特定技能「自動車整備」で外国人を雇えるのは、道路運送車両法78条1項に基づき地方運輸局長の認証を受けた工場(認証工場)だけです。1号の外国人は、自動車整備分野特定技能1号評価試験または自動車整備士技能検定3級に合格して、日常点検整備・定期点検整備・特定整備に従事します。2号に進むには、2号評価試験または2級自動車整備士の合格が必要で、2号評価試験の受験には認証工場での3年以上の実務経験が求められます。2級整備士を持つ人は技術・人文知識・国際業務(技人国)で雇う道もあり、どの在留資格を選ぶかで採用の設計が変わります。
自動車整備分野で従事できる業務
出入国在留管理庁の分野ページによると、1号の業務は「自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する基礎的な業務」です。2号は「他の要員への指導を行いながら従事する」同じ範囲の業務で、付随業務が「一般的な業務」になります。
ここでいう特定整備とは、国土交通省のガイドブック(2025年5月)によると、原動機、動力伝達装置、走行装置、かじ取り装置、制動装置、緩衝装置、連結装置、運行補助装置、自動運行装置のいずれかを取り外して行う整備または改造を指します。2020年4月の道路運送車両法改正で、従来の分解整備に、衝突被害軽減ブレーキのカメラなど運行補助装置の整備が加わった概念です。
関連業務と「専ら」の禁止
ガイドブックは、主たる業務に付随して従事できる関連業務として、整備内容の説明・部品販売、部品番号の検索、電装品の取付け、洗車、下回りの塗装、社内清掃、部品の運搬、設備の清掃を挙げています。一方で、専ら関連業務に従事した場合は法令違反となるおそれがあると明記しています。
実務で問題になりやすいのは、車検の繁忙期以外に洗車や受付を主な仕事にしてしまうケースです。整備の仕事量が季節で変わる工場では、閑散期の業務内容を雇用前に決めておく必要があります。
受入れ機関の要件
認証工場であること
受入れ機関は、道路運送車両法78条1項に基づき、地方運輸局長から自動車特定整備事業の認証を受けた事業場である必要があります。認証は事業場ごとに受けるものなので、複数の拠点を持つ会社では、外国人を配置する拠点が認証を持っているかを個別に確認します。
板金塗装工場、カー用品店の作業ピット、ガソリンスタンドの整備コーナーも、その事業場が認証を受けていなければ受入れ機関になれません。指定工場(いわゆる民間車検場)は認証工場の上位にあたるため、対象に含まれます。
協議会への加入
受入れ機関は、国土交通省が設置する自動車整備分野特定技能協議会に入会し、必要な協力を行う必要があります。国土交通省のページによると、入会は協議会第1号様式と別表第1を管轄の地方運輸局に提出して行い、会費はかかりません。2024年6月15日以降の申請では、一律に協議会への加入手続が必要です。協議会全般については特定技能の協議会とは?加入のタイミング・分野ごとの窓口で解説しています。
登録支援機関に委託する場合の特有の要件
自動車整備分野には、他の分野にあまりない要件があります。支援を登録支援機関に委託する場合、その登録支援機関は協議会に入会し、さらに次のいずれかの人を置いていなければなりません。
- 1級または2級の自動車整備士の資格を持つ人
- 自動車整備士の養成施設で5年以上の指導の実務経験を持つ人
一般的な登録支援機関の多くは、この要件を満たしていません。委託先を選ぶときは、協議会への加入と整備士資格者の配置の両方を確認してください。自社で支援を行う場合の要件は特定技能の自社支援の要件とは?で扱っています。
雇用形態
ガイドブックは、派遣契約や請負契約で特定技能外国人を受け入れることはできず、直接雇用のフルタイムであることを求めています。
外国人本人の要件(1号)
1号の技能は、次のどちらかで証明します。
- 自動車整備分野特定技能1号評価試験に合格する
- 自動車整備士技能検定試験3級に合格する
1号評価試験は一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(JASPA)が実施し、プロメトリックのCBT方式で行われます。プロメトリックの案内によると、試験は学科(30問・60分)と実技(3課題9問・20分)で、試験日に17歳以上(インドネシア国籍は18歳以上)であれば受験できます。国内のほか、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ネパールで実施されています。
日本語は、国際交流基金日本語基礎テストの合格または日本語能力試験N4以上が必要です。自動車整備職種の技能実習2号を良好に修了した人は、技能試験と日本語試験が免除されます。
国内の整備専門学校で学んだ留学生が3級に合格して1号へ変更する、というルートもあります。ただ、専門学校で2級まで取れる見込みがある学生なら、次に見るように技人国という選択肢も比べる価値があります。
2号への道
2号の技能は、2号評価試験の合格、または2級自動車整備士の技能検定の合格で証明します。国土交通省によると、2号評価試験の受験には、試験日の前日までに認証事業場で自動車等の分解・点検・調整等の整備作業に3年以上従事した実務経験が必要です。2号では他の要員への指導を行う業務に従事することも求められます。
2号になると、在留期間の更新に上限がなくなり、要件を満たせば家族(配偶者・子)を呼び寄せることができます。1号の通算5年の中で2号の要件に届くかどうかが、長く働いてもらえるかの分かれ目になります。1号の5年の数え方は特定技能1号の5年後はどうなる?で解説しています。
整理すると、1号で入った外国人が2号に進む道筋は次のようになります。
- 1号で認証工場の整備作業に3年以上従事し、2号評価試験に合格する
- 在職中に2級自動車整備士の技能検定に合格する
どちらの道も、受入れ機関が整備作業に従事させていることが前提です。洗車や受付が中心の働き方では、実務経験として数えにくくなります。
技人国・特定技能1号・2号の比較
2級整備士を持つ外国人は、技人国で雇える場合があります。当事務所の既存記事自動車整備士を技人国で雇える条件|2級整備士とキャリアアップ計画で扱ったとおり、技人国では整備の知識を体系的に学んだ学歴と2級整備士の資格を前提に、単純な作業にとどまらない業務内容とキャリアの道筋を示すことが求められます。
| 項目 | 技人国 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|---|
| 技能の証明 | 学歴+2級整備士 | 1号評価試験または3級整備士 | 2号評価試験または2級整備士 |
| 日本語試験 | 不要(業務に必要な水準) | JFT-Basic合格またはN4以上 | 不要 |
| 実務経験 | 不要 | 不要 | 2号評価試験の受験に認証工場で3年以上 |
| 雇用主の条件 | 業務内容の専門性 | 認証工場・協議会入会 | 認証工場・協議会入会 |
| 支援義務 | なし | あり(委託先に整備士資格者) | なし |
| 在留期間の上限 | なし | 通算5年 | なし |
| 家族帯同 | 可(家族滞在) | 原則不可 | 可 |
この表から読み取れるのは、2級整備士を持っているかどうかで、選べる在留資格が大きく変わるということです。2級を持つ人なら、技人国か特定技能2号かを業務内容と本人の経歴で選べます。3級または1号評価試験の段階の人は特定技能1号から始め、在職中に2級または2号評価試験を目指す流れになります。
筆者は、整備専門学校の留学生を採用する工場ほど、入社時点の資格で在留資格を決めるだけでなく、2級取得までの時期を雇用計画に書き込むべきだと考えます。1号の5年は、2級に届かなければ終わりが来る期間です。
採用ルート別の注意点
技能実習生からの移行
自動車整備職種の技能実習2号を良好に修了した人は、技能試験と日本語試験を受けずに1号へ移行できます。自社で実習を受けてきた人をそのまま雇い続ける場合が典型です。実習の職種が自動車整備と関係しない人(たとえば塗装や機械加工)は、1号評価試験の合格が必要になります。移行時の手続きは技能実習から特定技能への移行は可能?で解説しています。
整備専門学校の留学生
国内の自動車整備専門学校には、2年課程で2級整備士の受験資格を得る留学生が多く在籍しています。卒業時に2級に合格していれば技人国、3級にとどまれば特定技能1号、というのが基本の分かれ方です。2級の試験結果が出る前に内定を出す場合は、どちらの結果でも雇えるよう、特定技能1号の受入れ準備(認証工場の確認、協議会の入会、支援体制)も並行して整えておくと、卒業から就労開始までの空白を避けられます。
海外からの採用
海外で1号評価試験と日本語試験に合格した人を呼ぶ場合は、在留資格認定証明書交付申請を行います。1号評価試験は海外ではインドネシア、フィリピン、ベトナム、ネパールで実施されており、国ごとに送出しの手続きが別に定められている場合があります。日本の車両と整備の手順に慣れるまでの教育期間を、入社後の計画に入れておく必要があります。
受入れ見込数と受入れの流れ
出入国在留管理庁の分野ページでは、自動車整備分野の受入れ見込数は5年間で10,000人とされています。受入れ機関ごとの人数枠はありません。
受入れまでの流れは次のとおりです。
- 配置する事業場が認証工場であることを確認する
- 候補者の資格(1号評価試験・3級・技能実習2号修了)を確認する
- 雇用契約を結び、支援計画を作る(委託する場合は要件を満たす登録支援機関を選ぶ)
- 協議会への入会手続きを行う
- 在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請を出す
よくある質問
特定技能の自動車整備でできる業務は何ですか?
日常点検整備、定期点検整備、特定整備と、それに付随する基礎的な業務です。洗車、部品の運搬、部品販売などの関連業務にも付随的に従事できますが、関連業務だけに専ら従事させることはできません。
自動車整備分野で特定技能2号に移行するための要件は何ですか?
2号評価試験または2級自動車整備士の技能検定に合格することです。2号評価試験を受けるには、試験日の前日までに認証工場で3年以上の整備作業の実務経験が必要です。2号では他の要員への指導を行う業務に従事することも求められます。
認証工場でなくても特定技能外国人を雇えますか?
雇えません。受入れ機関は、道路運送車両法78条1項の認証を受けた事業場である必要があります。認証を持たない板金塗装工場や整備コーナーだけの店舗では、この分野の受入れはできません。
自動車整備分野特定技能協議会の費用はかかりますか?
国土交通省によると、協議会への入会に会費はかかりません。入会の書類は管轄の地方運輸局に提出します。
自動車整備の特定技能の給与はいくらですか?
制度上の最低額の定めはなく、同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬であることが求められます。比較対象は、同じ工場で同程度の経験を持つ日本人整備士です。考え方は特定技能外国人の給料はどう決める?で解説しています。
採用の入口より、2級に届く道筋を先に描く
自動車整備分野は、受入れ機関が認証工場に限られ、委託できる登録支援機関にも整備士資格者の配置が求められる、要件の厳しい分野です。その分、制度の設計は「整備士を育てる」方向に一貫しています。1号の外国人を認証工場の整備作業に従事させ、3年の実務経験か2級の合格を経て2号に進む。この道筋を採用の段階から本人と共有しておくことが、定着の条件になります。
採用を検討している工場は、まず候補者が持っている資格を確認し、2級を持つなら技人国と特定技能2号、持たないなら特定技能1号から始める、という順で在留資格を選んでください。個別の経歴や業務内容によって、適した在留資格の判断は変わります。
根拠資料
- 自動車整備分野(出入国在留管理庁)
- 自動車整備分野における「特定技能」の受入れ(国土交通省)
- 自動車整備分野「特定技能外国人」受入れのためのガイドブック(国土交通省物流・自動車局 自動車整備課・2025年5月)
- 特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-自動車整備分野の基準について-(法務省・国土交通省)
- 自動車整備分野特定技能評価試験(日本自動車整備振興会連合会)
- 自動車整備分野特定技能1号評価試験(プロメトリック)
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