技術・人文知識・国際業務(技人国)という在留資格には、「この職種なら大丈夫」という固定リストは存在しません。判断基準は職種名ではなく、業務の中身が専門的・技術的かどうかという一点です。
この制度の前身は、1990年の入管法改正で設けられた「技術」「人文知識・国際業務」という二つの在留資格に遡ります。バブル期の人手不足を背景に、専門性を持つ外国人の受け入れ口として作られたものです。2015年の法改正で「技術」と「人文知識・国際業務」が統合され、現在の「技術・人文知識・国際業務」という一つの資格になりました。名称は一本化されましたが、根底にある考え方は最初から変わっていません。専門性のある人材に、専門性のある仕事を任せる、という原則です。
「技術」分野で認められる職種一覧
技術分野は、理学・工学に関する専門的な知識を必要とする業務です。該当する職種は次のとおりです。
- システムエンジニア・プログラマー
- ネットワークエンジニア・インフラエンジニア
- 機械設計・電気設計・回路設計
- 建築設計士・施工管理(技術系)
- 化学分析・品質管理エンジニア
- 研究開発職(理系分野)
- データサイエンティスト・AIエンジニア
これらの職種であっても、無条件で許可が出るわけではありません。専攻内容との関連性、業務内容の専門性の説明が求められる点は変わりません。福岡においても製造業・建設業・IT企業からの相談は多く、技術系職種は専攻との関連性を比較的説明しやすい分野です。
「人文知識」分野で認められる職種一覧
人文知識分野は、法律学・経済学・社会学・経営学などの知識を必要とする業務です。
- 経理・財務・会計担当
- 法務・コンプライアンス担当
- 人事・総務(企画系)
- マーケティング・広報企画
- 営業企画・経営企画
- コンサルタント(経営・業務改善)
- 金融商品の企画・分析
人文知識は対象範囲が広い分野です。範囲が広いということは、それだけ境界線があいまいになりやすいということでもあります。業務内容が単なる事務作業や補助業務に見えないよう、専門性を明確に説明する必要があります。
「国際業務」分野で認められる職種一覧
国際業務分野は、外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務です。
- 通訳・翻訳
- 語学講師(英会話講師・中国語講師など)
- 貿易実務・海外営業
- デザイナー(グラフィック・ファッション等)
- 海外広報・インバウンドマーケティング
- 国際物流コーディネーター
国際業務は、3年以上の実務経験があれば学歴不問で申請できる点が、技術・人文知識分野との大きな違いです。通訳・翻訳・語学指導については、大学卒業者であれば実務経験なしでも申請可能とされています。福岡は空港・港湾を抱える貿易拠点でもあり、貿易実務・海外営業といった国際業務分野の相談件数も比較的多くなっています。技術・人文知識・国際業務ビザでできる仕事とは?職種と単純作業の境界を徹底解説
認められない仕事の典型例
肩書きの立派さと業務の実態は別物です。実態が単純作業であれば、どんな肩書きを付けても認められません。この原則は制度発足以来一貫しています。典型的なNG例は次のとおりです。
| 認められない業務例 | 理由 |
|---|---|
| 工場のライン作業・組立 | 専門知識・技術を必要としない |
| 倉庫での仕分け・ピッキング | 同上 |
| 清掃業務 | 同上 |
| 単純な接客・調理・配膳 | 専門性が業務の中心でない |
| 荷物の運搬・配送 | 専門知識・技術を必要としない |
これらの業務を専門業務の一部として一時的に補助する程度であれば問題視されない場合もあります。業務の中心がここにあると判断されれば、不許可または更新拒否のリスクが高まります。技術・人文知識・国際業務ビザで飲食店に就労可能?【2026年審査厳格化】店舗管理のNGラインを解説
学歴・実務経験要件
技人国の学歴・実務経験要件は分野によって異なります。整理すると次のとおりです。
| 分野 | 学歴要件 | 実務経験での代替 |
|---|---|---|
| 技術・人文知識 | 大学・専門学校卒業以上、専攻と業務の関連性が必要 | 実務経験10年以上(専修学校卒は関連科目学習で可の場合あり) |
| 国際業務 | 学歴不問(大学卒は通訳等で経験不要になる場合あり) | 実務経験3年以上 |
実際にあった相談:1日のタイムスケジュール提出を求められたケース
当事務所が取り扱った案件で、専門業務での従事を予定していた方について、入管から「1日のタイムスケジュール」の提出を求められた事案がありました。専門業務にどれだけの時間を割いているか、業務の比重を確認するための資料要求です。
専門知識を活かす業務が全体の何割を占め、それ以外の業務がどの程度あるのかを、時間軸で具体的に説明できるかが問われます。「ほとんど専門業務です」という主観的な申告だけでは不十分です。実際の1日の流れを時間単位で書き出し、専門業務の比重を客観的な形式で示したことで、審査官の疑問は解消されました。事実を具体的に、数字で説明することが求められています。
業界別に見る職種の当てはめ方
業界ごとに該当する分野・職種の例を次に示します。
| 業界 | 当てはまりやすい分野・職種例 |
|---|---|
| IT・システム開発 | 技術:プログラマー、ITコンサルタント |
| 貿易・商社 | 国際業務:貿易実務、海外営業 |
| 製造業 | 技術:品質管理、生産技術/人文知識:経営企画 |
| 宿泊・観光業 | 国際業務:インバウンド企画、多言語広報 |
| 飲食業 | 人文知識:店舗運営管理/国際業務:通訳翻訳 |
| 建設業 | 技術:設計、施工管理 |
業界名だけで分野が自動的に決まるわけではありません。実際の業務内容を確認し、専攻・実務経験との整合性を検証することが出発点になります。
申請方法:海外呼び寄せ・国内切替・転職
海外から呼び寄せる場合
海外にいる方を採用する場合は、在留資格認定証明書交付申請を行います。証明書が交付された後、本人が現地の日本大使館・領事館でビザを取得し、来日する流れになります。
留学生が国内で切り替える場合
留学生を新卒採用する場合は、在留資格変更許可申請を行います。留学ビザから技人国への変更であり、卒業と就職のタイミングを踏まえたスケジュール管理が重要です。
申請に必要な主な書類(企業側)
- 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
- 雇用理由書(採用理由、業務内容、雇用条件を説明する書面)
- 雇用契約書の写し
- 会社案内・登記事項証明書
- 直近の決算書類(カテゴリーにより異なる)
- 業務内容がわかる組織図・業務分掌書
申請に必要な主な書類(本人側)
- 卒業証明書・学位証明書(実務経験で申請する場合は職歴を証明する資料)
- 履歴書
- パスポートの写し
- 在留カードの写し(国内切替・転職の場合)
これらは基本的な書類にすぎず、カテゴリーや個別の業務内容によって追加資料が求められることがあります。カテゴリー4の企業、または業務内容の専門性が伝わりにくいケースでは、事業計画書や業務の必要性を説明する補足資料を事前に用意しておくことで、審査が円滑に進みます。
既に技人国で働いている方が転職する場合
転職先の業務内容が現在の在留資格の範囲内であれば就労資格証明書の取得を検討し、範囲外であれば在留資格変更許可申請が必要になります。転職のたびに毎回審査が行われるわけではありませんが、業務内容が変わる場合は事前確認が必要です。
在留期間の考え方
技人国の在留期間は5年・3年・1年・3ヶ月のいずれかで許可されます。初回申請でいきなり5年が付与されることは少なく、企業の実績やカテゴリー区分によっては1年からスタートすることも珍しくありません。更新を重ねて実績を積むことで、より長い在留期間が認められやすくなる傾向にあります。これは他の許認可行政にも共通する考え方で、適正な運用の実績を積み重ねることが結果に直結します。
申請にかかる期間の目安
在留資格認定証明書交付申請は、標準処理期間としておおむね1〜3ヶ月程度が目安とされています。在留資格変更許可申請も同程度の期間を要することが多くなっています。業務内容の説明が不十分な場合、または追加資料の提出を求められた場合は、審査期間はさらに延びます。採用決定後ではなく、内定の段階から準備に着手することをおすすめします。
専修学校卒業者・実務経験の証明方法
専修学校(専門学校)の専門課程を修了し「専門士」または「高度専門士」の称号を持つ方は、日本の大学卒業者と同様に扱われます。ただし、修得した科目と従事しようとする業務との関連性は、大学卒業者以上に細かく審査される傾向があります。
実務経験で申請する場合は、以前の勤務先が発行する在職証明書や職務経歴を裏付ける資料が必要です。口頭で「10年やっていました」と説明するだけでは、審査官は納得しません。給与明細、雇用契約書、業務内容がわかる資料など、客観的に証明できるものを揃えておく必要があります。海外での職歴を証明する場合は、現地語の資料に加えて日本語訳も用意しなければなりません。
職種名より業務内容の説明が重要
ここまで職種を一覧で挙げてきましたが、重要なのは職種名そのものではなく、実際にどんな業務をどれくらいの比重で行うかという説明です。同じ「マーケティング担当」という肩書きでも、データ分析や戦略立案が中心であれば専門性が認められやすく、単なるチラシ配りや店頭でのポップ作成が中心であれば認められにくくなります。職種名を決めることより先に、実際の業務内容を具体的に書き出すことが申請準備の出発点です。
カテゴリー1〜4区分とは
技人国の申請では、受け入れ企業の規模・実績によって「カテゴリー」という区分が設けられており、必要書類の量が変わります。
| 区分 | 該当企業 | 必要書類の量 |
|---|---|---|
| カテゴリー1 | 上場企業、一定の公的機関等 | 最も簡素 |
| カテゴリー2 | 前年分の給与所得の源泉徴収税額が1,000万円以上の企業 | やや簡素 |
| カテゴリー3 | 上記に該当しない、法定調書合計表を提出している企業 | 標準 |
| カテゴリー4 | 上記いずれにも該当しない企業(設立間もない企業等) | 最も詳細(事業計画書等が必要な場合あり) |
この区分の考え方は、実績のある会社は説明の負担が軽く、実績のない会社は説明の負担が重くなる、という単純な構造です。設立間もない企業や小規模企業ほど、業務内容や財務状況を詳しく説明する資料の準備が必要になります。自社がどのカテゴリーに該当するかを事前に把握しておくことで、必要書類の見通しを立てやすくなります。
カテゴリー4企業が特に注意すべきこと
設立間もない企業や事業実績が乏しい企業はカテゴリー4に該当することが多く、事業計画書、直近の決算書類、登記事項証明書に加えて、なぜその外国人材が必要なのかを具体的に説明する資料が求められます。事業の将来性を数字で示せなければ、審査官に「継続的に雇用できる体力があるのか」を疑われる要因になります。福岡でも創業間もない企業からの相談は多いのですが、こうした案件ほど事前準備の質が結果を左右します。
初めて外国人を雇用する企業のよくある誤解
初めて外国人材の採用を検討する企業には、いくつか共通する誤解が見受けられます。新しい制度が定着するまでには、この種の誤解が広まる期間が生じるものですが、技人国も例外ではありません。
誤解1:日本語が話せれば何の仕事でもさせられる
日本語能力と在留資格で認められる業務内容は、まったく別の問題です。日本語が堪能であっても、業務内容に専門性がなければ技人国は認められません。
誤解2:卒業した大学のレベルが高ければ有利になる
大学の知名度や偏差値は審査に直接影響しません。見られているのは、専攻内容と業務内容の関連性です。有名大学出身であっても専攻と無関係な業務であれば厳しく審査され、無名の大学出身であっても専攻と業務が一致していれば問題なく許可される例が多く見られます。
誤解3:一度許可が出れば、その後は何をさせても大丈夫
在留期間更新のタイミングで、業務内容の実態確認が行われます。当初の許可内容と実際の業務が大きく異なる場合、更新が認められないこともあるため注意が必要です。
誤解4:資格外活動許可があれば業種を問わず働ける
資格外活動許可を取得しても、風俗営業関連の業種など就労が制限される業種は存在します。週28時間以内という時間制限もあり、本業に支障が出ない範囲での運用が原則です。本業の専門業務が主軸として維持されている限り大きな問題にはなりませんが、副業の比重が過大にならないよう管理する必要があります。
行政書士に依頼するメリット
技人国の職種該当性の判断には、法律や制度の知識に加えて、実際の審査傾向を踏まえた実務感覚が求められます。当事務所は福岡出入国在留管理局への申請取次資格(取次(福)行17第26号)を持ち、外国人採用と在留資格申請に対応しています。入管OBが在籍しているため審査官目線での書類チェックが可能でありしているため中国語での相談にも対応できます。
「この職種は認められますか」という質問に、職種名のみで回答することは通常困難です。実際の業務内容、専攻・実務経験、組織内での位置づけをヒアリングしたうえで、初めて具体的な見通しを示すことができます。365日9:00〜21:00で電話相談を受け付けています。
職種選びで迷ったときのシンプルな判断軸
数多くの職種を挙げてきましたが、判断に迷う場合は次の3点を確認すれば十分です。①その業務は専攻・実務経験と関連しているか、②業務時間の大半をその専門業務に充てられるか、③組織内の位置づけと指揮命令関係が説明できるか。この3つが揃っていれば、職種名がリストにあるかどうかにかかわらず、技人国として認められる可能性は高くなります。逆にいずれか一つでも欠ける場合は、申請前に業務内容の見直しから着手する必要があります。
新しい職種・業界に対応する考え方
制度というものは、現実の変化を後から追いかける形で作られます。ITやマーケティングの分野では、この10年で新しい職種が次々に生まれました。SNS運用担当、動画編集ディレクター、データアナリスト、UI/UXデザイナー。10年前にはほとんど存在しなかった名称です。こうした新しい職種であっても、技人国の対象となり得ます。
判断のポイントは、職種名の新しさではなく、業務内容が専門的知識・技術を要するものかどうかです。SNS運用担当であれば、単なる投稿作業にとどまらず、データ分析に基づく戦略立案やターゲティングといった専門性を説明できれば認められやすくなります。逆に、投稿作業そのものが業務の大半を占め、専門的な企画・分析要素が薄い場合は、単純作業に近いと判断されるリスクがあります。新しい職種で申請する際は、業務内容の専門性をより丁寧に説明する資料を準備しておく必要があります。
実際、「求人票に載せる職種名が定まっていない」という相談が寄せられることがあります。そのような場合は、職種名を先に決めるのではなく、実際にやってもらいたい業務を箇条書きで洗い出し、そのうえで最も近い職種名・分野を後から当てはめる、という順序をおすすめしています。名称から入ると業務内容が曖昧になりますが、業務から入れば名称は後からついてきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 技術・人文知識・国際業務で認められる職種はどれくらいありますか?
職種名そのものに制限があるわけではありません。業務内容が専門的・技術的であるかどうかで判断されます。エンジニア、経理、通訳翻訳、マーケティングなど幅広い職種が対象になり得ます。
Q. カテゴリー1〜4とは何ですか?
受け入れ企業の規模や実績に応じて申請の必要書類の量が変わる区分です。カテゴリー1は書類が簡素であり、カテゴリー4は詳しい説明資料を要します。
Q. 海外から呼び寄せる場合と国内で転職する場合で申請方法は違いますか?
海外から呼び寄せる場合は在留資格認定証明書交付申請、国内で転職する場合は業務内容次第で在留資格変更許可申請等が必要になります。
Q. 実務経験だけで学歴なしでも申請できますか?
技術・人文知識分野は原則10年以上、国際業務分野は原則3年以上の実務経験があれば、学歴要件を満たさなくても申請できる場合があります。
Q. 認められない仕事にはどんなものがありますか?
工場のライン作業、倉庫での仕分け、清掃、荷物の運搬、単純な接客・調理など、専門的知識や技術を必要としない業務は認められません。技術・人文知識・国際業務ビザが不許可になる理由と対処法
Q. 専門学校(専修学校)卒業者は大学卒業者と同じ扱いになりますか?
専門課程を修了し専門士または高度専門士の称号を持つ方は、大学卒業者と同様に扱われます。ただし修得科目と業務内容の関連性がより細かく問われる傾向があります。
Q. 実務経験はどのように証明すればよいですか?
在職証明書、雇用契約書、給与明細、業務内容がわかる資料など、客観的に証明できる資料を揃える必要があります。海外での職歴の場合は日本語訳も必要です。
Q. SNS運用担当やデータアナリストのような新しい職種でも申請できますか?
職種名の新しさは関係ありません。業務内容がデータ分析や戦略立案など専門性を要するものであれば技人国の対象になり得ます。単純な投稿作業が中心の場合は認められにくくなります。
技人国の全体像をまだ押さえていない場合は、まずこちらの記事を参照してください。技術・人文知識・国際業務ビザとは
申請取次資格を持つ行政書士と元・入管審査監理官が、申請の論点を検討します。