特定技能「飲食料品製造業」は、酒類を除く飲食料品の製造・加工と安全衛生の確保を担う外国人を受け入れる分野です。受け入れられるかどうかは、会社の業種名や作っている商品では決まりません。外国人が働く事業所が、日本標準産業分類の対象産業を行っているかで決まります。外食業分野で2026年4月13日から在留資格認定証明書の交付が止まった後、製造部門を持つ飲食チェーンや惣菜店からこの分野への切替えの相談が増えていますが、店舗に併設された厨房の多くは対象になりません。
飲食料品製造業分野で従事できる業務
出入国在留管理庁の分野ページ(2026年9月4日更新)によると、特定技能1号の業務区分は「飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く。)の製造・加工及び安全衛生の確保)」です。原料の受入れ、下処理、加熱・成形、包装、衛生管理まで、製造工程全体が対象に入ります。
特定技能2号も業務区分は同じで、これに現場の管理が加わります。2号の人材基準は、飲食料品製造業特定技能2号評価試験の合格と、複数の作業員を指導しながら工程を管理した実務経験です。
製造に付随する作業についての考え方は、農林水産省の相談窓口のFAQで示されています。パック詰め、検品、箱詰めといった関連業務に「専ら従事すること」はできず、同じ業務に日本人従業員も従事している範囲で、付随的に行うことは差し支えない、という整理です。求人票の職務内容が「検品・梱包スタッフ」だけになっている場合、そのままでは申請の段階で説明がつきません。
酒類の製造は明文で除かれています。同FAQでは塩、香料、ペットフードなどの製造も受入れ対象外とされています。いずれも日本標準産業分類上、食料品製造業に入らない産業だからです。
対象になる事業所は日本標準産業分類で決まる
運用要領(飲食料品製造業分野の基準)は、特定技能外国人が働く事業所が、日本標準産業分類(令和5年総務省告示第256号)の次の産業を行っていることを求めています。2024年7月23日の一部改正で、スーパーマーケットが加わりました。
| 分類 | 番号・名称 | 条件 |
|---|---|---|
| 中分類 | 09 食料品製造業 | なし |
| 小分類 | 101 清涼飲料製造業 | なし |
| 小分類 | 103 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く) | なし |
| 小分類 | 104 製氷業 | なし |
| 細分類 | 5621 総合スーパーマーケット | 食料品製造を行うものに限る(2024年7月23日追加) |
| 細分類 | 5811 食料品スーパーマーケット | 食料品製造を行うものに限る(2024年7月23日追加) |
| 細分類 | 5861 菓子小売業(製造小売) | なし |
| 細分類 | 5863 パン小売業(製造小売) | なし |
| 細分類 | 5896 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業 | 豆腐・かまぼこ等加工食品の製造を行うものに限る |
ここで重要なのは、判定の単位が法人ではなく事業所だという論点です。1つの会社が本社で小売、工場で製造、店舗で飲食を行っている場合、外国人を配置できるのは対象産業に当たる事業所だけです。会社の登記上の目的に「食品製造」と書いてあっても、配属先の店舗が飲食店であれば、その店舗では受け入れられません。
事業所がどの産業に当たるかは、その事業所の主な経済活動で判断します。農林水産省の相談窓口のFAQは、精肉加工や水産加工、外食事業者のセントラルキッチンについて、飲食料品製造の売上げ等が事業所全体の売上げの2分の1を超えていることを条件として示しています。
誤りやすい「店舗併設の製造」の線引き
外食業分野の受入れ停止後に最も誤解が多いのが、店舗の中や隣で食品を作っているケースです。業態ごとに考え方を整理します。
飲食店の厨房・仕込み場
飲食店(日本標準産業分類の中分類76)や持ち帰り・配達飲食サービス業(中分類77)の事業所は、外食業分野の対象です。店内の厨房で仕込みをする作業は、量が多くても飲食料品製造業分野にはなりません。この業態で新たに海外から外国人を呼ぶ場合は、外食業分野の一時停止の影響をそのまま受けます。停止の内容と飲食店が取れる対応は特定技能「外食業」の新規受入れ停止|2026年4月13日以降に飲食店が取るべき対応で解説しています。
セントラルキッチン
複数の店舗向けに食材を加工する外食事業者のセントラルキッチンは、店舗とは別の事業所で、製造の売上げ等が事業所全体の2分の1を超えていれば、飲食料品製造業分野の対象になり得ます。店舗の一角を「セントラルキッチン」と呼んでいるだけで、同じ場所で客席の営業をしているなら、その事業所は飲食店として扱われる可能性が高くなります。
ベーカリー・菓子店のイートイン
パンや菓子を店で作って売る製造小売は、5863・5861として対象に入ります。問題は、イートインやカフェを併設している場合です。事業所の主な活動が喫茶・飲食の提供に移っていれば、分類は飲食店側になり得ます。売上げの内訳を、製造小売と飲食提供に分けて説明できるようにしておく必要があります。
スーパーマーケットのバックヤード
以前はスーパーのバックヤードでの製造は小売業の機能の一部として対象外とされ、相談窓口のFAQにもその記載が残っています。2024年7月23日の運用要領改正後は、総合スーパー(5621)・食料品スーパー(5811)のうち、青果物加工、鮮魚加工、食肉加工、ベーカリー製造、そう菜製造などの食料品製造を行っている事業所が対象になりました。インターネット上の古い解説はこの改正の前の記述のままのものがあり、日付を確認して読む必要があります。
スーパーで受け入れた場合も、従事できるのは製造・加工の業務です。品出しやレジ打ちを主な業務にすることはできません。
筆者は、店舗併設のケースで申請前に最初に確認すべきなのは「外国人が実際に立つ場所の事業所が、どの産業分類に当たるか」だと考えます。法人全体の業種や売上げの話を先にすると、この判断を誤りやすくなります。
外国人本人の要件|試験と日本語
特定技能1号の技能は、飲食料品製造業特定技能1号評価試験の合格で証明します。実施機関の一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)によると、試験は学科と実技の2科目、CBT方式・3択・70分で、150点満点中98点以上(正答率65%以上)が合格です。国内試験の受験料は8,000円(税込み)です。
日本語は、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2.2相当以上、または日本語能力試験N4以上が求められます。飲食料品製造業分野に関係する技能実習2号を良好に修了した人は、技能試験と日本語試験の両方が免除されます。
特定技能2号の評価試験は、OTAFFによると70分・200点満点中130点以上(正答率65%以上)が合格で、受験料は15,000円(税込)です。受験資格として、複数の作業員を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者としての2年以上の実務経験が必要です。2号の日本語要件について、出入国在留管理庁は2027年4月1日以降に「日本語教育の参照枠」B1相当以上を求めるとし、その取扱いは別途知らせるとしています。
分野別の試験の全体像は特定技能試験とは?分野別の試験一覧と合格から在留資格申請までの流れで扱う予定です。
受入れ機関の要件|食品産業特定技能協議会への加入
受入れ機関には、全分野共通の基準に加え、飲食料品製造業分野に固有の基準があります。中心は、農林水産省が設置する食品産業特定技能協議会の構成員になり、協議会と農林水産省の調査・指導に協力することです。
加入の時期は、出入国在留管理庁への在留諸申請を行う前です。農林水産省の協議会ページによると、申込みはオンラインのフォームで行い、必要書類を送ってから加入証がメールで届くまで2〜3か月程度かかります。入会金・年会費は当面徴収しないとされています。2人目以降の受入れで改めて加入する必要はありません。
支援を登録支援機関に委託する場合、その登録支援機関も協議会の構成員である必要があります。協議会の仕組みと加入しない場合のリスクは特定技能の協議会とは?加入のタイミング・分野ごとの窓口で解説しています。
雇用形態は直接雇用に限られ、派遣での受入れはできません。
外食業分野からの切替えを考える会社にとって、協議会加入の2〜3か月は見落としやすい期間です。採用の予定日から逆算すると、事業所の産業分類の確認と協議会の申込みは、候補者を探し始める前に済ませておくのが現実的な段取りです。
受入れ見込数と2027年4月の分野再編
出入国在留管理庁によると、飲食料品製造業分野の受入れ見込数(上限)は2029年3月までの5年間で133,500人です。外食業分野は受入れ見込数を超えたことを理由に認定証明書の交付が止まりました。飲食料品製造業分野も上限のある分野である点は同じで、流入が続けば同様の措置がとられる可能性は否定できません。
もう1つの変化は、2027年4月1日の業務区分の見直しです。分野ページには、業務区分「飲食料品製造業全般」が令和9年4月1日以降、「飲食料品製造業」と「水産加工業」に切り分けられると明記されています。育成就労制度の開始と同じ日です。水産加工の工場で受け入れている会社は、再編後に試験や指定書の業務区分がどう扱われるかを、運用要領の改正で確認する必要があります(公式資料では未確認)。
受入れまでの流れ
飲食料品製造業分野で1号の外国人を受け入れる手順は、次の順番になります。
- 配属予定の事業所が対象産業に当たるかを確認する(売上げの内訳、営業の実態)
- 食品産業特定技能協議会に加入を申し込む(加入証まで2〜3か月程度)
- 候補者を探す(国内の試験合格者、技能実習2号修了者、海外の試験合格者)
- 雇用契約を結び、支援計画を作る(登録支援機関に委託する場合は委託契約も)
- 在留資格認定証明書交付申請(海外から呼ぶ場合)または在留資格変更許可申請(国内在住者の場合)を出す
- 入国・就労開始後、生活オリエンテーションや定期面談などの支援を行い、定期届出を出す
国内在住者を採用する場合、技能実習2号を修了した人のほか、留学生や他分野の特定技能外国人が試験に合格して変更するケースもあります。技能実習からの移行では、実習の職種・作業が飲食料品製造業分野と関係するかで試験免除の範囲が変わります。移行の判断は技能実習から特定技能への移行は可能?で扱っています。
報酬は、同じ業務に従事する日本人と同等以上である必要があります。食品工場では時給制のパート従業員と比較されることが多く、比較対象の選び方で説明が変わります。
よくある質問
特定技能の飲食料品製造業ではどんな仕事ができますか?
酒類を除く飲食料品の製造・加工と、衛生管理などの安全衛生の確保です。原料処理、加熱、成形、包装などの製造工程全般が含まれます。パック詰め・検品・箱詰めだけに専ら従事させることはできません。
特定技能の外食業と飲食料品製造業の違いは何ですか?
外食業は飲食店や持ち帰り・配達飲食サービス業の事業所で、調理・接客・店舗管理を行う分野です。飲食料品製造業は食料品製造業などの事業所で、製造・加工を行う分野です。同じ会社でも、事業所の産業分類によってどちらの分野になるかが変わります。
飲食料品製造業の特定技能2号の要件は何ですか?
飲食料品製造業特定技能2号評価試験に合格し、複数の作業員を指導しながら工程を管理した実務経験があることです。評価試験の受験には、その立場での2年以上の実務経験が必要です。2027年4月1日以降は日本語B1相当以上が求められる予定です。
スーパーマーケットでも特定技能外国人を受け入れられますか?
2024年7月23日の運用要領改正により、食料品製造を行っている総合スーパー・食料品スーパーの事業所で受け入れられるようになりました。従事できるのは鮮魚・精肉・惣菜・ベーカリーなどの製造・加工業務で、品出しやレジを主な業務にはできません。
飲食料品製造業の特定技能の人数に上限はありますか?
受入れ機関ごとの人数枠は、介護分野などと違って設けられていません。分野全体では、2029年3月までの受入れ見込数133,500人が上限として設定されています。
申請の前に、配属先の事業所を1つずつ確かめる
飲食料品製造業分野は、食品を扱う会社にとって入口が広く見えます。しかし、受入れの可否は事業所単位の産業分類で決まり、店舗に併設した厨房、イートインの比重が大きい製造小売、売上げの半分以上を製造が占めないセンターは、対象から外れる可能性があります。個別の事業所がどこに分類されるかは、事業の実態と売上げの内訳で判断が変わります。
外食業分野からの切替えを検討している会社は、まず外国人を配置する予定の事業所の一覧を作り、それぞれの主な活動と売上げの内訳を書き出すところから始めてください。そのうえで対象になる事業所が見つかれば、協議会の申込みと採用活動を並行して進められます。対象になる事業所がなければ、別の在留資格の検討に切り替える判断を早めにすることが、採用計画の遅れを最小限にします。調理の仕事で使える他の在留資格は技能ビザと特定技能・技人国の違いで比較しています。
根拠資料
- 飲食料品製造業分野(出入国在留管理庁・2026年9月4日更新)
- 「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-飲食料品製造業分野の基準について-」の一部改正について(出入国在留管理庁・2024年7月23日)
- 特定技能「外食業分野」における在留資格認定証明書交付の一時停止措置について(出入国在留管理庁・2026年4月13日)
- 飲食料品製造業分野における外国人材の受入れ拡大について(農林水産省)
- 食品産業特定技能協議会について(農林水産省)
- 飲食料品製造業分野特定技能1号評価試験 試験案内(OTAFF)
- 飲食料品製造業分野特定技能2号評価試験 試験案内(OTAFF)
- よくあるご質問(農林水産省 特定技能相談窓口)
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