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外国人看護師を雇用するには|日本の免許と在留資格「医療」・EPA候補者の違い

外国人を看護師として雇用するには、その人が日本の看護師免許を持っていることが前提です。外国の看護師免許だけでは日本で看護師の業務はできず、在留資格「医療」も、日本の免許を受けて看護師として働く人に与えられます。免許を取る前の人を受け入れる公的な枠組みは、インドネシア・フィリピン・ベトナムとの経済連携協定(EPA)に基づく看護師候補者に限られ、候補者は病院で働きながら国家試験の合格を目指します。見落としやすいのが看護補助(看護助手)の仕事で、これは在留資格「医療」の活動に当たらないため、別の在留資格で考える必要があります。

外国人が日本で看護師として働く前提|日本の看護師免許

看護師の業務は、保健師助産師看護師法により、厚生労働大臣の免許を受けた看護師でなければ行えません。外国で看護師免許を取っていても、それだけでは日本の病院で看護師として働くことはできません。

外国人が日本の看護師免許を取る道は、主に3つです。

  1. 日本の看護師養成所(看護大学・看護専門学校など)を卒業し、看護師国家試験に合格する
  2. 外国の看護師学校を卒業し外国の免許を持つ人が、厚生労働省の「受験資格認定」を受けて国家試験に合格する
  3. EPA看護師候補者として来日し、病院で就労・研修しながら国家試験に合格する

2の受験資格認定では、書類審査などで外国の看護教育が日本の基準と同等以上かが確認されます。厚生労働省の受験資格認定FAQによると、日本の中学校と高等学校を卒業していない人は、国籍を問わず日本語能力試験N1の認定を受けていることが必須です。基礎学歴が12年未満の場合は原則として認定されず、外国の准看護師免許では看護師国家試験の受験資格認定は申請できません。2026年度(令和8年度)の申請受付は4月13日から始まっています。

1のルートでは、留学生として日本語学校に通い、その後に看護専門学校や看護大学に進学するのが典型です。在学中は在留資格「留学」で、国家試験に合格し免許を受けた後に「医療」へ変更します。

「外国人看護師の合格率」という質問が多いのは、3のEPA候補者の合格率が公表されているためです。数字は後で取り上げます。

在留資格「医療」とは|看護師は日本人と同等以上の報酬が条件

在留資格「医療」は、入管法別表第一の二の表で、「医師、歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動」と定められています。「医療ビザ」と呼ばれることもありますが、正式な名称は在留資格「医療」です。

上陸許可基準(基準省令)は、医療の在留資格について次の3つを定めています。

  • 医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士または義肢装具士としての業務に、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けて従事すること
  • 准看護師としての業務に従事しようとする場合は、本邦において准看護師の免許を受けた後4年以内の期間中に研修として業務を行うこと
  • 薬剤師などの一部の職種は、本邦の医療機関または薬局に招へいされること

看護師については、日本の免許を持ち、日本人と同等額以上の報酬で看護師の業務に従事することが基準です。かつては看護師にも就労年数の上限がありましたが、現在の基準にはありません。看護師として働く限り、在留期間の更新を重ねて長く働くことができます。

報酬の比較は、同じ病院で同じ経験年数の日本人看護師の給与と比べるのが基本です。夜勤手当や資格手当の扱いを日本人と揃えておくと、審査で説明しやすくなります。報酬要件の考え方は就労ビザの「日本人と同等額以上の報酬」とはで整理しています。

在留期間は5年、3年、1年または3月のいずれかです(入管法施行規則別表第二)。医療の在留資格の全体像や、医師・薬剤師などの他の職種、医療を受けるために来日する「医療滞在」との違いは医療ビザとは|医師・看護師の在留資格「医療」と医療滞在ビザの違いで扱います。

准看護師は「免許取得後4年以内の研修」に限られる

准看護師として雇う場合は、看護師とは扱いが大きく違います。基準省令は、准看護師の業務について「本邦において准看護師の免許を受けた後四年以内の期間中に研修として業務を行うこと」を求めています。

つまり、准看護師として在留資格「医療」で働けるのは、日本で准看護師の免許を受けてから4年以内に限られ、その業務も研修という位置づけです。4年を過ぎると准看護師のままでは在留を続けられないため、その間に看護師の資格を取ることが事実上の前提になります。准看護師として採用する病院は、看護師資格の取得に向けた進学や学習の支援を採用計画に組み込んでおく必要があります。

看護補助業務は「医療」に当たらない

病院の採用担当が最も注意すべきなのが、看護補助(看護助手)としての雇用です。

在留資格「医療」の活動は、法律上の資格を持つ人が行うこととされている業務です。シーツ交換、食事や入浴の介助、病棟の環境整備、物品の搬送といった看護補助業務は、看護師の免許がなくても行える業務なので、「医療」の活動には当たりません。日本の看護師免許を持つ人を採用しても、実際の配置が看護補助中心であれば、在留資格の活動と実態がずれることになります。

入管の審査では、在留資格は名目ではなく活動の実態で判断されます。看護師として採用した外国人を、日本語が十分でないことを理由に長期間看護補助に就かせる運用は、更新の際に問題になり得ます。この考え方は最判平成14年10月17日と「活動の実体」|在留資格は名目でなく実態で判断されるで解説しています。

看護補助として外国人を雇う場合に使える在留資格は、次のようなものです。

  • 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者:就労制限がなく、看護補助にも就ける
  • 留学、家族滞在:資格外活動許可を受け、週28時間以内のアルバイトとして
  • 特定技能「介護」、技能実習「介護」:介護分野の業務として。ただし病院での看護補助が対象になるかは、施設の種類と業務の内容によります(公式資料では未確認)

技術・人文知識・国際業務は、看護補助のような現場の介助業務には使えません。介護施設での同じ論点は介護施設で技人国の外国人ができる業務・できない業務で扱っています。

EPA看護師候補者|免許取得前に受け入れる唯一の枠組み

日本の免許を持たない外国人を、看護師を目指す人材として病院で受け入れられる公的な仕組みは、EPAに基づく看護師候補者です。対象国はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国で、在留資格は「特定活動」になります。

厚生労働省の説明によると、制度の骨格は次のとおりです。

  • 受入れのあっせんは、国際厚生事業団(JICWELS)が国内唯一の受入れ調整機関として行う。他の職業紹介事業者や派遣事業者にあっせんを依頼することはできない
  • 候補者と病院の契約は雇用契約で、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を支払い、日本の労働関係法令や社会・労働保険が適用される
  • 候補者は看護師の監督の下で、看護師として必要な知識と技能に係る研修として病院の業務に従事する
  • 協定で認められる滞在期間は看護3年間。インドネシアについては、2026年8月の改正日尼EPAの発効などにより、看護・介護ともに在留期間の上限が5年に延長された
  • 国家試験に合格して看護師の資格を取得した後は、看護師として滞在・就労でき、在留期間の更新回数に制限はない

累計の受入れ人数は、看護師候補者と介護福祉士候補者を合わせて、3国で1万人を超えています(2026年7月末時点)。

受入れ病院は、国家資格の取得を目標とした適切な研修を実施することが責務とされています。厚生労働省は、この枠組みは「単なる単純労働者を雇用するためのものではありません」と明記しています。候補者を人手不足の穴埋めとして扱い、学習時間を確保しない受入れは、制度の趣旨に反します。

合格後の在留資格は、協定に基づき看護師としての業務に従事する活動を指定された「特定活動」です。特定活動の告示には、この活動を指定されて在留する人と同居し扶養を受ける配偶者・子の活動も定められており、合格後は家族を呼び寄せることができます。

EPA候補者の国家試験合格率は1割前後

厚生労働省の公表によると、2026年2月に実施された第115回看護師国家試験で、EPA看護師候補者の受験者は234人、合格者は20人、合格率は8.5%でした。全体の合格率88.3%との差は大きく、日本語で出題される国家試験の壁がそのまま表れています。国別では、インドネシア124人中5人(4.0%)、フィリピン64人中4人(6.3%)、ベトナム46人中11人(23.9%)です。

前年の第114回(2025年)は受験者285人、合格者53人、合格率18.6%で、過去の推移を見ても、合格率は多くの年で1割から2割の間にあります。ベトナムの候補者の合格率が比較的高い背景には、ベトナムの枠組みでは来日前に日本語能力試験N3以上の取得が求められていることがあると筆者は見ています。

この数字を踏まえると、EPA候補者を受け入れる病院は、合格できなかった場合の選択肢も含めて受入れ計画を立てる必要があります。滞在期間内に合格できなければ、原則として帰国することになるからです。

採用ルート別の比較

病院の採用担当が検討する主なルートを整理します。

ルート 在留資格 雇入れ時の免許 担える業務 主な注意点
日本の看護師免許を持つ人を採用 医療 日本の看護師免許 看護師業務 日本人と同等以上の報酬。看護補助中心の配置は不可
日本の准看護師免許を持つ人を採用 医療 日本の准看護師免許 准看護師業務(研修として) 免許取得後4年以内に限る
日本の看護学校の留学生を採用 留学→医療 卒業・合格後に取得 合格後は看護師業務 在学中は資格外活動(週28時間)の範囲でアルバイト可
EPA看護師候補者を受入れ 特定活動 なし(外国の看護師資格等) 看護師の監督下での研修としての就労 JICWELS経由のみ。合格率は1割前後
看護補助として採用 身分系、特定技能「介護」など 不要 看護補助 「医療」「技人国」は使えない

採用から入職までの手続

日本の看護師免許を持つ外国人を採用する場合、在留資格の手続は本人の現状によって変わります。

海外に住む人を呼ぶ場合は、病院が代理人となって在留資格認定証明書の交付を申請します。雇用契約書、看護師免許証の写し、病院の概要が分かる資料などを添えます。交付後の流れは在留資格認定証明書が交付されたら?入国までの流れと企業の手続きで解説しています。

日本の看護学校を卒業する留学生を採用する場合は、「留学」から「医療」への在留資格変更許可を申請します。看護師国家試験は例年2月に実施され、合格発表は3月です。合格後に看護師籍への登録を申請し、免許を受けたことを示す資料をそろえて変更申請をすることになるため、4月の入職に向けて、合格発表から変更申請までの段取りを本人と病院で事前に決めておくことをお勧めします。卒業後に在留期限が迫る場合の扱いは、個別の事情で判断が変わります。

採用後は、他の外国人と同じくハローワークへ外国人雇用状況の届出を行います。在留資格欄は「医療」、EPA候補者であれば「特定活動」と、指定された活動を括弧書きで記載します。

よくある質問

外国人は日本で看護師になれますか?

なれます。日本の看護師国家試験に合格して免許を受ければ、国籍にかかわらず看護師として働けます。外国の免許を持つ人は、厚生労働省の受験資格認定を受けて国家試験を受験する方法があり、日本の中学・高校を出ていない人は日本語能力試験N1の認定が必要です。

外国人看護師の在留資格は何ですか?

日本の看護師免許を持つ人は在留資格「医療」です。EPA看護師候補者は「特定活動」で、国家試験に合格した後も協定に基づく看護師としての「特定活動」で在留を続けられます。免許を持たない人が看護師として働く在留資格はありません。

外国人看護師の国家試験の合格率は?

EPA看護師候補者の合格率は、第115回(2026年)が8.5%(234人中20人)、第114回(2025年)が18.6%(285人中53人)でした。全体の合格率は第115回で88.3%です。日本の看護学校を卒業した留学生や受験資格認定を受けた人の合格率は、別途公表されていません。

外国人看護師を受け入れるメリットは?

看護師不足の緩和のほか、外国人患者への対応力が上がる点が挙げられます。一方で、日本語での記録や申し送り、夜勤体制への組込みには時間がかかります。受け入れの効果は、配置と教育体制の設計に左右されると筆者は考えます。

看護助手として外国人を雇えますか?

在留資格「医療」や技術・人文知識・国際業務では雇えません。永住者や定住者など就労制限のない人、資格外活動許可を受けた留学生(週28時間以内)などであれば看護助手として雇えます。特定技能「介護」の対象になるかは、施設と業務の内容によって確認が必要です。

採用の判断は「免許」と「配置」の2点から始める

外国人看護師の採用で最初に確認するのは、その人が日本の看護師免許を持っているか、持っていないならどのルートで取得を目指すのか、という点です。免許があれば在留資格「医療」で、日本人看護師と同じ業務と処遇で迎えるのが基本になります。免許がなければ、EPA候補者として研修を前提に受け入れるか、看護補助として別の在留資格で雇うかのどちらかです。

次に確認するのが、入職後の配置です。看護師として在留資格を得た人を看護補助中心に配置すれば、活動の実態が在留資格と合わなくなります。日本語の習熟に時間がかかる場合でも、看護師の業務として段階的に担当を広げる教育計画を書面にしておくと、更新の審査でも説明の材料になります。

准看護師の4年制限、EPA候補者の滞在期間と合格率、留学生の卒業から入職までの手続と、ルートごとに時間の制約があります。個別の事情で判断が変わるため、採用計画を立てる段階で専門家に相談してください。

根拠資料


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