を経れば出国できる仕組みです。ただし、OWICの発給遅延や兵役制度に関連する運用の変化が報じられており、個々の候補者が予定どおり出国できるかは、送出機関を通じて確認する必要があります。
ミャンマーの特定技能の送り出し機関はどこですか?
ミャンマー政府が認定した送出機関の一覧が、出入国在留管理庁の「ミャンマーに関する情報」ページに掲載されています。無効とされた機関の一覧も公開されているため、契約前に両方で確認してください。
ミャンマーの特定技能の在留期間は?
国籍による違いはありません。特定技能1号は通算で上限5年、特定技能2号には上限がありません。通算5年の数え方は特定技能1号の5年後はどうなる?で解説しています。
ミャンマー人材の採用で先に決めておくこと
ミャンマー人材の特定技能採用は、同じ国籍でも「ミャンマーから呼ぶ」か「日本にいる人を採る」かで、手続の重さがまったく違います。前者は送出機関、MOLIP、OWICという3つの関門があり、そのいずれもが本国の制度変更と情勢の影響を受けます。後者は、パスポートの更新さえ済めば、日本国内の在留資格変更で完結します。
筆者は、ミャンマーからの新規採用を検討する企業には、候補者ごとに「OWICの申請状況」「在留資格認定証明書の交付日」「査証の取得日」の3つの日付を管理することを勧めます。どこで止まっているかが分かれば、延長特例の対象になるか、別の候補者に切り替えるべきかを判断できます。ミャンマー側の運用は短期間で変わるため、個別の事情で判断が変わります。採用ルートを決める前に、送出機関と専門家に最新の状況を確認してください。
根拠資料
- ミャンマーに関する情報(出入国在留管理庁)
- ミャンマー国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ(出入国在留管理庁)
- ミャンマー特定技能外国人に係る手続の流れについて(フローチャート)(出入国在留管理庁)
- ミャンマー国籍の方の在留資格認定証明書の有効期間の延長について(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度運用状況(令和7年12月末現在)(出入国在留管理庁)
- 特定技能に関する二国間の協力覚書(出入国在留管理庁)
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