インドネシア人を特定技能で雇うときは、在留資格認定証明書や在留資格変更といった日本側の手続に加えて、インドネシア政府が求める手続を並行して進めます。企業側が関わるのは求人・求職システム「IPKOL」への登録と、雇用契約書の提出です。本人側はSISKOP2MIへの登録と移住労働者証(E-PMI)の取得が必要で、この本人登録は、すでに日本に住んでいる技能実習修了者や留学生を採用する場合にも省略できません。一方で、インドネシアの職業紹介事業者(P3MI)の利用は任意で、送出機関を通さずに直接採用する方法が制度上用意されています。
インドネシアの特定技能人材の状況と2国間の取決め
出入国在留管理庁の公表資料によると、2025年12月末の特定技能在留外国人は390,296人で、このうちインドネシア国籍は86,955人(22.3%)でした。ベトナム(164,352人、42.1%)に次ぐ2番目の多さで、2024年12月末の53,538人から1年で3万人以上増えています。
日本とインドネシアは、特定技能について協力覚書(MOC)を2019年6月25日に署名しています。MOCは悪質な仲介事業者の排除と、適正な人材の送出し・受入れを目的とした2国間の取決めです。出入国在留管理庁の「インドネシアに関する情報」ページによれば、MOCは2024年6月25日から2年間更新された後、2026年6月23日の口上書交換で、2026年6月25日から6か月間更新されました。今回の更新期間が6か月と短い点は、2026年12月以降の取決めの内容に変更が入る可能性を示しています。更新後の内容は(公式資料では未確認)で、採用計画が2027年にまたがる企業は、同ページの更新を確認しておく必要があります。
インドネシア人を特定技能で雇う手続きは「日本側」と「インドネシア側」の二本立て
ここでいうインドネシア側の手続とは、インドネシア政府が自国民の海外就労を把握し保護するために求めている手続を指します。日本の入管法上の要件ではありません。出入国在留管理庁も、インドネシア側の手続を行ったことを証明する書類を、在留諸申請で提出する必要はないと明記しています。
ただし、入管の申請に書類が不要だからといって、インドネシア側の手続を飛ばせるわけではありません。本人がE-PMIを持っていないと、インドネシアからの出国や、次に帰国した後の再出国の場面で問題が生じます。入管の審査と、インドネシア政府の出国管理は別の関門だと考えてください。
登場するシステムと機関を、機能の順に整理すると次のとおりです。
| 名称 | 機能 | 手続をする人 |
|---|---|---|
| IPKOL(労働市場情報システム) | インドネシア政府が管理する求人・求職のオンラインシステム | 受入れ企業 |
| SISKOP2MI(海外労働者管理システム) | 海外で働くインドネシア人の登録システム | 本人 |
| E-PMI(移住労働者証) | SISKOP2MIでの手続完了後に発行される電子の労働者証 | 本人が取得 |
| P3MI | インドネシア政府の許可を受けた職業紹介事業者 | 利用は任意 |
IPKOLとSISKOP2MIの登録手数料について、出入国在留管理庁のQ&Aは、インドネシア当局によれば手数料はかからないと説明しています。
インドネシアから呼ぶ場合|直接採用の流れ
P3MIを使わずに、企業がインドネシア在住者を直接採用する流れは次のとおりです。
- 受入れ企業がIPKOLに登録し、求人を出す(登録はオンライン、入力は英語かインドネシア語)
- 求職者と面接し、雇用契約を結ぶ。締結した雇用契約書はIPKOLに電子データで登録する
- 企業が地方出入国在留管理官署に在留資格認定証明書交付申請を行う
- 交付された在留資格認定証明書の原本を本人に郵送する
- 本人がSISKOP2MIにオンライン登録し、インドネシア在外労働者保護庁のID番号を取得する
- 本人が在インドネシア日本国大使館・総領事館に、在留資格認定証明書とID番号の写しを提示して査証を申請する
- 本人が取得した査証をSISKOP2MIに登録し、出国前オリエンテーションなどを終えるとE-PMIが発行される
- 来日し、上陸許可を受けて特定技能の在留資格が付与される
出入国在留管理庁の資料は、IPKOLへの登録について、インドネシア側がこれを「強く希望している」と表現しています。法的な義務の書き方ではありませんが、インドネシア側はIPKOLを悪質ブローカー対策の中心に据えており、求職者もIPKOLで求人を探すよう広報されています。直接採用を選ぶなら、IPKOLに求人を出すことが前提になると考えておくのが現実的です。
注意したいのは、5の本人登録が査証申請の前に必要な点です。在留資格認定証明書が交付されても、本人がSISKOP2MIのID番号を取得していなければ査証申請に進めません。入社日から逆算するときは、認定証明書の審査期間に加えて、本人の登録とE-PMI取得の期間も見込んでおきます。
インドネシアから呼ぶ場合|P3MI(送出機関)を使う流れ
P3MIを利用する場合は、日本の職業紹介事業者が間に入ります。流れの前半が直接採用と異なります。
- 日本の職業紹介事業者(職業安定法に基づく許可を受けた事業者)とP3MIが、職業紹介の提携契約を結ぶ
- 日本の職業紹介事業者が、求人票(Job Order)、P3MIとの提携契約書、雇用契約書(暫定版)などを駐日インドネシア大使館に提出し、確認を受ける(手数料無料、3日程度)
- P3MIと日本の職業紹介事業者を通じて紹介を受けた求職者と、受入れ企業が面接し、雇用契約を結ぶ
- 雇用契約書の原本を駐日インドネシア大使館に提出し、確認を受ける(持参または郵送)
- 以降は直接採用と同じく、在留資格認定証明書の申請、本人のSISKOP2MI登録、査証申請、E-PMI取得、入国と進む
出入国在留管理庁の資料は、面接について重要な線を引いています。面接は必ず受入れ機関が行う必要があり、P3MIの同席は可能ですが、P3MIが独自の基準で申請人をどの受入れ機関と面接させるかを選考したり、受入れ機関に申請人の情報を提供したりすることはできない、とされています。P3MIが候補者を絞り込んで企業に推薦する形の提案を受けたときは、この記載と照らし合わせて確認してください。
なお、P3MIは技能実習生の送出しに関わる「認定送出機関」とは別の枠組みです。技能実習でつきあいのある送出機関が、そのまま特定技能のP3MIとして動けるとは限りません。P3MIの名称と連絡先は、インドネシア労働省が公表する一覧で確認できます。
日本に住んでいるインドネシア人を採用する場合
技能実習修了者や留学生など、日本に中長期在留しているインドネシア人を特定技能に切り替えて採用する場合の流れは、次のとおりです。
- 受入れ企業と本人が特定技能の雇用契約を結ぶ
- 雇用契約書の原本を駐日インドネシア大使館に提出し、確認を受ける
- 本人がSISKOP2MIにオンライン登録し、E-PMIの発行を受ける
- 本人が駐日インドネシア大使館で海外労働者登録手続を行う(登録を終えた人には推薦状が発行される)
- 本人が地方出入国在留管理官署に「特定技能」への在留資格変更許可申請を行う
国内在住者でも、SISKOP2MIへの登録とE-PMIの取得は必要です。出入国在留管理庁のQ&Aは、インドネシアから来日する場合でも、日本に在留している場合でも、特定技能外国人として働くにはSISKOP2MIによりE-PMIの発行を受けなければならないとしています。
一方、IPKOLへの求人登録は、国内在住者の場合は流れに組み込まれていません。Q&Aは、技能実習2号または3号を良好に修了した人が、実習先にそのまま特定技能外国人として雇用される場合には、受入れ機関がIPKOLに登録することを必ずしも求めていないと説明しています。
整理すると、国内在住者の採用で企業がやることは、雇用契約書を大使館に出すことと、本人にSISKOP2MI登録と大使館手続を案内することです。大使館の手続は郵送でも受け付けているとされているため、福岡や九州の企業でも東京に出向かずに進められる可能性があります。詳細は駐日インドネシア大使館(東京都品川区東五反田5-2-9、03-3441-4201)に確認してください。
技能実習から特定技能への移行で、試験が免除される「良好に修了」の判断は技能実習から特定技能への移行は可能?で解説しています。
日本側の要件は国籍で変わらない
インドネシア人だからといって、日本側の特定技能の要件が変わるわけではありません。本人は分野ごとの技能試験と日本語試験(国際交流基金日本語基礎テストのA2相当以上または日本語能力試験N4以上)に合格するか、技能実習2号を良好に修了している必要があります。インドネシアは多くの分野で技能試験の国外実施国に含まれており、現地で合格者を探しやすい国の一つです。分野別の試験については特定技能試験とは?分野別の試験一覧と合格から在留資格申請までの流れで扱います。
受入れ企業側には、雇用契約の基準、日本人と同等以上の報酬、1号特定技能外国人支援計画の作成と実施、分野別協議会への加入などが求められます。制度の全体像は特定技能とは?1号・2号の違い・対象分野・受入れ手続き、支援を外部に委託する場合は登録支援機関とは?選び方・費用相場・自社支援との違いを参照してください。
2027年1月からは、インドネシアから中長期在留の目的で入国する人に、入国前結核スクリーニングが適用される予定です。厚生労働省の公表によれば、インドネシアでの健診受付開始は2026年11月2日、結核非発病証明書の提出義務付けは2027年1月4日(いずれも予定)で、在留資格認定証明書交付申請時または査証申請時に証明書の提出が求められます。2027年に入国する人の採用では、この健診の期間も日程に入れておく必要があります。
インドネシア人の特定技能にかかる費用
費用は、大きく次の4つに分かれます。
- インドネシア側の手続:IPKOL・SISKOP2MIの登録と大使館の確認手続は、公表資料上いずれも無料
- 紹介手数料:P3MIや日本の職業紹介事業者を使う場合の手数料(契約で決まる)
- 日本側の手続:在留資格の申請手数料、書類作成を専門家に依頼する場合の報酬
- 受入れ後の費用:渡航費、住居の準備、支援の委託費など
2026年10月1日から、在留資格変更許可と在留期間更新許可の手数料が改定され、許可される在留期間に応じた金額になります。国内在住者を特定技能に切り替える場合は、変更許可の手数料がかかります。金額は在留資格の変更・更新手数料はいくらになる?で確認してください。
費用で押さえるべきなのは、特定技能では本人に負担させてはいけない費用があることです。支援にかかる費用を本人に負担させることは認められず、保証金を取ったり違約金を定めたりする契約も禁止されています。本人がP3MIに支払った手数料の内容と金額も、在留資格の申請で確認の対象になります。本人負担の線引きは特定技能の費用で本人負担にできないもの|支援費用・保証金・送出手数料の線引きで整理します。
よくある質問
インドネシアの特定技能労働者は送り出し機関を通さなくていい?
通さなくてかまいません。出入国在留管理庁は、P3MI(インドネシアの職業紹介事業者)の利用は任意だとしています。P3MIを使わない場合は、受入れ企業がIPKOLに求人を登録し、雇用契約書もIPKOLに登録する直接採用の流れになります。ただし、本人のSISKOP2MI登録とE-PMI取得は、どちらの方法でも必要です。
日本にいるインドネシア人を採用する場合もIPKOLは必要ですか?
技能実習2号または3号を良好に修了した人を実習先で引き続き雇用する場合、インドネシア当局はIPKOLへの登録を必ずしも求めていないとされています。国内在住者の場合に必要なのは、雇用契約書の大使館への提出、本人のSISKOP2MI登録とE-PMI取得、駐日インドネシア大使館での海外労働者登録手続です。
インドネシアの特定技能の在留期間は何年ですか?
国籍による違いはありません。特定技能1号は通算で上限5年、1回に許可される在留期間は3年以内です。特定技能2号に移行すれば上限はなくなります。通算5年の数え方は特定技能1号の5年後はどうなる?で解説しています。
インドネシアの特定技能の渡航費は誰が負担しますか?
入国時の渡航費の負担者は法令で一律に決まっておらず、雇用契約で定めます。本人負担とする場合は、本人が内容を理解し合意していることが前提で、事前ガイダンスで説明しておく必要があります。一方、特定技能の雇用契約が終わった後に本人が帰国の旅費を負担できないときは、受入れ機関が負担することとされています。
手続の順番を決めてから採用に入る
インドネシア人の特定技能採用で手戻りが起きやすいのは、日本側の書類がそろったのにインドネシア側の登録が終わっていない、というずれです。在留資格認定証明書が交付されても、本人のSISKOP2MI登録が終わっていなければ査証申請に進めません。国内在住者でも、E-PMIと大使館手続を後回しにすると、一時帰国のときに再出国で止まるおそれがあります。
筆者は、採用を決めた段階で「日本側の申請」と「インドネシア側の手続」を一枚の工程表に並べ、誰が何をいつまでにやるかを本人と共有することを勧めます。特にIPKOLの求人登録と雇用契約書の提出は企業側の作業で、本人任せにできません。MOCの期間が2026年12月24日までと短く設定されている点も含め、インドネシア側の運用は変わり得るため、手続の直前に大使館と出入国在留管理庁のページを確認してください。個別の事情で判断が変わるため、採用ルートの選び方に迷うときは専門家に相談してください。
根拠資料
- インドネシアに関する情報(出入国在留管理庁)
- インドネシア特定技能外国人に係る手続の流れについて(フローチャート)(出入国在留管理庁)
- インドネシア国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ(出入国在留管理庁)
- インドネシア側の手続に関するQ&A(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度運用状況(令和7年12月末現在)(出入国在留管理庁)
- インドネシアにおける入国前結核スクリーニングを開始します(厚生労働省)
在留資格の申請・採用のご相談は、保利国際法務事務所の無料相談へ。福岡出入国在留管理局への申請取次に対応しています。