在留資格該当性は「その仕事が、在留資格として認められた活動に当たるか」を問う審査で、上陸許可基準適合性は「その人と雇用条件が、法務省令の定める条件を満たすか」を問う審査です。前者は業務の中身を、後者は学歴・実務経験・報酬などを見ます。両方がそろって初めて許可の土台ができ、変更・更新ではその上に「相当性」という三つ目の判断が乗ります。
不許可の理由を正しく読むには、この三層のどこでつまずいたかを見分ける必要があります。業務の中身の問題を学歴の書類で補おうとしても、結果は変わりません。入国・在留審査要領は、この三層を別々に確認する組み立てで書かれています。
この記事でわかること
- 在留資格該当性・上陸許可基準適合性・相当性のそれぞれの意味
- 審査要領が申請書のどの欄で、どの順に確認しているか
- 変更・更新で審査の組み立てがどう変わるか
- 公表されている不許可事例を三層に当てはめた読み方
審査の三層:一覧で見る違い
| 在留資格該当性 | 上陸許可基準適合性 | 相当性 | |
|---|---|---|---|
| 問うこと | 活動が入管法別表の在留資格の活動に当たるか | 基準省令の条件を満たすか | 変更・更新を認めるのが適当か |
| 根拠 | 入管法別表第一・第二 | 入管法7条1項2号、基準省令 | 入管法20条・21条の「相当の理由」 |
| 技人国で見る点 | 学術上の素養を要する業務に主として従事するか | 学歴または実務経験、日本人と同等額以上の報酬 | 素行、納税、届出、資格外活動の状況など |
| かかる場面 | 認定・変更・更新のすべて | 認定。変更・更新でも原則として適合が必要 | 変更・更新 |
審査要領の第12編は、冒頭に「目的」の項を置いています。そこでは、この編が「在留資格該当性(在留資格該当範囲)、上陸許可基準適合性、立証資料、在留期間及び審査上の留意点について規定したもの」だと述べています(第12編 1-1)。在留資格ごとの節も、「該当範囲」と「基準」を別々の項目として書き分けています。
在留資格該当性とは何か
入管法の別表には、在留資格ごとに日本で行える活動が書かれています。申請人が日本で行おうとする活動がその記載に当てはまるかを判断することを、在留資格該当性の審査と呼びます。見るのは人ではなく活動です。
技術・人文知識・国際業務(技人国)を例にとると、審査要領は該当範囲を、一定の業務に「主として従事する活動」と整理しています(第12編 15-1)。その業務とは、自然科学の分野、人文科学の分野(社会科学を含む)の技術・知識を必要とする業務、または外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務です。そのうえで、業務の水準を次のように説明しています。
「単に経験を積んだことにより有している知識では足りず、学問的・体系的な知識を必要とするものでなければならない。」
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節 15-2
ここでいう「主として」とは、業務全体の中で専門業務が中心になっていることを指します。専門業務がごく一部で、残りが反復訓練で身につく業務なら、該当性は否定されます。公表資料も、「未経験可、すぐに慣れます。」と求人に書くような業務や、学歴・実務経験の要件を満たさない日本人従業員が一般的に従事している業務は対象外だとしています。
該当性は、活動が実際に行われる場で判断されます。派遣の場合、審査要領は「派遣先において従事しようとする活動に基づき、在留資格該当性を判断する」としています(第12編 1-7〜1-9)。雇用主が派遣元でも、派遣先で単純作業に就くなら該当性はありません。
上陸許可基準適合性とは何か
入管法7条1項2号は、上陸の条件として、活動が別表の在留資格に該当することに加え、別表第一の二の表と四の表の在留資格については法務省令で定める基準に適合することを求めています。この省令を一般に基準省令(上陸基準省令)と呼び、その基準を満たしているかの判断を上陸許可基準適合性の審査と呼びます。二の表には技人国、経営・管理、企業内転勤、技能などの就労資格が、四の表には留学などが並びます。身分系の在留資格(別表第二)や、別表第一の一の表・三の表・五の表の在留資格には、この基準はかかりません。
技人国の基準は三つの号に分かれています。第1号は学歴または実務経験で、関連科目を専攻した大学卒業、一定の専門学校の修了、または10年以上の実務経験のいずれかです。第2号は国際業務の場合の3年以上の実務経験、第3号は日本人が従事する場合と同等額以上の報酬です(第12編 15-8、15-18〜15-19)。該当性が「仕事の中身」を問うのに対し、基準は「その仕事に就く人と条件」を数字と書類で問う、と整理できます。
報酬の基準も、数字だけで機械的に決まるわけではありません。審査要領は「報酬額を基準として一律に判断することは適切ではない」とし、その企業の日本人大卒者や専門職の賃金、他社の同種職種の賃金を参考に判断するとしています(第12編 1-3)。給与の考え方は就労ビザの「日本人と同等額以上の報酬」とは|審査要領に一律の金額基準がない理由と比べ方で扱っています。
審査要領は二つをどの順で確認しているか
ここで重要なのは、審査担当者が二つの審査を申請書の別々の欄で確認しているという論点です。技人国の「審査のポイント」は、在留資格の決定時の確認手順を次のように書いています。
「在留資格該当性について、申請書の勤務先、職歴、職務上の地位及び職務内容欄の記載並びに立証資料により、申請人の本邦において行おうとする活動が技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当するものであることを確認する。」
「基準適合性について、申請書の最終学歴及び専攻・専門分野又は実務経験年数欄並びに立証資料により、上陸基準省令1号に適合することを確認する。」
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第15節 15-19
続けて、国際業務なら職歴欄で3年以上の実務経験を、給与・報酬欄で第3号の報酬を確認する、と書かれています。業務の中身を見る欄と、人と条件を見る欄は、はっきり分かれています。
この順番は、書類の作り方に直結します。雇用理由書で学歴の説明に紙幅を割いても、職務内容欄と業務説明が薄ければ、最初の関門である該当性で止まります。当事務所でも、業務そのものには専門性があったのに、雇用理由書の書き方が原因で単純作業と誤認された案件を扱ったことがあります。業務の中身に問題はなく、説明の粒度が足りなかったことが原因でした。
※上記は当事務所で取り扱った実際の相談内容をもとにしていますが、個別の状況により結果は異なります。同様の結果を保証するものではありません。
変更・更新では「相当性」が加わる
認定(海外からの呼び寄せ)と、変更・更新(日本にいる人の手続)では、審査の組み立てが少し違います。入管法20条と21条は、変更・更新を、それを「適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」に限って許可すると定めています。入管庁の手続ページも、審査基準として同じ文言を掲げています。この「相当の理由」があるかの判断を、実務では相当性の審査と呼びます。
変更・更新のガイドラインは、考慮事項を8つ挙げています。1が在留資格該当性で、許可の必要要件とされています。2が上陸許可基準への適合で、別表第一の二の表と四の表の在留資格については、変更・更新でも「原則として」適合が必要とされています。3以下は、現に有する在留資格に応じた活動をしていたこと、素行が不良でないこと、独立生計、雇用・労働条件の適正、納税義務等の履行、入管法上の届出義務の履行で、これらが相当性を判断する代表的な要素です。
審査要領にも、三層を並べて書いた一文があります。経営・管理の節で、役員の人数を理由に不許可にできるかを扱った箇所です。
「その者の行おうとする活動に在留資格該当性が認められない場合又は基準適合性が認められない場合、その他在留状況に問題がある場合など在留を認めるべき相当の理由がないときを除き、人数の観点から不許可・不交付とすることはできない」
出典:入国・在留審査要領 第12編(開示版)第10節 10-16
該当性、基準適合性、在留状況を含む相当性。不許可にできる理由がこの三つの枠で整理されていることが、この一文から読み取れます。
相当性の判断は裁量が広い
相当性の判断には、法務大臣の広い裁量が認められています。マクリーン事件(最高裁大法廷昭和53年10月4日判決、民集32巻7号1223頁)は、在留期間の更新を許すかどうかは法務大臣の広い裁量に委ねられるとしました。あわせて、外国人には在留を続ける権利や更新を受ける権利が保障されていないと述べています。ガイドラインが、8つの考慮事項のすべてに該当しても不許可となることがあると書いているのも、この裁量を前提にしています。判決の中身と実務への影響はマクリーン事件とは?在留期間更新の裁量をわかりやすく解説|今の入管審査への影響で扱っています。
相当性の審査は、まったく基準がないわけではありません。技人国の更新時には、住民税の課税証明書と納税証明書で「収入額が契約時の金額であること及び納税が行われていること」を確認すると書かれています(第12編 15-20)。報酬という基準適合性の要素を、更新時には実績で確かめる構造です。
不許可事例を三層に当てはめる
入管庁が公表している技人国の許可・不許可事例(別紙3)を三層に振り分けると、つまずいた場所の違いが見えてきます。
| 公表されている不許可例 | 主につまずいた層 |
|---|---|
| 専門学校卒で、菓子工場で洋菓子製造に従事する(反復訓練で従事可能な業務) | 在留資格該当性 |
| 飲食チェーンの「管理者候補」で、期間未確定の店舗接客・調理が続く計画 | 在留資格該当性 |
| 工学部卒で月13.5万円(同時採用の日本人新卒は月18万円) | 上陸許可基準適合性(報酬) |
| 留学中に1年以上、月200時間以上のアルバイトをしていた | 相当性(在留状況) |
三つ目の報酬の例は、業務の中身にも学歴にも問題がなくても、条件の一点で不許可になることを示しています。四つ目は、就職先の業務にも条件にも問題がないのに、留学中の在留状況で止まった例です。公表資料は、変更時の考慮例として、資格外活動で恒常的に週28時間を超えるアルバイトをしていた場合は素行善良とみなさないとも書いています。
筆者は、不許可の通知を受けたら、再申請の前にまずこの表のどの行に当たるかを特定することを勧めています。該当性の問題なら業務内容そのものを見直す必要があり、基準の問題なら条件の変更で解決できることがあり、相当性の問題なら時間の経過や説明の仕方が鍵になります。層を取り違えると、書類を厚くしても結果は変わりません。専攻と業務の関連性がどう判断されるかは大卒と専門学校卒で違う「専攻と業務の関連性」|審査要領15-10の判断の差を参照してください。技人国の要件の全体像は技術・人文知識・国際業務ビザの要件とは?学歴・実務経験・給与条件をわかりやすく解説で扱っています。
よくある質問
Q. 在留資格該当性と上陸許可基準適合性は、どちらを先に審査されますか?
審査要領の審査のポイントでは、まず申請書の勤務先・職務内容欄などで在留資格該当性を確認し、次に最終学歴・実務経験年数・給与欄で基準適合性を確認する順に書かれています。どちらか一方でも欠ければ許可されません。
Q. 更新のときも上陸許可基準を満たす必要がありますか?
変更・更新のガイドラインは、別表第一の二の表と四の表の在留資格については、変更・更新の場面でも原則として上陸許可基準に適合していることを求めています。技人国の更新では、課税証明書などで報酬が契約どおりだったかも確認されます。
Q. 該当性も基準も満たしているのに不許可になることはありますか?
あります。変更・更新は、変更や更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されます。素行、納税、届出義務の履行などの在留状況が相当性の判断で考慮され、ガイドラインもすべてに該当しても不許可となることがあると明記しています。
申請前に三層を点検する
申請書を作る前に、三つの問いに一つずつ答えを書き出してください。この業務は、学問的・体系的な知識がなければできない業務が中心か。本人の学歴・実務経験と報酬は、基準省令の号ごとに書類で示せるか。変更・更新なら、本人の資格外活動、納税、届出に説明を要する点はないか。答えに詰まった問いがあれば、そこが補強すべき箇所です。審査要領そのものの読み方は入国・在留審査要領とは?開示された入管の内部基準の読み方と黒塗りの限界にまとめています。
根拠資料
- 出入国在留管理庁「入国・在留審査要領」第12編(情報公開請求による開示版、2025年12月スキャン、一部黒塗り)第1章 1-1、第2章第1節 1-3、1-7〜1-9、第10節 10-16、第15節 15-1〜15-2、15-8、15-18〜15-20
- 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(令和8年6月改正)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html
- 出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-2.html/「在留期間更新許可申請」https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-3.html
- 出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html、別紙3 https://www.moj.go.jp/isa/content/001413912.pdf
- 最高裁判所大法廷昭和53年10月4日判決(民集32巻7号1223頁)